この章では、自動ストレージ管理(ASM)の構成前にストレージ・サブシステムを準備する方法について説明します。ASMの使用目的でストレージを準備する場合は、この章で説明するように、まずシステムのストレージ・オプションを決定し、次に特定のオペレーティング・システム環境に対してディスク・ストレージを準備する必要があります。この章の内容は次のとおりです。
ASMディスク・グループは、次のいずれかのストレージ・リソースを使用して作成できます。
RAWディスク・パーティション: RAWパーティションは、ディスク・ドライブ全体またはディスク・ドライブのセクションになります。ただし、パーティション表は上書き可能であるため、ASMディスクはパーティション表が含まれているパーティションにすることはできません。
論理ユニット番号(LUN): ハードウェアRAID機能を使用してLUNを作成することをお薦めします。ストレージ・ハードウェアRAID 0+1またはRAID5、および他のRAID構成をASMディスクとしてASMに提供できます。
RAW論理ボリューム(LVM): LVMは、LVMがLUNにマップされているか、LVMでディスクまたはRAWパーティションを使用する比較的単純な構成でサポートされます。LVM構成では機能が重複するため、オラクル社ではお薦めしません。ASMでミラー化がすでに提供されているため、ミラー化にLVMを使用することもお薦めしません。
NFSファイル: ASMでは、ASMディスクとしてNFSファイルをサポートしています。Oracle Databaseにはネットワーク・ファイル・システム(NFS)のサポートが組み込まれており、OSのNFSのサポートには依存しません。NFSとASMにはオーバーラップ機能が備わっていますが、ASMではNFSファイル間でのロード・バランスまたはミラー化を行うことができます。
ASM用のストレージ・リソースを準備する手順は次のとおりです。
ASM用のストレージ・デバイスを区別または作成するには、ASMディスク・グループの作成に使用できるすべてのストレージ・リソース・デバイス名を識別します。たとえば、通常、Linuxシステムでは、デバイス名は/dev
ディレクトリから提供され、その名前構文は/dev/
device_name_identifier
となります。
ストレージ・デバイス・リソースの所有権とアクセス権を変更します。たとえば、Linuxシステムでは次のようにする必要があります。
デバイスのユーザーおよびグループ所有権をoracle:dba
に変更します。
デバイスのアクセス権を読取り/書込みに変更します。
比較的古いLinuxバージョンでは、RAWデバイス・バインディングを構成する必要があります。
ASMを構成したら、ASM_DISKSTRING
初期化パラメータを設定して、ディスク検出が正しく構成されていることを確認します。
注意: 所有権のoracle:dba への設定は、デフォルト設定の一例です。デフォルト以外のインストールでは異なる設定が必要になる場合があります。通常、ディスク・デバイスの所有者はOracleバイナリの所有者と同じにします。グループの所有権は、ASMインスタンスのOSDBAにします。これはインストール時に定義されます。 |
ASMインストール用のディスク準備の詳細は、Oracle Database、Oracle ClusterwareおよびOracle Real Application Cluster(Oracle RAC)のプラットフォーム別インストレーション・ガイドを参照してください。
マルチパス化ソリューションは、冗長な物理パス・コンポーネントを使用することでフェイルオーバーを提供します。これらのコンポーネントとして、サーバーとストレージ・サブシステムの間に存在するアダプタ、ケーブルおよびスイッチなどがあります。これらのコンポーネントの1つ以上に障害が発生した場合、アプリケーションは引き続きデータにアクセスできるため、ストレージ・エリア・ネットワーク(SAN)、ホスト・バス・アダプタ、インタフェース・ケーブル、またはマルチポート・ストレージ・アレイ上のホスト・ポートでのシングル・ポイント障害はなくなります。
マルチパス化は、オペレーティング・システムのデバイス・ドライバ・レベルで実装されるソフトウェア・テクノロジです。マルチパス化では疑似デバイスが作成され、使用可能なすべてのI/Oパスの間でI/O操作を共有し、それらの操作のバランスを取ることが容易になります。また、使用可能なすべてのパスにI/O負荷を分散させることでシステムのパフォーマンスも向上します。その結果、自動フェイルオーバーやフェイルバックによる、より高いレベルのデータ可用性が提供されます。
ASMはマルチパス化機能を備えた設計になっていませんが、マルチパス化テクノロジとともに機能します。マルチパス化テクノロジは、数多くのソースから利用できます。ストレージ・ベンダーは固有のストレージ製品に対応したマルチパス化製品を提供しており、ソフトウェア・ベンダーは通常、複数のサーバー・プラットフォームとストレージ製品に対応したマルチパス化製品を開発しています。
関連項目: 特定のプラットフォームおよびストレージ製品のマルチパス化オプションの詳細は、ストレージまたはソフトウェア・ベンダーのマルチパス化のドキュメントを参照してください。 |
ASMでディスクの複数のデバイス・パスを検出するとエラーが発生します。マルチパス構成では単一のディスクが複数回現れる可能性があるため、マルチパス・ディスクのみを検出するようにASMを構成する必要があります。
