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Oracle® Grid Infrastructureインストレーション・ガイド
11gリリース2 (11.2) for Microsoft Windows x64 (64-Bit)
B58876-07
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D Oracle Grid Infrastructure 11gリリース2へのアップグレード方法

この付録では、Oracle ClusterwareおよびOracle Automatic Storage Management (Oracle ASM)のアップグレードの実行方法について説明します。

Oracle Clusterwareのアップグレードでは、ローリング・アップグレードが可能です。ローリング・アップグレードでは、他のノードはアクティブなまま、ノードのサブセットを停止してアップグレードします。Oracle ASM 11gリリース2 (11.2)のアップグレードでは、ローリング・アップグレードが可能です。ノードのサブセットをアップグレードする場合は、アップグレードの対象として選択しなかった既存のクラスタ・ノードでソフトウェアのみのインストールが実行されます。

この付録の内容は次のとおりです。

D.1 Oracle ASMおよびOracle Grid Infrastructureのインストールおよびアップグレードについて

以前のリリースでは、Oracle ASMはOracle Databaseインストールの一部としてインストールされました。Oracle Database 11gリリース2 (11.2)では、Oracle ASMはOracle Grid Infrastructureソフトウェアのインストール時にインストールされます。Oracle ASMは、クラスタへのインストール時に、OracleホームをOracle Clusterware(Oracle RACやスタンドアロン・サーバーのOracle Restartなど)と共有します。Oracle ClusterwareとOracle ASMがインストールされるディレクトリは、Gridホームと呼ばれます。

既存のOracle ASMインスタンスがある場合は、Oracle Grid Infrastructureをインストールするとき、またはインストール後にOracle ASM Configuration Assistant(ASMCA)を使用してアップグレードできます。ただし、Oracle ASMをアップグレードするまで、多数のOracle ASM機能は無効です。また、Oracle ASMがアップグレードされるまで、Oracle ASMのOracle Clusterware管理は正しく機能しません。これは、Oracle Grid Infrastructureホームで実行されているときのみ、Oracle ClusterwareはOracle ASMを管理するためです。このことから、Oracle Clusterwareのアップグレードと同時にOracle ASMをアップグレードしない場合は、Oracle ASMを直後にアップグレードすることをお薦めします。

ASMCAを使用すると、Oracle ASMインスタンスにアウトオブプレース・アップグレードを実行できます。Graphic User Interface(GUI)を使用してASMCAを実行する以外に、非対話型(サイレント)モードでもASMCAを実行できます。

以前のリリースでは、Oracle DatabaseまたはOracle ASMをアップグレードするためにDatabase Upgrade Assistant(DBUA)を使用できました。Oracle Database 11gリリース2 (11.2)では、DBUAを使用してアップグレードできるのはOracle Databaseインスタンスのみです。個別にOracle ASMをアップグレードするには、ASMCAを使用します。


関連項目:

既存のOracle ASMインストールのアップグレードについては、『Oracle Databaseアップグレード・ガイド』および『Oracle Automatic Storage Management管理者ガイド』を参照してください。

D.2 Oracle ClusterwareおよびOracle ASMアップグレードの制限事項

Oracle ClusterwareおよびOracle ASMで構成されるOracle Grid Infrastructure環境へのアップグレードには、次の制限と変更点があることに注意してください。

D.2.1 既存のインストールの最小必須バージョンへのアップグレード

  • 既存のOracle ClusterwareインストールをOracle Grid Infrastructure 11gにアップグレードするには、現行のリリースが10.1.0.3、10.2.0.3、11.1.0.6または11.2以上である必要があります。

  • 既存のOracle ASMインストールをOracle Grid Infrastructure 11gリリース2 (11.2)にローリング・アップグレード方式でアップグレードするには、現行のリリースが11.1.0.6以上である必要があります。


    関連項目:

    My Oracle SupportのNote 785351.1「Oracle Upgrade Companion」

    https://support.oracle.com



関連項目:

