Sun Cluster 3.1 データサービスのインストールと構成

第 3 章 Sun Cluster HA for SunTM ONE Web Server のインストールと構成

この章では、Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server のインストールと構成手順について説明します。このデータサービスは、以前 Sun Cluster HA for NetscapeTM HTTP および Sun Cluster HA for iPlanet Web Server と呼んでいたものです。アプリケーションから出力される一部のエラーメッセージで、Netscape という名前が使用されることがありますが、このメッセージは、Sun ONE Web Server のことを示しています。 Sun Cluster Agents CD-ROM 内のアプリケーションの名前は、いまだ iPlanet Web Server になっているものもあります。

この章の内容は次のとおりです。

Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server は、フェイルオーバーデータサービスまたはスケーラブルデータサービスとして構成できます。データサービス、リソースグループ、リソース、関連事項については、第 1 章「Sun Cluster データサービスの計画」および『Sun Cluster 3.1 の概念』を参照してください。


注 –

このデータサービスのインストールと構成には、SunPlex Manager が使用できます。詳細については、SunPlex Manager のオンラインヘルプを参照してください。



注 –

Sun Cluster 構成で複数のデータサービスを実行している場合は、任意の順序でデータサービスを設定できます (次の場合を除く)。 Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server が Sun Cluster HA for DNS に依存している場合は、最初に DNS を設定する必要があります。詳細は、第 6 章「Sun Cluster HA for Domain Name Service (DNS) のインストールと構成」を参照してください。DNS ソフトウェアは、Solaris オペレーティング環境に含まれています。クラスタが別のサーバーから DNS サービスを取得する場合は、最初に、クラスタが DNS クライアントになるように構成してください。



注 –

インストール後は、クラスタ管理コマンドの scswitch(1M) を使用する場合を除き、手作業で Sun ONE Web Server を起動したり、停止しないでください。詳細は、マニュアルページを参照してください。Sun ONE Web Server は、起動後は Sun Cluster ソフトウェアによって制御されます。


インストールと構成の計画

Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server のインストールと構成を行う前に、構成ワークシートをチェックリストとして使用し、以降の手順を実行してください。

インストールを開始する前に、以下の点を検討します。

Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server のインストールと構成

インストール作業と構成作業を説明している節は次のとおりです。

表 3–1 作業マップ: Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server のインストールと構成

作業 

参照箇所 

Sun ONE Web Server のインストール 

Sun ONE Web Server のインストールと構成

Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server パッケージのインストール 

Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server パッケージのインストール

Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server の構成  

Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server の登録と構成

リソース拡張プロパティの構成 

Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server 拡張プロパティの構成

障害モニターの情報の表示 

Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server 障害モニター

Sun ONE Web Server のインストールと構成

この節では、setup コマンドを使って次の作業を行う手順を説明します。


注 –

Web サーバーに対する URL マッピングの設定では、いくつかの規則に従う必要があります。たとえば、CGI ディレクトリを設定する場合、可用性を維持するには、マップしたディレクトリをクラスタファイルシステムに配置する必要があります。たとえば、CGI ディレクトリを /global/pathname/cgi-bin にマップします。

CGI プログラムが、RDBMS などのバックエンドサーバーにアクセスするような状況では、そのバックエンドサーバーも Sun Cluster によって制御されていることを確認してください。そのサーバーが、Sun Cluster がサポートする RDBMS の場合には、高可用性 RDBMS パッケージのいずれか 1 つを使用します。サポートされない RDBMS の場合は、API を使用してそのサーバーを Sun Cluster の制御下に置きます。API については、『Sun Cluster 3.1 データサービス開発ガイド 』を参照してください。


Sun ONE Web Server のインストール

この手順を実行するには、構成に関する次の情報が必要になります。


注 –

Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server と別の HTTP サーバーを実行しており、これらが同じネットワークリソースを使用している場合は、それぞれ異なるポートで待機するように構成してください。異なるポートで待機するように構成しないと、2 つのサーバーの間でポートの衝突が発生します。


