Oracle Solaris Studio 12.2: C ユーザーガイド

B.2.98 -xipo[= a]

a0 1、または 2 と置き換えます。引数なしの -xipo は、-xipo=1 に相当します。-xipo=0 はデフォルト設定であり、-xipo を無効にします。-xipo=1 を指定した場合は、すべてのソースファイルでインライン化が実行されます。

-xipo=2 を指定した場合は、コンパイラは内部手続きの別名解析と、メモリーの割り当ておよび配置の最適化を実行し、キャッシュ性能を向上させます。

このコンパイラは、内部手続き解析コンポーネントを呼び出すことにより、プログラムの一部の最適化を実行します。このオプションを指定すると、リンク段階ですべてのオブジェクトファイルを介して最適化を実行し、最適化の対象をコンパイルコマンドのソースファイルだけに限定しません。ただし、-xipo によるプログラム全体の最適化には、アセンブリ (.s) ソースファイルは含まれません。

-xipo は、コンパイル時とリンク時の両方で指定する必要があります。表 A–2 に、コンパイル時とリンク時の両方に指定する必要があるコンパイラオプションの全一覧をまとめています。

-xipo オプションは、ファイルを介して最適化を実行する際に必要な情報を追加するため、非常に大きなオブジェクトファイルを生成します。ただし、この補足情報は最終的な実行可能バイナリファイルの一部にはなりません。実行可能プログラムのサイズが拡大するのは、最適化が追加実行されるためです。このコンパイル段階で作成されたオブジェクトファイルには、内部でコンパイルされた追加の分析情報が含まれているため、リンク段階でファイル相互の最適化を実行できます。

-xipo は、大きなマルチファイルアプリケーションをコンパイルおよびリンクする際に便利です。このフラグでコンパイルされたオブジェクトファイルは、それらのファイル内でコンパイルされた解析情報を保持します。これらの解析情報は、ソースおよびコンパイル前のプログラムファイルで内部手続き解析を可能にします。

ただし、解析と最適化は、-xipo を指定してコンパイルされたオブジェクトファイルに限定され、オブジェクトファイルまたはライブラリは対象外です。

-xipoは複数の段階に分かれているため、コンパイルとリンクを個別に実行する場合、各ステップで -xipo を指定する必要があります。

-xipo に関するそのほかの重要な情報を次に示します。

B.2.98.1 例

次の例では、コンパイルとリンクが単一ステップで実行されます。


cc -xipo -xO4 -o prog part1.c part2.c part3.c

オプティマイザは 3 つのすべてのソースファイル間でファイル間のインライン化を実行します。これは最終的なリンク手順で実行されるため、すべてのソースファイルのコンパイルを単一のコンパイル処理で実行する必要はありません。-xipo を随時指定することにより、個別のコンパイルが多数発生してもかまいません。

次の例では、個別のステップでコンパイルとリンクが実行されます。


cc -xipo -xO4 -c part1.c part2.c
cc -xipo -xO4 -c part3.c
cc -xipo -xO4 -o prog part1.o part2.o part3.o

ここでの制限事項は、-xipo でコンパイルを実行しても、ライブラリがファイル相互の内部手続き解析に含まれない点です。次の例を参照してください。


cc -xipo -xO4 one.c two.c three.c
ar -r mylib.a one.o two.o three.o
...
cc -xipo -xO4 -o myprog main.c four.c mylib.a

この例では、内部手続きの最適化は one.ctwo.c および three.c 間と main.cfour.c 間で実行されますが、main.c または four.cmylib.a のルーチン間では実行されません。最初のコンパイルは未定義のシンボルに関する警告を生成する場合がありますが、内部手続きの最適化は、コンパイル手順でありしかもリンク手順であるために実行されます。

B.2.98.2 -xipo=2 による内部手続き解析を行うべきでないケース

内部手続き解析では、コンパイラは、リンクステップでオブジェクトファイル群を操作しながら、プログラム全体の解析と最適化を試みます。このとき、コンパイラは、このオブジェクトファイル群に定義されているすべての foo() 関数 (またはサブルーチン) に関して次の 2 つのことを仮定します。

仮定 2 が当てはまらない場合は、コンパイルで -xipo=1 および -xipo=2 を使わないでください。

1 例として、独自のバージョンの malloc() で関数 malloc() を置き換え、-xipo=2 を指定してコンパイルするケースを考えてみましょう。-xipo=2 を使ってコンパイルする場合、その独自のコードとリンクされる malloc() を参照する、あらゆるライブラリのあらゆる関数のコンパイルで -xipo=2 を使用する必要があるとともに、リンクステップでそれらのオブジェクトファイルが必要になります。システムライブラリでは、このことが不可能なことがあり、このため、独自のバージョンの malloc のコンパイルに -xipo=2 を使ってはいけません。

もう 1 つの例として、別々のソースファイルにある foo() および bar() という 2 つの外部呼び出しを含む共有ライブラリを構築するケースを考えてみましょう。また、bar() は foo() を呼び出すと仮定します。foo() が実行時に割り込みを受ける可能性がある場合、foo() および bar() のソースファイルのコンパイルで -xipo=1-xipo=2 を使ってはいけません。さもないと、foo() が bar() 内にインライン化され、不正な結果になる可能性があります。