ASMでは、初期化パラメータASM_DISKSTRING
の値を、マルチパス・ディスクを表す疑似デバイス名に設定することにより、マルチパス・ディスクを確実に検出できます。たとえば、EMC PowerPathマルチパス化ソフトウェアを使用している場合は、ASM_DISKSTRING
を'/dev/rdsk/emcpower*'
に設定できます。I/Oが疑似デバイスへ送られると、マルチパス・ドライバはそれを検出し、基礎となるサブパスにロード・バランシングを提供します。Linux上でASMとともにASMLIBを使用する場合は、マルチパス・ディスクを最初にスキャンするようにASMを構成するか、またはスキャン時にシングルパス・ディスクを除外するようにASMを構成することにより、マルチパス・ディスクを確実に検出できます。
関連項目:
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ASMで使用するストレージを準備する際のガイドラインを次に示します。
2つのディスク・グループ(1つはデータファイル用、もう1つはフラッシュ・リカバリ領域用)を構成します。可用性のために、一方のディスク・グループはもう一方のディスク・グループのバックアップとして使用されます。
ASMディスク・グループが使用するLUN(パーティションのディスク・ドライブ)は、ほぼ同じストレージ・パフォーマンスと可用性を備えている必要があります。様々な速度(10Kおよび15K RPMなど)のドライブを使用したストレージ構成では、最も遅い速度のドライブによってI/O分散が制約されます。
ASMのデータ分散ポリシーは容量に基づいていることに注意してください。ASMに提供されるLUNは、不均衡を回避するために各ディスク・グループで同じ容量となります。
可能であれば、ストレージ・アレイ・ハードウェアRAID 1ミラー化保護を使用して、サーバー上のミラー化オーバーヘッドを削減します。ハードウェアRAIDがない場合や、ホストベースのボリューム管理機能(ストレージ・システムにまたがるミラー化など)が必要な場合は、ASMミラー化冗長性を使用してください。地理的に離れているサイト間のミラー化をストレージ・インタフェースで行う場合は、ASMミラー化を構成で使用できます。
一部の低コストのストレージ製品におけるハードウェアRAID 1は、効率が悪く、アレイのパフォーマンスを低下させます。ASMの冗長性を使用すると、低コストのストレージ製品でもパフォーマンスが向上します。
最大限のデータ分散とより高いI/Oバンド幅を実現するために、ディスク・グループ内のディスク数を最大にします。
パフォーマンスを向上させるために、ディスク・ドライブの外側半分を使用してLUNを作成します。可能であれば、RPMが最も高い小型のディスクを使用してください。
大きなLUNを作成して、LUN管理のオーバーヘッドを削減します。
他のアプリケーションと共有されないディスク用のASMディスク・グループにディスクを提供することにより、ASMディスクと他のアプリケーションの間のI/O競合を最小限に抑えます。
2の累乗であり、かつASM割当て単位のサイズ以下であるハードウェアRAIDストライプ・サイズを選択します。
論理ボリューム・マネージャ(LVM)は冗長であるため、その使用は避けます。ただし、特定のマルチパス化またはサード・パーティのクラスタ・ソリューションでLVMが必要になる場合があります。その場合は、LVMを使用して、ストライプ化やミラー化を行わずに単一のLUNを表し、パフォーマンス上の影響を最小限に抑えます。
Linuxの場合、可能であれば、デバイスのネーミングと権限の永続性を扱う際にOracle ASMLIB機能を使用してください。
ASMLIBは、ASM対応カーネルでブロック・デバイスの検出とアクセスを行うための代替インタフェースを提供します。ASMLIBにより、ストレージ・システムおよびオペレーティング・システムのベンダーには、拡張されたストレージ関連機能を供給する機会が与えられます。これらの機能は、パフォーマンスの改善やデータ整合性の向上といった利点をもたらします。
関連項目:
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データベース管理者がシステムのストレージの構成を担当する場合、システムの初期容量だけでなく、今後の成長に対応した計画も検討する必要があります。ASMによって成長に対応するタスクが容易になります。ただし、成長計画はASMディスクで示されるLUNのサイズなどの選択に影響を与える場合があります。
また、I/Oパフォーマンスがストレージ・ディスクだけでなく、ホスト・バス・アダプタ(HBA)やストレージ構造に依存するかどうかも検討する必要があります。クラスタのノードの数を増やすにつれて、ストレージ・サブシステムも拡張する必要があります。
高可用性の場合、ストレージは1つのコンポーネントのみです。ストレージ内では、リカバリ領域とは別になるようにデータベース作業領域を構成することをお薦めします。ハードウェアのミラー化、または標準冗長性や高冗長性を備えたディスク・グループからのホストベースのミラー化を使用して、ディスク障害から保護するための対策も必要です。さらに、ストレージの可用性を考慮する際に、HBAと構造のマルチパス化を検討する必要があります。ASMのミラー化では、障害グループの構成も高可用性に影響を与えます。