Oracle® VM Server for SPARC 3.2 リファレンスマニュアル

印刷ビューの終了

更新: 2015 年 3 月
 
 

ldmp2v (1M)

名前

ldmp2v - Oracle VM Server for SPARC Physical-to-Virtual (P2V) 変換ツール用のコマンド行インタフェース

形式

ldmp2v collect [-a flash|none] [-O "flarcreate-options"] [-v] [-x mount-point [-x ...]]
  -d data-dir
ldmp2v prepare [-b zvol|file|disk] [-B backend:volume:vdisk [-B ...]] [-c cpu] 
  [-m mount-point:size [-m ...]] [-M memsize] [-o keep-hostid] [-o keep-mac] [-p prefix]
  [-s] [-v] [-x no-auto-adjust-fs] [-x remove-unused-slices] -d data-dir domain-name
ldmp2v prepare -R guest-root  [-c cpu] [-M memsize] [-o keep-hostid] [-o keep-mac]
  [-v] -d data-dir domain-name
ldmp2v prepare -C domain-name
ldmp2v convert -i install-image -d data-dir [-v] [-x skip-ping-test] domain-name
ldmp2v convert [-j] -n interface -d data-dir [-v] [-x skip-ping-test] domain-name

説明

Oracle VM Server for SPARC Physical-to-Virtual (P2V) 変換ツールは、既存の物理システムを、チップマルチスレッディング (CMT) システム上の論理ドメインで Oracle Solaris 10 OS を実行する仮想システムに自動的に変換します。ソースシステムには、Solaris 8、Solaris 9、または Oracle Solaris 10 OS 以降を実行する sun4u SPARC システム、または Oracle Solaris 10 OS を実行する非 Logical Domains sun4u システムを指定できます。ソースシステムのイメージは Oracle VM Server for SPARC ドメインに変換され、必要に応じて、プロセス中に最新の Oracle Solaris 10 バージョンにアップグレードされます。


注 - ldmp2v コマンドは、ZFS ルートがある Oracle Solaris 10 OS または Oracle Solaris 11 OS を実行する SPARC システムではサポートされていません。

    物理システムから仮想システムへの変換は、次のフェーズで実行されます。

  • 収集フェーズ。物理ソースシステム上で実行されます。collect では、ソースシステムについて収集された構成情報に基づいて、ソースシステムのファイルシステムイメージが作成されます。

  • 準備フェーズ。ターゲットシステムの制御ドメイン上で実行されます。prepare では、collect フェーズで収集された構成情報に基づいて、ターゲットシステムに論理ドメインが作成されます。ファイルシステムイメージは、1 つ以上の仮想ディスクに復元されます。このイメージは、論理ドメインとして動作できるように変更されます。

  • 変換フェーズ。ターゲットシステムの制御ドメイン上で実行されます。convert フェーズで、標準の Solaris アップグレードプロセスを使用することにより、作成された論理ドメインが、Solaris 10 OS を実行する論理ドメインに変換されます。

次のセクションからは、物理システムから仮想システムへの変換が各フェーズで実行される方法について説明します。

収集フェーズ

ldmp2v collect [-a flash|none] [-O "flarcreate-options"] [-v] [-x mount-point [-x ...]]
  -d data-dir

ldmp2v collect コマンドは、次のオプションを使用します。

–a flash|none

使用するアーカイブ方法を指定します。有効な値は、flash または none です。デフォルトは flash です。

–O "flarcreate-options"

flarcreate コマンドに渡すオプションの引用符付きのリストを指定します。flarcreate のオプションのうち許可されているものは、–c–x のみです。–c オプションはアーカイブを圧縮し、–x オプションはアーカイブからファイルまたはディレクトリを除外します。複数の flarcreate オプションを指定できます。–O オプションは、–a flash を使用してフラッシュアーカイブ方法を指定する場合にのみ使用できます。

–v

詳細モードを使用します。このモードでは、ldmp2v によって発行されるメッセージがより詳細になります。

–x mount-point

mount-point でマウントされるファイルシステムをアーカイブから除外します。

–d data-dir

P2V ファイルを格納するディレクトリをシステムごとに指定します。収集フェーズでは、このディレクトリは、root による書き込みが可能である必要があります。中間ディレクトリは、自動的に作成されます。

