PasswordSync は、Windows Active Directory ドメイン上で行われたユーザーパスワードの変更を、Identity Manager で定義されたほかのリソースと継続的に同期します。PasswordSync は、Identity Manager と同期されるドメインの各ドメインコントローラにインストールする必要があります。また PasswordSync は、Identity Manager とは別にインストールする必要があります。
PasswordSync は、各ドメインコントローラに配置される DLL (lhpwic.dll) で構成されます。この DLL が Windows からパスワードの更新の通知を受け取り、それを暗号化して、HTTPS 経由で PasswordSync サーブレットに送信します。PasswordSync サーブレットは、Identity Manager を実行しているアプリケーションサーバーに配置されます。
HTTPS の使用が優先されますが、HTTP もサポートされています。
PasswordSync サーブレットは、Identity Manager が認識できる形式に通知を変換します。続いて、サーブレットは次のいずれかの方法を使用して、まだ暗号化されているパスワードの変更を Identity Manager に送信します。
直接の方法。サーブレットはネイティブの Identity Manager クラスを使用して、パスワードの変更を直接 Identity Manager に送信します (「PasswordSync とは」を参照)。
直接接続する方法は、メッセージを配信する必要があるシステムが 1 つだけで、メッセージ配信を保証する必要がない、小規模で複雑でない環境にのみ使用することをお勧めします。何らかの理由で直接のメッセージ配信が失敗した場合、メッセージは失われます。バックアップの配信はできません。
JMS による方法。サーブレットは、JMS (Java Message Service) を使用してパスワード情報を Identity Manager に送信します。JMS を使用して、サーブレットはパスワードの変更を JMS Message Queue に送信します。それとは別に、Identity Manager の JMS リスナーリソースアダプタが、新しいメッセージがないかキューをチェックします。キューで待機しているパスワード変更のメッセージが見つかると、JMS リスナーアダプタはメッセージをキューから取り出し、Identity Manager にインポートします (図 11–2 を参照)。
大量の要求が発生して、複数のシステムへのメッセージ配信とメッセージ配信の保証が必要となるような複雑な環境では、JMS による方法をお勧めします。JMS Message Queue の可用性を向上できます。メッセージがキューに入っているかぎり、Identity Manager へのメッセージ配信が失敗しても、メッセージを Identity Manager に配信できるまで変更はキューに保持されます。
JMS は、別個にインストールおよび設定する必要があります。
図 11–1 に、直接接続を示します。この設定では、PasswordSync サーブレットは更新メッセージを直接 Identity Manager に送信します。
図 11–2 に、JMS 接続を示します。この設定では、PasswordSync サーブレットは更新メッセージを JMS Message Queue に送信します。Identity Manager の JMS リスナーリソースアダプタは、新しいメッセージがないかキューを定期的にチェックします (明るい青色の矢印)。キューはメッセージを Identity Manager に送信して応答します (濃い青色の矢印)。
Identity Manager はパスワードの変更の通知を受信すると、通知を復号化し、ワークフロータスクを使用して変更を処理します。ユーザーに割り当てられたすべてのリソース上でパスワードが更新され、SMTP サーバーがユーザーに電子メールを送信し、パスワード変更の状態をユーザーに通知します。
Windows が更新の通知を送信するのは、パスワードの変更が成功した場合のみです。パスワード変更リクエストがドメインのパスワードポリシーを満たさない場合、Windows はリクエストを拒否し、同期データは Identity Manager に送信されません。
図 11–3 は、パスワード更新の通知を受信したあとに、Identity Manager がワークフローを開始して、ユーザーに電子メールを送信するようすを示しています。
PasswordSync は、名前の末尾が $ (ドル記号) のアカウントについては、アカウントの変更通知をすべて破棄します。$ で終わるアカウント名は、Windows コンピュータアカウントとみなされます。$ で終わるユーザーアカウント名はいずれも Identity Manager に転送されません。