『Oracle Databaseアップグレード・ガイド』

D.2.2 必要なパッチの適用

Oracle Grid Infrastructureリリース11.2.0.1をOracle Grid Infrastructureリリース11.2.0.2にアップグレードするには、まず、次のうち少なくとも1つを実行する必要があります。

  • Oracle Grid Infrastructureリリース11.2.0.1ホームにバグ9413827 (9978481)および9706490 (10047003)のパッチを適用します。

  • Oracle Grid Infrastructureの累積パッチの最新のバンドル(パッチ11バンドル以上)をインストールします。

D.2.3 その他の要件と制限

  • ローリング・アップグレード中にクラスタにノードを追加することはできません。

  • Oracle ClusterwareおよびOracle ASMのアップグレードは、常にアウトオブプレース・アップグレードで行われます。Oracle Grid Infrastructure 11gリリース2 (11.2)では、Oracle ClusterwareおよびOracle ASMのインプレース・アップグレードを既存のホームに対して実行することはできません。

  • Oracle Clusterware 11gリリース1以上では、Oracle Clusterware 10gソフトウェアを所有していた同じユーザーがOracle Clusterware 11gのアップグレードを実行する必要があります。Oracle Database 11gより前のリリースでは、すべてのOracleソフトウェアのインストールを単一のユーザー(通常はoracle)が所有していたか、またはOracle Databaseソフトウェアはoracleが所有し、Oracle Clusterwareソフトウェアは別のユーザー(通常はcrs)が所有していました。

D.2.4 アップグレード・プロセスへの変更点

  • 既存のOracle Clusterwareホームが共有ホームの場合、Oracle ClusterwareおよびOracle ASM 11gリリース2 (11.2)のクラスタ用Oracle Grid Infrastructureホームに、共有されていないホームを使用できます。

  • Oracle ASMとOracle Clusterwareの両方がOracle Grid Infrastructureホームで実行されます。

  • Oracle Clusterware 11gリリース2 (11.2)へのメジャー・バージョン・アップグレード中、Oracle Grid Infrastructure 11gリリース2 (11.2)のGridホームにあるソフトウェアは、アップグレードが完了するまで完全には機能しません。すべてのノードでアップグレードが完了するまで、11gリリース2 (11.2) Gridホームからのサーバー制御ユーティリティ(SRVCTL)のcrsctlや他のコマンドの実行はサポートされません。

    Oracle Grid Infrastructureのアップグレード中に旧バージョン(リリース10.xまたは11.1)のOracle Databaseを使用して既存のデータベースを管理するには、既存のデータベース・ホームでSRVCTLを使用します。

D.3 アウトオブプレースおよびローリング・アップグレードの理解

Oracle Clusterwareのアップグレードでは、ローリング・アップグレードが可能です。ローリング・アップグレードでは、他のノードはアクティブなまま、ノードのサブセットを停止してアップグレードします。Oracle ASM 11gリリース2 (11.2)のアップグレードでは、ローリング・アップグレードが可能です。ノードのサブセットをアップグレードする場合は、アップグレードの対象として選択しなかった既存のクラスタ・ノードでソフトウェアのみのインストールが実行されます。ローリング・アップグレードは、ソフトウェアの新バージョンへのアップグレード中、停止時間をなくし、可用性の継続を保証します。


注意:

Oracle Clusterware 11gリリース2より前のリリースとは対照的に、すべてのノードをアップグレード対象に選択したとしても、Oracle Universal Installer (OUI)によって常にローリング・アップグレードが実行されます。

アウトオブプレース・アップグレードでは、インストーラは新しいバージョンを別のOracle Clusterwareホームにインストールします。Oracle Clusterwareの新旧バージョンが各クラスタ・メンバー・ノードに存在することになりますが、アクティブになるバージョンは1つのみです。対照的に、インプレース・アップグレードでは、現行のOracle Clusterwareホームのソフトウェアが上書きされます。

