この章では、RMANを使用し、バックアップをリストアしてトランスポータブル表領域セットを作成する方法について説明します。ここでは、『Oracle Database管理者ガイド』で説明するトランスポータブル表領域の手順に習熟していることを前提としています。この章で説明する手順は、トランスポータブル表領域セットの生成に使用する代替方法です。この章の内容は、次のとおりです。
この項では、RMANのバックアップからトランスポータブル表領域セットを作成する場合の基本的な概念およびタスクについて説明します。
トランスポータブル表領域セットには、表領域セットのデータファイル、および表領域セットの構造メタデータを含むエクスポート・ファイルが含まれています。エクスポート・ファイルは、データ・ポンプ・エクスポートによって生成されます。
トランスポータブル表領域セットを使用する例としては、表領域リポジトリの作成があげられます。たとえば、四半期レポートに使用する複数の表領域を含むデータベースがある場合、これらの表領域のトランスポータブル・セットを表領域リポジトリのストレージに作成できます。その後、表領域のバージョンをリポジトリから要求して別のデータベースに組み込み、レポートの生成に使用することができます。
トランスポータブル表領域を使用するもう1つの例としては、Oracle Streams環境での使用があげられます。Oracle Streamsを使用して、宛先データベースとソース・データベースを継続して同期化するための準備をする場合には、Oracle Streamsのインスタンス化を実行する必要があります。Oracle Streamsを使用して後続の更新をソース・データベースから宛先データベースに移動する前に、2つのデータベースが同期化されたことがわかっている時点のSCNまで宛先データベースを戻す必要があります。バックアップからのトランスポータブル表領域セットは、Oracle Streamsのインスタンス化の一部として作成できます。
RMANのTRANSPORT
TABLESPACE
コマンドの主なメリットは、トランスポートする表領域のアクティブなデータファイルにアクセスする必要がないことです。これに対して、『Oracle Database管理者ガイド』で説明されているトランスポータブル表領域の方法では、トランスポート時に、トランスポートする表領域を読取り専用でオープンする必要があります。したがって、バックアップからトランスポートすると、トランスポート中、トランスポートする表領域を書込み用にオープンしたままにできるため、特に大規模な表領域の場合にデータベースの可用性が向上します。また、現行のデータベース・アクティビティによっては、表領域を読取り専用モードにする操作に時間が長くかかる場合もあります。
RMANのTRANSPORT
TABLESPACE
コマンドを使用すると、リカバリ期間内に目標時点、SCNまたはリストア・ポイントを指定し、表領域データを指定した時点の状態でトランスポートすることもできます(「指定した時点またはSCNでのトランスポータブル表領域セットの作成」を参照)。たとえば、バックアップの保存方針で1週間のリカバリ期間を保証しており、月の最終日のデータベースの内容に基づいてトランスポータブル表領域を作成する場合、RMANは、翌月の第1週目の任意の時点にそのタスクを実行できます。
関連項目:
|
RMANをソース・データベースにTARGET
として接続してから、TRANSPORT TABLESPACE
コマンドを実行して、トランスポータブル表領域セットを作成します。ソース・データベースには、トランスポートされる表領域が含まれています。
TRANSPORT
TABLESPACE
操作の目標時点までリカバリできる必要なすべての表領域のバックアップおよびアーカイブREDOログ・ファイルがRMANで使用可能になっている必要があります。図26-1に、トランスポータブル表領域の基本プロセスを示します。
図26-1に示されているプロセスは、次のフェーズで実行されます。
RMANによって、補助インスタンスが起動されます。
RMANによって、表領域のリストアおよびリカバリを実行するために、ソース・データベースと同じホスト上に補助インスタンスが作成されます。また、補助インスタンスの初期化パラメータ・ファイルが自動的に作成され、インスタンスがNOMOUNT
