power コマンドは Sun Enterprise 10000 システムの電源と入出力キャビネットの状態を表示し制御します。このコマンドを使用して、個々のボードや入出力キャビネットの電源を投入または切断したり、過電圧/過小電圧の監視に使用する電圧の限界値を表示または設定することができます。
オプションを指定せずに power コマンドを実行すると、48 ボルト電源、入出力電源、制御ボードとセンタープレーンサポートボードの電源、個々のシステムボードの電源の状態がすべて表示されます。下記の「使用例」を参照してください。
センタープレーンサポートボードとシステムボードの電源の状態は、次のように表示されます。
Good 48V Bulk Power Supplies: 0 2 3 4 Number of Good 48V Bulk Power Supplies: 4 (no redundancy) Required 48V Power Supplies for 8 System Boards: 4 Number of Good Peripheral Cabinet Power Supplies: 0 Centerplane Support Board Average Voltages (V): CSB# 5VDC Vcc HK 3.3VDC Vdd HK 3.3VDC Vdd Core ---- ----------------- ------------- ------------------------- 0 5.047 5.037 3.501 3.311 3.301 3.297 1 5.017 5.017 3.491 3.303 3.302 3.302 System Board Average Voltages (V): 3.3VDC 5VDC 3.3VDC VDC 5VDC SB# Vdd Vcc HK Vdd HK Vdd Core Vcc --- ------- ------- -------- ---------- -------- 0 3.301 5.086 3.407 2.601 5.008 1 3.300 5.022 3.423 2.601 5.013 2 3.300 5.015 3.439 2.607 5.010 3 3.301 5.035 3.434 2.599 5.013 4 3.290 5.015 3.423 1.897 5.005 7 3.301 5.052 3.418 2.604 5.003 8 3.296 5.059 3.429 2.596 5.000 9 3.302 5.025 3.412 2.594 5.008 Control Board Average Voltages (V): 5VDC 5VDC 3.3VDC 5VDC Vcc 5VDC CB# Vcc Vcc HK Vdd HK Peripheral Vcc Fans --- -------- -------- --------- ---------- --------- 0 5.113 5.049 3.420 5.194 5.091 |
上記で、
最初のカラムの 5.0VDC と 3.3VDC は各電源の入力電圧値です。VDC は直流電圧 (Volatage Direct Current) を意味します。センタープレーンのリストでは、5.0VDC HK が 2 回、3.3VDC Vdd が 3 回繰り返されています。これは、5.0VDC HK が 2 つの異なる位置で測定され、3.3VDC Vdd が 3 つの異なる位置で測定されたことを意味します。
システムボードのリストでは、Vdd Core の値は装着されているプロセッサの種類に依存します。この値の範囲は 2.5 〜 3.7VDC です。JTAG はアナログ/デジタル変換器にアクセスして、プロセッサモジュール上の抵抗器を読み、実際の値を判別します。
HK はハウスキーピング電力を意味します。48 ボルト電力がボードに供給されているときには、必ずこの電力は供給されています。
Vdd は +3.3 volt DC を意味します。
Vcc は +5.0 volt DC を意味します。
2 番目のカラムは、JTAG がアクセスしたアナログ/デジタル変換器が示す実際の電圧値を示しています。
ハウスキーピング電力がマシンに供給されると、自動的に制御ボードの電源が入ります。システムボードとセンタープレーンサポートボードの電源は、power コマンドを実行して投入します。InterDomain Networks (IDN) のメンバーであるドメインのシステムボードの電源を切断することはできません。電源を切断するには、まず domain_unlink(1M) を使用してそのドメインのリンクを解除する必要があります。IDN に属するボードの電源を強制的に切断する場合には、power -f コマンドを実行してください。ただし、このコマンドを実行するとクラスタがアービトレーション停止してしまうことがあります。IDN がある場合には、Sun Enterprise 10000 のすべてのホストキャビネットの電源を切断することはできません。
オプションの有効な組み合わせについては、上記の「形式」を参照してください。
指定したシステムボードの電源を投入する、切断する、あるいはその電源装置への電力供給を有効にします。sb_list はスペースで区切られた 0 〜 15 の整数のリストであり、システムボードの番号を示します。このオプションは限界値の設定の際にも使用します。-m を参照してください。