  1. クラスタメンバー上でスーパーユーザーになります。

  2. CD のインストールディレクトリから、iPlanet Web Server 用の setup コマンドを実行します。

  3. プロンプトが表示されたら、Sun ONE Web Server バイナリをインストールする場所を入力します。

    インストール場所には、クラスタファイルシステム上またはローカルディスク上の場所を指定します。ローカルディスクにインストールする場合は、次の手順で指定するネットワークリソース (論理ホスト名または共有アドレス) の潜在的主ノードになるすべてのクラスタノード上で setup コマンドを実行してください。

  4. マシン名の入力が求められたなら、Sun ONE Web Server が依存する論理ホスト名と適切な DNS ドメイン名を入力します。

    完全な論理ホスト名は、network-resource.domainname の形式になります (例: schost-1.sun.com)。


    注 –

    Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server が正しくフェイルオーバーするには、マシン名の入力を求められたときには、常に、物理ホスト名ではなく、論理ホスト名または共有アドレスリソース名のいずれかを使用する必要があります。


  5. 問い合わせが表示されたら、「Run admin server as root」を選択します。

    Sun ONE インストールスクリプトが管理サーバー用として選択するポート番号を書き留めてください。あとで管理サーバーを使用して Sun ONE Web Server のインスタンスを構成する時に、このデフォルト値を使用する必要が生じる可能性があります。デフォルト値を使用しない場合は、別のポート番号を指定することもできます。

  6. 問い合わせが表示されたなら、サーバー管理者 ID とパスワードを入力します。

    システムのガイドラインに従います。

    管理サーバーが起動されることを示すメッセージが表示されたなら、構成の準備は完了です。

次に進む手順

Sun ONE Web Server を構成する場合は、Sun ONE Web Server の構成を参照してください。

Sun ONE Web Server の構成

この手順では、Sun ONE のインスタンスを構成し、高可用性を実現する方法について説明します。この手順では、Netscape ブラウザを使用します。

この手順を実行するには、次の情報を確認しておく必要があります。

  1. すべてのノードのローカルディスクにディレクトリを作成し、Sun ONE Web Server が管理するログ、エラーファイル、PID ファイルを保持できるようにします。

    Sun ONE が正しく機能するために、これらのファイルは、クラスタファイルシステムではなく、クラスタの各ノード上に存在する必要があります。

    クラスタ内のすべてのノードにおいて、ローカルディスクの同じ場所を選択します。ディレクトリを作成するには、mkdir -p コマンドを使用します。このディレクトリの所有者は nobody にします。

    次の例に、この手順を行う方法を示します。


    phys-schost-1# mkdir -p /var/pathname/http-instance/logs/
    

    注 –

    エラーログや PID ファイルが大きくなると予想される場合は、/var ディレクトリの容量は小さいので、このディレクトリに格納してはいけません。その代わりに、大きなファイルを格納できるだけの十分な容量を持つパーティションに新しいディレクトリを作成します。


  2. 管理ワークステーションまたはクラスタノードから Netscape ブラウザを起動します。

  3. クラスタノードのいずれか 1 つで、https-admserv ディレクトリに移動し、Sun ONE 管理サーバーを起動します。


    # cd https-admserv
    # ./start
    

  4. Sun ONE 管理サーバーの URL を Netscape ブラウザに入力します。

    URL は、サーバーのインストール手順 (手順 4) の Sun ONE インストールスクリプトによって確立される物理ホスト名とポート番号で構成されます(例: n1.eng.sun.com:8888)。手順 3 を実行すると、./start コマンドで管理 URL が表示されます。

    プロンプトが表示されたら、サーバーのインストール手順 (手順 6) で指定したユーザー ID とパスワードを使用し、Sun ONE 管理サーバーインタフェースにログインします。

  5. 次の作業を行うには、可能な限り管理サーバーを使用し、そうでない場合だけ手動で変更するようにします。

    • サーバー名が正しいことを確認します。

    • サーバーユーザーがスーパーユーザーとして設定されていることを確認します。

    • バインドアドレスフィールドを次のアドレスのいずれかの 1 つに変更します。

      • ネームサービスとして DNS を使用する場合、論理ホスト名または共有アドレス。

      • ネームサービスとして NIS を使用する場合、論理ホスト名または共有アドレスに関連する IP アドレス。

    • この節の手順 1 で作成したディレクトリを反映するように、ErrorLog、PidLog、および Access Log エントリを更新します。

    • 変更を保存します。

  6. このインスタンスの起動に必要なセキュアキーパスワードを含むファイルを作成し、このファイルをサーバーのルートディレクトリに置きます。このファイルの名前を、keypass にします。