モードで起動されます。
RMANによって、補助インスタンスの制御ファイルとして機能するソース・データベースの制御ファイルのバックアップがリストアされ、その制御ファイルがマウントされます。
RMANによって、ソース・データベースのバックアップから、補助セットおよびトランスポータブル・セットのデータファイルがリストアされます。
補助セットには、表領域のトランスポートに必要なデータファイルおよびその他のファイルが含まれていますが、それらのファイル自体はトランスポータブル表領域セットの一部ではありません。通常、補助セットには、SYSTEM
表領域、SYSAUX
表領域、一時ファイル、およびロールバック・セグメントまたはUNDOセグメントを含むデータファイルが含まれています。補助インスタンスには、それ自体の制御ファイル、パラメータ・ファイル、オンライン・ログなどの他のファイルが関連付けられますが、これらのファイルは補助セットの一部ではありません。
RMANによって、選択した補助の宛先に補助データファイルが格納されます。補助の宛先は、トランスポート実行中に、補助インスタンスのパラメータ・ファイル、データファイル(トランスポータブル・セットのデータファイル以外)、制御ファイル、オンライン・ログなどの補助セット・ファイルをRMANによって格納できるディスク上の場所です。トランスポートが正常に実行されると、これらのファイルはRMANによって削除されます。
RMANによって、表領域の格納場所にトランスポータブル・セット・ファイルが格納されます。表領域の格納場所は、表領域のトランスポートコマンドの完了時に、デフォルトでデータファイルのコピーおよび他の出力が格納されるディスク上の場所です。
RMANは、補助インスタンスでデータベースのPoint-in-Timeリカバリ(DBPITR)を実行します。
このリカバリによって、補助セットおよびトランスポータブル・セットのデータファイルの内容が、TRANSPORT
TABLESPACE
コマンドに対して指定された目標時点の状態に更新されます。目標時点が指定されていない場合、RMANでは、すべての使用可能なREDOログを使用してリカバリが行われます。必要に応じて、バックアップからアーカイブREDOログが補助の宛先(またはその他の場所)にリストアされ、適用後に削除されます。
RMANによって、補助データベースがRESETLOGS
オプションを使用してオープンされます。
これにより、データファイルに、表領域のトランスポート操作の目的のSCN時点の表領域内容が反映されます。
RMANによって、補助インスタンスのトランスポータブル・セットの表領域が読取り専用モードに設定されます。また、データ・ポンプ・エクスポートがトランスポータブル表領域モードで起動され、トランスポータブル・セットのエクスポート・ダンプ・ファイルが作成されます。
デフォルトでは、ダンプ・ファイルは表領域の格納場所に格納されます。ダンプ・ファイルの場所を指定するには、「データ・ポンプ・ファイルの場所の指定」を参照してください。
また、RMANによって、トランスポートした表領域をターゲット・データベースに組み込む場合に使用するサンプル・データ・ポンプ・インポート・スクリプトも生成されます。このスクリプトの内容は、表領域の格納場所のimpscript.sql
という名前のファイルに書き込まれます。このスクリプト用のコマンドも、RMANのコマンド出力に含まれます。
前述の手順が正常に実行されると、RMANによって、補助インスタンスが停止され、TRANSPORT
TABLESPACE
操作の実行中に作成されたすべてのファイル(トランスポータブル・セット・ファイル、データ・ポンプ・エクスポート・ファイルおよびサンプル・インポート・スクリプトを除く)が削除されます。
トランスポータブル表領域セットを作成する前に、いくつかの前提条件を満たす必要があります。これらの前提条件については、『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・リファレンス』
のTRANSPORT TABLESPACEエントリを参照してください。
