Sun Cluster Data Service for Sun Java System Web Server ガイド (Solaris OS 版)

Sun Cluster HA for Sun Java System Web Server の登録と構成

Sun Cluster HA for Sun Java System Web Server は、フェイルオーバーデータサービスまたはスケーラブルデータサービスとして構成できます。 Sun Cluster HA for Sun Java System Web Server をスケーラブルデータサービスとして構成する場合には、追加の手順を実行する必要があります。 ここでは、文頭に「スケーラブルサービスのみ」と明記しスケーラブルサービスの場合の追加手順を先に説明します。 フェイルオーバーサービスとスケーラブルサービスの個々の例は、その後ご説明します。

Sun Cluster HA for Sun Java System Web Server の登録と構成

この節では、Sun Cluster HA for Sun Java System Web Server の登録と構成の方法について解説します。

scrgadm (1M) コマンドを使用した Sun Cluster HA for Sun Java System Web Server の登録方法と構成方法について説明します。


注 –

データサービスはここで説明するオプション以外のオプションを使用して登録と構成を行えます。 これらのオプションに関する詳細については、『Sun Cluster データサービスの計画と管理 (Solaris OS 版)』の「データサービスリソースを管理するためのツール」を参照してください。


この手順を実行するには、次の情報を確認しておく必要があります。


注 –

この手順は、すべてのクラスタメンバー上で実行します。


  1. クラスタメンバー上でスーパーユーザーになります。

  2. Sun Cluster HA for Sun Java System Web Server のリソースタイプを登録します。


    # scrgadm -a -t SUNW.iws
    
    -a

    データサービスのリソースタイプを追加します。

    -t SUNW.iws

    当該データサービス用にあらかじめ定義されているリソースタイプを指定します。

  3. ネットワークとアプリケーションのリソースを格納するためのフェイルオーバーリソースグループを作成します。

    フェイルオーバーサービスの場合には、このリソースグループはアプリケーションリソースも保持します。

    -h オプションを必要に応じて指定し、データサービスを実行できるノードグループを選択できます。


    # scrgadm -a -g resource-group [-h nodelist]
    -g resource-group

    フェイルオーバーリソースグループの名前を指定します。 どのような名前でもかまいませんが、クラスタ内のリソースグループごとに一意である必要があります。

    -h nodelist

    マスターを識別する物理ノード名または ID をコンマで区切って指定します (任意)。 フェイルオーバー時、ノードはこのリスト内の順番に従ってプライマリとして判別されます。


    注 –

    -h は、ノードリストの順序を指定するために使用します。 クラスタ内のすべてのノードが潜在マスターの場合、-h オプションを使用する必要はありません。


  4. 使用しているすべてのネットワークアドレスがネームサービスデータベースに追加されていることを確認します。

    Sun Cluster のインストール時に、この確認を行なっておく必要があります。 詳細については、『Sun Cluster ソフトウェアのインストール (Solaris OS 版)』の計画に関する章を参照してください。


    注 –

    ネームサービスの検索が原因で障害が発生するのを防ぐために、サーバーとクライアントの /etc/inet/hosts ファイルに、すべての論理ホスト名と共有アドレスが登録されていることを確認してください。 サーバーの /etc/nsswitch.conf のネームサービスマッピングは、NIS または NIS+ にアクセスする前に、最初にローカルファイルを検査するように構成してください。


  5. ネットワークリソース (論理ホスト名または共有アドレス) をフェイルオーバーリソースグループに追加します。


    # scrgadm -a {-S | -L} -g resource-group \
    -l network-resource,… [-j resource] \
    [-X auxnodelist=node, …] [-n netiflist]
    -S | -L

    共有アドレスリソースには -S を、論理ホスト名リソースには -L を使用します。

    -g resource-group

    フェイルオーバーリソースグループの名前を指定します。

    -l network-resource, …

    追加するネットワークリソースをコンマで区切って指定します。 -j オプションを使用してリソース名を指定できます。 リソース名を指定しないと、ネットワークリソースの名前は、コンマで区切ったリストの最初の名前になります。

