この手順は、scrgadm(1M) コマンドを使って Sun Cluster HA for iPlanet Web Server の登録と構成を行う方法を述べたものです。
このデータサービスの登録と構成は、他のいくつかの方法でも行うことができます。これらの方法については、「データサービスリソースを管理するためのツール」を参照してください。
この手順の実行には次の情報が必要です。
Sun Cluster HA for iPlanet Web Server のリソースタイプの名前。この名前は、SUNW.iws です。
データサービスをマスターするクラスタノードの名前。フェイルオーバーサービスの場合、同時にデータサービスをマスターできるノードは 1 つだけです。
データサービスへのアクセスにクライアントが使用する論理ホスト名 (フェイルオーバーサービスの場合) または共有アドレス (スケーラブルサービスの場合)。
iPlanet バイナリへのパス。バイナリは、ローカルディスクまたはクラスタファイルシステムにインストールできます。各場所にインストールした場合の長所と短所については、「アプリケーションバイナリの格納先の決定」を参照してください。
iPlanet アプリケーションリソースの Network_resources_used の設定は、iPlanet Web Server によって使用される一連の IP アドレスを決定します。また、リソースの Port_list の設定は、iPlanet Web Server で使用されるポート番号のリストを決定します。障害モニターでは、iPlanet Web Server のデーモンが IP とポートのすべての組み合わせで待機することを想定します。ポート 80 以外の別のポート番号で待機するように iPlanet Web Server の magnus.conf ファイルをカスタマイズしている場合は、magnus.conf ファイルに、IP アドレスとポートの可能なすべての組み合わせが含まれている必要があります。障害モニターは、これらの組み合わせすべてを検証し、iPlanet Web Server が IP アドレスとポートの特定の組み合わせで待機していない場合にモニターの起動に失敗します。iPlanet Web Server が IP アドレスとポートの組み合わせの一部を提供しない場合は、それを行う別のインスタンスに iPlanet Web Server を分割する必要があります。
この手順は、任意のクラスタメンバーで実行します。
クラスタメンバーでスーパーユーザーになります。
Sun Cluster HA for iPlanet Web Server のリソースタイプを登録します。
# scrgadm -a -t SUNW.iws |
データサービスのリソースタイプを追加します。
データサービス用に事前に定義したリソースタイプ名を指定します。
ネットワークリソースおよびアプリケーションリソースを保持するフェイルオーバーリソースグループを作成します。
フェイルオーバーサービスの場合には、このリソースグループはアプリケーションリソースも保持します。
必要に応じて、-h オプションを指定し、データサービスを実行できる一群のノードを選択することもできます。
# scrgadm -a -g resource-group [-h nodelist] |
フェイルオーバーリソースグループの名前を指定します。任意の名前を指定できますが、クラスタ内で一意のリソースグループにする必要があります。
潜在的マスターを識別する物理ノード名または ID をコンマで区切って指定します (任意)。フェイルオーバー時は、この順序で主ノードが決まります。
-h を使用してノードリストの順序を指定します。クラスタ内のすべてのノードが潜在的マスターの場合、-h オプションを使用する必要はありません。
使用しているすべてのネットワークアドレスがネームサービスデータベースに追加されていることを確認します。
Sun Cluster のインストール時に、この確認を行います。詳細は、『Sun Cluster 3.0 12/01 ソフトウェアのインストール』の計画に関する章を参照してください。
ネームサービスの検索が原因で障害が発生するのを防ぐために、サーバーおよびクライアントの /etc/hosts ファイルに、すべての論理ホスト名と共有アドレスが登録されていることを確認してください。サーバーの /etc/nsswitch.conf のネームサービスマッピングは、NIS または NIS+ にアクセスする前に、最初にローカルファイルを検査するように構成してください。
ネットワークリソース (論理ホスト名または共有アドレス) をフェイルオーバーリソースグループに追加します。
# scrgadm -a {-S | -L} -g resource-group ¥ -l network-resource,... [-j resource] ¥ [-X auxnodelist=node, ...] [-n netiflist] |
共有アドレスリソースには -S を、論理ホスト名リソースには -L を使用します。
フェイルオーバーリソースグループの名前を指定します。
追加するネットワークリソースをコンマで区切って指定します。-j オプションを使用してリソース名を指定できます。リソース名を指定しないと、ネットワークリソースの名前は、コンマで区切ったリストの最初の名前になります。
リソースの名前を指定します (省略可能)。リソース名を指定しない場合、ネットワークリソース名は、デフォルトで -l オプションで最初に指定した名前になります。
共有アドレスをホストできるクラスタノード (ただし、フェイルオーバー時に主ノードとして使用されない) を識別する物理ノード ID をコンマで区切って指定します (オプション)。このオプションを指定した場合は、これらのノードは、リソースグループの nodelist で指定されるノードと相互に排他的になります。
各ノード上の NAFO グループをコンマで区切って指定します (省略可能)。リソースグループの nodelist 内のすべてのノードが、netiflist に含まれている必要があります。このオプションを指定しない場合は、scrgadm(1M) コマンドは、nodelist 内の各ノードの hostname リストによって指定されるサブネット上からネットアダプタを見つけようとします。例: -n nafo0@nodename, nafo0@nodename2
