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Oracle Databaseデータ・ウェアハウス・ガイド
11gリリース1(11.1)
E05763-01
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23 OLAPおよびデータ・マイニング

大規模なデータ・ウェアハウス環境では、異なる種類の分析が数多く発生する可能性があります。OLAP(オンライン分析処理)とデータ・マイニングを使用した高度な分析により、データ・ウェアハウスを充実させることができます。Oracleでは、別個のOLAPエンジンやデータ・マイニング・エンジンを持つかわりに、OLAPとデータ・マイニングの機能をデータベース・サーバーに直接統合しました。Oracle OLAPおよびOracle Data Mining(ODM)は、Oracle Databaseのオプションです。この章では、これらのテクノロジを簡単に紹介します。詳細は、それぞれのドキュメントに記載されています。

OracleのOLAPおよびデータ・マイニング機能の紹介の内容は、次のとおりです。

OLAPとデータ・マイニングの比較

OLAPおよびデータ・マイニングは、次のように、分析に関する様々な問題を解決するために使用します。

OLAPとデータ・マイニングは、相互補完的に使用できます。たとえば、特定地域における投資信託の売上に問題があることをOLAPで特定した場合、データ・マイニングを使用してその地域における個々の顧客の行動を詳しく調べることができます。続いて、データ・マイニングで5%の売上増などが予測されたら、OLAPで純利益を追跡する、といったことが可能です。また、データ・マイニングにより投資信託の売上に関して最も重要な属性を特定した場合、そうした属性を使用してOLAPでデータ・モデルを設計する、ということもできます。


関連項目:

  • データ・マイニングの概要は、「データ・マイニング」を参照してください。

  • 詳細は、『Oracle Data Mining概要』を参照してください。

  • 詳細は、『Oracle OLAPユーザーズ・ガイド』を参照してください。


OLAPの概要

Oracle OLAPでは、多次元データ・モデルを使用して、リアルタイムで履歴データの複雑な統計分析、算術分析および財務分析を行います。Oracle OLAPはデータベースに完全に統合されているため、標準のSQL管理ツール、問合せツールおよびレポート・ツールを使用できます。

OLAPの詳細は、『Oracle OLAPユーザーズ・ガイド』を参照してください。

Oracle DatabaseのOLAPテクノロジ

Oracle Databaseは、業界初で唯一の埋込みOLAPサーバーを提供します。Oracle OLAPにより、複数のディメンションにまたがってデータを分析する際に、固有の多次元格納および高速な応答時間を実現できます。データベースでは、時系列計算、予測、加算および非加算の演算子や割当て演算子による高度な集計など、多様な形で分析を行うことができます。こうした機能により、Oracleデータベースは、ビジネス・インテリジェンスや高度な分析アプリケーション全般をサポートできる、完全な分析プラットフォームとなります。

多次元テクノロジの完全統合

Oracleでは、多次元オブジェクトおよび分析をデータベースに統合することにより、両者の利点を活かし、Oracleデータベースの信頼性、可用性、セキュリティ、スケーラビリティとともに多次元分析機能を実現しています。

Oracle OLAPはOracle Databaseに完全に統合されています。これは、技術レベルでは次のことを意味します。

  • OLAPエンジンは、Oracle Databaseのカーネルで実行されます。

  • ディメンション・オブジェクトは、固有の多次元形式でOracle Databaseに格納されます。

  • キューブなどのディメンション・オブジェクトは、Oracleデータ・ディクショナリの主要なデータ・オブジェクトです。

  • データ・セキュリティは、Oracle Databaseのユーザーとロールに対して権限の付与および取消しを行う、標準的な方法で管理されます。

  • アプリケーションで、SQLを使用してディメンション・オブジェクトを問い合せることができます。

これは組織にとって非常に有益です。Oracle OLAPでは、1つのデータベース、標準的な管理とセキュリティ、標準のインタフェースと開発ツールといった、簡略性による利点が得られます。

アプリケーション開発の容易性

Oracle OLAPでは、特徴的な分析コンテンツでデータベースやアプリケーションを簡単に強化できます。Oracleの多次元オブジェクトや計算に対する固有のSQLアクセスによって、ダッシュボード、レポート、ビジネス・インテリジェンス(BI)、あらゆるタイプの分析アプリケーションの開発作業が、独自のインタフェースを提供するシステムと比較して非常に容易になります。また、SQLアクセスは、従来の限られたOLAPアプリケーションのみではなく、どのようなデータベース・アプリケーションでも、Oracle OLAPの分析機能が使用できることを意味します。

管理の容易性

Oracle OLAPはOracleデータベースに完全に埋め込まれているため、通常スタンドアロンのOLAPサーバーに必須となる管理技術を習得する必要がありません。専門の管理スキルに投資することなく、既存のDBAスタッフを活用できます。

