Sun Cluster データサービス開発ガイド (Solaris OS 版)

任意の GDS プロパティー

任意の GDS プロパティーには、「システム定義プロパティー」と「拡張プロパティー」の両方が含まれます。システム定義プロパティーは、Sun Cluster により提供されるプロパティーの標準セットです。RTR ファイルで定義されているプロパティーは、拡張プロパティーと呼ばれます。

任意の GDS プロパティーには次のものがあります。

Child_mon_level プロパティー


注 –

Sun Cluster 管理コマンドを使用する場合は、Child_mon_level プロパティーを使用できます。Agent Builder を使用する場合、このプロパティーは使用できません。


このプロパティーは、プロセスモニター機能 (Process Monitor Facility、PMF) を通じて監視されるプロセスを制御します。このプロパティーは、フォークされた子プロセスをどのようなレベルで監視するかを表します。このプロパティーは、pmfadm コマンドの -C 引数と同等の働きをします。詳細は、pmfadm(1M)のマニュアルページを参照してください。

このプロパティーを省略するか、このプロパティーにデフォルト値の -1 を指定することは、pmfadm コマンドで --C オプションを省略するのと同じ効果があります。つまり、すべての子プロセスとその子孫プロセスが監視されます。

Failover_enabled プロパティー

この拡張プロパティーは、リソースのフェイルオーバー動作を制御します。この拡張プロパティーに TRUE を設定すると、アプリケーションは、再起動回数が Retry_interval 秒間に Retry_count を超えるとフェイルオーバーされます。

このプロパティーに FALSE を設定すると、再起動回数が Retry_interval 秒間に Retry_count を超えても、アプリケーションの再起動や別のノードへのフェイルオーバーは行われません。

このプロパティーを使用すると、アプリケーションリソースによるリソースグループのフェイルオーバーを防ぐことができます。このプロパティーのデフォルト値は TRUE です。


注 –

Failover_mode のほうがフェイルオーバー動作をよりよく制御できるので、将来的には Failover_enabled 拡張プロパティーの代わりに Failover_mode プロパティーを使用します。詳細は、r_properties(5)のマニュアルページで、Failover_modeLOG_ONLY および RESTART_ONLY の値の説明を参照してください。


Log_level プロパティー

このプロパティーは、GDS によって記録される診断メッセージのレベル (つまり、タイプ) を指定します。このプロパティーには、NONEINFO、または ERR を指定できます。NONE を指定すると、診断メッセージはロギングされません。INFO を指定すると、情報メッセージだけがロギングされます。ERR を指定すると、エラーメッセージだけがロギングされます。デフォルトでは、診断メッセージはロギングされません (NONE)。

Network_aware プロパティー

このプロパティーでは、アプリケーションがネットワークを使用するかどうかを指定します。デフォルトでは、GDS はアプリケーションがネットワーク対応である、つまりネットワークを使用すると見なします (Network_aware の設定は TRUE)。

アプリケーションがネットワーク対応の場合は、Start_command 拡張プロパティーと Port_list プロパティーの両方を指定する必要があります。アプリケーションがネットワーク非対応の場合は、Start_command 拡張プロパティーだけを指定します。

Network_resources_used プロパティー

このプロパティーは、リソースによって使用される論理ホスト名と共有アドレスネットワークリソースのリストを指定します。このプロパティーのデフォルト値は、空のリストです。アプリケーションを 1 つ以上の特定のアドレスにバインドする必要がある場合は、このプロパティーを指定してください。このプロパティーを省略するか Null を指定すると、アプリケーションはすべてのアドレスで待機します。

GDS リソースを作成する前には、LogicalHostname または SharedAddress リソースがすでに構成されている必要があります。LogicalHostname または SharedAddress リソースの構成方法については、『Sun Cluster データサービスの計画と管理 (Solaris OS 版)』を参照してください。

