Sun Cluster 3.0 12/01 データサービス開発ガイド

xfnts_start メソッド

データサービスリソースを含むリソースグループがオンラインになったとき、あるいは、リソースが有効になったとき、RGM はそのクラスタノード上で START メソッドを呼び出します。サンプルの SUNW.xfnts リソースタイプでは、xfnts_start メソッドが当該ノード上で xfs デーモンを起動します。

xfnts_start メソッドは scds_pmf_start を呼び出して、PMF の制御下でデーモンを起動します。PMF は、自動障害通知、再起動機能、および障害モニターとの統合を提供します。xfnts_start は、scds_initialize を最初に呼び出します。


注 -

これによって、いくつかのハウスキーピング関数が実行されます。詳細については、scds_initialize の呼び出し」scds_initialize(3HA) のマニュアルページを参照してください。


起動前のサービスの検証

次に示すように、xfnts_start メソッドは X Font Server を起動する前に svc_validate を呼び出して、xfs デーモンをサポートするための適切な構成が存在していることを確認します。詳細については、xfnts_validate メソッド」を参照してください。


例 7-3

	rc = svc_validate(scds_handle);
	if (rc != 0) {
		scds_syslog(LOG_ERR,
		    "Failed to validate configuration.");
		return (rc);
	}

サービスの起動

xfnts_start メソッドは、xfnts.c で定義されている svc_start メソッドを呼び出して、xfs デーモンを起動します。ここでは、svc_start について説明します。

以下に、xfs デーモンを起動するためのコマンドを示します。


xfs -config config_directory/fontserver.cfg -port port_number

Confdir_list 拡張プロパティには config_directory を指定します。一方、Port_list システムプロパティには port_number を指定します。クラスタ管理者はデータサービスを構成するときに、これらのプロパティの値を指定します。

次に示すように、xfnts_start メソッドはこれらのプロパティを文字列配列として宣言し、scds_get_ext_confdir_list(3HA) と scds_get_port_list(3HA) 関数を使用して、管理者が設定した値を取得します。


例 7-4

	scha_str_array_t *confdirs;
	scds_port_list_t 	*portlist;
	scha_err_t	err;
	/* Confdir_list プロパティから構成ディレクトリを取得する。
*/
	confdirs = scds_get_ext_confdir_list(scds_handle);
	(void) sprintf(xfnts_conf, "%s/fontserver.cfg", confdirs->str_array[0]);
	/* Port_list プロパティから XFS が使用するポートを取得する。
*/
	err = scds_get_port_list(scds_handle, &portlist);
	if (err != SCHA_ERR_NOERR) {
		scds_syslog(LOG_ERR,
		    "Could not access property Port_list.");
		return (1);
	}

confdirs 変数は配列の最初の要素 (0) を指していることに注意してください。

次に示すように、xfnts_start メソッドは sprintf を使用して、xfs 用のコマンド行を形成します。


例 7-5

	 /* xfs デーモンを起動するコマンドを構築する。 */
	(void) sprintf(cmd,
	    "/usr/openwin/bin/xfs -config %s -port %d 2>/dev/null",
	    xfnts_conf, portlist->ports[0].port);

出力が dev/null にリダイレクトされていることに注意してください。こうすることによって、デーモンが生成するメッセージが抑制されます。

次に示すように、xfnts_start メソッドは xfs コマンド行を scds_pmf_start に渡して、PMF の制御下でデータサービスを起動します。


例 7-6

	scds_syslog(LOG_INFO, "Issuing a start request.");
	err = scds_pmf_start(scds_handle, SCDS_PMF_TYPE_SVC,
		SCDS_PMF_SINGLE_INSTANCE, cmd, -1);
	if (err == SCHA_ERR_NOERR) {
		scds_syslog(LOG_INFO,
		    "Start command completed successfully.");
	} else {
		scds_syslog(LOG_ERR,
		    "Failed to start HA-XFS ");
	}

scds_pmf_start を呼び出すときは、次のことに注意してください。

次に示すように、svc_pmf_startportlist 構造体に割り当てられているメモリーを解放してから戻ります。


scds_free_port_list(portlist);
return (err);

svc_start からの復帰

svc_start が正常終了したときでも、使用するアプリケーションが起動に失敗した可能性があります。そのため、svc_start はアプリケーションを検証して、アプリケーションが動作していることを確認してから、正常終了のメッセージを戻す必要があります。このとき、アプリケーションがただちに利用できない理由として、アプリケーションの起動にはある程度時間がかかるということを考慮しておく必要があります。次に示すように、svc_start メソッドは xfnts.c で定義されている svc_wait を呼び出して、アプリケーションが動作していることを確認します。