Oracleの埋込みOLAPテクノロジの主な管理上のメリットの1つは、キューブの自動的なメンテナンスです。スタンドアロンのOLAPサーバーでは、キューブのリフレッシュ作業の負担がすべて管理者にかかります。その結果、ジョブが複雑になり、エラーが発生しやすくなることがあります。管理者は、リレーショナル・ソースから変更済データを抽出し、そのデータをソース・システムからスタンドアロンOLAPサーバーを実行しているシステムに移動し、キューブのロードと再構築を行うプロシージャを作成する必要があります。また、このプロセスの間、DBAはデルタ(変更された値)のセキュリティについて責任を負わなければなりません。

その一方、Oracle OLAPでは、キューブのリフレッシュはすべてOracleデータベースで処理されます。データベースは、ディメンション・オブジェクトの失効を追跡し、ソース表のデルタの動きを自動的に記録して、リフレッシュ・プロセス中に変更された値のみを自動的に適用します。DBAはリフレッシュのスケジュールを適切な間隔で設定するだけで、他のことについてはすべてOracle Databaseが対処します。

セキュリティ

Oracle OLAPでは、Oracle Databaseの標準のセキュリティ機能を使用して、多次元データを保護します。

これに対し、スタンドアロンのOLAPサーバーでは、管理者はリレーショナル・ソース・システムとOLAPサーバー・システムで、2回に渡ってセキュリティの管理を行う必要があります。また、リレーショナル・システムからスタンドアロンOLAPシステムにデータを移動する際のセキュリティを管理しなければなりません。

優れたパフォーマンスとスケーラビリティ

ビジネス・インテリジェンスおよび分析アプリケーションは主に、階層のドリルアップやドリルダウン、集計値の比較(前期比、親のシェア、将来の予測、多数の類似の計算など)といった操作に使用します。こうした操作は多くの場合、階層集計が可能な領域全体においてランダムに行われます。Oracle OLAPは、定義された多次元領域ですべての集計を事前計算するか、効率よく即時計算するため、典型的なビジネス・インテリジェンス・アプリケーションで優れたパフォーマンスを実現できます。

Oracle OLAPの問合せでは、Oracleの共有カーソルを利用することにより、メモリー要件を大幅に削減し、パフォーマンスを向上させます。

Oracle DatabaseとともにReal Application Clusters(RAC)オプションをインストールすると、OLAPアプリケーションにおいても、パフォーマンス、スケーラビリティ、フェイルオーバーおよびロード・バランシングについて、他のアプリケーションと同様の利点があります。

コストの削減

上述の機能はすべて、コストの削減につながります。既存のスタッフのスキルを利用できるため、管理費が減少します。また、Oracleデータベースでは、他のシステムにおいては管理者の負担となる複雑な作業である、ディメンション・オブジェクトのリフレッシュの管理が可能です。標準のセキュリティによっても、管理費が削減されます。SQLに精通した多数のアプリケーション開発者や豊富なSQLベースの開発ツールを活用できるため、アプリケーションの開発とデプロイを迅速に行うことができ、アプリケーション開発費が減少します。いずれのSQLベースの開発ツールでもOracle OLAPを利用できます。Oracle OLAPの効率的な集計の管理、共有カーソルの使用、低コストのコモディティ部品で拡張性の高いシステムを構築できるOracle RACによって、ハードウェア費が削減されます。

ディメンション・オブジェクトの問合せ

Oracle OLAPでは多数の分析コンテンツが用意されており、問合せに対する応答も高速なため、お使いのSQLアプリケーションを強化できます。SQL問合せのインタフェースにより、OLAPの知識がなくても、すべてのアプリケーションでキューブやディメンションへの問合せを実行できます。

OLAPオプションでは、キューブ、ディメンションおよび階層のリレーショナル・ビューを自動的に生成します。SQLアプリケーションでこれらのビューを問い合せることにより、分析担当者や意思決定者はこれらのオブジェクトの情報量に富んだ内容を表示できます。また、実表などのシステム生成ビューを使用して、お使いのアプリケーションが求める構造に適合するカスタム・ビューを作成できます。

分析者は、SQL問合せと分析ツールを選択して、データの選択、表示および分析を行うことができます。好みのツールやアプリケーション、またはOracle Databaseのツール(Oracle Application ExpressやBusiness Intelligence Publisherなど)を使用できます。

ディメンション・オブジェクトの作成および管理のためのツール

Analytic Workspace Managerは、Oracle Database内のディメンション・オブジェクトを作成、構築および管理するためのメイン・ツールです。

Oracle OLAPはデータベース内にあり、そのリソースは同じツール(Oracle Enterprise Manager Database Control、自動ワークロード・リポジトリ、自動データベース診断モニターなど)を使用して管理されます。