Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアでは、クラスタのグループを単一の大規模システムとして管理し、表示することができます。この章では、Sun Cluster Geographic Edition のアーキテクチャーの概要を示します。この情報は、Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアのインストール、構成、管理の準備作業で使用できます。
この章の内容は、次のとおりです。
Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアには、地理的に離れたクラスタを管理するためのツールが用意されています。また、Sun Cluster Geographic Edition 製品は、Sun Cluster リソース管理機能を利用することにより、クラスタ内での高可用性サービスも提供します。
Sun Cluster Geographic Edition クラスタは、次のソフトウェアコンポーネントから形成されます。
SolarisTM 8 または Solaris 9 ソフトウェア
Sun Cluster ソフトウェア
Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェア
Application Data Service Agent
Sun StorEdge Availability Suite 3.2.1 ソフトウェア
データ複製ソフトウェア
Solaris ボリュームマネージャー または Veritas Volume Manager
次の図は、Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアコンポーネントの関係を示しています。
Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアは、基本となる Sun Cluster インストールとは無関係にインストールと削除が行えます。インストール作業またはアンインストール作業を行うために、別途ノードを起動したり、クラスタを停止したりする必要はありません。
Sun Cluster ハードウェア構成は、Sun Cluster Geographic Edition クラスタのベースとなるものです。
このベースに次のハードウェアコンポーネントが加わることで、Sun Cluster Geographic Edition クラスタが形成されます。
データストレージが装備された Sun Cluster ハードウェアインストール
Sun Cluster インストール同士でクラスタ間管理通信用を行うためのインターネット接続
クラスタ間ハートビート用のインターネット接続
データ複製用の接続
カスタムハートビート用の接続
Sun Cluster Geographic Edition ハードウェア環境は、次のトポロジをサポートします。
N+1 - 複数のサイトに置かれている複数のクラスタが単一のバックアップクラスタと通信を行うトポロジ
クラスタペア - 両方のクラスタがオンライン状態で、サービスを提供しているトポロジ
図 3–2 に、Sun Cluster Geographic Edition のハードウェアアーキテクチャーの全体図を示します。
Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアでは、パートナークラスタ間の距離は制限されていません。パートナークラスタは、パートナーシップによってホストされる保護グループをサポートする上でデータ複製接続を必要とします。パートナークラスタは、クラスタ間でのデータ複製をサポートするように、互換性を持たせて構成する必要があります。
Sun Cluster Geographic Edition 製品は、シングルノードクラスタからシングルノードクラスタ、マルチノードクラスタからシングルノードクラスタ、およびマルチノードクラスタからマルチノードクラスタヘの複製をサポートします。主クラスタと二次クラスタは、それらのデータ複製方法に互換性がある場合、Sun Cluster 製品がサポートしている任意の構成を使用できます。互換性のレベルは、各データ複製製品によって異なります。
データ複製のための接続は、次の要件によって決まります。
パートナークラスタ間の距離
複製されるデータの量
データ複製の構成パラメタ
Sun Cluster Geographic Edition 製品では、データ整合性と通信コストのバランスをとることができます (この場合、データ整合性とは許容しうるデータ損失の量です)。
次の図は、2 ノードクラスタから 1 ノードクラスタにデータを複製する構成を示しています。
パートナーシップにより、クラスタ間の通信とハートビートが確立されます。1 つのクラスタは、複数のパートナーシップに加わることができます。保護グループにより、パートナークラスタ間のデータ複製が確立されます。各パートナーシップには、複数の保護グループを構成できます。各保護グループは、パートナークラスタ間でさまざまなデータを複製します。
次に、クラスタ間の関係を表す、地理的に分散したトポロジの図を示します。
Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアでは、パートナークラスタ間のハートビートを使用して、1 つのクラスタに複数のパートナーシップを構成できます。たとえば、ジュネーブ - ロンドン - ローマ - ベルリンと結ぶトポロジでは、ジュネーブに中央クラスタを置き、この中央クラスタによってロンドン、ローマ、ベルリンにあるクラスタとの 3 つの個別のパートナーシップを形成できます。これらのパートナーシップは、ロンドンとジュネーブ、ローマとジュネーブ、およびベルリンとジュネーブのクラスタペア間で、双方向のインターネット接続を必要とします。これらのパートナーシップにより、ジュネーブにあるクラスタは、ハートビートを交換し、ロンドン、ベルリン、およびローマに置かれたクラスタの障害を検出できます。
ロンドン、ローマ、およびベルリンにある主クラスタが、ジュネーブにあるクラスタ (二次クラスタ) にデータを複製できるよう、各パートナーシップには保護グループがあります。
次の図に、クラスタ間の関係を示す、地理的に分散したトポロジを示します。
パリとニューヨーク間のトポロジには、2 つの保護グループとパートナーシップを形成する 2 つのクラスタが存在します。各クラスタは、一方の保護グループの主クラスタで、もう一方の保護グループの二次クラスタです。パートナーシップには、クラスタ間管理とハートビート用に、2 つのクラスタ間の双方向インターネット接続が必要です。これらの 2 つのクラスタには、2 つの保護グループのデータ複製をサポートするために、データ複製リンクが必要です。
ジュネーブ - ロンドン - ローマ - ベルリンと結ぶトポロジでは、ジュネーブにあるクラスタが、3 つの保護グループの主クラスタになることができます。ただし、ジュネーブにあるクラスタには、アプリケーションリソースグループによって提供されるすべてのサービスを実行するための適切なプロビジョニングが必要です。
たとえば、保守のためにローマにあるクラスタが停止された場合には、ローマ - ジュネーブの保護グループに対し、制御されたスイッチオーバーを使用することで、ジュネーブにあるクラスタが新しい主クラスタになることができます。ジュネーブにあるクラスタは、ローマ - ジュネーブの保護グループの新しい主クラスタとして、ローマ - ジュネーブの保護グループのアプリケーションリソースグループによって提供されるサービスをホストします。同時に、ジュネーブにあるクラスタは、ロンドンとベルリンにあるクラスタの二次クラスタとして動作します。
同様に、パートナークラスタが不意に消失した場合には、パリ - ニューヨークトポロジでは、一方のクラスタが両方の保護グループに対する主クラスタとしてテイクオーバーを行うことができます。