Oracle Application Serverは、Oracle Application Server Adapter for Siebel(OracleAS Adapter for Siebel)を介してSiebelシステムに接続します。 OracleAS Adapter for Siebelは接続性を提供し、Siebelシステム上で相互作用を可能にします。
この章の項目は次のとおりです。
Oracle Application Server Adapter for Siebelは、Siebelシステムと他のアプリケーション、データベースまたは外部ビジネス・パートナ・システムとの間でリアルタイムのビジネス・データを交換する手段を提供します。 アダプタにより、外部アプリケーションでSiebelとのインバウンドおよびアウトバウンド処理が可能になります。
OracleAS Adapter for Siebelは、J2EE Connector Architecture(J2CA)バージョン1.0リソース・アダプタとしてデプロイできます。 このデプロイをOracleAS Adapter J2CAと呼びます。 また、Oracle Application Server Adapter Business Services Engine(BSE)と呼ばれるように、Webサービス・サーブレットとしてもデプロイできます。
OracleAS Adapter for SiebelはXMLメッセージを使用することにより、非Siebelアプリケーションがサービスおよびイベントを使用してSiebelと通信またはトランザクション交換できるようにします。 サービスおよびイベントは次のように定義されています。
イベント機能をサポートするために、次の2つの機能が実装されています。
ポート: ポートは、アダプタにより公開された特定のビジネス・オブジェクトを特定の配置に関連付けます。配置により、イベント・データのプロトコルと位置が定義されます。 ポートでは、イベント使用のエンド・ポイントが定義されます。 ポートは、企業情報システム(EIS)から受け取ったイベントをアダプタ・クライアントに送信するアダプタ・コンポーネントです。
注意: BPEL Process Managerで使用するポートを作成または構成する必要はありません。 ただし、このリリースでは、J2CA構成でイベント・スキーマをポートに関連付けることができます。 |
ポート検証機能は現在使用できません。
チャネル: チャネルは、バックエンド・システムまたは他のタイプのシステムの特定インスタンスへの構成済接続を表します。チャネルにより、1つ以上のイベント・ポートがアダプタで管理されている特定のリスナーにバインドされます。
チャネルは、EISアプリケーションからリアルタイムでイベントを受信するアダプタ・コンポーネントです。 このチャネル・コンポーネントには、ファイル・リーダー、HTTPリスナー、MQリスナーなどがあります。チャネルは常にEIS固有です。アダプタでは、特定のEISに対して複数のチャネルがサポートされます。このため、ユーザーはデプロイメント要件に基づいて最適なチャネル・コンポーネントを選択できます。
OracleAS Adapter for Siebel:
同期および非同期の双方向のメッセージ相互作用を、Siebelビジネス・サービス、ビジネス・コンポーネントおよび統合オブジェクトに対してサポートします。
Oracle Application Server Adapter Application Explorer(Application Explorer)。Siebel Object Managerを使用してSiebelメタデータを表示し、XMLスキーマまたはWebサービスを作成するGUIツールです。
Siebelトランスポート(MQSeries、FileおよびHTTP)をサポートします。MSMQメッセージもサポートします。
OracleAS Adapter J2CA用XMLスキーマ。
BSE用Webサービス。
OracleAS Adapter for Siebelは、ビジネス・オブジェクト、ビジネス・コンポーネント、ビジネス・サービスおよび統合オブジェクトにより、23のすべてのSiebel Industry Applications(SIA)をサポートします。 Siebel Industry Applicationsには、保険、先端技術、自動車、通信、メディア、金融サービス、生命科学、製造および消費者向け商品などの各種産業が含まれます。
Siebel Industry Applicationsは、ビジネス・オブジェクト、ビジネス・コンポーネント、ビジネス・サービスおよび統合オブジェクト形式の追加ビジネス論理により、特定のビジネス要件および特定産業のプロセスに合せて調整されます。 OracleAS Adapter for Siebelはメタデータを公開および生成し、これらの産業固有オブジェクトと相互作用します。
UNIXプラットフォームでのエンコーディングのサポート
重要(すべてのUNIXプラットフォーム): UNIX環境でBSE構成またはJ2CA構成を使用してSiebelターゲットに接続する前に、「必須エンコーディング・オプションの追加(すべてのUNIXプラットフォーム)」で説明する追加手順を実行する必要があります。 この項の説明に従ってエンコーディング・オプションを追加しないとエラーになり、Siebelターゲットに接続できません。 エンコーディングがサポートされていないことを示す次のようなエラー・メッセージが表示されます。
Error: Problem activating adapter -- UTF-8 is not supported. Check logs for more information. Error: Error getting target [Siebel] -- UTF-8 is not supported.