    -j resource

    リソースの名前を指定します (省略可能)。 リソース名を指定しない場合、ネットワークリソース名は、デフォルトで -l オプションで最初に指定した名前になります。

    -X auxnodelist =node, …

    共有アドレスをホストできるクラスタノード (ただし、フェイルオーバー時に主ノードとして使用されない) を識別する物理ノード ID をコンマで区切って指定します (オプション)。 このオプションを指定した場合は、これらのノードは、リソースグループの nodelist で指定されるノードと相互に排他的になります。

    -g resource-group

    リソースグループの名前を指定します。 どのような名前でもかまいませんが、クラスタ内のリソースグループごとに一意である必要があります。

    -h nodelist

    潜在マスターを識別する物理ノード名または ID をコンマで区切ったリストで指定します (省略可能)。 フェイルオーバー時、ノードはこのリスト内の順番に従ってプライマリとして判別されます。

    -n netiflist

    各ノード上の IP ネットワークマルチパス グループをコンマで区切って指定します (省略可能)。 netiflist の各要素は、netif@node の形式で指定する必要があります。 netif は IP ネットワークマルチパス グループ名 (sc_ipmp0 など) として指定できます。 ノードは、sc_ipmp0@1sc_ipmp@phys-schost-1 などのノード名またはノード IDで特定できます。


    注 –

    Sun Cluster では、現在、netif にアダプタ名を使用することはできません。


  6. スケーラブルサービスのみ : 希望するすべてのクラスタノードで実行するスケーラブルリソースグループを作成します。

    Sun Cluster HA for Sun Java System Web Server をフェイルオーバーデータサービスとして実行する場合は、この手順を省略して手順 8 に進んでください。

    データサービスアプリケーションリソースを保持するリソースグループを作成します。 主ノードの最大数と希望数、およびこのリソースグループと 手順 3 で作成したフェイルオーバーリソースグループとの間の依存性について指定する必要があります。 この依存性によって、フェイルオーバー時に、Resource Group Manager (RGM) は、ネットワークリソースに依存する任意のデータサービスが開始される前に、そのネットワークリソースを開始できます。


    # scrgadm -a -g resource-group \
    -y Maximum_primaries=m -y Desired_primaries=n \
    -y RG_dependencies=resource-group
    
    -y Maximum_primaries =m

    このリソースグループに許可するアクティブ主ノードの最大数を指定します。 このプロパティに値を指定しない場合は、デフォルトの 1 になります。

    -y Desired_primaries =n

    このリソースグループに許可するアクティブ主ノードの希望数を指定します。 このプロパティに値を指定しない場合は、デフォルトの 1 になります。

    -y RG_dependencies = resource-group

    作成されたリソースグループが依存する共有アドレスリソースを含むリソースグループを指定します。

  7. スケーラブルサービスのみ : スケーラブルリソースグループにアプリケーションリソースを作成します。

    Sun Cluster HA for Sun Java System Web Server をフェイルオーバーデータサービスとして実行する場合は、この手順を省略して 手順 8 に進んでください。

    この手順を繰り返し、複数のアプリケーションリソース (セキュアバージョンや非セキュアバージョンなど) を追加できます。

    必要に応じて、データサービスの負荷均衡を設定します。 負荷均衡を設定するには、標準リソースプロパティの Load_balancing_policyLoad_balancing_weights を使用します。 これらのプロパティの解説につては、『 Sun Cluster データサービスの計画と管理 (Solaris OS 版)』の「標準プロパティ」を参照してください。 また、この節で説明している例も参照してください。


    # scrgadm -a -j resource -g resource-group \
    -t resource-type -y Network_resources_used=network-resource, … \
    -y Port_list=port-number/protocol, … -y Scalable=True \
    -x Confdir_list=config-directory, …
    -j resource

    追加するリソースの名前を指定します。

    -g resource-group

    リソースが配置されるスケーラブルリソースグループの名前を指定します。

    -t resource-type

    追加するリソースのタイプを指定します。

    -y Network_resources_used = network-resource, …

    データサービスが使用する共有アドレスを指定するネットワークリソース名をコンマで区切って指定します。

    -y Port_list =port-number/protocol, …

    使用するポート番号とプロトコルの対をコンマで区切って指定します (例 : 80/tcp, 81/tcp)。

    -y Scalable =True

    スケーラブルサービスに必要なブール値を指定します。

    -x Confdir_list =config-directory, …

    Sun Java System 構成ファイルの位置をコンマで区切って指定します。 これは、Sun Cluster HA for Sun Java System Web Server の必須拡張プロパティです。