準備フェーズ

ldmp2v prepare [-b zvol|file|disk] [-B backend:volume:vdisk [-B ...]] [-c cpu]
  [-m mount-point:size [-m ...]] [-M memsize] [-o keep-hostid] [-o keep-mac]
  [-p prefix] [-s] [-v] [-x no-auto-adjust-fs] [-x remove-unused-slices]
  -d data-dir domain-name
ldmp2v prepare -R guest-root  [-c cpu] [-M memsize] [-o keep-hostid] [-o keep-mac]
  [-v] -d data-dir domain-name
ldmp2v prepare -C domain-name

ldmp2v prepare コマンドは、次のオペランドおよびオプションを使用します。

domain-name

操作の対象となる論理ドメインを指定します。

–b zvol|file|disk

使用するバックエンドの種類を指定します。仮想ディスクは、ZFS ボリューム (zvol)、プレーンファイル (file)、物理ディスクまたはボリュームマネージャーボリューム (disk) で構成されます。このオプションは、/etc/ldmp2v.conf 内の BACKEND_TYPE の設定をオーバーライドします。

–B backend:volume:vdisk

バックエンドデバイスの名前を指定し、任意で、作成するボリュームおよび仮想ディスクの名前を指定します。volume または vdisk 値が省略されている場合、デフォルトの名前が使用されます。省略する各値にコロン文字 (:) を指定することにより、値を省略できます。たとえば、–B オプションの有効な使用方法として、–B ::vdisk01–B :volume001 が挙げられます。

このオプションは、disk バックエンドに必要であり、/dev/dsk/c0t2d0s2 または /dev/md/dsk/d100 のように少なくともバックエンドデバイスを指定するようにします。disk バックエンドについては、物理システムのマニフェスト内に存在する各ディスクに対して –B オプションを 1 つ指定します。

zvol および file バックエンドについては、backend を使用して、ldmp2v が仮想ディスク用に作成するファイルまたは ZFS データセットを指定できます。たとえば、–B data/ldom1/disk0 のように指定します。–B オプションを使用して、バックエンド名を指定し、デフォルト名をオーバーライドします。デフォルト名は、–p オプションによって生成されるか、/etc/ldmp2v.config 内の BACKEND_PREFIX 設定とドメイン名によって生成されます。

–c cpu

VCPU の数を論理ドメインに割り当てます。デフォルトでは、ldmp2v は、物理システム上の各 CPU に 1つの VCPU を割り当てます。

–C

指定したドメインをクリーンアップします。

–d data-dir

P2V に必要なファイルが配置されるディレクトリをシステムごとに指定します。

–m mount-point:size

mount-point で、ファイルシステムのベースとなるスライスとディスクのサイズを変更します。サイズは numunit として指定されます。num は容量であり、unit はブロックの場合は b、K バイトの場合は k、M バイトの場合は m、G バイトの場合は g です。このオプションは、複数回指定できます。このオプションは、//usr、および /var の自動サイズ変更を無効にします。mount-pointswap である場合、最初に構成されたスワップデバイスが size の値にサイズ変更されます。

–M memsize

論理ドメインに割り当てるメモリー量を指定します。記憶域サイズは numunit として指定され、num はメモリー容量、unit は次のいずれかになります。

  • m または M は M バイトを表します。

  • g または G は G バイトを表します。

unit が指定されていない場合は、M バイトになります。

デフォルトでは、ldmp2v コマンドが、物理システム内にある同量のメモリーを論理ドメインに割り当てます。必要であれば、ゲストドメインの最小記憶域サイズを満たすために、–M オプションで指定された記憶域サイズは 1G バイトになるように調整されます。

–o keep-hostid

物理システムのホスト ID を論理ドメインに転送します。デフォルトで、Logical Domains Manager は新しい一意のホスト ID を割り当てます。

–o keep-mac

物理システムの MAC アドレスを論理ドメインに転送します。デフォルトで、Logical Domains Manager は新しい一意の MAC アドレスを割り当てます。