必須エンコーディング・オプションの追加(すべてのUNIXプラットフォーム)
Siebelターゲットに接続する前に、次の操作を実行します。
次のJavaファイル・エンコーディング・オプションをiwae.sh
に追加します。
-Dfile.encoding="ISO8859_1"
Oracle Application Serverコンソールにログインし、OC4JContainerのホーム・ページに移動し、「管理」、「サーバー・プロパティ」を順にクリックし、「コマンドライン・オプション」で、「Javaオプション」フィールドを編集して次の内容を追加します。
-Dfile.encoding="ISO8859_1"
Oracle Application Server Adapter Business Services Engine(BSE)のアーキテクチャ
図1-1に、パッケージされたアプリケーション用のOracle Webサービス・アダプタの汎用アーキテクチャを示します。 アダプタは、J2EEアプリケーション・サーバーのWebコンテナにデプロイされているBSEとともに動作します。BSEはアダプタのホストとして機能し、Webサービスからアダプタへのリクエストを可能にします。
Application ExplorerはBSEとともにデプロイされる設計時ツールです。この設計時ツールを使用して、アダプタ接続の構成、EISオブジェクトの参照、サービスの構成およびEISイベントをリスニングするリスナーの構成を行います。これらの操作の実行中に作成されるメタデータは、BSEによりリポジトリに格納されます。
BSEはプロトコルとしてSOAPを使用し、クライアントからのリクエストを受け取り、EISと相互作用してEISからのレスポンスをクライアントに送信します。
図1-1 Oracle Application Server Adapter Business Services Engine(BSE)の汎用アーキテクチャ
注意: 本番環境では、BSEにファイル・リポジトリを使用しないでください。 |
Oracle Application Server Adapter J2CAの汎用アーキテクチャ
図1-2に、パッケージされたアプリケーション用のOracleAS Adapter J2CAの汎用アーキテクチャを示します。 OracleAS Adapter J2CAは標準のJ2CAコンテナにデプロイされ、アダプタのホスト・コンテナとして機能します。コネクタは、リポジトリで構成されます。
Application Explorerは、コネクタとともに動作する設計ツールです。この設計ツールを使用し、アダプタ接続の構成、EISオブジェクトの参照、サービスの構成およびEISイベントをリスニングするリスナーの構成を行います。これらの操作の実行中に作成されるメタデータは、コネクタによりリポジトリに格納されます。 リポジトリには、ファイル・システムまたはOracleデータベースを使用できます。 リポジトリはRARファイルとしてデプロイされ、ra.xml
と呼ばれる関連付けられたデプロイメント・ディスクリプタがあります。 OC4Jデプロイメント・ディスクリプタoc4j-ra.xml
を編集して、複数のコネクタ・ファクトリを作成できます。 OC4Jのデプロイの詳細は、第3章「OC4Jのデプロイおよび統合」を参照してください。
図1-2 Oracle Application Server Adapter J2CAの汎用アーキテクチャ
Siebel Enterpriseアプリケーションは、基礎となるデータベースへの依存性を取り除くデータ抽象化レイヤーを定義します。これは、データベース構造を表す中間のビジネス・コンポーネントとビジネス・オブジェクトを使用して実現されます。ビジネス・コンポーネントは通常データベース内の表を表します。ビジネス・オブジェクトは関連するビジネス・コンポーネントのグループです。
指定されたビジネス・コンポーネントから、そのコンポーネントに対して定義された関係を別のコンポーネントへナビゲートできます。コンポーネントの関係を示すパスをナビゲーション・パスと呼びます。たとえば特定アカウントのアドレスをすべて取得する必要がある場合、アカウントとアドレス間の親/子関係をたどってアドレスを取得できます。ナビゲーション・パスを使用することで、Siebelシステム内に定義されたほぼすべてのビジネス・コンポーネントの関係をたどることができます。
Siebelでは統合オブジェクトはSiebelビジネス・コンポーネントと似ていますが、より複雑で階層的なデータ関係を表します。
OracleAS Adapter for Siebelを使用し、アカウントの追加/更新などのSiebelビジネス・プロセスを開始したり、このアダプタを統合の一部として使用し、Siebelと非Siebelシステムを接続できます。 OracleAS Adapter for Siebelは双方向であり、Siebelが発行するSiebel XML文書を受信してSiebelからのイベントを検出できます。
