最初のうちは、条件付イベントコマンド (watch タイプのコマンド) の設定と、フィルタの使用とを混同してしまうかもしれません。概念的には、watch タイプのコマンドは、各行の実行前に検査される「前提条件」を作成します (watch のスコープ内で)。ただし、条件付トリガーのあるブレークポイントコマンドでも、それに接続するフィルタを持つことができます。
次に具体的な例を示します。
(dbx) stop access w &speed -if speed==fast_enough |
このコマンドは、変数 speed を監視するように dbx に指令します。speed に書き込みが行われると (watch 部分)、-if フィルタが有効になります。dbx は speed の新しい値が fast_enough と等しいかどうかチェックします。等しくない場合、プログラムは実行を継続し、stop を「無視」します。
dbx 構文では、フィルタはブレークの「事後」、構文の最後で [-if condition] 文の形式で指定されます。
stop in function [-if condition] |
マルチスレッドプログラムでブレークポイントに関数呼び出しを含むフィルタを設定すると、dbx がブレークポイントに達するとすべてのスレッドの実行が停止し、条件が評価されます。条件が合致して関数が呼び出されると、dbx がその呼び出し中すべてのスレッドを再開します。
たとえば、次のブレークポイントを、多くのスレッドが lookup() を呼び出すマルチスレッドアプリケーションで設定する場合があります。
(dbx) stop in lookup -if strcmp(name, “troublesome”) == 0 |
dbx は、スレッド t@1 が lookup() を呼び出して条件を評価すると停止し、strcmp() を呼び出してすべてのスレッドを再開します。dbx が関数呼び出し中に別のスレッドでブレークポイントに達すると、次のいずれかの警告が表示されます。
event infinite loop causes missed events in the following handlers: ... |
Event reentrancy first event BPT(VID 6m TID 6, PC echo+0x8) second event BPT*VID 10, TID 10, PC echo+0x8) the following handlers will miss events: ... |
そのような場合、条件式内で呼び出された関数が mutex を取得しないことを確認できる場合は、-resumeone イベント指定修飾子を使用して、dbx がブレークポイントに達した最初のスレッドのみを再開させることができます。たとえば、次のブレークポイントを設定する場合があります。
(dbx) stop in lookup -resumeone -if strcmp(name, “troublesome”) == 0 |
-resumeone 修飾子はすべての場合において問題を防ぐことはしません。たとえば、次の場合にも何も行いません。
条件で再帰的に lookup() を呼び出すため、最初のスレッドと同じスレッドで lookup() の 2 つ目のブレークポイントが発生した場合。
条件実行が別のスレッドへの制御を放棄するスレッド。
イベント修飾子の詳細については、「イベント指定のための修飾子」を参照してください。