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Oracle® OLAP DMLリファレンス
11gリリース2 (11.2)
B61346-03
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DEPRDECLSW

DEPRDECLSWファンクションは、一連の資産の減価償却費を計算するファンクションです。DEPRDECLSWは、指定した資産の耐用年数に基づいて資産を定率法の変動で減価償却します(「DEPRDECLSWで使用される計算方法」を参照)。DEPRDECLSWでは、最初は定率法が使用され、時系列における次のいずれかの時点で定額法に切り替わります。

このバリエーションの定率法は、最も一般的に使用されている形式の減価償却の定率法です。

戻り値

DECIMAL。start-expのすべてのディメンションによってディメンション化されます。

構文

DEPRDECLSW(start-exp end-exp n [STATUS]

     [decline-factor [{FULL|HALF| portion-exp [switch-period [time-dimension]]]])

パラメータ

start-exp

資産の期首価額が格納された数式。start-exp式は、時間ディメンションによってディメンション化する必要があります。start-expには、時間ディメンションの値ごとに、その期間に取得した資産の初期価額が格納されます。start-expには、時間ディメンションに加えて、非時間ディメンションもあります。

end-exp

資産の期末価額が格納された数式。end-exp式は、start-expと同じディメンションでディメンション化する必要があります。end-expには、時間ディメンションの値ごとに、その期間に取得した資産の最終(または残存)価額が格納されます。start-expのそれぞれの値には、これに対応するend-exp値が必要です。たとえば、1990年に取得した資産の残存価額が$200であった場合、1990年のend-expの値は$200になります。

n

資産の減価償却期間の期間数が格納されるINTEGER式。n式には、start-expの任意の非時間ディメンションを格納できますが、時間ディメンションは格納できません。

STATUS

DEPRDECLSWが減価償却費を計算する際に、現行のステータス・リスト(つまり現在ステータスにあり、現行のステータスの順序に並んでいるディメンション値のみ)を使用することを指定します。デフォルトでは、デフォルトのステータス・リストが使用されます。

decline-factor

減価償却費の計算に使用するために定率を指定する数式。decline-factor式には、start-expの任意の非時間ディメンションを格納できますが、時間ディメンションは格納できません。

係数が2の場合は、定率が2倍であることを示します。デフォルトは2です。

FULL

(デフォルト)ある期間の減価償却費全額を、資産の取得期間に計上することを指定します。一連の全資産に対する全額を計上します。この引数はオプションですが、この引数を指定するときは、先行するオプション引数も指定する必要があります。

HALF

ある期間の減価償却費の半額を、資産の取得期間に計上することを指定します。一連の全資産に対する半額を計上します。HALFは、ある期間の下半期に資産を取得した場合などに使用します。取得した期間に計上される減価償却費の一部としてHALFを指定すると、各期間にHALF係数が適用されます。各期間の全減価償却の半分は次の期間にロールされ、後半の減価償却は期間n + 1に実施されます。この引数はオプションですが、この引数を指定するときは、先行するオプション引数も指定する必要があります。

portion-exp

一定の資産については全額を計上し、それ以外の資産については半額を計上する場合は、start-expの任意の非時間ディメンションによってディメンション化されるportion-exp式を指定できます。portion-exp式は、FULLまたはHALFの値を指定したテキスト式にする必要があります。この引数はオプションですが、この引数を指定するときは、先行するオプション引数も指定する必要があります。

switch-period

計算を定額法に切り替える期間を示すINTEGER式。この引数はオプションですが、この引数を指定するときは、先行するオプション引数も指定する必要があります。

一般的な会計慣行では、残りの期間全体にわたる減価償却を定額法にした場合、同じ期間の減価償却を定率法にした場合より減価償却額が上回る最初の期間中に定額法に切り替えます。この動作は、switch-period引数を指定しないことで指定できます。

switch-period引数を指定しなかったとき、あるいはこの引数の値がNAまたは0のときは、残りの期間全体にわたる減価償却を定額法にした場合、同じ期間の減価償却を定率法にした場合より減価償却額が上回る最初の期間中に、計算方法が定率法から定額法に切り替わります。この場合、DEPRDECLSWファンクションの動作はDEPRDECLファンクションの動作と変わりません。

