この章では、Sun Cluster dataservice for SWIFT alliance Access のインストールと構成の方法について説明します。
この章の内容は次のとおりです。
表 1 に、Sun Cluster HA for SWIFTAlliance Access のインストールと構成に必要な作業を示します。指定された順番どおりに、各作業を行なってください。
表 1 Task Map: Sun Cluster HA for SWIFTAlliance Access のインストールと構成
作業 |
参照先 |
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1. インストールについて計画します。 | |
2. Sun Cluster HA for SWIFTAlliance Access パッケージをインストールします。 | |
3. インストールと構成を確認します。 | |
4. Sun Cluster HA for SWIFTAlliance Access を登録して構成します。 | |
5. Sun Cluster HA for SWIFTAlliance Access のインストールと構成を確認します。 | |
6. Sun Cluster HA for SWIFTAlliance Access の障害モニターについて理解します。 | |
7. Sun Cluster HA for SWIFTAlliance Access をデバッグします。 |
HA エージェントは、SWIFTAlliance Access バージョン 4 およびバージョン 5 で動作するように作成されています。SWIFTAlliance Access は DCE に依存するため、Solaris 対応の IBM DCE バージョン v3.2 ソフトウェアもインストールする必要があります。SWIFTAlliance AccessTM は SWIFT の商標です。
Sun Cluster HA for SWIFTAlliance Access データサービスのメカニズムによって、Sun Cluster サービスの順序正しい起動、停止、障害モニター、自動フェイルオーバーを実行できます。次に、Sun Cluster HA for SWIFTAlliance Access データサービスによって保護される Sun Cluster コンポーネントを示します。
表 2 コンポーネントの保護
構成要素 |
コンポーネントを保護するデータサービス |
---|---|
DCE デーモン |
Sun Cluster HA for SWIFTAlliance Access |
SWIFT Alliance Access |
Sun Cluster HA for SWIFTAlliance Access |
HA エージェントは、DCE コンポーネントに対してのみ障害モニターを提供します。SWIFTAlliance Access が停止した場合、自動的な再起動は行われません。この動作は SWIFT により明示的に要求されていました。Sun Cluster ソフトウェアに慣れていないユーザーは、クラスタ上で稼働していない場合と同様にこのアプリケーションを操作できます。HA エージェントは、起動、停止、フェイルオーバー、およびスイッチオーバーを実行します。これは、あるノードに障害が発生した場合、もう一方のノードが自動的にアプリケーションを起動することを意味します。
ここでは、Sun Cluster HA for SWIFTAlliance Access のインストールと構成の計画について説明します。
ここでは、Sun Cluster HA for SWIFTAlliance Access にのみ適用されるソフトウェアとハードウェア構成の制限事項を示します。
これらの制限事項を守らないと、データサービスの構成がサポートされない場合があります。
Sun Cluster HA for SWIFTAlliance Access は、HA エージェントとしてのみ構成でき、スケーラブルエージェントとして構成することはできません。
SWIFTAlliance Access ソフトウェアは、グローバルファイルシステムにインストールできます。フェイルオーバーファイルシステムを使用するのが最良です。IBM DCE ソフトウェアは、ローカルストレージにインストールする必要があります。
すべてのデータサービスに適用される制限事項については、『Sun Cluster Release Notes』を参照してください。
これらの要件は、Sun Cluster HA for SWIFTAlliance Access にのみ適用されます。Sun Cluster HA for SWIFTAlliance Access のインストールと構成を始める前に、次の要件を満たしておく必要があります。必須パッチレベルのインストールとソフトウェア自体のインストールについては、SWIFTAlliance Access のインストールガイドに従ってください。
次の要件を満たさないと、データサービスの構成がサポートされない場合があります。
Sun Cluster コンポーネントと依存関係 — Sun Cluster HA for SWIFTAlliance Access データサービスは、Sun Cluster インスタンスとそれぞれのコンポーネントを保護するように構成してください。以下に、これらのコンポーネントと依存関係について簡単に説明します。
構成要素 |
説明 |
---|---|
DCE デーモン |
-> SUNW.LogicalHost リソース |
SWIFTAlliance Access |
-> SUNW.LogicalHost リソース -> SUNW.HAStoragePlus リソース SUNW.HAStoragePlus リソースは SWIFTAlliance Access システムのマウントポイントを管理し、これらがマウントされるまでは Sun Cluster が起動しないようにします。 -> DCE デーモン |