    注 –

    このファイルには、キーデータベースのパスワードが含まれているため、適切なアクセス許可で保護する必要があります。


Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server パッケージのインストール

scinstall(1M) ユーティリティーを使って、SUNWschtt (Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server パッケージ) をクラスタにインストールします。このとき、非対話型の scinstall には -s オプション (CD のすべてのデータサービスパッケージをインストールする) を指定しないでください。

Sun Cluster のインストール時にこのデータサービスパッケージをすでにインストールしている場合は、Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server の登録と構成へ進んでください。まだインストールしていない場合は、次の手順に従って SUNWschtt パッケージをインストールします。

Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server パッケージのインストール

この手順を実行するには、Sun Cluster 3.1 Agents CD-ROM が必要です。Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server を実行するすべてのクラスタノードで、この手順を実行してください。

  1. Sun Cluster 3.1 Agents CD-ROM を CD-ROM ドライブに挿入します。

  2. オプションは指定せずに、scinstall ユーティリティーを実行します。

    scinstall ユーティリティーが対話型モードで起動します。

  3. メニューオプション「新しいデータサービスのサポートをこのクラスタノードに追加」を選択します。

    scinstall ユーティリティーにより、ほかの情報を入力するためのプロンプトが表示されます。

  4. Sun Cluster 3.1 Agents CD-ROM のパスを指定します。

    このユーティリティーには、この CD は“data services cd”と示されます。

  5. インストールするデータサービスを指定します。

    選択したデータサービスが scinstall ユーティリティーによって示され、この選択内容の確認が求められます。


    注 –

    CD-ROM 内のアプリケーションの名前は、まだ iPlanet Web Server になっているものもあります。


  6. scinstall ユーティリティーを終了します。

  7. ドライブから CD を取り出します。

次に進む手順

Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server の登録と構成 を参照して Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server を登録し、このデータサービス向けにクラスタを構成してください。

Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server の登録と構成

Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server は、フェイルオーバーデータサービスまたはスケーラブルデータサービスとして構成できます。Sun ONE Web Server をスケーラブルデータサービスとして構成する場合には、追加の手順を実行する必要があります。この節では、先頭に「スケーラブルサービスのみ」と付けて、まずスケーラブルサービスの場合の追加手順を示しています。フェイルオーバーサービスおよびスケーラブルサービスの個々の例を、その後に示しています。

Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server の登録と構成

この手順では、scrgadm (1M) コマンドを使って Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server の登録と構成を行う方法を説明します。


注 –

その他のオプションでもデータサービスは登録および構成できます。これらの方法については、データサービスリソースを管理するためのツールを参照してください。


この手順を実行するには、次の情報を確認しておく必要があります。


注 –

この手順は、すべてのクラスタメンバー上で実行します。


  1. クラスタメンバー上でスーパーユーザーになります。

  2. Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server のリソースタイプを登録します。


    # scrgadm -a -t SUNW.iws
    
    -a

    データサービスのリソースタイプを追加します。

    -t SUNW.iws

    当該データサービス用にあらかじめ定義されているリソースタイプを指定します。

  3. ネットワークとアプリケーションのリソースを格納するためのフェイルオーバーリソースグループを作成します。

    フェイルオーバーサービスの場合には、このリソースグループはアプリケーションリソースも保持します。

    必要に応じて、-h オプションを指定し、データサービスを実行できる一群のノードを選択することもできます。


    # scrgadm -a -g resource-group [-h nodelist]
    -g resource-group

    フェイルオーバーリソースグループの名前を指定します。どのような名前でもかまいませんが、クラスタ内のリソースグループごとに一意である必要があります。

    -h nodelist

    潜在的マスターを識別する物理ノード名または ID をコンマで区切って指定します (任意)。フェイルオーバー時、ノードはこのリスト内の順番に従って主ノードが決定されます。


