C++ では、あるときは宣言と解釈されたり、またあるときは式と解釈される可能性がある文があります。C++ のあいまい排除規則では、ある文を宣言文とみなすことができる場合は、その文は宣言文とすることになっています。
従来のバージョンのコンパイラでは、次のような事例を誤って解釈していました。
struct S { S(); }; struct T { T( const S& ); }; T v( S() ); // ??? |
このプログラマはおそらく、最後の行で S 型の一時的な値で初期化される変数 v を定義するつもりでした。従来のバージョンのコンパイラは、この文をそのように解釈していました。
しかし、宣言コンテキスト内のコンストラクト、"S()" は、"S 型の値を戻すパラメータのない関数" を意味する抽象宣言子 (識別子のない抽象宣言子) とみなすこともできます。この事例では、関数ポインタ、"S(*)()" に自動的に変換されています。この文はまた、戻り値が T 型で、パラメータが関数ポインタ型の関数 v の宣言としても有効です。
現在ではコンパイラが正しい解釈をするようになったので、このプログラマが意図したようにならない可能性があります。
あいまいにならないようにコードを修正するには、次の 2 通りの方法があります。
T v1( (S()) ); // v1 is an initialized object T v2( S(*)() ); // v2 is a function |
1 行目の 1 対の余分な括弧は、v1 の構文が関数宣言としては不正であるので、"S 型の一時的な値で初期化される T 型のオブジェクト" という意味にしか解釈できません。
同様に、コンストラクト "S(*)()" は値とは考えられないので、関数宣言の意味にしか解釈できません。
最初の行は、次のように書くこともできます。
T v1 = S();
意味は完全に明確になりますが、この初期設定の形式では、通常はそうでもないとはいえ、一時的な値として非常に大きな値が生成されることがあります。
次のようにコーディングするのはお勧めできません。その理由は、意味が不明確で、コンパイラが異なると結果が異なる可能性があるからです。
T v( S() ); // 推奨しない