power コマンドに -sb を指定しても、システムボードのハウスキーピング電力は制御されません。またオぺレーティングシステムを実行中のドメインに属するシステムボードの電源を切断することもできません。
指定した制御ボード (背面の場合は 0、前面は 1) の電源を切断します。または、その電源装置への電力供給の状態を表示するか、電力供給を有効にします。アクティブな制御ボードが切断できるのは、除去の対象となる非アクティブの制御ボードだけです。 power コマンドはこれら両方の電源は切断しません。2 番目の制御ボードの電源切断後、制御ボードの状態を取得するために power コマンドを使用しないでください。レジスタを読み込むことはできません。制御ボードを除去する前に、そのボードの LED を目視検査してください。
指定したセンタープレーンサポートボードの電源を投入する、切断する、あるいはその電源装置への電力供給を有効にします。csb_list (センタープレーンサポートボードのリスト) はスペースで区切られた整数のリストであり、0 (背面) または 1 (前面) です。
-csb を指定しても、センタープレーンサポートボードのハウスキーピング電力は制御されません。
リモートから制御される AC シーケンサおよびその接続周辺機器の電源を投入または切断するか、あるいはその電源への電力供給を有効にします。p_list はスペースで区切られた 0 〜 4 の整数のリストであり、周辺機器用の配電装置を制御するホスト上のスイッチ (リモート電源制御ユニット) を示します。購入先の技術者の場合は、詳細は、 『Ultra Enterprise 10000 System Overview』(サービスドキュメントセットに含まれています) を参照してください。
すべてのシステムボード (センタープレーンサポートボードを含む) の電源を投入または切断します。-sb または -csb (あるいはこれらの両方) と一緒に -all を指定した場合は、-all が優先されます。
(Debug モード) 冗長なトレースメッセージを表示します。-d と -q を同時に指定することはできません。
環境変数 SUNW_HOSTNAME で指定されたドメインに属するシステムボード (センタープレーンサポートボードを含む) の電源を投入します。 -sb、-csb、-all も参照 してください。
power -on は指定されたボードの電源を投入してから、システムに問い合わせて、システムに供給されている電力が十分であるかどうかを判別します。十分であれば、何もしません。十分でなければ、ボードの電源を切断して、メッセージを表示します。
環境変数 SUNW_HOSTNAME で指定されたドメインに属する個々のセンタープレーンサポートボードとシステムボードの電源を切断します。 -sb、-csb、-cb、-p、-ps、-all も参照してください。
power -off が指定されたボードの電源を切断できるのは、該当ドメインがオペレーティングシステムを実行していないときに限られます。ドメインがオペレーティングシステムを実行している場合は、power -off コマンドはそのことを知らせるメッセージを表示し、電源の切断は行いません。このため、ユーザーは正規の手順でドメインをシャットダウンしてから、電源を切断することができます。この保護機能を無効にし、ドメインの電源を即座に切断したい場合は、-f -off オプションを使用します。
Sun Enterprise 10000 のホストキャビネットの電源およびリモートから制御している入出力キャビネットの電源を切断します。電源を再投入するには、48 ボルト電力を供給している AC 入力モジュール上のスイッチ (キャビネットあたり最大 4 個) を手動でオンにしなければなりません。
指定した 48 ボルト電源を確認・切断します (購入先の技術者用)。またはその電源装置への電力供給を有効にします。ps_list は 48 ボルト電源を示す 1 つまたは複数の整数であり、有効範囲は -0 〜 7 です。- を付加すると、確認または無効にできます。
Sun Enterprise 10000 のデュアル電源グリッドは最大16 個の電源装置をサポートします。電源装置は 2 つのグリッドに分けられ、各グリッドは最大 8 個の電源装置で構成されます。主グリッド内の電源装置は、第 2 グリッド内の電源装置に関連付けられています。たとえば、電源装置 0 と 8、電源装置 1 と 9、電源装置 2 と 10 というように関連付けられます。power コマンドで 1 つの電源装置を切断した場合、指定した電源装置とその電源装置に関連付けられている電源装置の両方が切断されます。電源装置 0〜7 を切断すれば、すべての電源装置を切断できます。
power -off -ps ps_list コマンドを実行すると、次のメッセージが表示されます。
WARNING: This system requires x 48V power
supplies for a current load of y system boards
(at N+1 redundancy). You are disabling z out of