トランスポータブル表領域セットの作成の基本手順は次のとおりです。
RMANクライアントを起動し、ソース・データベースおよびリカバリ・カタログ(使用する場合)に接続します。
必要に応じて、補助インスタンスのパラメータ・ファイルで追加のパラメータを設定します。
このタスクについては、「補助インスタンスの初期化パラメータのカスタマイズ」を参照してください。
TRANSPORT TABLESPACE
コマンドを実行します。
この基本的な方法については、「トランスポータブル表領域セットの作成」を参照してください。この方法を少し変更した例については、「トランスポータブル表領域セットの使用例」を参照してください。
TRANSPORT TABLESPACE
コマンドが失敗した場合は、問題のトラブルシューティングを行い、コマンドが正常に実行されるまで再試行します。
この方法については、「トランスポータブル表領域セットの作成のトラブルシューティング」を参照してください。
表領域のトランスポート手順(『Oracle Database管理者ガイド』を参照)に戻ります。
RMANは、補助インスタンスの作成時に、初期化パラメータ・ファイルを作成します。デフォルト値は、ほぼすべてのTRANSPORT TABLESPACE
の例(特にTRANSPORT TABLESPACE
コマンドにAUXILIARY DESTINATION
オプションを指定する場合)で正常に動作します。
また、RMANは、追加の初期化パラメータの値を含む補助インスタンスのパラメータ・ファイルも使用できます。これらの値によって、デフォルトの初期化パラメータ・ファイルで定義されているパラメータの値が上書きされます。次の理由から、補助インスタンスのパラメータ・ファイルを使用する場合があります。
STREAMS_POOL_SIZE
およびSHARED_POOL_SIZE
を増加するため(データ・ポンプ・エクスポートで必要な場合)。
補助インスタンスのデータファイルの場所を管理するため(「初期化パラメータを使用した補助ファイル名の指定」を参照)。たとえば、すべてのファイルの場所を個別に指定せずに、補助インスタンスのすべてのデータファイルが同一の場所に格納されないようにする場合などです。
LOG_FILE_NAME_CONVERT
を使用してオンラインREDOログの名前を指定するため(「初期化パラメータを使用した補助ファイル名の指定」を参照)。
補助インスタンスのパラメータ・ファイルは、補助インスタンスの完全な初期化パラメータ・ファイルとはみなされません。指定したパラメータは、補助インスタンスのデフォルト・パラメータに追加されるか、これらのパラメータを上書きします。上書きしない初期化ファイルに、パラメータを指定する必要はありません。
RMANは、自動補助インスタンスに対して表26-1の基本初期化パラメータを定義します。
表26-1 補助インスタンスに対するデフォルトの初期化パラメータ
初期化パラメータ | 値 |
---|---|
|
ソース・データベースの |
|
ソース・データベースの互換性設定と同じです。 |
|
|
|
ソース・データベースの |
|
ソース・データベースの |
|
推奨値280Mです。 |
|
補助の宛先( |
表26-1に示されている、補助インスタンスのパラメータ・ファイル内の基本初期化パラメータを不適切な値で上書きすると、TRANSPORT TABLESPACE
が失敗する場合があります。問題が発生する場合は、初期化パラメータをデフォルト値に戻してください。
関連項目: ファイルの名前を指定するためにDB_FILE_NAME_CONVERTおよびLOG_FILE_NAME_CONVERT を使用する方法については、「初期化パラメータを使用した補助ファイル名の指定」 を参照してください。 |
デフォルトでは、RMANは、RMANクライアントが実行されているホスト上のオペレーティング・システム依存の場所で、補助の初期化パラメータ・ファイルを検索します。この場所は、補助インスタンスが実行されているホスト上ではない場合があります。UNIXシステムの場合、この場所は?/rdbms/admin/params_auxint.ora
です。ここで、クエスチョン・マーク(?
