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SMS ユーティリティー

この章では、SMS のバックアップ、構成、復元、バージョンのユーティリティーについて解説します。これらのユーティリティーの詳細および用例については、『System Management Services (SMS) 1.4.1 リファレンスマニュアル』およびオンラインのマニュアルページを参照してください。

この章では、以下の項目を説明します。


SMS バックアップユーティリティー

smsbackup は、SMS のオペレーティング環境を保守するファイルの cpio (1) アーカイブを作成します。



注 - このユーティリティーは SC 上で稼動します。SC とドメインのオペレーティングシステム、およびドメインのアプリケーションデータを定期的または適宜にバックアップする用途には使用できません。



ドメインへのボードの追加またはドメインからのボードの削除などで、SMS 環境を変更する場合は、システムコントローラの現在のバックアップファイルを保守するために smsbackup を再実行する必要があります。

バックアップファイルの名前は smsbackup.X.X.cpio です。X.X はバックアップを行ったアクティブなバージョンを表します。

smsbackup は、すべての構成、プラットフォーム構成データベース、SMS、ログファイルを保存します。つまり、SMS はバックアップを作成したときの作業状態に SMS を戻すのに必要なすべてを保存します。

バックアップは、自動的には実行されません。SMS 環境を変更するときは、バックアップを実行する必要があります。この処理は、サイト条件に応じて定期的に実行される root cron ジョブに組み込んで自動化することができます。

バックアップのログファイルは、/var/sadm/system/logs/smsbackup に格納されます。smsbackup を実行するときは、対象となる位置を指定する必要があります。



注 - 対象となる位置は、UFS ファイルの有効なシステムディレクトリでなければなりません。smsbackup は、一時的なファイルシステムディレクトリに対して実行することはできません。



smsbackup を実行すると、処理の成功または失敗が必ず通知されます。

smsbackup を実行するには、スーパーユーザー特権が必要です。詳細と用例については、smsbackup のマニュアルページを参照してください。

SMS バックアップファイルの復元には、smsrestore (1M) コマンドを使用します。


SMS 復元ユーティリティー

smsrestore は、smsbackup (1M) で作成したバックアップファイルから SMS のオペレーティング環境を復元します。新しいディスクに SMS ソフトウェアをインストールした後またはハードウェアの交換や追加の後は、smsrestore を使用して SMS 環境を復元することができます。smsrestore を正しく実行するには、事前にフェイルオーバーを無効化し、SMS を停止しておく必要があります。詳細については、『System Management Services (SMS) 1.4.1 インストールマニュアル』の「SMS を停止および開始する」を参照してください。

エラーが発生した場合は、smsrestore がエラーメッセージを /var/sadm/system/logs/smsrestore に書き込みます。



注 - このユーティリティーは SC 上で稼働し、SC のオペレーティングシステム、ドメインのオペレーティングシステム、またはドメインのアプリケーションデータは復元しません。



smsrestore は、バックアップしていないファイルを復元することはできません。ドメインのシャットダウンなどで SMS 環境を変更するときは、システムコントローラの現在のバックアップファイルを保守するために smsbackup を再実行する必要があります。

smsrestore を実行するには、スーパーユーザー特権が必要です。詳細と用例については、smsrestore のマニュアルページを参照してください。


SMS バージョンユーティリティー

smsversion(1M) は、同一のオペレーティング環境にインストールされている複数の連続バージョンの SMS を管理するコマンドです。SMS の連続バージョンとは、SMS1.2 と SMS 1.3 など、バージョン番号が連続したバージョンです。つまり、smsversion を使用して SMS1.2 と SMS 1.4.1 を直接切り替えることはできません。

smsversion を使用すると、同一のオペレーティング環境で共存している 2 つの連続バージョンの SMS 間で、双方向にバージョンの切り替えができます。ただし、以下の点について理解しておく必要があります。