アウトオブプレース・アップグレードを実行するには、各ノードで新しいOracle Grid Infrastructureホームを作成する必要があります。その後、あるノードでは元のOracle ClusterwareホームからOracle Clusterwareを実行し、別のノードでは新しいOracle Grid InfrastructureホームからOracle Clusterwareを実行するように、アウトオブプレース・ローリング・アップグレードを実行できます。

既存のOracle Clusterwareインストールがある場合は、アウトオブプレース・アップグレードを行うことにより、既存のクラスタをアップグレードします。Oracle Clusterware 11gリリース2のインプレース・アップグレードはサポートされていません。


関連項目:

ローリング・アップグレードの実行手順については、「Oracle Clusterwareのローリング・アップグレードの実行」を参照してください。

D.4 既存のOracle Clusterwareインストールをアップグレードするための準備

既存のOracle Clusterwareインストールがある場合は、アウトオブプレース・アップグレードを行うことにより、既存のクラスタをアップグレードします。インプレース・アップグレードは実行できません。次の項では、アップグレードを開始する前に実行する必要があるタスクについて説明します。

D.4.1 パッチおよびアップグレードに対するシステム準備状況の検証

Oracle ClusterwareまたはOracle ASMのパッチ更新を実行する場合は、パッチ・ソフトウェアをダウンロードした後、ソフトウェア・インストールにパッチを適用したり、アップグレードする前に、パッチに付属のパッチ・セット・リリース・ノートで、システムがオペレーティング・システムおよびハードウェアのシステム要件を満たすかどうかを確認します。

クラスタ検証ユーティリティ(CVU)を使用すると、パッチ適用またはアップグレードの準備として、システムをチェックできます。アップグレードを始める前にCVUを実行できますが、インストーラによって適切なCVUチェックが自動的に実行され、アップグレードを行う前に問題を修正するように求められます。

D.4.2 必要なシステム情報の収集

新しいホーム・ディレクトリにOracle Grid Infrastructureをインストールする場合は、次のような情報を把握しておく必要があります。

  • 現行のOracle ClusterwareインストールのOracleホームの場所。

    Oracle Clusterware 11gリリース2 (11.2)では、共有のOracle Clusterwareホームでアップグレードを実行できます。

  • 既存のOracle ClusterwareホームやGridホームの場所とは異なる、Oracle Grid Infrastructureホームの場所。

  • 単一クライアント・アクセス名(SCAN)アドレス

  • ローカル管理者ユーザー・アクセスか、または以前のOracle Clusterwareのインストールを実行したユーザーとしてのアクセス

D.4.3 必要最小限のOracle Clusterwareバージョンへのアップグレード

現行のOracle Clusterwareインストールが、そのリリースでサポートされている最小バージョン(10.1.0.3、10.2.0.3、11.1.0.6または11.2)以上で現在実行されていない場合、前提条件チェックで失敗が報告されます。アップグレードする前に、現行のOracle Clusterwareインストールを、そのリリースでサポートされている最小バージョン以上にアップグレードする必要があります。たとえば、Oracle Clusterware 10gリリース1のインストールをOracle Clusterware 11gリリース2 (11.2)にアップグレードする予定だが、現行のOracle Clusterwareインストールがバージョン10.1.0.2である場合は、アップグレードを始める前に、現行のOracle Clusterwareインストールをバージョン10.1.0.3以上にアップグレードする必要があります。

D.4.4 Oracleソフトウェアによって使用されている環境変数の設定の削除

システムに既存のインストール環境があり、同じユーザー・アカウントを使用して今回のインストールを行う場合は、次の環境変数と、Oracleソフトウェア・ホームに接続されているOracleインストール・ユーザーに対して設定されたその他の環境変数の設定を削除します。