–p prefix

バックエンドデバイスを作成する場所を指定します。zvol バックエンドの場合は ZFS データセット、file バックエンドの場合は / からの相対ディレクトリを指定します。このオプションは、/etc/ldmp2v.confBACKEND_PREFIX パラメータより優先されます。

–R guest-root

非自動モードを選択します。OS イメージの変更手順は、guest-root をルートとするファイルシステムに適用されます。論理ドメインの /etc/vfstab を更新して、guest-root 配下のファイルシステムのレイアウトに一致させます。

–s

スパースバックエンドデバイスを作成します。このオプションは、/etc/ldmp2v.confBACKEND_SPARSE パラメータより優先されます。

–v

詳細モードを使用します。このモードでは、ldmp2v によって発行されるメッセージがより詳細になります。

–x no-auto-adjust-fs

//usr、および /var ファイルシステムが自動サイズ調整で合計 10G バイトにならないようにします。既存のファイルシステムのサイズは新しい Solaris リリースにアップグレードするには十分でない場合があるため、このオプションは慎重に使用してください。

–m オプションを使用すると、ファイルシステムのサイズを手動で変更できます。

–x remove-unused-slices

ファイルシステムまたはスワップデバイスを保持しないスライスを作成しないことにより、仮想ディスクのサイズを減らします。

変換フェーズ

ldmp2v convert -i install-image -d data-dir [-v] [-x skip-ping-test] domain-name
ldmp2v convert [-j] -n interface -d data-dir [-v] [-x skip-ping-test] domain-name

ldmp2v convert コマンドは、次のオプションを使用します。

–d data-dir

P2V に必要なファイルが配置されるディレクトリをシステムごとに指定します。

–i install-image

アップグレードに使用する Solaris 10 OS DVD ISO イメージへのパスを指定します。

–j

Custom JumpStart を使用します。この場合、JumpStart サーバーおよび JumpStart クライアントが適切に構成されている必要があります。

–n interface

ネットワークインストールサーバーを使用する場合にブートする仮想ネットワークインタフェースを指定します。

–v

詳細モードを使用します。このモードでは、ldmp2v によって発行されるメッセージがより詳細になります。

–x skip-ping-test

ソースシステムの IP アドレスが有効になっているかどうかを判断するための ping テストがスキップされます。このオプションは、元のシステムがアクティブではないときなど、重複する IP アドレスが存在しないことが明らかな場合のみ使用してください。


Caution

注意  - 変換フェーズを開始する前に、元の物理システムを停止してください。これは、論理ドメインが、物理システムと同じ IP アドレスを使用し、場合によっては同じ MAC アドレスを使用するためです。 物理システムのいずれかの IP アドレスがアクティブな場合、ldmp2v convert コマンドはエラーメッセージを表示して終了します。


このセクションでは、3 つのフェーズの例が含まれます。

使用例 1 収集フェーズの例

    ldmp2v collect コマンドの使用方法の例を次に示します。

  • NFS マウントされたファイルシステムを共有する。次の例では、collect フェーズを実行するためのもっとも簡単な方法を示します。ここでは、ソースシステムとターゲットシステムで NFS マウントされたファイルシステムを共有します。

    # ldmp2v collect -d /home/dana/p2v/volumia
  • NFS マウントされたファイルシステムを共有しない。ソースシステムとターゲットシステムで NFS マウントされたファイルシステムを共有しない場合、ファイルシステムのイメージをローカルストレージに書き込んだあとに、制御ドメインにコピーできます。ldmp2v により提供されるフラッシュアーカイブ方法を使用します。フラッシュツールは、作成したアーカイブを自動的に除外します。

    # ldmp2v collect -d /home/dana/p2v/volumia -a flash
  • ファイルシステムのバックアップ手順をスキップする。すでに NetBackup などのサードパーティー製バックアップツールを使用してシステムのバックアップが可能である場合、none アーカイブ方法を使用すればファイルシステムのバックアップ手順をスキップできます。このオプションを使用する場合、システム構成マニフェストのみが作成されます。