条件

説明

新機能

たとえば COD など、SMS の新バージョンでサポートされている機能は、以前のバージョンではサポートされていない場合があります。SMS を以前のバージョンに切り替えると、新機能を使用できなくなる可能性があります。また、新機能の設定が失われる場合もあります。

フラッシュPROMの違い

SMS のバージョンを切り替えるには、正しいファイルを使って CPU のフラッシュ PROM を再フラッシュする必要があります。ファイルは、 /opt/SUNWSMS<SMS_version>/firmware ディレクトリに格納されています。バージョンを切り替えた後、flashupdate (1M)を使用して PROM を再フラッシュします。フラッシュ PROM の更新についての詳細は、flashupdate マニュアルページと『System Management Services (SMS) 1.4.1 インストールマニュアル』を参照してください。


SMS の連続バージョンを切り替える場合、たとえば SMS1.3 を SMS1.2 に切り替える場合には、smsversion を実行する前に SMS を停止する必要があります。詳細については、『System Management Services (SMS) 1.4.1 インストールマニュアル』の「SMS を停止および開始する」を参照してください。smsversion は、システムとドメインに関する重要な情報をバックアップした後、目的の SMS バージョンに切り替えます。後で、連続する元の SMS バージョンに (たとえば SMS 1.2 から SMS 1.3 に) 戻すこともできます。



注 - バージョンが異なる Solaris オペレーティング環境間 (Solaris 8 と Solaris 9 な
ど) では、SMS のバージョンが連続している場合でも切り換えは実行できません。Solaris 8 バージョンで SMS を使用していた環境から、Solaris 9 バージョンにアップグレードした後、旧バージョンに戻すには Solaris 8 の再インストールが必要になります。



オプションを省略すると smsversion は使用中の SMS のバージョンを表示し、インストール済み SMS のバージョンが 1 つだけであればそのまま終了します。

エラーが発生すると、smsversion はエラーメッセージを /var/sadm/system/logs/smsversion に書き込みます。

smsversion を実行するには、スーパーユーザー特権が必要です。詳細と用例については、smsversion のマニュアルページを参照してください。

バージョンの切り替え


procedure icon  連続する 2 つの SMS バージョンが共存している場合に、バージョンを切り替える

メイン SC で操作 :

1. 現在の構成が安定しており、さらに smsbackup でバックアップ済みであることを確認します。

「構成が安定している」とは、次の各コマンドがいずれも実行されていないことを意味します。smsconfigpoweronpoweroffsetkeyswitchcfgadmrcfgadmaddtagdeletetagaddboardmoveboarddeleteboardsetbussetdefaultssetobpparamssetupplatformenablecomponentdisablecomponent

2. setfailover off を実行してフェイルオーバーを無効化します。

スペア SC で操作 :

3. /etc/init.d/sms stop を実行します。

4. smsversion を実行します。

5. smsrestore を実行します。

6. 必要に応じて smsconfig -m を実行し、再起動します。

復元した smsbackup作成後に、smsconfig -m を使ってネットワーク構成を変更した場合のみ、smsconfig -m を実行してください。

メイン SC で操作 :

7. /etc/init.d/sms stop を実行して SMS を停止します。

スペア SC で操作 :

8. smsconfig -m を実行した場合は SC を再起動します。smsconfig -m を実行しなかった場合には、/etc/init.d/sms start を実行します。

SC の起動後、この SC がメイン SC になります。

9. 必要な場合は、flashupdate を使用して、CPU のフラッシュ PROM を更新します。

元のメイン SC で操作 :

10. 手順 4 〜 6 と 8 を繰り返します。

新しいメイン SC で操作 :

11. setfailover on を実行してフェイルオーバーを有効化します。

詳細については、『System Management Services (SMS) 1.4.1 インストールマニュアル』を参照してください。


SMS 構成ユーティリティー

smsconfig は、MAN ネットワークを構成し、MAN デーモンの mand (1M) が使用するホスト名と IP アドレスを変更し、ドメインディレクトリのアクセス制御リスト (ACL) を管理します。また、現在の構成も表示されます。