    注 –

    -h を使用してノードリストの順序を指定します。クラスタ内のすべてのノードが潜在的マスターの場合、-h オプションを使用する必要はありません。


  4. 使用しているすべてのネットワークアドレスがネームサービスデータベースに追加されていることを確認します。

    Sun Cluster のインストール時に、この確認を行います。詳細は、『Sun Cluster 3.1 ソフトウェアのインストール 』の計画に関する章を参照してください。


    注 –

    ネームサービスの検索が原因で障害が発生するのを防ぐために、サーバーおよびクライアントの /etc/inet/hosts ファイルに、すべての論理ホスト名と共有アドレスが登録されていることを確認してください。サーバーの /etc/nsswitch.conf のネームサービスマッピングは、NIS または NIS+ にアクセスする前に、最初にローカルファイルを検査するように構成してください。


  5. ネットワークリソース (論理ホスト名または共有アドレス) をフェイルオーバーリソースグループに追加します。


    # scrgadm -a {-S | -L} -g resource-group \
    -l network-resource,… [-j resource] \
    [-X auxnodelist=node, …] [-n netiflist]
    -S | -L

    共有アドレスリソースには -S を、論理ホスト名リソースには -L を使用します。

    -g resource-group

    フェイルオーバーリソースグループの名前を指定します。

    -l network-resource, …

    追加するネットワークリソースをコンマで区切って指定します。-j オプションを使用してリソース名を指定できます。リソース名を指定しないと、ネットワークリソースの名前は、コンマで区切ったリストの最初の名前になります。

    -j resource

    リソースの名前を指定します (省略可能)。リソース名を指定しない場合、ネットワークリソース名は、デフォルトで -l オプションで最初に指定した名前になります。

    -X auxnodelist=node, …

    共有アドレスをホストできるクラスタノード (ただし、フェイルオーバー時に主ノードとして使用されない) を識別する物理ノード ID をコンマで区切って指定します (オプション)。このオプションを指定した場合は、これらのノードは、リソースグループの nodelist で指定されるノードと相互に排他的になります。

    -n netiflist

    各ノード上の IP Networking Multipathing グループをコンマで区切って指定します (省略可能)。netiflist 内の各要素の書式は、 netif@node でなければなりません。 netif は、sc_ipmp0 などの IP Networking Multipathing グループ名として指定できます。ノードは、sc_ipmp0@1sc_ipmp@phys-schost-1 などのノード名またはノード ID で識別できます。


    注 –

    現在 Sun Cluster では、netif にアダプタ名を使用できません。


  6. スケーラブルサービスのみ: 希望するすべてのクラスタノードで実行するスケーラブルリソースグループを作成します。

    Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server をフェイルオーバーデータサービスとして使用する場合は、この手順を実行せずに 手順 8へ進んでください。

    データサービスアプリケーションリソースを保持するリソースグループを作成します。主ノードの最大数と希望数、およびこのリソースグループと 手順 3 で作成したフェイルオーバーリソースグループとの間の依存性について指定する必要があります。この依存性によって、フェイルオーバー時に、Resource Group Manager (RGM) は、ネットワークリソースに依存する任意のデータサービスが開始される前に、ネットワークリソースを開始できます。


    # scrgadm -a -g resource-group \
    -y Maximum_primaries=m -y Desired_primaries=n \
    -y RG_dependencies=resource-group
    
    -g resource_group

    スケーラブルリソースグループの名前を指定します。

    -y Maximum_primaries=m

    このリソースグループに許可するアクティブ主ノードの最大数を指定します。このプロパティに値を指定しない場合は、デフォルトの 1 になります。

    -y Desired_primaries=n

    このリソースグループに許可するアクティブ主ノードの希望数を指定します。このプロパティに値を指定しない場合は、デフォルトの 1 になります。

    -y RG_dependencies= resource-group

    作成されたリソースグループが依存する共有アドレスリソースを含むリソースグループを指定します。

  7. スケーラブルサービスのみ: スケーラブルリソースグループにアプリケーションリソースを作成します。

    Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server をフェイルオーバーデータサービスとして使用する場合は、この手順を実行せずに 手順 8へ進んでください。