例 7-7

	/* サービスが完全に起動するまで待つ。*/
	scds_syslog_debug(DBG_LEVEL_HIGH,
	    "Calling svc_wait to verify that service has started.");
	rc = svc_wait(scds_handle);
	scds_syslog_debug(DBG_LEVEL_HIGH,
	    "Returned from svc_wait");
	if (rc == 0) {
		scds_syslog(LOG_INFO, "Successfully started the service.");
	} else {
		scds_syslog(LOG_ERR, "Failed to start the service.");
	}

次に示すように、svc_wait メソッドは scds_get_netaddr_list(3HA) を呼び出して、アプリケーションを検証するのに必要なネットワークアドレスリソースを取得します。


例 7-8

	/* 検証に使用するネットワークリソースを取得する。 */
	if (scds_get_netaddr_list(scds_handle, &netaddr)) {
		scds_syslog(LOG_ERR,
		    "No network address resources found in resource group.");
		return (1);
	}
	/* ネットワークリソースが存在しない場合は、エラーを戻す。*/
	if (netaddr == NULL || netaddr->num_netaddrs == 0) {
		scds_syslog(LOG_ERR,
		    "No network address resource in resource group.");
		return (1);
	}

次に示すように、svc_waitstart_timeoutstop_timeout 値を取得します。


例 7-9

	svc_start_timeout = scds_get_rs_start_timeout(scds_handle)
	probe_timeout = scds_get_ext_probe_timeout(scds_handle)

サーバーの起動に時間がかかることを考慮して、svc_waitscds_svc_wait を呼び出して、start_timeout 値の 3 % であるタイムアウト値を渡します。次に、svc_waitsvc_probe を呼び出して、アプリケーションが起動していることを確認します。svc_probe メソッドは指定されたポート上でサーバーとの単純ソケット接続を確立します。ポートへの接続が失敗した場合、svc_probe は値 100 を戻して、致命的な障害であることを示します。ポートとの接続は確立したが、切断に失敗した場合、svc_probe は値 50 を戻します。

svc_probe が完全にまたは部分的に失敗した場合、svc_waitscds_svc_wait をタイムアウト値 5 で呼び出します。scds_svc_wait メソッドは、検証の周期を 5 秒ごとに制限します。また、このメソッドはサービスを起動しようとした回数も数えます。この回数がリソースの Retry_interval プロパティで指定された期限内にリソースの Retry_count プロパティの値を超えた場合、scds_svc_wait メソッドは失敗します。この場合、svc_start メソッドも失敗します。


例 7-10

#define 	SVC_CONNECT_TIMEOUT_PCT	 95
#define	 SVC_WAIT_PCT		 3
	if (scds_svc_wait(scds_handle, (svc_start_timeout * SVC_WAIT_PCT)/100)
		!= SCHA_ERR_NOERR) {
		scds_syslog(LOG_ERR, "Service failed to start.");
		return (1);
	}
	do {
		/*
		 * ネットワークリソースの IP アドレスと portname 上で
		 * データサービスを検証する。
		 */
		rc = svc_probe(scds_handle,
		    netaddr->netaddrs[0].hostname,
		    netaddr->netaddrs[0].port_proto.port, probe_timeout);
		if (rc == SCHA_ERR_NOERR) {
			/* 成功。リソースを解放して戻る。*/
			scds_free_netaddr_list(netaddr);
			return (0);
		}
		 /* サービスがなん度も失敗する場合は、
		iscds_svc_wait()を呼び出す。
			!= SCHA_ERR_NOERR) {
			scds_syslog(LOG_ERR, "Service failed to start.");
			return (1);
		}
	/* RGM がタイムアウトするのを待って、プログラムを終了する。 */
	} while (1);


注 -

xfnts_start メソッドは終了する前に scds_close を呼び出して、scds_initialize が割り当てたリソースを再利用します。詳細については、scds_initialize の呼び出し」scds_close(3HA) のマニュアルページを参照してください。