この項では、Oracle Database 11gリリース1(11.1)の新規ストレージ管理機能について説明します。内容は次のとおりです。
関連項目: Oracle Database 11gリリース1(11.1)の新機能の詳細は、『Oracle Database新機能ガイド』を参照してください。 |
この項では、Oracle Database 11gリリース1(11.1)の次の自動ストレージ管理(ASM)機能について説明します。
『Oracle Databaseストレージ管理者ガイド 』(このリリースの新規ドキュメント)
『Oracle Databaseストレージ管理者ガイド』は、Oracle Database 11gリリース1(11.1)の新規ドキュメントで、Oracle自動ストレージ管理機能のメインの情報ソースとなります。
ASMの高速ミラー再同期
ディスク・ドライブ・メディアが破損していないかぎり、一時ディスク・パス障害の後、ASMの高速ミラー再同期によりディスク・グループ内のASMディスクが迅速に再同期されます。障害グループを一時的に使用できなくする障害は、一時障害と考えられます。ケーブルの切断、ホスト・バス・アダプタまたはコントローラの障害や、ディスク電源の停電などのディスク・パスの不具合は、一時的障害の原因となる場合があります。
高速ミラー再同期の時間は、停止時間によって異なります。再同期の時間は、通常、ASMディスク・グループ全体を完全に再構築するのに必要な時間よりもかなり短縮されます。
ASMのローリング・アップグレード
ASMクラスタをローリング・アップグレード・モードに設定することができます。これにより、ユーザーはOracle Database 11gリリース1(11.1)以上のバージョンのASMを組み合せて操作できます。この結果、データベースの可用性に影響することなくASMノードを個別にアップグレードまたはパッチ処理できます。
ASM管理のための新規SYSASM権限とOSASMオペレーティング・システム・グループ
この機能では、特にASMの管理タスクの実行を対象とする新規SYSASM権限が導入されました。SYSDBA権限のかわりにSYSASM権限を使用すると、ASMの管理とデータベースの管理の責務を明確に区別できます。
OSASMはASMに対して排他的に使用される新しいオペレーティング・システム・グループです。OSASMグループのメンバーは、オペレーティング・システム認証を使用してSYSASM
として接続でき、ASMに対する完全なアクセス権を保持します。
ASMのスケーラビリティおよびパフォーマンスの拡張
ASMのファイル・エクステント管理は、パフォーマンスを向上し、SGAメモリーをほとんど使用せずにファイル・エクステントを格納する目的で拡張されました。ASMファイルのサイズが大きくなると、新しい各エクステントのサイズも自動的に大きくなり、これによりファイルの記述に必要なエクステント・ポインタが少なくなります。この機能により、20GB以上(最大128TBまで)のASMファイルにアクセスする際のパフォーマンスが向上します。大規模データベース(VLDB)では、このような大きいファイル・サイズが必要になる場合が多くあります。また、新しいディスク・グループを作成する場合、割当て単位のサイズ・オプションが複数あります(1、2、4、8、16、32および64など)。パフォーマンスを大幅に向上させるには、ワークロードのタイプ(一般的に大量の順次I/O)とストレージ・システムのタイプに応じて大きな割当て単位を選択します。
ASMの新規コマンドライン・ユーティリティ(ASMCMD)のコマンドとオプション
ASMCMDには、lsdsk
、md_backup
、md_restore
およびremap
という4つの新規コマンドがあります。また、ls
コマンドおよびlsdg
コマンドの新しいオプションを使用できます。次に、この4つの新規ASMコマンドについて説明します。
cp
: ローカル・インスタンスとリモート・インスタンス上のASMディスク・グループ間でファイルをコピーできます。
lsdsk
: ASMインスタンスを実行しているかどうかにかかわらず、ASMでディスク情報をリストできます。これは、システム管理者やストレージ管理者がASMインスタンスで使用するディスクのリストを取得する場合に便利なツールです。
md_backup
およびmd_restore
: 同じディスク・パス、ディスク名、障害グループ、属性、テンプレート、およびエイリアスのディレクトリ構造を使用して、既存のASMディスク・グループを再作成できます。md_backup
を使用してディスク・グループ環境をバックアップし、データベース・バックアップからロードする前にmd_restoreを使用してディスク・グループを再作成できます。
remap
: ディスク・スクラバなどのストレージ管理ツールによって記録されたASMディスクの不良ブロックを標準冗長性または高冗長性で再マップおよびリカバリできます。ASMは、ASMミラーの適切なコピーから読み取り、これらのブロックをディスクの別の場所にリライトします。
自動ストレージ管理ディスク・グループの管理に使用するALTER
DISKGROUP
、CREATE
DISKGROUP
およびDROP
DISKGROUP
の強化
ALTER
DISKGROUP
、CREATE
DISKGROUP
およびDROP
DISKGROUP
SQL文が強化され、オプションが追加されました。
CREATE
DISKGROUP
およびALTER
DISKGROUP
では、ディスク・グループの様々な属性を設定できる新しい構文が使用できます。
ALTER
DISKGROUP
のCHECK
句では、自動ストレージ管理環境内のディスク・グループ、ディスク、およびファイルをこれまでよりシンプルな構文でチェックできます。
ALTER
DISKGROUP
のMOUNT
句では、ディスク・グループをマウントする際に指定できるオプションが増えました。
ALTER
DISKGOUP
のONLINE
およびOFFLINE
句を使用すると、ディスクを修理のためにいったんオフラインにし、その後オンラインに戻すことができます。
DROP
DISKGROUP
のFORCE
キーワードを使用すると、ASMインスタンスによるマウントができなくなったディスク・グループを削除することができます。
関連項目: ALTER DISKGROUP 、CREATE DISKGROUP およびDROP DISKGROUP SQL文によるディスク・グループ管理の詳細は、「ASMディスク・グループの管理」を参照してください。 |
ディスク・グループ互換性の新規属性
ASMの新機能の一部を有効にするには、ディスク・グループ互換性の2つの新規属性COMPATIBLE.RDBMS
およびCOMPATIBLE.ASM
を使用できます。これらの属性は、データベースとASMのディスク・グループをそれぞれ使用するために必要な最小ソフトウェア・バージョンを指定します。この機能を使用すると、Oracle Database 10gおよびOracle Database 11g両方のディスク・グループがある異機種間環境が有効になります。デフォルトでは、どちらの属性も10.1
に設定されています。新機能を利用するには、これらの属性を拡張する必要があります。
ASMの優先読取りの障害グループ
この機能はパフォーマンスに関して、リモート・ノードが非対称アクセスを持つ拡張クラスタで有用です。この機能を使用すると、ネットワークで読取り操作を行う必要がなくなるため、ネットワーク・リソースの使用効率が上がります。
Oracle Database 10gのASMは、常にミラー化されたエクステント・セットのプライマリ・コピーを読み取ります。Oracle Database 11gでは、ASM障害グループを構成する場合、ノードが読み取るエクステントがセカンダリ・エクステントであっても、最も近い障害グループ・エクステントから読み取った方が効率的である場合があります。優先読取りの障害グループを構成することで、特定の障害グループのエクステントから読み取るようにデータベースを構成できます。
ディスク・グループがRESTRICTED
モードの場合に行われるリバランス操作により、Oracle RAC環境のASMインスタンス間でエクステント・マップのメッセージ機能をロックしたり、ロックを解除したりする必要がなくなるため、リバランス全体のスループットが向上します。