Siebel XML文書を使用してSiebelと統合する場合、アダプタ・アプリケーションの開発者は既存のSiebel統合オブジェクトを使用するか、使用する新規のSiebel統合オブジェクトをSiebelワークフロー内に作成する必要があります。ワークフローはインバウンドまたはアウトバウンドのSiebel XMLを処理し、様々なトランスポート(MQSeries、FileおよびHTTPなど)を使用して外部システムとトランザクションを交換します。Siebelワークフローは、通常、Siebelの管理者または開発者により「Siebel Workflow Administration」画面を使用して作成されます。
Java Data BeanまたはCOM Data Interfaceを使用して直接Siebelと統合する場合、OracleAS Adapter for SiebelにSiebel統合オブジェクトやSiebelワークフローは必要ありません。そのかわり、Siebelビジネス・サービスおよびSiebelビジネス・コンポーネントを直接実行します。
次の表に、Siebelのオブジェクトとプロセスを示します。
表1-1 Siebelのオブジェクトとプロセス
Siebelのオブジェクト | APIまたはトランスポート | プロセス |
---|---|---|
ビジネス・サービス |
Java Data Bean(Siebel Version 6.3〜7.8) Com Data Interface(Siebel Version 6.01〜6.2) |
N/A |
ビジネス・コンポーネント |
Java Data Bean(Siebel Version 6.3〜7.8) Com Data Interface(Siebel Version 6.01〜6.2) |
N/A |
統合オブジェクト |
File |
イベント、サービス |
HTTP |
イベント、サービス |
|
MQSeries |
イベント、サービス |
|
MQ Read |
サービス |
Application Explorerは、エクスプローラ・メタファを使用してSiebelシステムのビジネス・サービス、ビジネス・オブジェクト、ビジネス・コンポーネントおよび統合オブジェクトを参照します。エクスプローラにより、関連オブジェクト用のXMLスキーマおよびWebサービスを作成できます。 OracleAS Adapter for Siebelを介してSiebelにアクセスする外部アプリケーションは、XMLスキーマまたはWebサービスを使用してアダプタとの間でデータを受け渡します。
Application Explorerは、Siebelにより提供されるインタフェースを使用し、Siebelアプリケーション・システムに関する詳細な知識を基にビジネス・オブジェクト・メタデータにアクセスします。 オブジェクトを選択した後、Application ExplorerはXMLスキーマまたはWebサービスを生成してOracleAS Adapter for Siebelとともに使用するオブジェクトを定義できます。
Application Explorerの主要な機能は次のとおりです。
多様なアプリケーション・システムへの接続および探索能力
アプリケーション・システム・オブジェクト・メタデータへのアクセス
XMLスキーマおよびWebサービスを生成するためのポイントアンドクリック処理
OracleAS Adapter for SiebelをBPEL Process Managerとともに使用する場合、次の点に注意してください。
BPEL Process Managerとのインバウンド統合(イベント通知)は、OracleAS Adapter J2CAデプロイでのみサポートされます。
BPEL Process Managerとのアウトバウンド統合(リクエスト/レスポンス・サービス)は、OracleAS Adapter J2CAデプロイおよびBSEデプロイのどちらでもサポートされます。
次の3つの要素では、BSEのデプロイとOracleAS Adapter J2CAのデプロイの差異について説明しています。 これらの要素を理解することで、デプロイ・オプションの選択に役立ちます。
次の理由から、BSEは優先されるデプロイ・オプションです。
Oracle Application Serverの個々のインスタンスにデプロイできます。
ロード作業がより効率的に分散されます。
サードパーティ・ライブラリで発生するすべてのエラーから効果的に隔離します。
デバッグの目的で問題点を効率的に隔離できます。
アプリケーション構築用のサービス指向アーキテクチャ(SOA)モデルにより密接に準拠しています。
OracleAS Adapter J2CAの方が、パフォーマンスが少し高くなります。
OracleAS Adapter J2CAは、BSEよりもパフォーマンスが少し高くなります。 ただし、トランザクション率が高くなるとその差異は少なくなります。
OracleAS Adapter J2CAおよびBSEのオプションではどちらも、実行時にIDが伝播されます。
BSEオプションでは、SOAPヘッダーを使用してIDを渡すことができます。 OracleAS Adapter J2CAでは、CCIの接続仕様を使用してユーザー名およびパスワードを渡すことができます。