    この手順を繰り返し、複数のアプリケーションリソース (セキュアバージョンや非セキュアバージョンなど) を追加できます。

    必要に応じて、データサービスの負荷均衡を設定します。負荷均衡を設定するには、標準リソースプロパティの Load_balancing_policyLoad_balancing_weights を使用します。これらのプロパティの詳細については、付録 A 「標準プロパティ」を参照してください。また、この節で説明している例も参照してください。


    # scrgadm -a -j resource -g resource-group \
    -t resource-type -y Network_resources_used=network-resource, … \
    -y Port_list=port-number/protocol, … -y Scalable=True \
    -x Confdir_list=config-directory, …
    -j resource

    追加するリソースの名前を指定します。

    -g resource-group

    リソースが配置されるスケーラブルリソースグループの名前を指定します。

    -t resource-type

    追加するリソースのタイプを指定します。

    -y Network_resources_used= network-resource, …

    データサービスが使用する共有アドレスを指定するネットワークリソース名をコンマで区切って指定します。

    -y Port_list=port-number/protocol, …

    使用するポート番号とプロトコルをコンマで区切って指定します (例:80/tcp, 81/tcp)。

    -y Scalable=True

    スケーラブルサービスに必要なブール値を指定します。

    -x Confdir_list=config-directory, …

    Sun ONE 構成ファイルの位置をコンマで区切って指定します。Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server には、この拡張プロパティが必要です。


    注 –

    1 対 1 のマッピングは、Confdir_ListPort_List に適用されます。一方のリストに含まれる各値は、指定した順に、もう一方のリストの値と一致する必要があります。


  8. フェイルオーバーサービスのみ: フェイルオーバーリソースグループにアプリケーションリソースを作成します。

    この手順は、Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server をフェイルオーバーデータサービスとして実行する場合だけ実行してください。Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server をスケーラブルサービスとして実行する場合は、前述の 手順 6 および 手順 7 を実行し、手順 10 へ進んでください。

    この手順を繰り返し、複数のアプリケーションリソース (セキュアバージョンや非セキュアバージョンなど) を追加できます。


    # scrgadm -a -j resource -g resource-group \
    -t resource-type -y Network_resources_used=logical-hostname-list \
    -y Port_list=port-number/protocol \
    -x Confdir_list=config-directory
    
    -j resource

    追加するリソースの名前を指定します。

    -g resource-group

    リソースが配置されるフェイルオーバーリソースグループの名前を指定します。

    -t resource-type

    追加するリソースのタイプを指定します。

    -y Network_resources_used=network-resource, …

    データサービスが使用する論理ホストを識別するネットワークリソースをコンマで区切って指定します。

    -y Port_list=port-number/protocol

    使用するポート番号とプロトコルを指定します (例:80/tcp)。Port_listConfdir_list 間の 1 対 1 のマッピング規則により、フェイルオーバーサービスのための Port_list には、エントリを 1 つだけ登録します。

    -x Confdir_list=config-directory

    Sun ONE 構成ファイルの場所を指定します。フェイルオーバーサービスのための Confdir_list には、エントリを 1 つだけ登録します。config-directory には、config という名前のディレクトリが含まれている必要があります。Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server は、この拡張プロパティを必要とします。


    注 –

    必要に応じて、Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server に属する拡張プロパティを追加設定し、プロパティのデフォルト値を上書きできます。拡張プロパティについては、表 3–2 を参照してください。


  9. フェイルオーバーリソースグループをオンラインにします。


    # scswitch -Z -g resource-group
    
    -Z

    ネットワークリソースと障害モニターを有効に設定し、リソースグループを MANAGED 状態に切り替え、オンラインにします。

    -g resource-group

    フェイルオーバーリソースグループの名前を指定します。

  10. スケーラブルサービスのみ:スケーラブルリソースグループをオンラインにします。


    # scswitch -Z -g resource-group
    
    -Z

    リソースとモニターを有効に設定し、リソースグループを MANAGED 状態にし、オンラインにします。

    -g resource-group

    スケーラブルリソースグループの名前を指定します。

例 – スケーラブル Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server の登録

次に、スケーラブル Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server を登録する方法を示します。