)は、RMANが実行されるホスト上のORACLE_HOME
を表します。デフォルトの場所でファイルが検出されない場合でも、RMANはエラーを生成しません。
補助インスタンスのデフォルトの初期化パラメータを使用する場合は、TRANSPORT
TABLESPACE
を実行する前に、補助インスタンスのパラメータ・ファイルが存在するかどうかを確認してください。
補助インスタンスのパラメータ・ファイルに別の場所を指定するには、RMANでTRANSPORT
TABLESPACE
コマンドの前にRUN
ブロック内でSET
AUXILIARY
INSTANCE
PARAMETER
FILE
コマンドを使用します。補助インスタンスのパラメータ・ファイルのデフォルトの場所と同様に、SET AUXILIARY INSTANCE PARAMETER FILE
コマンドを使用して指定したパスは、クライアント側のパスです。
RMANクライアントが実行されているホスト上に、/tmp/auxinstparams.ora
というファイルを作成するとします。このファイルには、次の初期化パラメータが含まれています。
SHARED_POOL_SIZE=150M;
例26-1
に示すように、TRANSPORT
TABLESPACEを指定して初期化パラメータ・ファイルを使用できます。RMANが補助インスタンスを作成する際に、/tmp/auxinstparams.ora
のSHARED_POOL_SIZE
パラメータによって、SHARED_POOL_SIZE
で使用されるデフォルト値が上書きされます。
この項では、最大限に自動化された最も基本的な場合のTRANSPORT
TABLESPACE
の使用について説明します。基本例を少し変更した例については、「トランスポータブル表領域セットの使用例」を参照してください。
『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・リファレンス』
のTRANSPORT TABLESPACEエントリに関する項で説明されている前提条件を満たしていると想定しています。また、『Oracle Database管理者ガイド』で説明されている前提条件も満たしていると想定しています。
ソース・プラットフォームと宛先プラットフォーム間で、表領域のトランスポートがサポートされていることを確認します。
トランスポータブル・セットに含める自己完結型の表領域セットを識別します。
トランスポータブル表領域セットを作成する手順
RMANクライアントを起動し、ソース・データベースおよびリカバリ・カタログ・データベース(使用している場合)に接続します。
RMANで、TRANSPORT
TABLESPACE
コマンドを実行します。
最も基本的な場合では、AUXILIARY
DESTINATION
句を指定します。これはオプションですが、指定することをお薦めします。RMANは、ほとんどの場合で機能するデフォルト値を使用します。補助の宛先を指定しない場合は、補助インスタンスのすべてのファイルに対して場所が指定されていることを確認します。補助ファイルに名前を指定する方法については、「補助ファイルの場所の指定」で説明されている規則を参照してください。
例26-2では、表領域tbs_2
およびtbs_3
を含むトランスポータブル表領域セットを作成します。
例26-2 トランスポータブル表領域セットの作成
TRANSPORT TABLESPACE tbs_2, tbs_3 TABLESPACE DESTINATION '/disk1/transportdest' AUXILIARY DESTINATION '/disk1/auxdest';
コマンドが正常に実行されると、結果は次のようになります。
トランスポータブル・セットのデータファイルが、元の名前で/disk1/transportdest
という場所に格納されます。TRANSPORT
TABLESPACE
では、トランスポータブル表領域セットのデータファイルは、宛先データベースのエンディアン形式に自動的には変換されません。必要に応じて、トランスポータブル・セットを作成した後にRMANのCONVERT
コマンドを使用して、データファイルを宛先データベースのエンディアン形式に変換します。
トランスポータブル・セットのデータ・ポンプ・エクスポート・ダンプ・ファイルの名前はdmpfile.dmp
、エクスポート・ログの名前はexplog.log
、サンプル・インポート・スクリプトの名前はimpscrpt.sql
になります。
すべてのファイルは、/disk1/transportdest
内に作成されます。表領域の格納場所にエクスポート・ダンプ・ファイルの名前と同じ名前のファイルがすでに存在する場合は、TRANSPORT
TABLESPACE
でデータ・ポンプ・エクスポートをコールすると失敗します。前のTRANSPORT
TABLESPACE
操作を繰り返す場合には、以前の出力ファイル(エクスポート・ダンプ・ファイルを含む)を削除してください。
補助セット・ファイルが/disk1/auxdest
から削除されます。
必要に応じて、サンプル・インポート・スクリプトを編集します。
サンプル・インポート・スクリプトでは、表領域を宛先データベースにインポートするために使用するファイルは、TRANSPORT
