Solaris Volume Manager for Sun Cluster が管理する記憶装置は、複数所有者ディスクセットとしてグループ分けされます。複数所有者ディスクセットを使用すると、複数のノードがディスクセットの所有権を共有したり、共有ディスクに同時に書き込むことができます。Oracle Real Application Clusters といったアプリケーションのインスタンスがクラスタ内の各ノードで動作するので、複数所有者ディスクセットは拡張性を提供します。アプリケーションの各インスタンスは共有記憶装置に直接アクセスするため、複数所有者ディスクセットを使用すると、アプリケーションの性能も上がります。
複数所有者ディスクセット機能が有効になるのは、Sun Cluster 環境においてのみです。「ノード」とは、Sun Cluster システムの一部である物理的なマシンのことです。
どの複数所有者ディスクセットにも、ノードのリストが関連付けられています。これらのノードがこのディスクセットの所有権を共有しています。次の metaset -s disk-set コマンドは、複数所有者ディスクセットの出力を表示します。
# metaset -s blue Multi-owner Set name = blue, Set number = 1, Master = nodeone Host Owner Member nodeone multi-owner Yes nodetwo multi-owner Yes Drive Dbase d9 Yes d13 Yes |
この出力は、ノードリスト内の nodeone と nodetwo がディスクセットの所有権を共有していることを示しています。また、nodeone が「マスターノード」であることも示しています。
どの複数所有者ディスクセットにも、マスターノードが 1 つあります。ディスクセットの作成後、最初のディスクを追加したノードが、そのディスクセットのマスターノードになります。マスターノードは、ディスクセットの状態データベースの複製を作成、削除、および更新します。
状態データベースの複製の詳細については、第 6 章「状態データベース (概要)」を参照してください。
Solaris Volume Manager for Sun Cluster では、ディスクセットのノードリストが互いに異なっていても、さらには重複があっても、共存が可能です。ディスクセットごとにマスターノードが存在するため、同じクラスタ上に複数のマスターが共存することもあります。
次の metaset コマンドからの出力は、最初のディスクをディスクセットに追加した時点で、nodeone がマスターノードになることを示しています。
nodeone# metaset -s red Multi-owner Set name = red, Set number = 1, Master = Host Owner Member nodeone Yes nodetwo Yes nodeone# metaset -s red -a /dev/did/dsk/d9 nodeone# metaset -s red Multi-owner Set name = red, Set number = 1, Master = nodeone Host Owner Member nodeone multi-owner Yes nodetwo multi-owner Yes Drive Dbase d9 Yes |
Solaris Volume Manager for Sun Cluster では、ディスクセットのノードリストが互いに異なっていても、さらには重複があっても、共存が可能です。ディスクセットごとにマスターノードが存在するため、同じクラスタ上に複数のマスターが共存することもあります。
複数所有者ディスクセットを構成する前に、Solaris OS とともに次のソフトウェアをインストールしておく必要があります。
Sun Cluster 初期クラスタフレームワーク
Sun Cluster Support for Oracle Real Application Clusters ソフトウェア
Oracle Real Application Clusters ソフトウェア
Sun Cluster と Oracle Real Application Clusters ソフトウェアの設定については、『Sun Cluster ソフトウェアのインストール (Solaris OS 版)』および『Sun Cluster Data Service for Oracle Real Application Clusters ガイド (Solaris OS 版)』を参照してください。
Solaris Volume Manager for Sun Cluster でディスクセットに関連する作業を実行するには、通常、Solaris ボリュームマネージャと同じコマンドを使用します。metaset コマンドに、複数所有者ディスクセット固有のコマンドオプションが追加されています。たとえば、複数所有者ディスクセットを作成する作業には、metaset コマンドに -M オプションを指定する必要があります。次の出力は、metaset -s diskset-name -a -M -h hostname コマンドを使用して、複数所有者ディスクセットを作成する方法を示しています。
# metaset -s red -a -M -h nodeone # metaset Multi-owner Set name = red, Set number = 1, Master = Host Owner Member nodeone Yes |
また、metaset コマンドオプションの中には、ディスクセットを取得または解放するコマンドなど、複数所有者ディスクセットでは使用できないものもあります。詳細については、metaset(1M) のマニュアルページを参照してください。
ディスクを処理する際も、Sun Cluster 環境では作業方法が異なります。Sun Cluster は各ディスクに一意のディスク ID (DID) 番号を割り当てます。ディスクを識別するときには、cntndn 形式を使用するのではなく、Sun Cluster の DID パス名 /dev/did/dsk/dN を使用します。変数 N は、Sun Cluster によって割り当てられたデバイス番号です。
次の出力は、複数所有者ディスクセットにディスクを追加するときに、metaset -s diskset-name -a disk-name コマンドと Sun Cluster の DID パス名を使用してディスクを識別する方法を示しています。
nodeone# metaset -s red Multi-owner Set name = red Multi-owner Set name = red, Set number = 1, Master = Host Owner Member nodeone Yes nodetwo Yes nodeone# metaset -s red -a /dev/did/dsk/d13 nodeone# metaset -s red Multi-owner Set name = red, Set number = 1, Master = nodeone Host Owner Member nodeone multi-owner Yes Drive Dbase d13 Yes |
Oracle Real Application Clusters に対応する複数所有者ディスクセットの作成方法については、『Sun Cluster Data Service for Oracle Real Application Clusters ガイド (Solaris OS 版)』の「Oracle Real Application Clusters データベース用の Solaris Volume Manager for Sun Cluster にマルチオーナーディスクセットを作成」を参照してください。
ディスクセットに関連する作業については、第 19 章「ディスクセット (作業)」を参照してください。