値を指定する場合は、1 つまたは複数のリソース名を指定します。個々のリソース名には、1 つ以上の LogicalHostnameリソースか 1 つ以上の SharedAddress リソースを含めることができます。詳細は、r_properties(5)のマニュアルページを参照してください。

Probe_command プロパティー

このプロパティーは、特定のアプリケーションの状態を周期的にチェックする検証コマンドを指定します。このコマンドは、引数を備えた UNIX コマンドでなければなりません。コマンドは、アプリケーションを検証するシェルに直接渡されます。アプリケーションが正常に実行されていれば、検証コマンドは終了ステータスとして 0 を返します。

検証コマンドの終了ステータスは、アプリケーションの障害の重大度を判断するために使用されます。終了状態 (検証状態) は、0 (正常) から 100 (全面的な障害) までの整数である必要があります。検証ステータスは、特殊な値として 201 をとることがあります。この場合、アプリケーションは、Failover_enabledFALSE に設定されている場合を除き、直ちにフェイルオーバーされます。GDS 検証アルゴリズムは、この検証ステータスを使って、アプリケーションをローカルに再起動するか、フェイルオーバーするかを決定します。詳細は、scds_fm_action(3HA)のマニュアルページを参照してください。終了ステータスが 201 の場合には、アプリケーションは直ちにフェイルオーバーされます。

検証コマンドを省略すると、GDS はそれ自身の簡単な検証を行います。この検証は、Network_resources_used プロパティーや scds_get_netaddr_list() 関数の出力から得られる一連の IP アドレスに対してアプリケーションに接続します。詳細は、scds_get_netaddr_list(3HA)のマニュアルページを参照してください。接続に成功すると、接続が直ちに切断されます。接続と切断が両方とも成功すれば、アプリケーションは正常に動作しているものとみなされます。


注 –

GDS で提供される検証は、全機能を備えたアプリケーション固有の検証の単純な代替物ではありません。


Probe_timeout プロパティー

このプロパティーは、検証コマンドのタイムアウト値を指定します。詳細は、Probe_command プロパティー」を参照してください。Probe_timeout のデフォルトは 30 秒です。

Start_timeout プロパティー

このプロパティーは、起動コマンドの起動タイムアウトを指定します。詳細は、Start_command プロパティー」を参照してください。Start_timeout のデフォルトは 300 秒です。

Stop_command プロパティー

このプロパティーは、アプリケーションを停止し、アプリケーションが完全に停止したあとでのみ戻る必要があるコマンドを指定します。このコマンドは、アプリケーションを停止するシェルに直接渡すことができる完全な UNIX コマンドでなければなりません。

Stop_command 拡張プロパティーが指定されていると、GDS 停止メソッドは、停止タイムアウトの 80% を指定して停止コマンドを起動します。さらに、GDS 停止メソッドは、停止コマンドの起動結果がどうであれ、停止タイムアウトの 15% を指定して SIGKILL を送信します。タイムアウトの残り 5% は、処理のオーバーヘッドのために使用されます。

停止コマンドが省略されていると、GDS は、Stop_signal に指定されたシグナルを使ってアプリケーションを停止しようとします。

Stop_signal プロパティー

このプロパティーは、PMF を通じてアプリケーションを停止するためのシグナルを識別する値を指定します。指定できる整数値のリストについては、signal(3HEAD)のマニュアルページを参照してください。デフォルト値は 15 です (SIGTERM )。

Stop_timeout プロパティー

このプロパティーは、停止コマンドのタイムアウトを指定します。詳細は、Stop_command プロパティー」を参照してください。Stop_timeout のデフォルトは 300 秒です。

Validate_command プロパティー

このプロパティーは、アプリケーションを検証するために呼び出されるコマンドへの絶対パスを指定します。絶対パスを指定しない場合、アプリケーションは検証されません。

Validate_timeout プロパティー

このプロパティーは、検証コマンドのタイムアウトを指定します。詳細は、Validate_command プロパティー」 を参照してください。Validate_timeout のデフォルトは 300 秒です。