様々な資産に対して異なる切替え期間を指定する場合は、start-expの任意の非時間ディメンションでディメンション化される式を指定できます。

time-dimension

start-expおよびend-expがディメンション化される時間ディメンションの名前。時間ディメンションが、DAY、WEEK、MONTH、QUARTER、YEAR型のいずれかである場合、time-dimension引数はオプションです。この引数を指定するときは、先行するオプション引数も指定する必要があります。

使用上の注意

DEPRDECLSWで使用される計算方法

DEPRDECLSWでは、償却が全額は完了していない一連の全資産について、特定の期間の減価償却費が、その期間の減価償却費の合計として計算されます。ある資産の最初の減価償却期間とは、その資産を取得した期間を指します。

DEPRDECLSWでは、定率法による減価償却の計算対象となる期間ごとに、当期資産額にdecline-factorを乗算し、その結果を資産の有効期間の数で除算することによって減価償却費が計算されます。DEPRDECLSWが定額法に切り替わると、(前期からの)減価償却費が資産価額から減算され、得られた金額が資産の有効期間の残りの期間数で除算されます。ただし、特定の期間について減価償却費を計算した結果、当期資産額が期末価額を下回る場合、減価償却費は調整されます。この場合、減価償却費は当期資産額から期末価額を減算した値として計算されます。

DEPRDECLSWで使用されている定額法は、DEPRSLで使用されている従来の定額法とは異なります。減価償却の定率法では、減価償却の他の方法とは異なり、算出された減価償却費が減価償却可能な残りの金額を上回る期間まで、資産の残存価額が無視されます。DEPRDECLSWでは、定率法から定額法に切り替わった後でも、この方法で残存価額が無視されます。たとえば、資産の期首価額が16,000で、5期間後の残存価額が1,000であるとします。定率法を使用した期間(ここでは最初の3期間)を通じた減価償却費の合計は11,544です。残りの期間について定額法で計算する場合、残りの総額(16,000-11,544=3,456)が計算の基礎になり、総額から残存価額を減算した値(2,456)にはなりません。したがって、最後の2期間の減価償却費は1,728になりますが、最後の1期間については残存価額が差し引かれるため、728になります。

想定外の調整法

ある資産に対して指定した期末価額が比較的高い場合は、減価償却の有効期間として指定した期間よりも短い期間内に全額が償却される場合があります。この場合、減価償却の指定した有効期間全体にわたってこの減価償却費を適用するには、decline-factorを小さくします。

DEPRDECLSWとNA値

start-expの値がNAで、これに対応するend-expの値がNAでない場合は、エラーが発生します。同様に、end-expの値がNAで、これに対応するstart-expの値がNAでない場合もエラーが発生します。

start-expの値とこれに対応するend-expの値がどちらもNAの場合、DEPRDECLSWの動作はNASKIPオプションの影響を受けます。NASKIPの設定がYES(デフォルト)の場合、DEPRDECLSWでは、減価償却費の計算時に値が0とみなされます。NASKIPの設定がNOの場合は、DEPRDECLSWからの戻り値は、影響するすべての期間に対してNAになります。

例7-68 単一期間に取得した資産の減価償却費の計算

この例では、DEPRDECLSWを使用して、単一の期間に取得した資産の減価償却費を計算する方法を示します。切替え期間を指定しなかった場合のDEPRDECLSWの動作も示します。

次の文を実行すると、assetsおよびsalvageという2つの変数が作成されます。

DEFINE assets DECIMAL <year>
DEFINE salvage DECIMAL <year>

変数assetsおよびsalvageに対して、次の値を代入します。

YEAR        ASSETS     SALVAGE
------- ---------- -----------
Yr95      1,000.00      100.00
Yr96          0.00        0.00
Yr97          0.00        0.00
Yr98          0.00        0.00
Yr99          0.00        0.00
Yr00          0.00        0.00

