Sun Cluster 3.0 の概念

Sun Cluster の基本知識

Sun Cluster は、SolarisTM オペレーティング環境をクラスタオペレーティングシステムに拡張するものです。クラスタとは、緩やかに結合された処理ノードの集合のことで、データベース、Web サービス、ファイルサービスなどのネットワークサービスやアプリケーションを、1 つのクライアントとして扱います。

各クラスタノードは、それ自身のプロセスを実行するスタンドアロンサーバーです。これらのプロセスは相互にやりとりして、ユーザーに提供するアプリケーション、システムリソース、データを (ネットワーククライアントに対して) 1 つのシステムとして見えるように形成します。

クラスタは、従来の単一サーバーシステムと比較した場合、いくつかの利点があります。これらの利点には、可用性の高いスケーラブルなアプリケーションのサポート、モジュールの成長に対応できる容量、従来のハードウェアフォルトトレラントシステムよりも低価格の製品といったものがあります。

次に、Sun Cluster の導入目的を示します。

Sun Cluster の高可用性

Sun Cluster は、高可用性 (HA) システムとして設計されています。つまり、データとアプリケーションに対してほぼ連続的なアクセスを可能にするシステムです。

これに対して、フォルトトレラントのハードウェアシステムは、データとアプリケーションに対する一定したアクセスを可能にしますが、特殊なハードウェアが必要なため、コストが高くなります。また、通常はソフトウェアの障害を考慮していません。

Sun Cluster は、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって高可用性を実現しています。冗長なクラスタインターコネクト、記憶装置、パブリックネットワークは、単一の障害に対する防護策となります。クラスタソフトウェアは、メンバーノードの状態を常に監視し、障害が発生したノードがクラスタに属さないようにしてデータの破壊を防止します。また、クラスタは、アプリケーションとそれに依存するシステムリソースを監視し、障害が発生した場合にアプリケーションの処理を継続するか再開します。

高可用性については、「高可用性に関する FAQ」を参照してください。

Sun Cluster のフェイルオーバーとスケーラビリティ

Sun Cluster を使用すると、フェイルオーバーまたはスケーラブルのどちらかをベースにしてアプリケーションを実装できます。フェイルオーバーおよびスケーラブルの各アプリケーションは、同じクラスタで同時に実行することもできます。通常、フェイルオーバーアプリケーションは可用性 (冗長性) が高く、スケーラブルアプリケーションは可用性が高いとともに、パフォーマンスも向上します。

フェイルオーバー

フェイルオーバーとは、クラスタが、障害の発生した主ノードから指定した二次ノードにアプリケーションを自動的に再配置するプロセスのことです。フェイルオーバーによって、Sun Cluster は高い可用性を実現します。

フェイルオーバーが発生すると、クライアントでは、サービスが短時間中断して、フェイルオーバーの終了後に再接続しなければならない場合があります。しかし、クライアントは、アプリケーションとデータの提供元である物理サーバーを認識していません。

スケーラビリティ

フェイルオーバーは冗長性に関係していますが、スケーラビリティは負荷に関係なく一定した応答時間とスループットを提供するものです。スケーラブルアプリケーションは、1 つのクラスタにある複数のノードに作用し、アプリケーションを同時に実行するため、パフォーマンスは向上します。スケーラブルな構成では、クラスタ内の各ノードは、データを提供して、クライアント要求を処理することができます。

フェイルオーバーとスケーラブルサービスの詳細については、「データサービス」を参照してください。