GNOME 2.2 システム管理 (Linux 版)

第 9 章 パフォーマンスの改善

この章では、GNOME デスクトップのパフォーマンスを改善する方法について説明します。

パフォーマンスの改善の概要

この章では、GNOME デスクトップのパフォーマンスを改善するために変更できるいくつかの設定について説明します。ユーザー設定について値を設定するには、gconftool-2 コマンドを使用します。この章のコマンド例では、ユーザー設定ソースの値を変更する方法を示します。

--direct および --config-source オプションを使用して、設定の必須値またはデフォルト値をセットできます。また、スクリプト内で gconftool-2 コマンドを使用して、多数の設定値をセットすることもできます。gconftool-2 コマンドと、このコマンドに使用できるオプションについては、第 1 章「GConf の使用方法」を参照してください。

CPU 使用率の低減

この節では、GNOME デスクトップの CPU 使用率を減らすための設定について説明します。

CPU リソースをあまり必要としないテーマオプションを使用する

一部のウィンドウフレームテーマオプションは、ウィンドウフレームを描くのにイメージファイルを読み込みます。ほかのオプションは、単純なテクニックを使用してウィンドウフレームを描きます。

Crux ウィンドウフレームオプションは画像ファイルをロードするので、CPU リソースが限られたシステムでは動作が遅くなる恐れがあります。CPU 使用率を減らすには、以下のいずれかのウィンドウフレームオプションを使用します。

以下のウィンドウフレームオプションも、Crux よりは CPU リソースの使用率が少なくなります。


注 –

Metabox は、HighContrastInverse などの反転制御オプションとは正しく動作しません。反転制御オプションを使用する場合は、Atlanta を使ってください。


ウィンドウフレームテーマのオプションを変更するには、以下のコマンドを実行します。

# gconftool-2 --type string --set /apps/metacity/general/theme option-name

Atlanta を使用する場合は、次のコマンドを実行します。

# gconftool-2 --type string --set /apps/metacity/general/theme Atlanta

または、Theme 設定ツールで適当なオプションを選択します。


ヒント –

Metacity テーマビューアを使用して、ウィンドウフレームオプションのパフォーマンスを測定したり、オプションをプレビューできます。Metacity テーマビューアを起動するには、次のコマンドを使用します。

# metacity-theme-viewer option-name

たとえば、Atlanta のパフォーマンスを測定し、Atlanta をプレビューするには、次のコマンドを実行します。

# metacity-theme-viewer Atlanta


メニュー上のアイコンをオフにして CPU 使用率を減らす

メニュー上のいくつかの項目は、その項目の横にアイコンが表示されます。この機能をオフにするには、次のコマンドを実行します。

# gconftool-2 --type bool --set /desktop/gnome/interface/menus_have_icons false

または、Menus & Toolbars 設定ツールで「Show icons in menus」オプションの選択を解除します。

スプラッシュ画面をオフにして CPU 使用率を減らす

デフォルトでは、デスクトップ環境にログインすると、スプラッシュ画面が表示されます。ログインしている間は、スプラッシュ画面にアイコンが表示されています。スプラッシュ画面をオフにすると、ログインしている間の CPU 使用率を減らせます。

スプラッシュ画面をオフにするには、次のコマンドを実行します。

# gconftool-2 --type bool --set /apps/gnome-session/options/show_splash_screen false

または、Sessions 設定ツールで「Show splash screen on login」オプションの選択を解除します。

パネルアニメーションをオフにして CPU 使用率を減らす

パネルを表示または非表示にするときに、動画形式でパネルを表示または非表示にすることができます。パネルアニメーションをオフにするには、次のコマンドを実行します。

# gconftool-2 --type bool --set /apps/panel/global/enable_animations false

または、Panel 設定ツールで「Drawer and panel animation」オプションの選択を解除します。

ファイルマネージャのパフォーマンスの改善

Nautilus ファイルマネージャの一部の機能を変更して、パフォーマンスを改善できます。

パフォーマンス設定を変更する

ファイルマネージャには、パフォーマンスに関連する設定があります。各パフォーマンス設定は、3 つの値のうち 1 つを持ちます。以下の表は、3 つの値を説明しています。

