Oracleベスト・プラクティスを使用すると、Oracleデータベースと関連テクノロジの可用性を向上させることができます。
この章には、次の各項が含まれます。
Oracleテクノロジとデプロイ・オプションは広い範囲をカバーするため、高可用性アーキテクチャの設計や実装にあたって不安を感じても不思議はありません。作業を成功に導くには、まずビジネス要件を明確に定義し、隅々まで理解しておくことが必要です。ビジネス要件を細かく分析することで、設計を適切に決定し、ビジネス・ニーズを最適のコスト効率で満足させるアーキテクチャを開発することが可能になります。選択するアーキテクチャは、可用性、パフォーマンス、スケーラビリティおよびセキュリティの要求水準を満たすものである必要があります。また、デプロイおよび継続管理に関する計画が明確に定義されているアーキテクチャである必要があります。それにより、簡潔性を高め、ビジネス・リスクを最小限に抑えることができます。
ビジネス要件が確定したら、『Oracle Database高可用性概要』を参照して、Oracle Maximum Availability Architecture(MAA)をはじめとする様々なOracle高可用性ソリューションの概要を把握し、高可用性アーキテクチャの設計を開始します。そのように設計されたアーキテクチャについては、このマニュアルで説明するベスト・プラクティスを使用して、検証と詳細な診断を行うことができます。
Oracle高可用性ベスト・プラクティスは、高可用性アーキテクチャの全社的デプロイを容易にします。技術面と運用面のベスト・プラクティスが、高可用性を実現し、実装と継続メンテナンスに関するコストを引き下げるために役立ちます。また、システム資源の使用率を最適化することもできます。
このマニュアルに記載されている高可用性ベスト・プラクティスを実装すると、次のことが可能になります。
データベース、ストレージ、アプリケーション・フェイルオーバー、バックアップおよびリカバリを構成するための詳細なガイドラインに従うことで、Oracleデータベースの高可用性システムの実装コストを削減できます。詳細は、第2章「高可用性の構成」を参照してください。
Oracle Grid Controlを使用してデータベースを監視および管理することで、システム停止の可能性を排除できます。詳細は、第3章「Oracle Grid Controlを使用した監視」を参照してください。
コンピュータ障害、ストレージ障害、人為的エラーまたはデータ破損を原因とする計画外の停止から迅速にリカバリできます。詳細は、第4章「計画外の停止の管理」を参照してください。
データベースへのパッチ適用やアプリケーション・アップグレードなどの計画済のメンテナンスにより発生する停止時間を回避または削減できます。詳細は、第4章「計画外の停止の管理」を参照してください。
Oracle Maximum Availability Architecture(MAA)は、Oracleにおける実証済の高可用性テクノロジおよび推奨事項に基づくベスト・プラクティスのブループリントです。MAAには、すべてのOracle製品(Oracle Database、Oracle Application Server、Oracle Applications、Oracle Collaboration SuiteおよびOracle Grid Control)の高可用性ベスト・プラクティスが含まれます。
MAAの主要な特性は、次のとおりです。
データベース・グリッド・サーバーと、低コスト・ストレージに基づくストレージ・グリッドを使用して、高度な弾力性を備えた低コスト・インフラストラクチャを実現します。
ビジネス・ニーズに合せて実行およびスケール変更できるよう最適に構成された高可用性アーキテクチャを確保する目的で、各種構成を対象とする広範なパフォーマンス影響調査の結果を利用できます。
停止状態からのリカバリ時間の長さと、停止時に許容可能なデータ損失の量を制御できます。
各Oracleリリースに伴って内容が拡張され、ハードウェアとオペレーティング・システムからは完全に独立しています。
MAAの詳細と、MAAのすべての構成要素のベスト・プラクティスに関するドキュメントは、次の場所にあるMAAのWebサイトを参照してください。
http://www.otn.oracle.com/goto/maa
停止時間を短縮する最善の方法の1つは、運用ベスト・プラクティスを取り入れることです。テスト環境での詳細な変更テストの実行、プライマリ・データベースを障害から保護するための厳密な変更制御ポリシーへの準拠、および十分に検証された修復計画の各停止タイプへの適用を通じて、問題や停止時間の発生を高い頻度で防ぐことができます。
Grid Controlなどの監視インフラストラクチャは、迅速な問題検出に不可欠です。停止および修復用のディシジョン・ツリーと自動修復機能を確保することで、意思決定や修復のための時間を回避または削減して停止時間を短縮できます。
主要な運用ベスト・プラクティス例を次に示します。
テスト環境を構築します。
適切なテスト環境は本番システムを正確に反映するため、変更をテストすることで問題がビジネスに影響を与える前に防ぐことができます。テスト・ベスト・プラクティスには、アプリケーションの正確性の機能テストや、本番ワークロード全量のレプリケーションを行ったときにシステム・パフォーマンスが許容範囲内であることの確認などがあります。
変更制御およびセキュリティ手順を確立します。
変更制御およびセキュリティ手順によって、システムの安定性が維持され、テスト・システムで厳密に評価されるまで変更がプライマリ・データベースに適用されないことが保証されます。
企業データに対する最大の脅威は、ネットワークや企業設備に内部アクセスできる従業員と契約社員によってもたらされます。適切なセキュリティ基準のないシステムまたはデータベースに配置された企業データは、深刻なリスクに直面している可能性があります。明確に定義されたセキュリティ・ポリシーは、システムに対する不正アクセスを遮断し、企業の機密情報を破壊行為から保護するのに役立ちます。適切なデータ保護により、セキュリティの侵害によるシステム停止の可能性を抑制できます。
Grid Controlなどの監視インフラストラクチャを使用して、潜在的な障害や問題を発生前に検出して対応します。
システム、ネットワークおよびデータベース統計を監視します。
パフォーマンス統計を監視します。
システムやアプリケーションの問題を示す早期警告インジケータとしてパフォーマンスしきい値を作成します。
MAA推奨の修復計画を活用し、適切なMAAマトリックスを使用して深刻な状況に対応するための停止および修復用ディシジョン・ツリーを作成します。