Sun Studio 12: パフォーマンスアナライザ

トラップ

トラップは命令またはハードウェアによって発行され、トラップハンドラによって捕捉されます。システムトラップは、命令から発行され、カーネルにトラップされるトラップです。すべてのシステムコールは、トラップ命令を使用して実装されます。ハードウェアトラップの例としては、命令 (UltraSPARC® III プラットフォームでのレジスタ内容値の fitos 命令など) を最後まで実行できないとき、あるいは命令がハードウェアに実装されていないときに、浮動小数点演算装置から発行されるトラップがあります。

トラップが発行されると、Solaris LWP または Linux カーネルはシステムモードになります。Solaris OS 上では、通常、これでマイクロステートはユーザー CPU 状態からトラップ状態、そしてシステム状態に切り替わります。マイクロステートの切り替わりポイントによっては、トラップの処理に費やされた時間が、システム CPU 時間とユーザー CPU 時間を合計したものとして現れることがあります。この時間は、トラップを発行したユーザーのコードの命令またはシステムコールが原因とされます。

一部のシステムコールでは、こうした呼び出しをできるかぎり効率良く処理することが重要とみなされます。こうした呼び出しによって生成されたトラップを高速トラップと呼びます。高速トラップを生成するシステム関数には、gethrtime および gethrvtime があります。 これらの関数ではオーバーヘッドを伴うため、マイクロステートは切り替えられません。

その他にも、トラップをできるかぎり効率良く処理することが重要とみなされる環境があります。たとえば、マイクロステートが切り替えられていないレジスタウィンドウのスピルやフィル、および TLB (translation lookaside buffer) ミスなどです。

いずれの場合も、費やされた時間はユーザー CPU 時間として記録されます。ただし、システムモードに CPU モードが切り替えられたため、ハードウェアカウンタは動作していません。このため、これらのトラップの処理に費やされた時間は、なるべく同じ実験で記録された、ユーザー CPU 時間とサイクル時間の差を取ることで求めることができます。

トラップハンドラがユーザーモードに戻るケースもあります。Fortran で 4 バイトメモリー境界に整列された整数に対し、8 バイトのメモリー参照を行うようなトラップです。スタックにトラップハンドラのフレームが現れ、整数ロードまたはストア命令が原因でパフォーマンスアナライザにハンドラの呼び出しが表示される場合があります。

命令がカーネルにトラップされると、そのトラップ命令のあとの命令の実行に長い時間がかかっているようにみえます。 これは、カーネルがトラップ命令の実行を完了するまで、その命令の実行を開始できないためです。