  • ORACLE_HOME

  • ORACLE_SID

  • ORA_NLS10

  • TNS_ADMIN

  • ORA_CRS_HOME

環境変数にORA_CRS_HOMEを設定した場合は、Oracleサポートの指示に従ってから、インストールまたはアップグレードを開始する前にその設定を削除します。Oracleサポートから明示的に指示がないかぎり、ORA_CRS_HOMEを環境変数として使用しないでください

すべてのセッションの環境変数設定を削除するには、「スタート」メニューから、「マイ コンピュータ」を右クリックして、「プロパティ」を選択します。「システムのプロパティ」ウィンドウで、「詳細設定」を選択し、「環境変数」ボタンをクリックします。

また、インストール所有者のユーザー・プロファイルがこれらの環境変数を設定していないことを確認します。

D.5 CVUを使用したパッチおよびアップグレードに対するシステム準備状況の検証

Oracle ClusterwareまたはOracle ASMのパッチ更新を実行する場合は、パッチ・ソフトウェアをダウンロードした後、ソフトウェア・インストールにパッチを適用したり、アップグレードする前に、パッチに付属のパッチ・セット・リリース・ノートで、システムがオペレーティング・システムおよびハードウェアのシステム要件を満たすかどうかを確認します。

runcluvfyコマンドがあるアップグレードのステージング領域に移動し、runcluvfy stage -pre crsinst -upgradeコマンドを実行してアップグレードに対するOracle Clusterwareインストールの準備状況を確認します。-pre crsinst -upgradeフラグを指定してruncluvfyを実行すると、既存のクラスタウェア・インストールのアップグレードに対してクラスタが適切な状態にあるかどうかを確認するためのシステム・チェックが実行されます。

このコマンドでは、次の構文を使用します。変数はイタリックで示しています。

runcluvfy stage -pre crsinst -upgrade [-n node_list] [-rolling] -src_crshome
src_Gridhome -dest_crshome dest_Gridhome -dest_version dest_version
[-fixup[-fixupdir fixupdirpath]] [-verbose]

このコマンドで使用されるオプションは次のとおりです。

オプション 説明
-n nodelist -nフラグはクラスタ・メンバー・ノードを示し、nodelistはアップグレード前の検証を実行する非ドメイン修飾ノード名のカンマ区切りのリストです。検証コマンドに-nフラグを追加しない場合は、クラスタ内のすべてのノードが検証されます。
-rolling このフラグを使用すると、ローリング・アップグレードに対する準備状況が検証されます。
-src_crshome src_Gridhome このフラグは、アップグレードするソースOracle ClusterwareまたはGridホームの場所を指定します(src_Gridhomeはアップグレードするホームへのパス)。
-dest_crshome dest_Gridhome このフラグは、アップグレードGridホームの場所を指定します(dest_GridhomeはGridホームへのパス)。
-dest_version dest_version dest_versionフラグは、パッチ・セットを含む、アップグレードのリリース番号を指定します。リリース番号には、リリースをプラットフォーム固有のパッチのレベルに指定する5つの数字を含める必要があります。たとえば、11.2.0.2.0などです。
-fixup [-fixupdir fixupdirpath] (LinuxおよびUNIX) -fixupフラグは、クラスタがアップグレードできる状態であることを確認するのに実行する必要がある手順の指示を生成することを指定します。デフォルトの場所は、CVUの作業ディレクトリです。別のディレクトリに修正指示を配置する場合は、-fixupdirフラグを追加して修正ディレクトリへのパスを指定します。
-verbose -verboseフラグを使用すると、個々のチェックの詳細な出力が生成されます。

クラスタ検証ユーティリティ(CVU)を使用すると、パッチ適用またはアップグレードの準備として、システムをチェックできます。アップグレードを始める前にCVUを実行できますが、インストーラによって適切なCVUチェックが自動的に実行され、アップグレードを行う前に問題を修正するように求められます。

例D-1 CVUを使用したグリッド・インフラストラクチャのシステム・アップグレードの準備状況の検証

次のコマンドを実行すると、Oracle Clusterwareのインストールに必要な権限が、ノードnode1およびnode2で構成されているかどうかを検証できます。

