この章では、Solaris ボリュームマネージャにおけるボリュームのトップダウン作成に関連する概念について説明します。
この章では、次の内容について説明します。
関連作業の実行手順については、第 23 章「ボリュームのトップダウン作成 (作業)」を参照してください。
ボリュームのトップダウン作成では、metassist コマンドを使用して Solaris ボリュームマネージャのボリューム構成を自動的に作成できます。ディスクのパーティション分割、RAID-0 ボリュームの (サブミラーとしての) 作成、ホットスペア集合とホットスペアの作成からミラーの作成に至るまでの作業を手動で行わなくてすむようになります。代わりに、metassist コマンドを使用すればボリュームを作成できます。Solaris ボリュームマネージャがユーザーの代わりに残りの作業を実行します。
metassist コマンドを使用すれば、1 つのコマンドで Solaris ボリュームマネージャのボリューム構成を作成できます。サービス品質の面からボリューム特性を指定できます。サービス品質特性によって、ボリュームで使用するハードウェアコンポーネントを指定することなく、metassist コマンドへの入力を使用して、以下の指定が可能です。
ボリュームのサイズ
冗長性のレベル (データコピーの数)
ボリュームに対するデータパスの数
障害からの回復 (ボリュームをホットスペア集合と対応付けるかどうか)
ボリュームの指定は、コマンド行オプションや、コマンド行に指定する入力ファイルを使って、サービス品質に基づいて行うことができます。
状況によっては、ボリューム特性やボリューム作成時の制約を具体的に定義することが重要になります。このような場合、次の特性も指定できます。
ボリュームのタイプ (たとえば、RAID-0 (連結方式) または RAID-0 (ストライプ方式))
特定のボリュームで使用するコンポーネント
使用できるコンポーネントと使用できないコンポーネント
使用するコンポーネントの数
作成するボリュームタイプ固有の詳細。この詳細には、ストライプ、ミラーの読み取りポリシー、類似特性が含まれます。
ボリュームの名前、サイズ、およびコンポーネントを詳細に指定したい場合は、入力ファイルを使用します。入力ファイルには、ボリューム要求ファイルとボリューム仕様ファイルが含まれます。入力ファイルの使い方の詳細については、「ボリュームのトップダウン作成処理」を参照してください。
最後に、metassist コマンドで、特定のディスクやパスが使用される (または使用されない) ように指定します。
metassist コマンドは、Solaris ボリュームマネージャのディスクセットを使って、ボリュームのトップダウン作成に使用するボリュームや使用可能なディスクを管理します。ボリュームのトップダウン作成では、構成要素となるすべてのディスクが、ディスクセットに属しているか、ディスクセットに追加可能であることが必要です。トップダウン作成手順を使用すると、さまざまなディスクセットでボリュームを作成できます。ただし、使用できるディスクやコンポーネントは、ディスクセットの機能によって制限されます。
ボリュームのトップダウン作成処理では、次の 2 つの処理方法を提供することで柔軟性を実現しています。
必要な制約を指定でき、コマンドが完了した時点で必要なボリュームが作成される、完全に自動化されたエンドツーエンドの処理が可能です。
ブレークポイントごとに個々の XML ベースのファイルに書き込むといった、きめ細やかな処理が可能です。
次の図に、コマンド行入力と入力ファイルに基づいて、metassist コマンドがどのようにエンドツーエンド処理をサポートするかを示します。さらに、metassist コマンドによる部分処理サポートも示します。この場合、ファイルベースのデータが得られ、ボリュームの特性を確認できます。
介入が不要なボリューム自動作成処理では、必要なサービス品質特性をコマンド行から指定すれば、metassist コマンドが要求されたボリュームを自動的に作成してくれます。たとえば、次のように指定します。
# metassist create -s storagepool -S 10Gb |
このコマンドによって、容量 10G バイトのストライプ方式ボリュームがディスクセット storagepool に作成されます。このコマンドでは、ディスクセット storagepool に存在している使用可能な記憶領域が使用されます。
または、「ボリューム要求ファイル」を使用して、ボリュームの特性を定義することもできます。この場合、metassist -F request-file コマンドを使用して、指定した特性を備えたボリュームを作成します。
metassist -d コマンドを使用すると、ボリューム仕様ファイルを作成できます。このファイルを使用すると、意図どおりの実装かどうかを査定し、必要に応じてファイルを編集できます。このボリューム仕様ファイルは以後、metassist コマンドへの入力として使用できます。
最後に、metassist -c コマンドを使用して、コマンドファイルを作成します。「コマンドファイル」は、metassist コマンドで指定された Solaris ボリュームマネージャの装置構成を実装するシェルスクリプトです。繰り返しボリュームを作成する場合、このファイルを使用し、適切に編集します。
metassist コマンドを使用してこれらのファイルを作成すると、metassist コマンドが何を行うか、どのように決定を下すかを理解できます。この情報は、以下のような問題の解決に役立ちます。
ボリュームがなぜある方法で作成されたのか。
ボリュームがなぜ作成されなかったのか。
metassist コマンドがどのようなボリュームを作成するのか (ボリュームを実際に作成するわけではない)。
metassist コマンドはディスクを調べ、未使用と思われるディスクを判別します。このコマンドは、使用できるディスクを慎重に判別します。使用中のディスクやスライスは、metassist コマンドの使用対象にはなりません。metassist コマンドがチェックする内容は、次のとおりです。
ほかのディスクセットで使用されているディスク
マウントされているスライス
ファイルシステムスーパーブロックをもつスライス (マウント可能なファイルシステム)
ほかの Solaris ボリュームマネージャのボリュームで使用されているスライス
これらの条件を 1 つでも満たしているスライスは、ボリュームのトップダウン作成に使用できません。