    注 –

    1 対 1 のマッピングは、Confdir_ListPort_List に適用されます。一方のリストに含まれる各値は、指定した順に、もう一方のリストの値と対応する必要があります。


  8. フェイルオーバーサービスのみ : フェイルオーバーリソースグループにアプリケーションリソースを作成します。

    この手順は、Sun Cluster HA for Sun Java System Web Server をフェイルオーバーデータサービスとして実行する場合だけ行なってください。 Sun Cluster HA for Sun Java System Web Server をスケーラブルサービスとして実行する場合は、前述の 手順 6 および 手順 7 を実行し、手順 10 へ進んでください。

    この手順を繰り返し、複数のアプリケーションリソース (セキュアバージョンや非セキュアバージョンなど) を追加できます。


    # scrgadm -a -j resource -g resource-group \
    -t resource-type -y Network_resources_used=logical-hostname-list \
    -y Port_list=port-number/protocol \
    -x Confdir_list=config-directory
    
    -j resource

    追加するリソースの名前を指定します。

    -g resource-group

    リソースが配置されるフェイルオーバーリソースグループの名前を指定します。

    -t resource-type

    追加するリソースのタイプを指定します。

    -y Network_resources_used =network-resource, …

    データサービスが使用する論理ホストを識別するネットワークリソースをコンマで区切って指定します。

    -y Port_list =port-number/protocol

    使用するポート番号とプロトコルを指定します (例:80/tcp)。 Port_listConfdir_list 間の 1 対 1 のマッピング規則により、フェイルオーバーサービスのための Port_list には、エントリを 1 つだけ登録します。

    -x Confdir_list =config-directory

    Sun Java System 構成ファイルの格納場所を指定します。 フェイルオーバーサービス用の Confdir_list には、エントリを 1 つだけ登録します。 config-directory には、config という文字が含まれているディレクトリを指定する必要があります。 これは、Sun Cluster HA for Sun Java System Web Server の必須拡張プロパティです。


    注 –

    必要に応じて、Sun Cluster HA for Sun Java System Web Server に属する拡張プロパティを追加設定することで、プロパティのデフォルト値を上書きできます。 これらのプロパティについては、表 1–2 を参照してください。


  9. フェイルオーバーリソースグループをオンラインにします。


    # scswitch -Z -g resource-group
    
    -Z

    ネットワークリソースと障害モニターを有効にし、リソースグループを管理状態 ( MANAGED) に切り替え、オンラインにします。

    -g resource-group

    フェイルオーバーリソースグループの名前を指定します。

  10. スケーラブルサービスのみ : スケーラブルリソースグループをオンラインにします。


    # scswitch -Z -g resource-group
    
    -Z

    リソースとモニターを有効に設定し、リソースグループを MANAGED 状態にし、オンラインにします。

    -g resource-group

    スケーラブルリソースグループの名前を指定します。

例: スケーラブル Sun Cluster HA for Sun Java System Web Server の登録

次に、スケーラブル Sun Cluster HA for Sun Java System Web Server の登録方法を示します。


Clister Information
Node names: phys-schost-1, phys-schost-2
Shared address: schost-1
Resource groups: sa-resource-group-1 (共有アドレス),
iws-resource-group-1 (スケーラブルアプリケーションリソース)
Resources: schost-1 (共有アドレス), Sun-app-insecure-1 (非セキュア
アプリケーションリソース), Sun-app-secure-1 (セキュアアプリケーションリソース)
 
(共有アドレスを含むようにフェイルオーバーリソースグループを追加する)
# scrgadm -a -g sa-resource-group-1
 
(フェイルオーバーリソースグループに共有アドレスリソースを追加する)
# scrgadm -a -S -g sa-resource-group-1 -l schost-1
 
(スケーラブルリソースグループを追加する)
# scrgadm -a -g iws-resource-group-1 -y Maximum_primaries=2 \
-y Desired_primaries=2 -y RG_dependencies=sa-resource-group-1
 