クラスタ情報
ノード名: phys-schost-1, phys-schost-2
共有アドレス: schost-1
リソースグループ: sa-resource-group-1 (共有アドレスの場合),
    iws-resource-group-1 (スケーラブル Sun ONE アプリケーションリソースの場合)
リソース: schost-1 (共有アドレス), SunONE-insecure-1 (非セキュア SunONE
    アプリケーションリソース), SunONE-secure-1 (セキュア Sun ONE アプリケーション
    リソース)
 
(Sun ONE リソースタイプを登録する)
# scrgadm -a -t SUNW.iws
 
(共有アドレスを含むようにフェイルオーバーリソースグループを追加する)
# scrgadm -a -g sa-resource-group-1 -h phys-schost-1, phys-schost-2
 
(フェイルオーバーリソースグループに共有アドレスリソースを追加する)
# scrgadm -a -S -g sa-resource-group-1 -l schost-1
 
(スケーラブルリソースグループを追加する)
# scrgadm -a -g iws-resource-group-1 -y Maximum_primaries=2 \
-y Desired_primaries=2 -y RG_dependencies=sa-resource-group-1
 
(デフォルトの負荷分散を使用して非セキュア Sun ONE インスタンスを追加する)
# scrgadm -a -j SunONE-insecure-1 -g iws-resource-group-1 -t SUNW.iws \
-x Confdir_List=/opt/SunONE/https-SunONE-insecure-1 \
-y Scalable=True -y Network_resources_used=schost-1 -y Port_list=80/tcp
 
(スティッキー IP 負荷分散を使用してセキュア SunONE インスタンスを追加する)
# scrgadm -a -j SunONE-secure-1 -g iws-resource-group-1 -t SUNW.iws \
-x Confdir_List=/opt/SunONE/https-SunONE-secure-1 \
-y Scalable=True -y Network_resources_used=schost-1 \
-y Port_list=443/tcp -y Load_balancing_policy=LB_STICKY \
-y Load_balancing_weights=40@1,60@2
 
(フェイルオーバーリソースグループをオンラインにする)
# scswitch -Z -g sa-resource-group-1
 
(スケーラブルリソースグループをオンラインにする)
# scswitch -Z -g iws-resource-group-1

例 – フェイルオーバー Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server の登録

次に、フェイルオーバー Sun ONE サービスを 2 ノードクラスタで登録する例を示します。


クラスタ情報
ノード名: phys-schost-1, phys-schost-2
論理ホスト名: schost-1
リソースグループ: resource-group-1 (すべてのリソースに適用) 

リソース: schost-1 (論理ホスト名), SunONE-insecure-1 (非セキュア SunONE 
     アプリケーションリソース), SunONE-secure-1 (セキュア SunONE アプリケーション
    リソース)
 
(SunONE リソースタイプを登録する)
# scrgadm -a -t SUNW.iws
 
(リソースグループを追加してすべてのリソースを含める)
# scrgadm -a -g resource-group-1 -h phys-schost-1, phys-schost-2
 
(論理ホスト名リソースをリソースグループに追加する)
# scrgadm -a -L -g resource-group-1 -l schost-1 
 
(非セキュア SunONE アプリケーションリソースインスタンス)
# scrgadm -a -j SunONE-insecure-1 -g resource-group-1 -t SUNW.iws \
-x Confdir_list=/opt/SunONE/conf -y Scalable=False \
-y Network_resources_used=schost-1 -y Port_list=80/tcp\
 
(セキュア SunONE アプリケーションリソースインスタンスを追加する)
# scrgadm -a -j SunONE-secure-1 -g resource-group-1 -t SUNW.iws \ 
-x Confdir_List=/opt/SunONE/https-SunONE-secure-1 -y Scalable=False \
-y Network_resources_used=schost-1 -y Port_list=443/tcp \
 
(フェイルオーバーリソースグループをオンラインにする)
# scswitch -Z -g resource-group-1

次に進む手順

SUNW.HAStorage リソースタイプを構成するには、SUNW.HAStoragePlus リソースタイプの構成を参照してください。

SUNW.HAStoragePlus リソースタイプの構成

SUNW.HAStoragePlus リソースタイプは Sun Cluster 3.0 5/02 から導入されています。この新しいリソースタイプは、 SUNW.HAStorage と同じ機能を実行し、HA ストレージとデータサービス間のアクションを同期します。