スケーラブルサービスのみ: 希望するすべてのクラスタノードで実行するスケーラブルリソースグループを作成します。
Sun Cluster HA for iPlanet Web Server をフェイルオーバーデータサービスとして使用する場合は、この手順を実行せずに 手順 8 へ進んでください。
データサービスアプリケーションリソースを保持するリソースグループを作成します。主ノードの最大数と希望数、およびこのリソースグループと 手順 3 で作成したフェイルオーバーリソースグループとの間の依存性について指定する必要があります。この依存性によって、フェイルオーバー時に、Resource Group Manager (RGM) は、ネットワークリソースに依存する任意のデータサービスが開始される前に、ネットワークリソースを開始できます。
# scrgadm -a -g resource-group ¥ -y Maximum_primaries=m -y Desired_primaries=n ¥ -y RG_dependencies=resource-group |
このリソースグループに許可するアクティブ主ノードの最大数を指定します。このプロパティに値を指定しない場合は、デフォルトの 1 になります。
このリソースグループに許可するアクティブ主ノードの希望数を指定します。このプロパティに値を指定しない場合は、デフォルトの 1 になります。
作成されたリソースグループが依存する共有アドレスリソースを含むリソースグループを指定します。
スケーラブルサービスのみ: スケーラブルリソースグループにアプリケーションリソースを作成します。
Sun Cluster HA for iPlanet Web Server をフェイルオーバーデータサービスとして使用する場合は、この手順を実行せずに 手順 8 へ進んでください。
この手順を繰り返し、複数のアプリケーションリソース (セキュアバージョンや非セキュアバージョンなど) を追加できます。
必要に応じて、データサービスの負荷均衡を設定します。負荷均衡を設定するには、標準リソースプロパティの Load_balancing_policy と Load_balancing_weights を使用します。これらのプロパティの詳細については、付録 A 「標準プロパティ」 を参照してください。また、この節で説明している例も参照してください。
# scrgadm -a -j resource -g resource-group ¥ -t resource-type -y Network_resources_used=network-resource, ... ¥ -y Port_list=port-number/protocol, ... -y Scalable=True ¥ -x Confdir_list=config-directory, ... |
追加するリソースの名前を指定します。
リソースが配置されるスケーラブルリソースグループの名前を指定します。
追加するリソースの種類を指定します。
データサービスが使用する共有アドレスを指定するネットワークリソース名をコンマで区切って指定します。
使用するポート番号とプロトコルをコンマで区切って指定します (例:80/tcp, 81/tcp)。
スケーラブルサービスに必要なブール値を指定します。
iPlanet 構成ファイルの位置をコンマで区切って指定します。Sun Cluster HA for iPlanet Web Server はこの拡張プロパティを必要とします。
1 対 1 のマッピングは、Confdir_List と Port_List に適用されます。一方のリストに含まれる各値は、指定した順に、もう一方のリストの値と一致する必要があります。
フェイルオーバーサービスのみ: フェイルオーバーリソースグループにアプリケーションリソースを作成します。
この手順は、Sun Cluster HA for iPlanet Web Server をフェイルオーバーデータサービスとして実行する場合だけ実行してください。Sun Cluster HA for iPlanet Web Server をスケーラブルサービスとして実行する場合は、前述の 手順 6 および 手順 7 を実行し、手順 10 へ進んでください。
この手順を繰り返し、複数のアプリケーションリソース (セキュアバージョンや非セキュアバージョンなど) を追加できます。
# scrgadm -a -j resource -g resource-group ¥ -t resource-type -y Network_resources_used=logical-hostname-list ¥ -y Port_list=port-number/protocol ¥ -x Confdir_list=config-directory |
追加するリソースの名前を指定します。
リソースが配置されるフェイルオーバーリソースグループの名前を指定します。
追加するリソースの種類を指定します。
データサービスが使用する論理ホストを識別するネットワークリソースをコンマで区切って指定します。
使用するポート番号とプロトコルを指定します (例:80/tcp)。Port_list と Confdir_list 間の 1 対 1 のマッピング規則により、フェイルオーバーサービスのための Port_list には、エントリを 1 つだけ登録します。
iPlanet 構成ファイルの場所を指定します。フェイルオーバーサービスのための Confdir_list には、エントリを 1 つだけ登録します。config-directory には、config という名前のディレクトリが含まれている必要があります。Sun Cluster HA for iPlanet Web Server は、この拡張プロパティを必要とします。
必要に応じて、iPlanet データサービスに属する拡張プロパティを追加設定し、プロパティのデフォルト値を上書きできます。拡張プロパティについては、表 3-2 を参照してください。
フェイルオーバーリソースグループをオンラインにします。