(Sun Cluster HA for Sun Java System Web Server リソースタイプを登録する)
# scrgadm -a -t SUNW.iws
 
(デフォルトの負荷分散を使用して非セキュアアプリケーションインスタンスを追加する)
# scrgadm -a -j Sun-app-insecure-1 -g iws-resource-group-1 -t SUNW.iws \
-x Confdir_List=/opt/SunONE/https-Sun-app-insecure-1 \
-y Scalable=True -y Network_resources_used=schost-1 -y Port_list=80/tcp 

(スティッキー IP 負荷分散を使用してセキュアアプリケーションインスタンスを追加する)
# scrgadm -a -j Sun-app-secure-1 -g iws-resource-group-1 -t SUNW.iws \
-x Confdir_List=/opt/SunONE/https-Sun-app-secure-1 \
-y Scalable=True -y Network_resources_used=schost-1 \
-y Port_list=443/tcp -y Load_balancing_policy=LB_STICKY \
-y Load_balancing_weights=40@1,60@2
 

(フェイルオーバーリソースグループをオンラインにする)
# scswitch -Z -g sa-resource-group-1
 
(スケーラブルリソースグループをオンラインにする)
# scswitch -Z -g iws-resource-group-1

例: フェイルオーバー Sun Cluster HA for Sun Java System Web Server の登録

次に、フェイルオーバー Sun Cluster HA for Sun Java System Web Server サービスを 2 ノードクラスタで登録する例を示します。


Cluster Information
Node names: phys-schost-1, phys-schost-2
Logical hostname: schost-1
Resource group: resource-group-1 (すべてのリソース) 
Resources: schost-1 (論理ホスト名), Sun-app-insecure-1 (非セキュアアプリケーション 
アプリケーションリソース), Sun-app-secure-1 (セキュアアプリケーションリソース)
 
(すべてのリソースを含むようにリソースグループを追加する)
# scrgadm -a -g resource-group-1
 
(論理ホスト名リソースをリソースグループに追加する)
# scrgadm -a -L -g resource-group-1 -l schost-1 
 
(Sun Cluster HA for Sun Java System Web Server リソースタイプを登録する)
# scrgadm -a -t SUNW.iws
 
(非セキュアアプリケーションリソースインスタンスを追加する)
# scrgadm -a -j Sun-app-insecure-1 -g resource-group-1 -t SUNW.iws \
-x Confdir_list=/opt/SunONE/conf -y Scalable=False \
-y Network_resources_used=schost-1 -y Port_list=80/tcp\ 

(セキュアアプリケーションリソースインスタンスを追加する)
# scrgadm -a -j Sun-app-secure-1 -g resource-group-1 -t SUNW.iws \ 
-x Confdir_List=/opt/SunONE/https-Sun-app-secure-1 -y Scalable=False \
-y Network_resources_used=schost-1 -y Port_list=443/tcp \ 

(フェイルオーバーリソースグループをオンラインにする)
# scswitch -Z -g resource-group-1

SUNW.HAStoragePlus リソースタイプを構成する

Sun Cluster 3.0 5/02 では、SUNW.HAStoragePlus リソースタイプが 取り入れられています。この新しいリソースタイプは SUNW.HAStorage と同じ機能を果たし、HA ストレージおよびデータサービス間でアクションを同期化します。

SUNW.HAStoragePlus には、ローカルファイルシステムを高可用性にする追加機能があります。

背景情報については、SUNW.HAStoragePlus(5) のマニュアルページと『Sun Cluster データサービスの計画と管理 (Solaris OS 版)』の「リソースグループとディスク装置グループの関係」を参照してください。 新しいリソースの設定手順については、『Sun Cluster データサービスの計画と管理 (Solaris OS 版)』の「リソースグループとディスクデバイスグループ間での起動の同期」を参照してください。 (Sun Cluster 3.0 5/02 より前のバージョンを使用している場合は、SUNW.HAStoragePlus ではなく、SUNW.HAStorage を設定する必要があります。 新しいリソースの設定手順については、『Sun Cluster データサービスの計画と管理 (Solaris OS 版)』の「リソースグループとディスクデバイスグループ間での起動の同期」を参照してください。)