UNIX グループ

smsconfig は、SMS でユーザー権限の定義によって使用される UNIX グループを設定します。SMS はデフォルトで、各 SC にローカルにインストールされた一連の UNIX グループを使用します。smsconfig-g オプション付きで使用すれば、これらのグループをカスタマイズできます。また、smsconfig-a オプションを指定すればグループへのユーザーの追加、-r オプションを指定すればグループからのユーザーの削除をそれぞれ実行できます。

登録ユーザーの追加、削除、および一覧表示に関する情報と用例については、『System Management Services (SMS) 1.4.1 インストールマニュアル』と smsconfig(1M) のマニュアルページを参照してください。

アクセス制御リスト (ACL)

従来の UNIX ファイル保護は、次の 3 つのユーザークラスに対して読み取り、書き込み、実行を許可します。つまり、ファイル所有者、ファイルグループ、その他です。ドメイン情報の保護と分離を行う目的で、各ドメインデータへのアクセスは未承認のユーザーには許可されません。ただし、SMS デーモンは承認ユーザーであると見なされ、ドメインのファイルシステムへのフルアクセスが可能です。次に例を示します。

smsconfig は、ドメイン管理者がドメインに対するフルアクセスを持つように、ドメインディレクトリに対応する ACL エントリを設定します。モードフィールドの右にあるプラス記号 (+) は、ACL が定義済みのディレクトリを示します。

domain_id:sms-user:> ls -al
total 6
drwxrwxrwx   2 root     bin          512 May 10 12:29 .
drwxrwxr-x  23 root     bin         1024 May 10 12:29 ..
-rw-rw-r--+  1 root     bin          312 May  4 16:15 blacklist

ACL にユーザーアカウントを登録するには、『System Management Services (SMS) 1.4.1 インストールマニュアル』に説明するように、ユーザーが有効な SMS グループに属している必要があります。



注 - ACL などの UFS ファイルシステム属性は、UFS ファイルシステムでのみサポートされます。ACL エントリのディレクトリを /tmp ディレクトリに復元またはコピーすると、すべての ACL エントリは失われます。UFS ファイルおよびディレクトリの一時的な格納には、/var/tmp ディレクトリを使用します。



ネットワーク構成

各ネットワークでは、smsconfig はそのネットワーク内で 1 つまたは複数のインタフェース 指示を個々に設定することができます。デフォルトでは、smsconfig は 3 つすべての内部 (エンタープライズ) ネットワークの構成を走査します。

個々のネットワークを構成するには、コマンド行に net_id を付加します。管理ネットワークの net_id には、I1I2C を指定します。

目的のドメインおよびその net_id を指定して、エンタープライズネットワーク内で単独のドメインを構成します。MAN hostname として NONE を指定すれば、任意のドメインを I1 ネットワークから除外できます。



注 - MAN ネットワークを構成したり、構成を変更した後、新しい構成を反映するには SC を再起動する必要があります



smsconfig を実行するには、スーパーユーザー特権が必要です。詳細と用例については、『System Management Services (SMS) 1.4.1 インストールマニュアル』、smsconfig のマニュアルページ、管理ネットワークのサービスを参照してください。

MAN 構成

smsconfig -m は以下の処理を実行します。

  1. /etc/hostname.scman[01] を作成します。

  2. smsconfig の外部ネットワークプロンプトへの入力に応じて、/etc/hostanme.hme0/etc/hostname.eri1 を作成します。

  3. /etc/netmasks および /etc/hosts を更新します。

  4. OpenBoot PROM 変数を local-mac-address?=true に設定します (デフォルトは false)。

smsconfig の詳細については、smsconfig(1M) のマニュアルページ、および 管理ネットワークのサービス を参照してください。