# scswitch -Z -g resource-group |
ネットワークリソースと障害モニターを有効に設定し、リソースグループを管理状態に切り替え、オンラインにします。
フェイルオーバーリソースグループの名前を指定します。
スケーラブルサービスのみ:スケーラブルリソースグループをオンラインにします。
# scswitch -Z -g resource-group |
リソースとモニターを有効に設定し、リソースグループを管理状態にし、オンラインにします。
スケーラブルリソースグループの名前を指定します。
次に、スケーラブル iPlanet サービスを登録する方法を示します。
Cluster Information Node names: phys-schost-1, phys-schost-2 Shared address: schost-1 Resource groups: sa-resource-group-1 (共有アドレスの場合), iws-resource-group-1 (スケーラブル iPlanet アプリケーションリソースの場合) Resources: schost-1 (共有アドレス), iplanet-insecure-1 (非セキュア iPlanet アプリケーションリソース), iplanet-secure-1 (セキュア iPlanet アプリケーション リソース) (共有アドレスを含むようにフェイルオーバーリソースグループを追加する) # scrgadm -a -g sa-resource-group-1 (フェイルオーバーリソースグループに共有アドレスリソースを追加する) # scrgadm -a -S -g sa-resource-group-1 -l schost-1 (スケーラブルリソースグループを追加する) # scrgadm -a -g iws-resource-group-1 -y Maximum_primaries=2 ¥ -y Desired_primaries=2 -y RG_dependencies=sa-resource-group-1 (iPlanet リソースタイプを登録する) # scrgadm -a -t SUNW.iws (デフォルトの負荷分散を使用して非セキュア iPlanet インスタンスを追加する) # scrgadm -a -j iplanet-insecure-1 -g iws-resource-group-1 -t SUNW.iws ¥ -x Confdir_List=/opt/iplanet/https-iplanet-insecure-1 ¥ -y Scalable=True -y Network_resources_used=schost-1 -y Port_list=80/tcp (スティッキー IP 負荷分散を使用してセキュア iPlanet インスタンスを追加する) # scrgadm -a -j iplanet-secure-1 -g iws-resource-group-1 -t SUNW.iws ¥ -x Confdir_List=/opt/iplanet/https-iplanet-secure-1 ¥ -y Scalable=True -y Network_resources_used=schost-1 ¥ -y Port_list=443/tcp -y Load_balancing_policy=LB_STICKY ¥ -y Load_balancing_weight=40@1,60@2 (フェイルオーバーリソースグループをオンラインにする) # scswitch -Z -g sa-resource-group-1 (スケーラブルリソースグループをオンラインにする) # scswitch -Z -g iws-resource-group-1 |
次に、フェイルオーバー iPlanet サービスを 2 ノードクラスタで登録する例を示します。
Cluster Information Node names: phys-schost-1, phys-schost-2 Logical hostname: schost-1 Resource group: resource-group-1 (すべてのリソースに適用) Resources: schost-1 (論理ホスト名), iplanet-insecure-1 (非セキュア iPlanet アプリケーションリソース), iplanet-secure-1 (セキュア iPlanet アプリケーション リソース) (リソースグループを追加してすべてのリソースを含める) # scrgadm -a -g resource-group-1 (論理ホスト名リソースをリソースグループに追加する) # scrgadm -a -L -g resource-group-1 -l schost-1 (iPlanet リソースタイプを登録する) # scrgadm -a -t SUNW.iws (非セキュア iPlanet アプリケーションリソースインスタンスを追加する # scrgadm -a -j iplanet-insecure-1 -g resource-group-1 -t SUNW.iws ¥ -x Confdir_list=/opt/iplanet/conf -y Scalable=False ¥ -y Network_resources_used=schost-1 -y Port_list=80/tcp¥ (セキュア iPlanet アプリケーションリソースインスタンスを追加する) # scrgadm -a -j iplanet-secure-1 -g resource-group-1 -t SUNW.iws ¥ -x Confdir_List=/opt/iplanet/https-iplanet-secure-1 -y Scalable=False ¥ -y Network_resources_used=schost-1 -y Port_list=443/tcp ¥ (フェイルオーバーリソースグループをオンラインにする) # scswitch -Z -g resource-group-1 |
SUNW.HAStorage リソースタイプを構成するには、「SUNW.HAStorag リソースタイプを構成する」を参照してください。