SUNW.HAStoragePlus には、ローカルファイルシステムを高可用性にする追加の機能があります。Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server はスケーラブルであるため、SUNW.HAStoragePlus リソースタイプを設定する必要があります。

詳細については、SUNW.HAStoragePlus(5) のマニュアルページおよび リソースグループとディスクデバイスグループの関係を参照してください。手順については、HAStoragePlus リソースタイプの設定を参照してください。(Sun Cluster 3.0 の 5/02 よりも前のバージョンを使用している場合は、SUNW.HAStoragePlus ではなく SUNW.HAStorage を設定してください。手順については、新しいリソース用の HAStorage リソースタイプの設定 を参照してください)

Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server 拡張プロパティの構成

この節では、Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server の拡張プロパティについて説明します。フェイルオーバーの場合、データサービスは強制的に Confdir_list のサイズを 1 にします。複数の構成ファイル (インスタンス) が必要な場合は、それぞれが Confdir_list エントリを 1 つ持つ複数のフェイルオーバーリソースを作成してください。

通常、拡張プロパティは Sun ONE Web Server リソースを作成するときに、コマンド行から scrgadm -x parameter=value を実行して構成します。拡張プロパティは、第 15 章「データサービスリソースの管理」に示す手順を使ってあとで構成することもできます。Sun Cluster の全プロパティについては、付録 A 「標準プロパティ」 を参照してください。

表 3–2 に、Sun ONE サーバーのために設定できる拡張プロパティを示します。 Sun ONE サーバーリソースの作成に必須の拡張プロパティは、Confdir_list プロパティだけです。拡張プロパティの中には動的に変更できるものもありますが、それ以外の拡張プロパティは、リソースを作成するときにしか更新できません。「調整可能」の欄は、各プロパティをいつ更新できるかを示しています。

表 3–2 Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server 拡張プロパティ

名前/データタイプ 

デフォルト 

Confdir_ list (文字列配列)

特定の Sun ONE Web Server インスタンスの、サーバールートディレクトリへのポインタ。Netscape Directory Server がセキュアモードの場合、パス名に keypass という名前のファイルを含む必要があります。このファイルには、このインスタンスの起動に必要なセキュアキーパスワードが含まれています。

 

デフォルト:なし

範囲: なし

調整:作成時

Monitor_ retry_ count (整数)

Monitor_retry_interval プロパティで指定された時間の範囲内に、プロセスモニター機能 (PMF) が障害モニターを再起動する回数。このプロパティは、障害モニターの再起動について制御するのであって、リソースの再起動を制御するわけではありません。リソースの再起動は、システム定義プロパティの Retry_interval および Retry_count によって制御されます。

 

デフォルト:4

範囲: 0 – 2、147、483、641

–1 は、再試行の数が無限であることを示します。 

調整: 任意の時点

Monitor_ retry_ interval (整数)

障害モニターの失敗がカウントされる期間 (分)。この期間内に、障害モニターの失敗の数が、拡張プロパティ Monitor_retry_count で指定した値を超えた場合、PMF は障害モニターを再起動しません。

 

デフォルト:2

範囲: 0 – 2、147、483、641

–1 は、再試行の間隔が無限であることを示します。 

調整:任意の時点

Probe_ timeout (整数)

Sun ONE Web Server インスタンスの検証に障害モニターが使用するタイムアウト値 (秒) 

 

デフォルト:90

範囲: 0 – 2、147、483、641

調整:任意の時点

Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server 障害モニター

Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server の検証機能は、サーバーに要求を送ることによりそのサーバーの状態を照会します。検証機能が実際にサーバーを照会する前に、ネットワークリソースがこの Web サーバーリソース用に構成されていることの確認が行われます。ネットワークリソースが構成されていない場合は、エラーメッセージ (No network resources found for resource.) が記録され、検証はエラーとなり、終了します。

検証機能は、次の 2 つの Sun ONE Web Server 構成を扱える必要があります。

Web サーバーがセキュアモードのときに、検証機能が構成ファイルからセキュアポートを取得できない場合は、エラーメッセージ (Unable to parse configuration file) が記録され、検証はエラーとなり終了します。セキュアインスタンスと非セキュアインスタンスの検証の処理は同じです。