C:\stage> runcluvfy.bat stage -pre crsinst -upgrade -n node1,node2 -rolling 
-src_crshome C:\app\11.2.0\grid -dest_crshome C:\app\11.2.0.3\grid
 -dest_version 11.2.0.3.0 -fixup -fixupdirpath C:\user\grid\fixup -verbose

関連項目:

『Oracle Databaseアップグレード・ガイド』

D.6 アップグレード前のOracleソフトウェアのバックアップ

Oracleソフトウェアを変更する前に、Oracleソフトウェアとデータベースのバックアップを作成することをお薦めします。

D.7 Oracle Clusterwareのローリング・アップグレードの実行

Oracle Clusterwareを以前のリリースからOracle Clusterware 11gリリース2にアップグレードするには、次の手順を使用します。また、Oracle Clusterwareのアップグレード中に、Oracle ASMをアップグレードすることもできます。

  1. クラスタ内のノードで実行されているOracle ASMを使用する、非クラスタ(シングル・インスタンス)のOracle Databaseが存在する場合は、アップグレードを開始する前に、それらを停止する必要があります。それらのデータベースに関連付けられているリスナーを停止する必要はありません。


    注意:

    Oracle Clusterwareのアップグレード中、Oracle Real Application Clusters(Oracle RAC)インスタンスは、実行したままにしておくことをお薦めします。アップグレード・プロセス中、アップグレードされているノードのデータベース・インスタンスは自動的に停止および起動されます。

  2. 各ノードでEnterprise Manager Database Controlを停止します。次のコマンドを実行してDatabase Controlを停止します。

    C:\> emctl stop dbconsole
    
  3. インストーラを起動し、インストールされている既存のOracle ClusterwareおよびOracle ASMをアップグレードするオプションを選択します。

  4. ノード選択ページで、すべてのノードを選択します。


    注意:

    Oracle Clusterware 11gリリース2より前のリリースとは対照的に、すべてのノードをアップグレード対象に選択したとしても、アップグレードはすべてローリング・アップグレードになります。Oracle Clusterware 11gリリース11.2.0.1からリリース11.2.0.2にアップグレードしている場合は、デフォルトで、すべてのノードが選択されます。ノードを選択したり、選択解除することはできません。

  5. 指示どおりに、インストール・オプションを選択します。

  6. スクリプトを実行するように求められたら、指示どおりに実行します。

  7. 旧バージョンのOracle ASMがインストールされている場合、Oracle Clusterwareのアップグレードが完了したら、インストーラはASMCAを起動して、Oracle ASMをリリース11.2にアップグレードします。Oracle ASMをこのときにアップグレードするか、または後でアップグレードできます。

    Oracle Clusterwareをアップグレードするのと同時に、Oracle ASMもアップグレードすることをお薦めします。Oracle ASMがアップグレードされるまで、Oracle ASMを使用するOracle Databaseは作成できません。Oracle ASMがアップグレードされるまで、Oracle Grid Infrastructure 11gリリース2 (11.2)ホームにあるOracle ASM管理ツール(SRVCTLなど)は動作しません。


    注意:

    アップグレード後に、Oracle Cluster Registry(OCR)のバックアップ場所を前のリリースのOracle Clusterwareホーム(CRSホーム)に手動で設定していた場合は、OCRのバックアップ場所をOracle Grid Infrastructureホーム(Gridホーム)に変更する必要があります。OCRのバックアップ場所を手動で設定しなかった場合は、この問題は関係がありません。

    Oracle Clusterwareのアップグレードはアウトオブプレース・アップグレードであるため、以前のリリースのOracle ClusterwareのCRSホームをOracle Clusterware 11gリリース2のOCRバックアップの場所にすることはできません。以前のOracle Clusterwareホーム内のバックアップは削除される可能性があります。