TABLESPACE
で作成された場所と同じ場所に格納されていると想定されます。組込み前にファイルがディスク内の新しい場所に移動している場合、スクリプトを使用してトランスポートした表領域を組み込む前に、ファイルの新しい場所を使用してサンプル・スクリプトを更新する必要があります。
表領域のトランスポート手順(『Oracle Database管理者ガイド』を参照)に戻ります。
RMANのTRANSPORT
TABLESPACE
コマンドが失敗すると、トラブルシューティングのために、失敗した補助インスタンスのファイルがその補助インスタンスの宛先にそのまま残ります。
SET NEWNAME
、CONFIGURE AUXNAME
およびDB_FILE_NAME_CONVERT
設定を使用したため、補助セット内またはトランスポータブル表領域セット内の複数のファイルに同じ名前が付けられた場合は、TRANSPORT
TABLESPACE
コマンドの実行中にエラーがレポートされます。この問題を解決するには、これらのパラメータに異なる値を使用して、重複するファイル名が作成されないようにします。ネーミング方法については、「補助ファイルの場所の指定」を参照してください。
この項の内容は、次のとおりです。
TRANSPORT
TABLESPACE
コマンドを使用すると、目標時点またはSCNを指定できます。表領域のトランスポート操作中、RMANは、目標時点より前のバックアップを使用して補助インスタンスで表領域をリストアし、補助データベースでPoint-in-Timeリカバリを実行して指定の目標時点にリカバリします。このPoint-in-Timeリカバリに必要なバックアップおよびアーカイブREDOログが使用可能である必要があります。
例26-3に示すように、(現行のインカネーションまたはその祖先内の)SCNを使用して目標時点を指定できます。
例26-3 終了SCNの指定
TRANSPORT TABLESPACE tbs_2 TABLESPACE DESTINATION '/disk1/transportdest' AUXILIARY DESTINATION '/disk1/auxdest' UNTIL SCN 11379;
例26-4に示すように、リストア・ポイントを指定することもできます。
例26-4 終了リストア・ポイントの指定
TRANSPORT TABLESPACE tbs_2 TABLESPACE DESTINATION '/disk1/transportdest' AUXILIARY DESTINATION '/disk1/auxdest' TO RESTORE POINT 'before_upgrade';
例26-5に示すように、終了時刻を指定することもできます。
トランスポータブル・セットのデータ・ポンプ・エクスポート・ダンプ・ファイル、ターゲット・データベースで使用するサンプル・インポート・スクリプト、データ・ポンプ・エクスポートで生成されるログ・ファイル、およびこれらのファイルの書込み先となるディレクトリの名前は変更できます。
デフォルトでは、これらのファイルは、表領域の格納場所に格納され、次のような名前になります。
データ・ポンプ・エクスポート・ダンプ・ファイルは、dmpfile.dmp
という名前になります。
エクスポート・ログ・ファイルは、explog.log
という名前になります。
サンプル・インポート・スクリプトは、impscrpt.sql
という名前になります。
TRANSPORT TABLESPACE
コマンドのDATAPUMP
DIRECTORY
句を使用してデータベース・ディレクトリ・オブジェクトの名前で渡すことによって、ダンプ・ファイルとエクスポート・ログを異なるディレクトリに格納できます。DATAPUMP
DIRECTORY
句で使用するデータベース・ディレクトリ・オブジェクトは、実際のファイル・システム・ディレクトリのディレクトリ・パスではありません。渡される値は、データ・ポンプ・エクスポートのDIRECTORY
コマンドライン引数に対応しています。データ・ポンプ・エクスポートでのディレクトリ・オブジェクトの使用方法の詳細は、『Oracle Databaseユーティリティ』を参照してください。
これらのファイルの名前は、TRANSPORT
TABLESPACE
のDUMP
FILE
、EXPORT
LOG
、およびIMPORT
SCRIPT
句を使用して変更できます。ファイル名には、ディレクトリ名を使用した完全なファイル・パスを含めることができません。DUMP
FILE
またはEXPORT
LOG
というファイル名によってファイル・パスを指定した場合、TRANSPORT
TABLESPACE
でエクスポート・ダンプ・ファイルを生成しようとすると失敗します。DATAPUMP
DIRECTORY
句を使用して、データ・ポンプ・エクスポートの出力場所を識別するデータベース・ディレクトリ・オブジェクトを指定します。
次の例では、DATAPUMP
DIRECTORY
、DUMP
FILE
、EXPORT
LOG
およびIMPORT
SCRIPT
というファイル名を指定したTRANSPORT
TABLESPACE