検証機能は、Probe_timeout リソースプロパティで設定されたタイムアウト値を使用し、Sun ONE Web Server を正常に検証するための試行時間を制限します。このリソースプロパティについては、付録 A 「標準プロパティ」 を参照してください。

Sun ONE Web Server リソースで設定されている Network_resources_used リソースプロパティは、Web サーバーが使用する IP アドレスセットを決定します。Port_list リソースプロパティの設定は、Sun ONE Web Server で使用されるポート番号のリストを決定します。障害モニターは、Web サーバーが IP アドレスとポートのすべての組み合わせに対して待機することを想定しています。ポート 80 以外の別のポート番号で待機するように Web サーバー構成をカスタマイズしている場合は、構成ファイル (magnus.conf) が IP アドレスとポートのすべての組み合わせを含んでいることを確認してください。障害モニターは、このようなすべての組み合わせを検証しようとし、IP アドレスとポートの特定の組み合わせで Web サーバーが待機していない場合には、検証に失敗します。

検証機能は、次の操作を行います。

  1. 検証機能は、指定した IP アドレスとポートの組み合わせを使用し、Web サーバーに接続します。正しく接続できない場合は、検証機能は致命的な異常が発生したと判断します。その後、検証機能はこの異常を記録し、適切な処理を行います。

  2. 検証機能が正しく接続した場合は、Web サーバーがセキュアモードで実行されているかどうかを調べます。セキュアモードで実行されている場合は、検証機能は Web サーバーとの接続を解除し、サーバーの状態が正常であると判断します。セキュア Sun ONE Web Server に対しては、これ以上の検査は行われません。

    ただし、Web サーバーが非セキュアモードで実行されている場合は、検証機能は HTTP 1.0 HEAD 要求を Web サーバーに送信し、応答を待ちます。ネットワークトラフィックスの混雑、過剰なシステム負荷、不適切な構成など、さまざまな理由によって要求が正しく処理できないことがあります。

    不適切な構成は、検証される IP アドレスとポートのすべての組み合わせに対し、Web サーバーが待機するように構成されていない場合に生じます。Web サーバーは、このリソースに指定した各 IP アドレスに対し、それぞれポートを提供する必要があります。

    また、リソースの作成時に、Network_resources_used および Port_list リソースプロパティを正しく設定しないと、不適切な構成が生じます。

    Probe_timeout リソースの制限時間内に照会に対する応答を受信しない場合は、検証機能は Sun Cluster HA for Sun ONE Web Server で異常が発生したと判断します。この異常は、検証の履歴に記録されます。

    検証異常は、致命的な異常または部分的異常になります。致命的な異常とみなされる検証異常は、以下のとおりです。

    • サーバーへの接続に失敗した場合。次のエラーメッセージが表示されます。%s はホスト名、%d はポート番号です。


      Failed to connect to %s port %d
    • サーバーに接続しようとしてタイムアウト (Probe_timeout リソースプロパティのタイムアウト値を超過) した場合。

    • 検証文字列をサーバーに送信することに失敗した場合。次のエラーメッセージが表示されます。最初の %s はホスト名、%d はポート番号です。最後の %s はエラーの詳細です。


      Failed to communicate with server %s port %d: %s

    モニターは、Retry_interval リソースプロパティで指定した期間内で、以下に示す 2 つの部分的異常を累積し、1 つの異常としてカウントします。

    部分的異常とみなされる検証異常は次のとおりです。

    • 検証機能による照会に対し、サーバーからの応答を読み取ろうとしてタイムアウト (Probe_timeout リソースプロパティのタイムアウト値を超過) した場合。

    • その他の理由によってサーバーからデータを読み取ることに失敗した場合。次のエラーメッセージが表示されます。最初の %s はホスト名、%d はポート番号です。最後の %s はエラーの詳細です。


      Failed to communicate with server %s port %d: %s
  3. 異常履歴に基づいて、データサービスのローカルでの再起動、またはデータサービスのフェイルオーバーのいずれかを実行します。詳細は、データサービスの状態の検査を参照してください。