    # ldmp2v collect -d /home/dana/p2v/volumia -a none

    注 - –d で指定するディレクトリが、ソースシステムとターゲットシステムによって共有されていない場合は、そのディレクトリの内容を制御ドメインにコピーします。準備フェーズを開始する前に、ディレクトリの内容を制御ドメインにコピーする必要があります。
  • フラッシュアーカイブからファイルまたはディレクトリを除外する。フラッシュアーカイブ方法を使用すると、flarcreate コマンドにオプションを渡すことによって、ファイルまたはディレクトリをアーカイブから除外できます。この機能では、少なくとも次のパッチバージョンがソースシステムにインストールされている必要があります。

    • Solaris 8 OS: パッチ ID 109318-34

    • Solaris 9 OS: パッチ ID 113434-06

    # ldmp2v collect -d /home/dana/p2v/volumia -a flash
      -O "-x /path/to/file -x /some/dir"
使用例 2 準備フェーズの例

    ldmp2v prepare コマンドの使用方法の例を次に示します。

  • 次の例は、物理システムの MAC アドレスを保持しながら、/etc/ldmp2v.conf に構成されているデフォルトを使用することで、volumia という論理ドメインを作成します。

    # ldmp2v prepare -d /home/dana/p2v/volumia -o keep-mac volumia
  • 次の例は、–C オプションを使用して、ドメインとそのバックエンドデバイスを完全に削除する方法を示しています。

    # ldmp2v prepare -C volumia
  • 次の例は、–m オプションを使用して、P2V 中のファイルシステムとスワップデバイスのサイズ変更を行う方法を示しています。

    # ldmp2v prepare -d /home/dana/p2v/normaal -m /:8g -m swap:4g normaal
  • 次の例は、Solaris ボリュームマネージャーメタデバイス d100d101 をゲストドメインのバックエンドデバイスとして使用し、最初の仮想ディスクの名前を vdisk100 に設定する方法を示しています。

    # ldmp2v prepare -b disk -B /dev/md/dsk/d100::vdisk100 -B /dev/md/dsk/d101
      -d /p2v/volumia volumia
  • 次の例は、デフォルトでない ZFS ボリューム名が付いた ZFS ボリュームを使用する方法を示しています。

    # ldmp2v prepare -b zvol -B tank/ldom1/zvol1 -B tank/ldom1/zvol2 -d /p2v/volumia
      volumia
使用例 3 変換フェーズの例

    ldmp2v convert コマンドの使用方法の例を次に示します。

  • ネットワークインストールサーバーを使用する。ldmp2v convert コマンドが、指定された仮想ネットワークインタフェースを使用することによって、ネットワーク上の論理ドメインをブートします。インストールサーバーで setup_install_server および add_install_client スクリプトを実行する必要があります。

    Custom JumpStart 機能を使用し、完全に操作不要の変換を実行することもできます。

    次の例は、ネットワークインストールサーバーを使用してシステムをアップグレードする方法を示しています。

    # ldmp2v convert -n vnet0 -d /p2v/volumia volumia

    次の例は、Custom JumpStart を使用してシステムをアップグレードする方法を示しています。

    # ldmp2v convert -j -n vnet0 -d /p2v/volumia volumia
  • ISO イメージを使用する。ldmp2v convert コマンドが、Solaris DVD ISO イメージを論理ドメインに接続し、そこからブートします。アップグレードを行うには、sysid のすべての質問に回答し、「Upgrade」を選択します。


    注 - sysid の質問への回答は、アップグレード処理時にのみ使用されるため、もっとも単純なオプション (ネットワーク接続なし、ネームサービスなし、など) を選択できます。システムの元の ID は、アップグレードによって維持され、アップグレードの完了後にリブートすると有効になります。アップグレードの実行に要する時間は、元のシステムにインストールされている Solaris クラスタによって決まります。
    # ldmp2v convert -i /tank/iso/s10s_u5.iso -d /home/dana/p2v/volumia volumia

終了ステータス

次の終了値が返されます。

0

正常に完了しました。

>0

エラーが発生しました。

属性

次の属性の説明については、attributes(5) マニュアルページを参照してください。

属性型
属性値
使用条件
SUNWldmp2v
インタフェースの安定性
不確実

関連項目

ldm(1M), attributes(5)

Oracle VM Server for SPARC 3.2 管理ガイド