Sun Cluster コンポーネントには、/opt/SUNWscsaa/util に 2 つの構成および登録ファイルがあります。これらのファイルにより、 デフォルト値を使用して Sun Cluster コンポーネントを Sun Cluster に登録することができます。
これらのファイル内では、適切な依存関係がすでに定義されています。リソースに別の名前を使用する場合は、saa_config ファイルを更新してから saa_register スクリプトを実行する必要があります。
この節では SWIFTAlliance Access のインストールと構成に必要な手順を説明します。
このあとの節では SWIFTAlliance Access の特定のディレクトリ名が示されていますが、これらのディレクトリはユーザー自身で選択できます。
次の手順で SWIFTAlliance Access をインストールおよび構成します。
SWIFTAlliance Access 用のリソースを作成します。
SWIFTAlliance Access 用のリソースグループを作成する
# scrgadm -a -g swift-rg |
論理ホストを作成する – DCE には論理ホストが必要です。両方のクラスタノードで、/etc/hosts ファイルにホスト名と IP アドレスを追加してください。論理ホストを登録し、それをリソースグループに追加します。
# scrgadm -a -L -g swift-rg -j swift-saa-lh-rs -l swift-lh |
デバイスグループとファイルシステムを作成する — グローバルファイルシステムの作成手順については、『Sun Cluster 3.1 ソフトウェアのインストール』を参照してください。
HAstoragePlus リソースを作成する –グローバルストレージを使用できますが、できるだけ HAStoragePlus フェイルオーバーリソースを作成して、SWIFTAlliance Access アプリケーションと構成データを組み込んでください。
例ではパスとして /global/saadg/alliance を使用していますが、任意の保管場所を選択できます。
# scrgadm -a -g swift-rg \ -j swift-ds \ -t SUNW.HAStoragePlus \ -x FilesystemMountPoints=/global/saadg/alliance |
リソースグループをオンラインにする —
# scswitch -Z -g swift-rg |
構成ディレクトリを作成する — SWIFTAlliance Access 情報を保管する構成ディレクトリを作成し、/usr からのリンクを作成します。
# cd /global/saadg/alliance |
# mkdir swa |
# ln -s /global/saadg/alliance /usr/swa |
すべてのノードに IBM DCE クライアントソフトウェアをインストールします。
SWIFTAlliance Access は IBM DCE クライアントソフトウェアを必要とします。このソフトウェアは、SWIFTAlliance Access アプリケーションよりも前にインストールおよび構成する必要があります。
IBM DCE クライアントソフトウェアをインストールする — ローカルディスクを使用してこのソフトウェアをインストールします。このソフトウェアは Sun パッケージ形式 (IDCEclnt) で提供されています。インストールされたファイルはシステム上のさまざまな場所に置かれるため、このソフトウェアをグローバルファイルシステムにインストールすることは推奨できません。このソフトウェアは、両方のクラスタノードにインストールしてください。
# pkgadd -d ./IDCEclnt.pkg |
# /opt/dcelocal/tcl/config.dce —cell_name swift —dce_hostname swift-lh RPC |
両方のノードでテストを実行します。
# /opt/dcelocal/tcl/start.dce |
dced デーモンが動作していることを確認します。
# /opt/dcelocal/tcl/stop.dce |
SWIFTAlliance Access ソフトウェアをインストールします。
このソフトウェアのインストールには、共用ストレージを使用します。インストール手順ではシステムファイルが変更され、またシステムの再起動も行われます。再起動後は同じノード上でインストールを継続する必要があります。もう 1 つのノードでもソフトウェアのインストールを繰り返してください (アクセスコードを指定する前にインストールを終える必要があります)。
SWIFTAlliance Access のその他の構成
— クライアントがフェイルオーバー IP アドレスに接続できるように、SWIFTAlliance Access ソフトウェアのデータサブディレクトリに、.alliance_ip_name という名前のファイルを作成します。
例と同じファイルシステムを使用する場合、ディレクトリは /global/saadg/alliance/data になります。このファイルには、SAA リソース内で構成された論理ホストの IP アドレスが含まれている必要があります。
この節では、インストールと構成の確認に必要な手順を説明します。
データサービスをまだインストールしていないため、この手順ではアプリケーションの可用性が高いかどうかを確認することはできません。
SWIFTAlliance Access アプリケーションを起動します。
# su - all_adm |
アプリケーションの GUI が起動するはずです。DCE が起動していない場合は、GUI から起動してください。「OS Configuration」、「DCE RPC」、「Alliance」、「Start SWIFTAlliance Servers」の順に選択します。
アプリケーションをテストします。
GUI を起動し、メニュー項目を「Alliance」、「Start User Interface」の順に選択します。
SWIFTAlliance Access アプリケーションを停止します