D.8 Oracle ASMのローリング・アップグレードの実行

Oracle Clusterware 11gリリース2 (11.2)のアップグレードが完了した後、Oracle Clusterwareのアップグレード時にOracle ASMのアップグレードをしなかった場合は、ASMCAを使用して、ローリング・アップグレードを別途行うことができます。

ASMCAを使用してOracle ASMのアップグレードを別途行うことはできますが、Oracle Clusterwareのアップグレード後すぐに行う必要があります。これは、Oracle ASMがアップグレードされるまでSRVCTLなどのOracle ASM管理ツールが機能しないためです。


注意:

前のバージョンのOracle ASMが11.1.0.6または11.1.0.7の場合のみ、ASMCAによってローリング・アップグレードが行われます。そうでない場合、ASMCAによって通常のアップグレードが行われ、その間、ASMCAによって、クラスタのすべてのノードにおいて、すべてのOracle ASMインスタンスが停止され、新しいOracle Grid Infrastructureホームから各ノードのOracle ASMインスタンスが起動されます。

D.8.1 Oracle ASMの個別のアップグレードについて

Oracle ASMのローリング・アップグレードを実行する場合は、次の点に注意してください。

  • Oracle Clusterwareのアクティブなバージョンが、11gリリース2 (11.2)である必要があります。Gridホームから次のコマンドを入力して、アクティブなバージョンを確認します。

    C:\..\bin> crsctl query crs activeversion
    
  • シングル・インスタンスのOracle ASM環境を、クラスタ化されたOracle ASM環境へアップグレードできます。ただし、シングル・インスタンスの既存のOracle ASM環境をアップグレードできるのは、そのOracle ASM環境があるノードからインストールを実行する場合のみです。リモート・ノードにあるシングル・インスタンスのOracle ASM環境をアップグレードすることはできません。

  • アップグレードを開始する前に、既存のOracle ASM環境で行われているリバランス操作が完了していることを確認する必要があります。

  • アップグレード中、Oracle ASMインスタンスの状態をアップグレード状態に変更することになります。このアップグレード状態ではOracle ASM操作が制限されるため、アップグレードは開始してすぐに完了する必要があります。Oracle ASMインスタンスがアップグレード状態にあるときに可能な操作は、次のとおりです。

    • ディスク・グループのマウントとマウント解除

    • データベース・ファイルのオープン、クローズ、サイズ変更または削除

    • インスタンスのリカバリ

    • 固定ビューおよび固定パッケージの問合せ(固定ビューの問合せと、DBMS_DISKGROUPなどの固定パッケージを使用した匿名PL/SQLブロックの実行は可能です)

D.8.2 ASMCAを使用したOracle ASMのアップグレード

Oracle ASMをアップグレードするには、次の手順を実行します。

  1. アップグレードを開始しようとしているノードで、環境変数ASMCA_ROLLING_UPGRADEの値をtrueにして、Oracle ASMインスタンスをアップグレード状態に設定します。次に例を示します。

    C:\> set ASMCA_ROLLING_UPGRADE=true
    
  2. Oracle Grid Infrastructure 11 gリリース2 (11.2)ホームから、次の例に示すように、ASMCAを起動します(C:\app\11.2.0\gridはGridホーム)。

    C:\> cd app\11.2.0\grid\bin
    C:\..\bin> asmca.bat
    
  3. 「アップグレード」を選択します。

    ASMCAにより、クラスタ内にあるすべてのノードのOracle ASMが連続してアップグレードされます。

  4. すべてのノードでアップグレードが完了したら、環境変数ASMCA_ROLLING_UPGRADEの設定を解除します。

    C:\> set ASMCA_ROLLING_UPGRADE=
    

関連項目:

Oracle ASMのアップグレード計画の準備、およびOracle ASMアップグレードの開始、実行、停止の詳細は、『Oracle Databaseアップグレード・ガイド』および『Oracle Automatic Storage Management管理者ガイド』を参照してください。

