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Oracle® Enterprise Manager Cloud Control管理者ガイド
12c リリース5 (12.1.0.5)
B65081-16
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25 Enterprise ManagerのSNMPサポートの概要

この章では、Enterprise ManagerのSNMPサポートの概要を説明します。内容は次のとおりです。

Simple Network Management Protocol (SNMP)はデバイスの管理および監視に使用されるプロトコルで、これらのデバイスの多くはルーター、スイッチなどのネットワーク・タイプのデバイスです。SNMPを使用すると、1つのアプリケーションで情報を取り出した後、基礎となるハードウェアに関わりなく、広範なシステム間に新しい情報をプッシュできます。

主にデータベース、ネットワークおよびシステム管理者向けに設計されたSNMPサポートにより、Enterprise Managerは多数の既存の広く使用されている管理システムに統合されます。また、Enterprise Managerはその監視範囲を、SNMPを使用して監視できるデバイスに拡張できます。

25.1 SNMPサポートの利点

SNMPサポートの主な利点は、次のとおりです。

  • 主要なOracle製品の監視機能を、SNMPに基づいた任意の管理フレームワークに迅速に統合します。

  • これらのOracle製品を、任意の規模の企業ネットワーク全体でリアルタイムに検索、識別および監視します。

  • 管理者は、ネットワーク・マップでOracle製品を表す標準のOracleアイコンを参照できます。このマップは、動的にカスタマイズできます。

  • 管理者は、Oracle製品の現在のステータスを、管理情報ベース(MIB)で製品ごとに定義されている数種類のステータス変数で参照したり、それらのステータスごとに表示する要素を選択できます。

  • 管理者は、しきい値とアラートを定義することによって、例外的な条件の発生を予測し、特別な状況に発生と同時に対応したり、自動的に対応できます。

  • 管理者は、SNMPを通じて取得した履歴データを保存し、分析できます。

  • SNMPはオープンな標準であるため、管理アプリケーションのプロバイダは、Oracleユーザー向けにカスタマイズしたソリューションを容易に構築できます。

厳密に言うと、SNMPサポートはOracle製品を管理するというよりも監視するためのものです。SNMPサポートはOracleアプリケーションのネットワーク全体の状況をトラッキングするのに非常に有益です。まず、通常の操作の確認、次に潜在的な問題の検出後すぐの特定と対処です。しかし、問題の調査と解決の目的では、Oracle SQL *Plus Worksheetなどの他のOracleツールの方が適している場合もあります。これは、他のツールがシステム・パラメータを設定または調整するように設計されているのに対し、SNMPサポートはステータスを問い合せるように設計され、システム・パラメータを変更するようには設計されていないためです。


注意:

Oracle SNMPは、HP OpenVMSプラットフォームではサポートされていません。

25.2 SNMP管理ステーションについて

SNMP管理ステーションとは、SNMPプロトコルを使用して管理対象の要素を監視するノードのことです。これは通常、管理対象の要素と同じネットワーク上にあるスタンドアロン・ワークステーションです。このマニュアルでは一貫してSNMP管理ステーションという用語を使用しますが、この他に管理コンソール、管理システムまたは管理ノードという用語も使用されます。

ほとんどのフレームワークでは、通信の基礎としてSNMPが使用されるため、SNMPをサポートするOracle製品は事実上すべての管理フレームワークに統合できます。CA Unicenter、HP OpenView、Tivoli NetView、Aprisma Spectrum、Sun SolsticeおよびCastle Rock SNMPc Network Managerのようなサード・パーティ製品は、SNMP管理ステーション機能を提供します。

25.3 Enterprise ManagerのSNMPのサポート方法

Enterprise Managerは、サード・パーティ管理システムとの統合、SNMPトラップを使用したイベント情報の共有、およびSNMPを使用した新しいデバイスおよびターゲットの監視によるEnterprise Managerの監視範囲の拡張により、SNMPをサポートします。

図25-1に示すように、Enterprise ManagerがSNMPを使用する方法は多数あります。

  1. Enterprise ManagerからSNMP管理ステーションへのSNMPトラップ通知の生成による、サード・パーティの管理システムとのイベント情報の共有。たとえば、SNMPを使用して、選択済メトリックがしきい値を超えていることをサード・パーティ・アプリケーションに通知できます。

    この方法はSNMPバージョン3 (SNMPv3)をサポートします。

    詳細は、第25.4項「SNMPトラップ通知の送信」および第4章「通知の使用」を参照してください。

  2. 管理対象エンティティとの間でのSMNPトラップの受信またはSNMPデータのフェッチにより、Enterprise Managerの監視範囲を新しいエンティティに拡張します。SNMPトラップを受信するようにメタデータ・プラグインを開発することで、Enterprise ManagerがSNMPトラップをスローできる製品を監視するようにできます。

    この方法は、SNMPバージョン1 (SNMPv1)、SNMPバージョン2 (SNMPv2c)およびSNMPバージョン3 (SNMPv3)をサポートします。

    詳細は、第25.5項「SNMPを使用した外部デバイスの監視」および『Oracle Enterprise Manager Cloud Control拡張プログラマーズ・リファレンス』を参照してください。

  3. SNMPアダプタを使用してSNMPエージェントに問い合せる新しいメトリックを作成することで、Enterprise Manager管理エージェントは、メトリック・データとして使用されるManagement Information Base(MIB)変数情報をホスト・ターゲット上のネイティブSNMPエージェントに問い合せることができます。