GUI が起動していない場合は、GUI を起動します。
# su - all_adm |
メニューで「Alliance」、「Stop SWIFTAlliance Servers」の順に選択します。
Sun Cluster の初回のインストール時に Sun Cluster dataservice for SWIFT alliance Access パッケージをインストールしなかった場合は、この手順でパッケージをインストールしてください。この手順は、Sun Cluster dataservice for SWIFT alliance Access パッケージをインストールする各クラスタノード上で個別に実行します。この手順を実行するには、Sun Cluster Agents CD-ROM が必要です。
複数のデータサービスを同時にインストールする場合は、『Sun Cluster ソフトウェアのインストール (Solaris OS 版)』の「ソフトウェアのインストール」に記載されている手順を実行してください。
次のインストールツールのどちらかを使用して、Sun Cluster dataservice for SWIFT alliance Access パッケージをインストールします。
Web Start プログラム
scinstall ユーティリティー
Web Start プログラムは、Sun Cluster 3.1 Data Services 10/03 より前のリリースでは使用できません。
Web Start プログラムは、コマンド行インタフェース (CLI) またはグラフィカルユーザーインタフェース (GUI) を使用して実行できます。CLI と GUI での作業の内容と手順はほとんど同じです。Web Start プログラムの詳細は、installer(1M) のマニュアルページを参照してください。
Sun Cluster dataservice for SWIFT alliance Access パッケージをインストールするクラスタノード上で、スーパーユーザーになります。
(省略可能) GUI で Web Start プログラムを実行する場合は、DISPLAY 環境変数が設定されていることを確認してください。
CD-ROM ドライブに Sun Cluster Agents CD-ROM を挿入します。
ボリューム管理デーモン vold(1M) が実行されており、CD-ROM デバイスを管理するように構成されている場合は、デーモンによって CD-ROM が自動的に /cdrom/cdrom0 ディレクトリにマウントされます。
CD-ROM の Sun Cluster dataservice for SWIFT alliance Access コンポーネントディレクトリに移動します。
Sun Cluster dataservice for SWIFT alliance Access データサービスの Web Start プログラムは、このディレクトリに入っています。
# cd /cdrom/cdrom0/components/SunCluster_HA_SWIFT_3.1 |
Web Start プログラムを起動します。
# ./installer |
表示される手順に従って、ノードに Sun Cluster dataservice for SWIFT alliance Access パッケージをインストールします。
インストールが終了すると、Web Start プログラムのインストールサマリーが出力されます。このサマリーを使用して、インストール時に Web Start によって作成されたログを確認できます。これらのログは /var/sadm/install/logs ディレクトリに置かれます。
Web Start プログラムを終了します。
Sun Cluster Agents CD-ROM を CD-ROM ドライブから取り出します。
ここでは Sun Cluster HA for SWIFTAlliance Access の構成手順について説明します。
この手順は、Sun Cluster の初回のインストール時にこのデータサービスパッケージをインストールしている場合を想定しています。
IBM DCE および SWIFTAlliance Access ソフトウェアがインストールできる状態にある場合は、手順 1 から 6 は通常すでに終了しています。「SWIFTAlliance Access のインストールおよび構成の方法」を参照してください。通常は、手順 7 に直接進みます。
Sun Cluster のホストとなるクラスタノードの 1 つで、スーパーユーザーになります。
# scrgadm -a -t SUNW.gds |
SUNW.HAStoragePlus リソースタイプを登録します。
# scrgadm -a -t SUNW.HAStoragePlus |
# scrgadm -a -g swift-rg |
Sun Cluster ディスク記憶装置用のリソースを作成します。
# scrgadm -a -j swift-ds \ -g swift-rg \ -t SUNW.HAStoragePlus \ -x FilesystemMountPoints=/global/saadg/alliance |
Sun Cluster 論理ホスト名用のリソースを作成します。
# scrgadm -a -L -j swift-lh-rs \ -g swift-rg \ -l swift-lh |
SWIFTAlliance Access 用のリソースを作成します。
SWIFTAlliance Access HA エージェントに組み込まれている登録スクリプトを実行してください。このスクリプトを実行する前に、次の操作を行なってください。
リソース名が /opt/SUNWscsaa/util/saa_config に設定されている名前と一致していることを確認してください。
# /opt/SUNWscsaa/util/saa_register |
Sun Cluster ディスク記憶装置と論理ホスト名のリソースが組み込まれたフェイルオーバーリソースグループを有効にします。