w 48V power supplies. This system will be able
to normally operate a load of u system boards
(including N+1 redundancy). Continue? (y/n)
x は必要な電源装置の数です。
y はシステムに装着されているシステムボードの数です。
z は切断する電源装置の数です。
w はキャビネットに装着されている電源装置の数です。
u は指定されたシステムボードを切断した後にサポートされるシステムボードの数です。
注意 - 切断した 48 ボルト電源の数が多すぎると、システムがクラッシュすることがあります。警告メッセージの内容および下記のチャートを参照して、指定しようとする電源を無事切断できるかどうかを判断してください。
1 個のシステムボードは 4個の電源を必要とする。
2 個のシステムボードは 4個の電源を必要とする。
3 個のシステムボードは 5個の電源を必要とする。
4 個のシステムボードは 5個の電源を必要とする。
5 個のシステムボードは 5個の電源を必要とする。
6 個のシステムボードは 6個の電源を必要とする。
7 個のシステムボードは 6個の電源を必要とする。
8 個のシステムボードは 6個の電源を必要とする。
9 個のシステムボードは 7個の電源を必要とする。
10 個のシステムボードは 7個の電源を必要とする。
11 個のシステムボードは 7個の電源を必要とする。
12 個のシステムボードは 7個の電源を必要とする。
13 個のシステムボードは 8個の電源を必要とする。
14 個のシステムボードは 8個の電源を必要とする。
15 個のシステムボードは 8個の電源を必要とする。
16 個のシステムボードは 8個の電源を必要とする。
(Quiet モード) トラフィックの標準出力を抑止します。 -q と -d を同時に指定することはできません。
(Validate モード) 環境変数 SUNW_HOSTNAME で指定されたドメインに属するシステムボードとセンタープレーンサポートボードの個々の電源を検査し、有効になっているかどうかを判別します。
-v オプションはスクリプトで使用します。ターゲットデバイスの電源がすべて入っている場合は、終了コード 0 が生成されます。 -v は電源制御ビットを検査するだけであり、電圧を検査するわけではありません。
-sb や -csb、あるいは -p と一緒に -v を使用すれば、検査の対象となるデバイスを指定できます。
ssp_resource(4) ファイルに保存されている現在の限界値を表示します。
購入先の技術者専用です。
購入先の技術者専用です。
power -m margin_list -s sb | csb コマンドは、すべてのシステムボードについて、margin_list に指定された値を、ssp_resource(4) ファイルに設定します。-s も指定されている場合は、変更が直ちに有効になります。指定されていない場合は、次回ボードの電源を投入したときに有効になります。-s を使用した場合には、sb の前にハイフンを挿入する必要がない点に注意してください。
注意 - 電圧の限界値を +/-5% 以上に設定すると、ハードウェアに損傷を与えることがあります。システムボードの Vcore の値に限界値は設定できません。
power -s と power -sb では、margin_list を指定します。このリストは以下のいずれかの形式であり、複数の項目はスペースで区切ります。
supply.+margin
supply.margin (+margin と同じ)
supply.-margin
margin は 1 〜 5 の整数であり、入力電圧値を基準として調整されるべき限界値を、パーセントで表します。supply はキーワード Vcc、Vdd または Vcore で示され、システムボードの電圧を次のように表します。
Vcc, 5 ボルト
Vdd, 3.3 ボルト
このコマンドには 2 つの形式があり、それぞれ限界値の使用法が異なります。限界値の即時設定の場合は、現行の電圧レベルを、指定された限界値 (パーセント) によって調整します。限界値の自動設定の場合は、入力電圧レベルを、指定された限界値 (パーセント) によって調整します。
システムボード 0 と 2 の電源を投入します。
power -on -sb 0 2 |
環境変数 SUNW_HOSTNAME によって指定されたドメインに属するすべてのシステムボードの電源を切断します。
power -off |
すべてのシステムボードについて、電圧の限界値を変更します。Vcc は 2% 増、Vdd は 2% 減となります。この変更は、次回システムボードの電源を投入したときに有効になります。
power -m Vcc.+2 Vdd.-2 -s sb |
システムボード 5、6、7 の Vcc、Vdd の電圧値をそれぞれ 3% 増やします。これらのシステムボードが立ち上がっている場合には、この変更は即座に有効になります。
power -m Vcc.+3 Vdd.+3 -sb 5 6 7 |
ホスト上のリモート電源制御ユニット (またはスイッチ) 2 と 3 によって、リモートから制御している周辺機器の電源を投入します。
power -p 2 3 -on |