を使用します。次のように入力して、データ・ポンプ・エクスポートで使用するためにデータベース・ディレクトリ・オブジェクトを作成するとします。
CREATE OR REPLACE DIRECTORY mypumpdir as '/datapumpdest';
例26-6に、ファイルの出力場所を指定するオプションの引数を使用したTRANSPORT
TABLESPACE
コマンドを示します。
例26-6 ファイルの出力場所の指定
TRANSPORT TABLESPACE tbs_2 TABLESPACE DESTINATION '/transportdest' AUXILIARY DESTINATION '/auxdest' DATAPUMP DIRECTORY mypumpdir DUMP FILE 'mydumpfile.dmp' IMPORT SCRIPT 'myimportscript.sql' EXPORT LOG 'myexportlog.log';
正常に実行されると、RMANは、補助の宛先をクリーンアップし、DATAPUMP
DIRECTORY
(/datapumpdest/mydumpfile.dmp
および/datapumpdest/myexportlog.log
)によって参照されるディレクトリにデータ・ポンプ・エクスポート・ダンプ・ファイルおよびエクスポート・ログを作成し、トランスポータブル・セットのデータファイルを/transportdest
に格納します。
いくつかの規則が、トランスポート実行中に作成される補助インスタンス・ファイルの場所に影響します。
補助ファイルの場所を指定する方法にかかわらず、目標時点でこの転送操作に使用するのに適したデータファイル・コピーがいずれかの補助ファイルにすでに含まれるとRMANが判断した場合、データファイルをリストアするかわりに、そのデータファイル・コピーが使用されます。
存在するデータファイル・コピーのうち、要求された時点よりも新しいため、またはターゲット・データベースの一部として認識されていないためにこのトランスポート操作に適さないものは、データファイルのリストア時に上書きされます。
最も簡単な方法としては、TRANSPORT TABLESPACE
コマンドのAUXILIARY
DESTINATION
句を使用して、RMANで自動的にすべてのファイルの場所を管理する方法があげられます。補助インスタンスの一部またはすべてのファイルを再配置するために、ファイルの場所を指定する次のオプションを優先順位の高い順に示します。
SET NEWNAME FOR DATAFILES
SET NEWNAME FOR TABLESPACE
SET NEWNAME FOR DATABASE
「補助データファイルに対するSET NEWNAMEの使用」を参照してください。
CONFIGURE AUXNAME
「補助データファイルに対するCONFIGURE AUXNAMEの使用」の説明に従ってこのコマンドを使用して、データファイルの名前を指定することができます。
TRANSPORT TABLESPACE
コマンドのAUXILIARY DESTINATION
句
「AUXILIARY DESTINATIONを使用した補助ファイルの場所の指定」の説明に従ってこのオプションを使用して、補助ファイルの場所を指定できます。
LOG_FILE_NAME_CONVERT
およびDB_FILE_NAME_CONVERT
(初期化パラメータ・ファイル内)
「初期化パラメータを使用した補助ファイル名の指定」の説明に従ってこれらの初期化パラメータを使用して、補助ファイルの場所を指定できます。
これらのうち複数のオプションを使用する場合は、ファイルに適用されるリスト内の最初のオプションによってファイル名が決定されます。
RUN
ブロック内で次のSET
NEWNAME
コマンドを使用すると、TRANSPORT
TABLESPACE
コマンドで使用するファイル名を指定できます。
SET NEWNAME FOR DATAFILE
SET NEWNAME FOR DATABASE
SET NEWNAME FOR TABLESPACE
例26-7
に示すSET
NEWNAME FOR DATAFILEコマンドを使用すると、補助インスタンスのデータファイルは/disk1/auxdest
ではなく、指定した場所にリストアされます。
例26-7 SET NEWNAME FOR DATAFILEを使用した補助データファイル名の指定
RUN { SET NEWNAME FOR DATAFILE '/oracle/dbs/tbs_12.f' TO '/bigdrive/auxdest/tbs_12.f'; SET NEWNAME FOR DATAFILE '/oracle/dbs/tbs_11.f' TO '/bigdrive/auxdest/tbs_11.f'; TRANSPORT TABLESPACE tbs_2 TABLESPACE DESTINATION '/disk1/transportdest' AUXILIARY DESTINATION '/disk1/auxdest'; }
SET
NEWNAME