# scswitch -Z -g swift-rg |
SWIFTAlliance Access インスタンスを手動で起動します。
su - all_adm The GUI will open up. From within the GUI, select the menu Alliance - Start Alliance Servers |
SWIFTAlliance Access を手動で停止します。
su - all_adm The GUI will come up. Stop the application from within the GUI. |
各 Sun Cluster リソースを有効にします。
# scstat -g # scswitch -e -j Sun Cluster-resource |
ここでは、データサービスが正しくインストールされ構成されているかどうかを確認する手順について説明します。
Sun Cluster のホストとなるクラスタノードの 1 つで、スーパーユーザーになります。
scstat を使用して、すべての Sun Cluster リソースがオンラインになっていることを確認します。
# scstat |
オンラインになっていない Sun Cluster リソースごとに、次のように scswitch コマンドを実行します。
# scswitch -e -j Sun Cluster- resource |
scswitch コマンドを実行し、Sun Cluster リソースグループをほかのクラスタノード (node2 など) に切り替えます。
# scswitch -z -g swift-rg -h node2 |
第 1 のノードで SWIFTAlliance Access が停止し、第 2 のノードでアプリケーションが再起動していることを確認します。
フェイルオーバーファイルシステムを使用している場合は、最初のノードからファイルシステムがなくなり、第 2 ノードにマウントされます。
ここでは、Sun Cluster HA for SWIFTAlliance Access 障害モニターの検証アルゴリズム (機能) について説明するとともに、検証の失敗に関連する条件、メッセージ、回復処理を示します。
障害モニターの概念については、『Sun Cluster 3.1 の概念』を参照してください。
Sun Cluster HA for SWIFTAlliance Access 障害モニターでは、SUNW.gds というリソースタイプと同じリソースプロパティーを使用します。使用するリソースプロパティーの全リストについては、SUNW.gds(5) のマニュアルページを参照してください。
障害モニターが検証するのは DCE デーモンだけです。SWIFTAlliance Access に組み込まれている実行可能ファイルは検証しません。これは Swift からの明示的な要求です。これにより、オペレータはクラスタに注意を払うことなく SWIFTAlliance Access の起動と停止を行うことができます。
自動フェイルオーバーが発生した場合、可能性として最も高いのは DCE の問題です。SWIFTAlliance Access アプリケーションによるフェイルオーバーは、現在のノードで起動できなかった場合だけ発生します。
Sun Cluster HA for SWIFTAlliance Access は複数の Sun Cluster インスタンスで使用できます。デバッグは、すべての Sun Cluster インスタンスに対して有効にすることも、特定の Sun Cluster インスタンスに対して有効にすることもできます。
Sun Cluster コンポーネントごとに DEBUG ファイルがあり、/opt/SUNWscsaa/etc に格納されます。saa は、個々の Sun Cluster コンポーネントを表す 3 文字の略語です。
これらのファイルによって、Sun Cluster の特定のノードで特定の Sun Cluster インスタンスに対してデバッグを有効にすることも、またはすべての Sun Cluster インスタンスに対してデバッグを有効にすることもできます。Sun Cluster 全体で Sun Cluster HA for SWIFTAlliance Access のデバッグを有効にする必要がある場合は、この手順を Sun Cluster 内のすべてのノードで繰り返します。
/etc/syslog.conf を編集します。
daemon.notice を daemon.debug に変更してください。
# grep daemon /etc/syslog.conf *.err;kern.debug;daemon.notice;mail.crit /var/adm/messages *.alert;kern.err;daemon.err operator # |
daemon.notice を daemon.debugに変更し、syslogd を再起動します。次に示す grep daemon /etc/syslog.conf コマンドの出力例では、daemon.debug が設定されています。
# grep daemon /etc/syslog.conf *.err;kern.debug;daemon.debug;mail.crit /var/adm/messages *.alert;kern.err;daemon.err operator # # pkill -1 syslogd # |
/opt/SUNWscsaa/etc/config を編集します。
DEBUG= を DEBUG=ALL または DEBUG=resource に変更してください。
# cat /opt/SUNWscsaa/etc/config # # Copyright 2003 Sun Microsystems, Inc. All rights reserved. # Use is subject to license terms. # # Usage: # DEBUG=<RESOURCE_NAME> or ALL # DEBUG=ALL # |
デバッグを無効にするには、この手順を逆に実行して下さい。