値 

説明 

always

ローカルファイルと、別のファイルシステム上のファイルの両方に対して、動作を実行する 

local_only

ローカルファイルに対してのみアクションを実行します。パフォーマンス設定を local_only セットすると、CPU 使用率は減少します

never

動作を実行しないパフォーマンス設定を never にセットすると、CPU 使用率とネットワークトラフィックは減少します 

以下の表は、ファイルマネージャのパフォーマンス設定を説明しています。パフォーマンスを上げるには、設定値を never に設定します。

設定 

説明 

show_icon_text

ファイルを表すアイコンで、テキストファイルの内容をいつプレビューするかを指定します。テキストファイルの内容をプレビューしない場合は、次のコマンドを実行します  

# gconftool-2 --type string --set /apps/nautilus/preferences/ show_icon_text never

または、次の手順を実行します 

  1. ファイルマネージャウィンドウで「編集」-> 「設定」を選択して、「プレビュー」を選択します

  2. 「アイコンにテキストを表示」設定のオプションを選択します

show_directory_item_counts

フォルダ内のアイテム数をいつ表示するかを指定します。フォルダ内の項目数を表示しない場合は、次のコマンドを実行します 

# gconftool-2 --type string --set /apps/nautilus/preferences/ show_directory_item_counts never

または、次の手順を実行します 

  1. ファイルマネージャウィンドウで「編集」-> 「設定」を選択して、「プレビュー」を選択します。

  2. 「Count number of items」設定のオプションを選択します。

show_image_thumbnails

イメージファイルのサムネイルをいつ表示するかを指定します。サムネイルを表示しない場合は、次のコマンドを実行します 

# gconftool-2 --type string --set /apps/nautilus/preferences/ show_image_thumbnails never

または、次の手順を実行します 

  1. ファイルマネージャウィンドウで「編集」-> 「設定」を選択して、「プレビュー」を選択します。

  2. 「Show thumbnails」設定のオプションを選択します

preview_sound

サウンドファイルの内容をいつプレビューするかを指定します。サウンドファイルの内容をプレビューしない場合は、次のコマンドを実行します 

# gconftool-2 --type string --set /apps/nautilus/preferences/preview_sound never

または、次の手順を実行します 

  1. ファイルマネージャウィンドウで「編集」-> 「設定」を選択して、「プレビュー」を選択します。

  2. 「サウンドファイルをプレビュー」設定のオプションを選択します

サイド区画、ツールバー、ロケーションバーをオフにする

ファイルマネージャには、サイド区画とツールバーをオフにできる設定が含まれています。サイド区画とツールバーをオフにすると、ファイルマネージャのパフォーマンスが改善します。

サイド区画をオフにするには、次のコマンドを実行します。

# gconftool-2 --type bool --set /apps/nautilus/preferences/start_with_sidebar false

ツールバーをオフにするには、次のコマンドを実行します。

# gconftool-2 --type bool --set /apps/nautilus/preferences/start_with_toolbar false

ロケーションバーもオフに設定できます。Ctrl + L キーボードショートカットを使用して、ロケーションバーを必要に応じて表示できます。

ロケーションバーをオフにするには、次のコマンドを実行します。

# gconftool-2 --type bool --set /apps/nautilus/preferences/start_with_location_bar false

デスクトップをオフにする

ファイルマネージャには、Nautilus を使用してデスクトップを管理できる設定が含まれています。デスクトップを無効にすることで、パフォーマンスを改善できます。デスクトップを無効にした場合、次の操作を行えません。

デスクトップを無効にするには、次のコマンドを実行します。

# gconftool-2 --type bool --set /apps/nautilus/preferences/show_desktop false

X ウィンドウシステムのネットワークトラフィックの低減

この節では、GNOME デスクトップで X ウィンドウシステム のネットワークトラフィックを減少させる設定について説明します。

ネットワークトラフィックの少ないテーマオプションを使用する

リモートディスプレイプロトコルは、ピクセルブロック内のピクセルがすべて同じ色の場合、そのブロック内のすべてのピクセルを転送しません。

X ウィンドウシステムのネットワークトラフィックを減らすには、単一色を使用するウィンドウフレームテーマオプションを使用します。つまり、次のいずれかのウィンドウフレームオプションを使用します。

テーマオプションの変更方法については、CPU リソースをあまり必要としないテーマオプションを使用するを参照してください。

メニュー上のアイコンをオフにしてネットワークトラフィックを減らす

メニュー上のいくつかの項目は、その項目の横にアイコンが表示されます。アイコンが別のファイルシステム上にある場合、この機能が原因で X ウィンドウシステムのネットワークトラフィックが増大します。また、パネルがリモートホスト上で表示される場合も、X ウィンドウシステムのネットワークトラフィックが増大します。

この機能を無効にする方法については、メニュー上のアイコンをオフにして CPU 使用率を減らすを参照してください。

色の使用を減らして表示品質を改善

多くの現代のコンピュータシステムが 24 ビット色 (16,777,216 色) をサポートします。しかし、多くのユーザーが今だ 8 ビット色 (256 色) をサポートするシステムを使用しています。

GNOME デスクトップは、websafe カラーパレットを使用します。このパレットは 216 色の汎用パレットであり、8 ビット色をサポートするシステム上での色の使用を最適化するように設計されています。一方、GNOME デスクトップの一部の視覚構成要素は、24 ビット色をサポートするシステム用に設計されています。