    この方法は、SNMPバージョン1 (SNMPv1)、SNMPバージョン2 (SNMPv2c)およびSNMPバージョン3 (SNMPv3)をサポートします。

    詳細は、第25.6項「メトリック拡張について」および第9章「メトリック拡張の使用」を参照してください。

図25-1 Enterprise ManagerのSNMPのサポート方法

図25-1の説明が続きます
「図25-1 Enterprise ManagerのSNMPのサポート方法」の説明

25.4 SNMPトラップ通知の送信

Enterprise Managerの通知システムを使用すると、SNMP対応のサード・パーティのアプリケーションとSNMPトラップを介してEnterprise Managerのイベント情報を共有できます。Enterprise Managerはトラップの送信に対してSNMPv1プロトコルをサポートします。たとえば、次のいずれかのイベントが発生したときに、イベント情報をトラップとしてEnterprise Managerからサード・パーティのアプリケーションに送信するとします。

  • 特定のメトリックがしきい値を超えた(メトリック・アラート・イベント)

  • ターゲットが停止した(ターゲット可用性イベント)

  • ジョブの失敗(ジョブ・ステータス変更イベント)


    注意:

    Enterprise Managerのイベント・タイプのすべてのリストと説明については、第3.1.1項「イベントの管理」を参照してください。

通知システムでSNMPトラップを使用することは、次の点に関する問題です。

  1. SNMPトラップを使用する通知メソッドの定義。詳細は、第4.5項「サード・パーティ・システムへのSNMPトラップの送信」を参照してください。

  2. 通知メソッドのルールへの割当て。既存のルールを編集または新規のインシデント・ルールを作成できます。詳細は、第3.2.4項「ルール・セットの設定」を参照してください。

25.4.1 管理情報ベース(MIB)について

SNMPを使用すると、Enterprise Managerではサード・パーティのSNMP対応アプリケーションに情報を送信できますが、SNMP対応アプリケーションでEnterprise Managerから情報を取得する必要がある場合があります。これを実施するには、MIB変数を利用し、SNMPトラップの登録を行います。トラップ・コンテンツの詳細は、MIB変数から取得できます。

MIBの詳細は、第4.6項「管理情報ベース(MIB)」および付録A「Enterprise Manager MIBの変数の解釈」を参照してください。


注意:

Enterprise ManagerのMIB変数を使用するには、有効なDiagnostic Packのライセンスが必要です。

25.5 SNMPを使用した外部デバイスの監視

管理者にとってEnterprise Managerによる管理対象ではないアプリケーションからアラートを受信することが重要な場合が多くあります。これらのアプリケーションの多くはアラート条件が発生したときにSNMPトラップをトリガーするように構成できます。これらのトラップをEnterprise Manager内で受信し、それらのアプリケーションのEnterprise Managerからの監視を開始できます。このようなアプリケーションにより発生したSNMPトラップを受信し分析する機能を持つことにより、Enterprise Managerの監視およびアラート機能をこれらのアプリケーションに拡張し、IT環境における監視の複雑性を低下させることができます。

アプリケーションにより発生したSNMPトラップを受信し(Enterprise Managerにより管理されない)、Enterprise Managerでアラートとしてトラップを表示するするように、Enterprise Managerを構成することができます。

これらのトラップを受信するには、管理対象エンティティを表すメタデータ・プラグインを開発する必要があります。次に、SNMP receiveletまたはSNMP fetchletを使用して、そのエンティティに関する監視データを受信または取得します。

メタデータ・プラグインの開発の詳細は、『Oracle Enterprise Manager Cloud Control拡張プログラマーズ・リファレンス』を参照してください。

25.5.1 SNMP receiveletについて

管理対象環境でサード・パーティのエンティティを監視している間に、サード・パーティのネットワーク要素のステータスが使用不可になった場合、あるいはそのメトリック重大度条件(メトリックしきい値)に達したか、超過した場合は、サード・パーティのネットワーク要素のSNMPエージェントによって、管理エージェントに通知が送信されます。これらの通知はSNMPトラップ形式で、パフォーマンスのしきい値に達すると、管理エージェントからのリクエストなしに、非同期にトリガーされます。

これらのトラップはSNMPに基づいているため、Oracle Management Agentは、SNMP receiveletを使用して、これらのSNMPトラップを受信し、Oracle Management Serviceと互換性のある形式に変換します。

SNMP receiveletの詳細は、『Oracle Enterprise Manager Cloud Control拡張プログラマーズ・リファレンス』を参照してください。

25.5.2 SNMP fetchletについて

fetchletはパラメータ化されたデータ・アクセス・メカニズムで、管理対象の要素の関連データをEnterprise Managerのメトリック形式にマップするために利用できます。標準の領域にあるEnterprise Managerは現在、SNMP fetchletを使用して、管理対象の環境内のSNMP対応エンティティから情報をフェッチしています。

SNMP fetchletはSNMPエージェントに、ターゲット・タイプの管理情報ベース(MIB)に定義された、管理対象エンティティに関するデータを問い合せます。MIBの詳細は、第25.4.1項「管理情報ベース(MIB)について」および第4.6項「管理情報ベース(MIB)」を参照してください。

SNMP fetchletの詳細は、『Oracle Enterprise Manager Cloud Control拡張プログラマーズ・リファレンス』を参照してください。

25.6 メトリック拡張について

メトリック拡張を使用すると、Oracleの監視機能を拡張してIT環境に固有の条件を監視できるようになります。たとえば、ホスト・ターゲット・タイプに新しいメトリックを作成できます。SNMPアダプタを使用すると、Enterprise Manager管理エージェントは、メトリック・データとして使用される管理情報ベース(MIB)変数情報をターゲット・ホストのネイティブSNMPエージェントに問い合せることができます。

メトリック拡張とSNMPアダプタの詳細は、第9章「メトリック拡張の使用」を参照してください。