D.9 Oracle Enterprise Managerのターゲット・パラメータの更新

Oracle Clusterware 11gリリース2 (11.2)はアウトオブプレース・アップグレードであるため、アップグレードされたソフトウェアには、Gridホーム用に新しい場所があります。一部のOracle Enterprise Managerパラメータ・ファイルでは、Oracle Clusterwareホームのパスを変更する必要があります。パラメータを変更しないと、Oracle Enterprise Manager Database ControlまたはGrid Controlで、クラスタ・ターゲットの不正などのエラーが発生します。

この問題を解決するには、次の手順を実行します。

  1. Database ControlまたはGrid Controlにログインします。

  2. 「クラスタ」タブを選択します。

  3. 「監視構成」をクリックします。

  4. 「Oracleホーム」の値をGridホームの新しいパスで更新します。

D.10 アップグレード後のクラスタ状態モニターのリポジトリ・サイズの確認

IPD/OSを使用する以前のリリースからOracle Grid Infrastructureリリース2 (11.2.0.3)にアップグレードする場合は、クラスタ状態モニターのリポジトリ・サイズ(CHMリポジトリ)を確認する必要があります。CHMリポジトリの要件を確認し、より大規模なCHMリポジトリを保持する場合はリポジトリ・サイズを大きくすることをお薦めします。


注意:

以前のIPD/OSリポジトリは、Oracle Grid Infrastructureのインストール時に削除されます。

デフォルトでは、リリース11.2.0.3以上のCHMリポジトリのサイズは、最小で1GBまたは3600秒(1時間)です。

CHMリポジトリを大きくするには、次のコマンド構文を使用します。RETENTION_TIMEはCHMリポジトリのサイズ(秒数)です。

oclumon manage -repos resize RETENTION_TIME

RETENTION_TIMEは、3600(1時間)より大きく、259200(3日)より小さい値である必要があります。CHMリポジトリ・サイズを大きくする場合は、クラスタのノードごとに選択するリポジトリ・サイズに使用できるローカル領域があることを確認する必要があります。十分な領域がない場合は、リポジトリを共有ストレージに移動できます。

たとえば、リポジトリ・サイズを4時間に設定するとします。

C:\> oclumon manage -repos resize 14400

D.11 アップグレードの問題のトラブルシューティング

この項では、アップグレード・プロセス中に発生する一般的な問題について説明します。

OUI-35078: ノード''nodename''のenvを更新する際にエラーが発生しました。
原因: 前のリリースのプロセスがアップグレード前に完全に停止していません。通常、dbconsoleプロセスが実行されています。
処置: コマンドemctl stop dbconsoleを実行します。以前のリリース・ソフトウェアのOracleプロセスが停止されていることを確認します。

D.12 アップグレード後のOracle Clusterwareのダウングレード

Oracle Clusterware 11gリリース2 (11.2)へのアップグレードが成功または失敗した後で、Oracle Clusterwareを以前のバージョンにリストアすることができます。

Oracle Clusterware 11gリリース2 (11.2)を以前のバージョンのOracle Clusterwareにリストアするには、次の手順を実行します。次の手順にあるローカル・ノードは、rootupgradeスクリプトが実行された最初のノードです。リモート・ノードは、アップグレードされたその他のすべてのノードです。

  1. ダウングレード先のリリース用のダウングレード手順を使用します。

    Oracle Clusterware 11gリリース1 (11.1)またはOracle Clusterware 10gリリース2 (10.2)へのダウングレード:

    現在、サポートされているダウングレード手順はありません。かわりに、ターゲット・リリース用のOracle Clusterwareを再インストールした後、必要なパッチをすべて再適用します。

    リリース11.2.0.1、11.2.0.2または11.2.0.3へのダウングレード:

    コマンド構文Grid_home\perl\bin\perl rootcrs.pl -downgrade -oldcrshome oldGridHomePath -version oldGridversionを使用します(oldGridhomepathは前のリリースのOracle Grid Infrastructureホームへのパス、oldGridversionはダウングレードする先のリリース)。次に例を示します。