以下に示す表示上の問題が、8 ビットをサポートするシステムで発生する可能性があります。

この節では、8 ビット色をサポートするシステムで、GNOME デスクトップの外観を最適化する方法について説明します。

websafe カラーパレットを使用するテーマオプションを使用する

一部のウィンドウフレームテーマオプションは、websafe カラーパレット内の色を使用します。Bright と Esco は、websafe カラーパレットを使用します。Bright と Esco は、8 ビットのカラーディスプレイでの他のウィンドウフレームオプションのように粒子が粗くありません。8 ビットのビジュアルモードでは、Bright または Esco を使用すると色がきれいに表示されます。

テーマオプションの変更方法については、CPU リソースをあまり必要としないテーマオプションを使用するを参照してください。

メニュー上のアイコンをオフにして色の使用を減らす

メニュー上のいくつかの項目は、その項目の横にアイコンが表示されます。アイコンに websafe カラーパレットにはない色が含まれている場合、この機能によって使用される色の数が増えます。

この機能を無効にする方法については、メニュー上のアイコンをオフにして CPU 使用率を減らすを参照してください。

スプラッシュ画面をオフにして色の使用を減らす

スプラッシュ画面をオフにすると、 GNOME デスクトップおよびアプリケーションが利用できる色が増えます。

スプラッシュ画面をオフにする方法については、スプラッシュ画面をオフにして CPU 使用率を減らすを参照してください。

背景に単一色を使用して色の使用を減らす

デスクトップ背景には単一色を使用します。単一色の使用により、GNOME デスクトップが使用する色の数が減ります。

背景に単一色をセットするには、次のコマンドを実行します。

# gconftool-2 --type string --set /desktop/gnome/background/picture_options none

# gconftool-2 --type string --set /desktop/gnome/background/color_shading_type solid

# gconftool-2 --type string --set /desktop/gnome/background/primary_color \#hexadecimal-color

または、Background 設定ツールで背景の単一色を選択します。

ヘルプのパフォーマンスの改善

ヘルプのソース文書は XML ファイルです。XML ファイルは HTML に変換され、この HTML が Yelp ヘルプブラウザに表示されます。HTML は事前生成できます。つまり、ヘルプを使用する前に XML を HTML に変換することが可能です。

事前生成を行わなかった場合は、ヘルプファイルを呼び出したときに変換が自動的に実行されます。ヘルプファイルを呼び出したときに変換が行われると、変換はヘルプ文書の表示速度に重大な影響を及ぼします。

ヘルプのパフォーマンス問題を回避するため、HTML を事前生成し、ヘルプブラウザが変換を行わなくて済むようにしてください。ヘルプ文書の事前生成には、yelp-pregenerate コマンドを使用します。yelp-pregenerate コマンドの構文は、以下のとおりです。

yelp-pregenerate [- a| [-f filename ]] [ locale]

以下の表に、yelp-pregenerate コマンドのオプションと引数を示します。

オプションまたは引数 

説明 

-a

ScrollKeeper データベースに登録されている XML ファイルをすべて事前生成する。デフォルトオプション

-f

コマンドで指定した XML ファイルだけを事前生成する 

filename

事前生成する XML ファイルの名前 

locale

XML ファイルを事前生成するロケール。デフォルトのロケールは C (英語) 

たとえば、ファイルシステムのすべての XML ファイルの英語バージョンを事前生成するには、以下のコマンドを実行します

# yelp-pregenerate -a

デフォルトのロケールが C なので、この例ではロケールを指定する必要はありません。gedit マニュアルのスペイン語バージョンを事前生成するには、以下のコマンドを実行します。

# yelp-pregenerate -f gedit.xml es

ヘルプファイルを開くと、ヘルプブラウザは以下の処理を行います。

  1. ヘルプブラウザは、適切な HTML ファイルを検索します。HTML ファイルを検出すると、ヘルプブラウザはその HTML ファイルと対応する XML ファイルの変更日を比較します。HTML ファイルの日付が XML ファイルより新しい場合は、HTML ファイルが表示されます。

  2. HTML ファイルの日付が XML ファイルより古い場合は、XML ファイルが HTML に変換されます。

  3. ヘルプブラウザがヘルプ文書の HTML ファイルを検出できない場合も、XML ファイルは HTML に変換されます。

言い換えると、事前生成された HTML ファイルが存在する場合は、ヘルプブラウザはその HTML を表示します。事前生成された HTML ファイルが存在しない場合は、ヘルプブラウザは XML ファイルを HTML に変換します。


注 –

GNOME デスクトップに追加する新しいアプリケーションのヘルプを事前生成したい場合もあります。お使いの環境の容量制限が厳しい場合は、ヘルプの事前生成を行わない選択をすることもできます。