は、1回のみの操作に最適です。特定の表領域セット用に、定期的にバックアップからトランスポータブル表領域を作成する予定がある場合、補助インスタンスのデータファイルの場所に永続的な設定を行うために、SET
NEWNAME
のかわりにCONFIGURE
AUXNAME
を使用することを検討してください。
CONFIGURE
AUXNAME
コマンドを使用して、トランスポータブル表領域セットまたは補助セットのデータファイル用の永続的な場所を指定できます。RMANは、リカバリの前に、CONFIGURE
AUXNAME
コマンドが使用されている各データファイルを指定された場所にリストアします。RMANは、操作が失敗しないかぎり、操作の完了時に補助セットのデータファイルを削除します。
CONFIGURE AUXNAME
コマンドとTRANSPORT ... AUXILIARY DESTINATION
コマンドの間の関係を表す例を示します。表領域tbs_11
をトランスポートするとします。表領域tbs_12
は、補助セットの一部であり、データファイルtbs_12.f
を含んでいます。次の手順を実行します。
CONFIGURE
AUXNAME
文を使用して、補助セットのデータファイル/oracle/dbs/tbs_12.f
に対してデフォルト以外の永続的な場所を設定します。
たとえば、次のコマンドを入力します。
CONFIGURE AUXNAME FOR '/oracle/dbs/tbs_12.f' TO '/disk1/auxdest/tbs_12.f';
AUXILIARY DESTINATION
パラメータを指定してTRANSPORT
TABLESPACE
コマンドを実行します。
たとえば、次のコマンドを入力します。
TRANSPORT TABLESPACE tbs_11 AUXILIARY DESTINATION '/myauxdest';
前述の例で、RMANは、データファイル/oracle/dbs/tbs_12.f
の補助セットのコピーを、AUXILIARY
DESTINATION
で指定された場所ではなく/disk1/auxdest/tbs_12.f
に格納します。CONFIGURE AUXNAME
設定の優先順位が、AUXILIARY DESTINATION
の優先順位より高いためです。
注意: 『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・リファレンス』 で説明するように、SHOW AUXNAME コマンドを実行することによって、現行のCONFIGURE AUXNAME設定を表示できます。 |
AUXILIARY
DESTINATION
引数をTRANSPORT
TABLESPACE
とともに使用する場合、SET NEWNAME
またはCONFIGURE AUXNAME
コマンドを使用して別の場所に移動されていない補助セット・ファイルは、TRANSPORT
TABLESPACE
操作の間に補助の宛先に格納されます。
AUXILIARY
DESTINATION
を使用しない場合は、LOG_FILE_NAME_CONVERT
を使用して、補助インスタンスのオンラインREDOログ・ファイルの場所を指定する必要があります。SET
NEWNAME
またはCONFIGURE
AUXNAME
のいずれを使用しても、補助インスタンスのオンラインREDOログの場所に影響を与えることはできません。このため、AUXILIARY
DESTINATION
またはLOG_FILE_NAME_CONVERT
を使用しない場合、RMANにはオンラインREDOログを作成する場所に関する情報がありません。
補助インスタンスのパラメータ・ファイルでLOG_FILE_NAME_CONVERT
およびDB_FILE_NAME_CONVERT
初期化パラメータを使用すると、補助インスタンスのオンラインREDOログおよびその他のデータベース・ファイルの名前を指定できます。TRANSPORT
TABLESPACE
コマンドにAUXILIARY
DESTINATION
句を指定しない場合は、これらのパラメータによって、CONFIGURE AUXNAME
またはSET NEWNAME
コマンドが実行されなかったすべてのファイルの場所が決定されます。
元のファイルがOracle Managed Files(OMF)ファイルである場合、LOG_FILE_NAME_CONVERT
またはDB_FILE_NAME_CONVERT
を使用して、補助インスタンスのファイルに新しいOMFファイル名を生成することはできません。データベースによって、各OMF転送先で一意のファイル名が生成されるように管理されます。AUXILIARY
DESTINATION
句を使用して、オンラインREDOログ・ファイルの場所を制御する必要があります。AUXILIARY
DESTINATION
句、SET
NEWNAME
コマンド、CONFIGURE
AUXNAME
コマンドまたはDB_CREATE_FILE_DEST
初期化パラメータを使用して、OMFデータファイルの場所を指定する必要があります。
関連項目: LOG_FILE_NAME_CONVERTおよび DB_FILE_NAME_CONVERT初期化パラメータの詳細は、 『Oracle Databaseリファレンス』を参照してください。 |