    C:\app\11.2.0.3\grid\perl\bin\perl> rootcrs.pl -downgrade -oldcrshome
     C:\app\grid -version 11.2.0.1.0
    

    注意:

    Oracle Clusterwareのバージョン・フォーマットが正しく指定されているようにします。例: 11.1.0.1.0。

    11gリリース2 (11.2)の部分的なインストールまたは失敗したインストールを停止し、Oracle Clusterwareの以前のリリースをリストアするには、このコマンドで-forceフラグを使用します。

  2. rootcrs.pl -downgradeスクリプトをすべてのリモート・ノードで実行し終わったら、ローカル・ノードでコマンドGrid_home\perl\bin\perl\rootcrs.pl -downgrade -lastnode -oldcrshome oldGridhome -version oldGridversion [-force]を使用します(oldGridhomeは前のOracle Clusterwareインストールのホーム、oldGridversionは前のOracle Clusterwareインストールのリリース番号)。

    次に例を示します。

    C:\app\11.2.0.3\grid\perl\bin\perl> rootcrs.pl -downgrade -lastnode 
    -oldcrshome C:\app\grid -version 11.2.0.1.0
    

    このスクリプトではOCRがダウングレードされます。11gリリース2 (11.2)の部分的なインストールまたは失敗したインストールを停止し、Oracle Clusterwareの以前のリリースをリストアするには、このコマンドで-forceフラグを使用します。

  3. rootcrs.pl -downgradeコマンドの要求に従ってgridconfig.batスクリプトを実行します。

  4. グリッド・インフラストラクチャのインストール所有者としてログインし、次のコマンドを実行します(C:\app\11.2.0\gridは新しいGridホーム(11.2)の場所)。

    setup.exe -nowait -waitforcompletion -ignoreSysPrereqs
     -updateNodeList -silent CRS=false ORACLE_HOME=C:\app\11.2.0\grid
    

    Oracle Gridホームが共有ホームの場合は、上記のコマンドの最後に-cfsを追加します。

  5. Oracle Grid Infrastructureの新しいバージョンが11.2.0.2以上の場合

    1. Oracle Grid Infrastructureリリース2 (11.2.0.4)を以前のリリースの11.2にダウングレードする場合、すべてのクラスタ・ノードでアップグレード・スクリプトの実行を完了し、次のコマンドを11.2.0.4 Gridホームから実行します。

      acfsroot uninstall
      

      コマンドが完了したら、以前のリリースのGridホームから、管理者ユーザーとして次のコマンドを実行します。

      acfsroot install
      
    2. 各ノードで、crsctl start crsコマンドを使用して前のリリースのOracle ClusterwareホームからOracle Clusterwareを起動します。たとえば、以前のリリースのホームがC:\app\gridである場合は、各ノードで次のコマンドを使用します。

      C:\app\grid\bin> crsctl start crs
      
  6. rootcrs.pl -downgradeコマンドの要求に従って、以前のリリースのGridホームから、クラスタの各メンバー・ノードに順番にgridconfig.batスクリプトを実行します。この作業が終了したら、ダウングレードは完了です。

    前のリリースのOracle Clusterwareインストールのホームからgridconfig.batを実行することにより、Oracle Clusterwareスタックが再起動され、以前に古いバージョンでOracle Clusterwareに登録されていたすべてのリソースが起動され、そして前のリリースのOracle Clusterwareスタックを実行するように古い初期化スクリプトが構成されます。

  7. グリッド・インフラストラクチャのインストール所有者として、次のコマンドを実行します(たとえば、C:\app\gridは以前のOracle Clusterwareインストールのホーム・ディレクトリを表します)。

    setup.exe -nowait -waitforcompletion -ignoreSysPrereqs
     -updateNodeList -silent CRS=true ORACLE_HOME=C:\app\grid
    

    Oracle Clusterwareホームが共有ホームの場合は、上記のコマンドの最後に-cfsを追加します。