「セッション範囲」は、Trusted Solaris セッションでユーザーが使用できる機密ラベルのセットです。これは、次のものを示します。
ユーザーのアカウントラベル範囲
ユーザーのセッションモード (シングルラベルまたはマルチラベル)
セッション機密ラベルを設定するダイアログボックス (シングルラベルセッションの場合)、または「認可上限 (Clearance)」ダイアログボックス (マルチラベルセッションの場合) にユーザーが指定する認可上限
ユーザーのワークステーションのラベル範囲
マルチラベルセッションの場合、「認可上限 (Clearance)」ダイアログボックスに、セッション認可上限の候補が表示されます。セッション認可上限の候補の範囲は、上限がユーザー認可上限、下限は (認可範囲の) 最下位認可上限か (アカウントの) 最下位機密ラベルのどちらか高いほうになります。ただし、このとき label_encodings ファイルにある認可上限の規則で、必要な組み合わせまたは制約が定められていなくてはなりません。シングルラベルセッションの場合もセッション認可上限候補の範囲は変わりませんが、やはり label_encodings ファイルにある機密度の規則で、必要な組み合わせまたは制約が定められていなくてはなりません。
ログインデバイスに範囲を設定することも可能です。この設定は、 device_allocate ファイルに最上位と最下位の機密ラベルを指定することによって行います。詳細は、「Trusted Solaris によるデバイスアクセスの制御」を参照してください。
この例では、セッション認可上限を、図 1-3 のラベル「S A B」から「TS A B」までの範囲で選択して指定することができます。ユーザー認可上限よりも最下位認可上限の方が優位だと、そのユーザーはログインできません。ユーザーの (アカウントラベル範囲の) 最下位機密ラベルが (認可範囲の) 最下位機密ラベルよりも優位でない場合は、(認可範囲の) 最下位機密ラベルがセッション範囲の下限として定義されます。
引き続き、図 1-4 (a) の例は、ユーザーがマルチラベルセッションを選択し、セッション認可上限として「S A B」を指定した場合に使用できる機密ラベルの範囲を示しています。「S A B」と「C」の間に存在していたラベルは許容外として除外されてしまったため、事実上、ユーザーが作業できるラベルは、「S A B」、「C A B」、「C」のいずれかとなります。
図 1-4 (b) は、ユーザーがシングルラベルセッションを選択し、セッション機密ラベルとして「C A B」を指定した場合のラベルの範囲を示しています。ここで、「C A B」は、最下位認可上限よりも下位にありながらアクセス可能になっています。これは、ユーザーがセッション認可上限ではなく、セッション機密ラベルとして「C A B」を選択しているからです。また、これはシングルラベルセッションなので、ユーザーは 1 つのラベルでしか作業できません。この例では「C A B」を指定していますが、代わりに「S A B」または「C」を指定することもできます。
次の図は、使用可能な機密ラベルの段階的な削除例を示しています。削除された機密ラベルには、どの範囲で選別されたかがわかるように横線が引かれ、次の範囲からは消去されています。