変数assetsには、1995年に取得した資産の期首価額が格納されています。salvageには、1995年に取得した資産の期末価額が格納されています。

次の文を実行すると、資産額と残存価額がレポートされ、DEPRDECLSWを使用して各年の減価償却費が計算されますが、ここでは、資産の有効期間として5年、償却係数として2(2倍の定率)が指定されています。この文では、switch-period引数は指定されていません。このため、DEPRDECLSWではswitch-periodのデフォルトが使用され、この結果、残りの期間全体にわたる減価償却を定額法にした場合、同じ期間の減価償却を定率法にした場合より減価償却額が上回る最初の期間中に、計算方法が定率法から定額法に切り替わります。

REPORT assets salvage W 12 HEADING 'Depreciation' -
    DEPRDECLSW (assets salvage 5 2 FULL)

この文によって生成されるレポートは、次のとおりです。

YEAR        ASSETS     SALVAGE   Depreciation
------- ---------- ----------- --------------
Yr95      1,000.00      100.00      400.00
Yr96          0.00        0.00      240.00
Yr97          0.00        0.00      144.00
Yr98          0.00        0.00      108.00
Yr99          0.00        0.00        8.00
Yr00          0.00        0.00        0.00

例7-69 切替え期間の指定

あるいは、切替えが実行される期間を指定することもできます。

3年目(Yr97)に減価償却を定率法から定額法に切り替えるには、次の文に示すように、切替え期間として3を指定します。

REPORT assets salvage W 12 HEADING 'DEPRECIATION' -
    DEPRDECLSW (assets salvage 5 2 FULL 3 year)

この文によって生成されるレポートは、次のとおりです。

YEAR        ASSETS     SALVAGE   Depreciation
-------- ---------- ----------- --------------
Yr95      1,000.00      100.00      400.00
Yr96          0.00        0.00      240.00
Yr97          0.00        0.00      120.00
Yr98          0.00        0.00      120.00
Yr99          0.00        0.00       20.00
Yr00          0.00        0.00        0.00

例7-70 複数の期間に取得した資産の減価償却費の計算

DEPRDECLSWを使用すると、一連の資産の減価償却費を計算できます。次のレポートに示す変数assetsおよびsalvageの1997年の値を変更するとします。

YEAR             ASSETS    SALVAGE
-------------- ---------- ----------
Yr95             1,000.00     100.00
Yr96                 0.00       0.00
Yr97               500.00      50.00
Yr98                 0.00       0.00
Yr99                 0.00       0.00
Yr00                 0.00       0.00
Yr01                 0.00       0.00
Yr02                 0.00       0.00

ここで、assetssalvageの1995年と1997年の値には、ゼロ以外の値が格納されています。

次の文を実行すると、資産価額と残存価額の他に、資産の減価償却費もレポートされます。DEPRDECLSWをコールして減価償却費を計算する場合は、資産の有効期間内の5期間(この場合は年)、償却係数として2(2倍の定率)が指定されます。この文では、switch-period引数は指定されていません。このため、DEPRDECLSWではswitch-periodのデフォルトが使用され、この結果、残りの期間全体にわたる減価償却を定額法にした場合、同じ期間の減価償却を定率法にした場合より減価償却額が上回る最初の期間中に、計算方法が定率法から定額法に切り替わります。

REPORT assets salvage W 12 HEADING 'Depreciation'  -
          DEPRDECLSW(assets salvage 5 2 FULL)

この文によって生成される出力は、次のとおりです。

YEAR             ASSETS    SALVAGE   Depreciation
-------------- ---------- ---------- ------------
Yr95             1,000.00     100. 00       400.00
Yr96                 0.00       0.00        240.00
Yr97               500.00      50.00        344.00
Yr98                 0.00       0.00        228.00
Yr99                 0.00       0.00         80.00
Yr00                 0.00       0.00         54.00
Yr01                 0.00       0.00          4.00
Yr02                 0.00       0.00          0.00

1997年に取得した資産があるため、この年の減価償却費は増加しています。