この章では、端末やモデムを管理する場合の概要を説明します。
この章の内容は以下のとおりです。
シリアルポートツールを使用して端末やモデムを設定する手順については、第 2 章端末とモデムの設定 (手順)を参照してください。
サービスアクセス機能 (SAF) を使用して端末やモデムを設定する手順については、第 3 章サービスアクセス機能によるシリアルポートの管理 (手順)を参照してください。
この節では、Oracle Solaris で端末およびモデムを管理するための新機能、または機能の変更について説明します。Oracle Solaris リリースの新機能と説明の完全な一覧については、『Oracle Solaris 10 9/10 の新機能』を参照してください。
Solaris 10 8/07: Coherent Console サブシステム機能は、カーネルコンソールサブシステムの一部を実装し、コンソール出力のレンダリングを容易にします。Coherent Console では、Programmable Read-Only Memory (PROM) インタフェースではなく、Oracle Solaris のカーネル機構を使用してコンソール出力がレンダリングされます。これにより、コンソールレンダリングの OpenBoot PROM (OBP) に対する依存性が減少します。Coherent Console では、カーネル常駐のフレームバッファードライバを使用してコンソール出力を生成します。生成されるコンソール出力は、OBP レンダリングを使用する場合よりも効率的です。Coherent Console では、SPARC コンソール出力時のアイドリングも回避され、ユーザー体験が向上します。
Solaris 10 8/07: $TERM 値は現在、動的に派生し、コンソールが使用する端末エミュレータに依存しています。x86 ベースのシステムでは、カーネルの端末エミュレータが常に使用されるため、$TERM 値は sun-color です。
SPARC ベースのシステムでは、$TERM 値は次のとおりです。
システムでカーネルの端末エミュレータが使用される場合は、$TERM にこの値が使用されます。
システムで PROM の端末エミュレータが使用される場合は、$TERM にこの値が使用されます。
この変更は、端末タイプをシリアルポートに設定する方法には影響しません。 $TERM 値を変更するには、次の例に示すように、引き続き svccfg コマンドを使用することができます。
# svccfg svc:> select system/console-login svc:/system/console-login> setprop ttymon/terminal_type = "xterm" svc:/system/console-login> exit |
Oracle Solaris 10: システムコンソールでの ttymon の起動は、SMF によって管理されます。svc:/system/console-login:default サービスにプロパティーを加えることにより、svccfg コマンドで ttymon コマンドの引数を指定できるようになりました。これらのプロパティーは、SMF の汎用プロパティーではなく ttymon 固有のものであることに注意してください。
/etc/inittab ファイルでの ttymon の起動はカスタマイズできなくなりました。
SMF で ttymon コマンド引数を指定する方法については、「ttymon コンソールの端末タイプを設定する方法」を参照してください。
SMF の概要については、『Solaris のシステム管理 (基本編)』の第 18 章「サービスの管理 (概要)」を参照してください。SMF に関する手順の詳細については、『Solaris のシステム管理 (基本編)』の第 19 章「サービスの管理 (手順)」を参照してください。
端末とモデムは、システム資源とネットワーク資源へのローカルおよびリモートのアクセスを提供します。端末とモデムの設定は、システム管理者の重要な作業です。この節では、Oracle Solaris オペレーティングシステムにおけるモデムと端末の管理についての概要を説明します。
システムのビットマップグラフィックディスプレイは、文字端末とは異なります。文字端末はシリアルポートに接続され、テキストのみを表示します。グラフィックスディスプレイは、特別な手順に従って管理する必要はありません。
発信専用
着信専用
双方向
家庭用コンピュータに接続されたモデムは、「発信専用」サービスを提供するよう設定されていることがあります。発信専用サービスを使用すると、自宅から他のコンピュータにアクセスできます。しかし、外部からそのマシンにアクセスすることはできません。
「着信専用」サービスは、その逆です。着信サービスを使用すると、遠隔地からシステムにアクセスできます。しかし、外部への発信はできません。
「発着信両用」アクセスは、その名のとおり、発信と着信の両方の機能を備えています。
「ポート」とは、デバイスがオペレーティングシステムと通信するためのチャネルです。具体的には、端末やモデムのケーブルを物理的に接続する「コンセント」と考えると一番わかりやすいでしょう。
ただし、ポートは厳密には物理的なコンセントではなく、その実体はハードウェア (ピンとコネクタ) とソフトウェア (デバイスドライバ) からなっています。多くの場合、1 つの物理的コンセントが複数のポートを備えており、複数の装置を接続できます。
一般的なポートとして、シリアル、パラレル、SCSI (Small Computer Systems Interface)、Ethernet などがあります。
「シリアルポート」は、標準的な通信プロトコルを使用し、1 バイト単位の情報を 1 本の回線上で 1 ビットずつ伝送します。
RS-232-C または RS-423 標準に従って設計されたデバイスには、大半のモデム、文字端末、プロッタ、および一部のプリンタが含まれます。これらのデバイスは、同様に設計されたコンピュータのシリアルポートであればどれにでも、標準ケーブルを使用して接続できます。
1 台のコンピュータに多数のシリアルポートデバイスを接続する必要がある場合、システムに「アダプタボード」を追加しなければならないことがあります。アダプタボードは、ドライバソフトウェアを使用することにより、より多くの装置を接続できるための追加のシリアルポートを提供します。
モデムや端末を使用すると、シリアルポートのソフトウェアを介してコンピュータ資源にアクセスできます。シリアルポートソフトウェアは、ポートに接続する装置向けに特定の「サービス」を提供するように設定しなければなりません。たとえば、モデムに対してはシリアルポートは発着信両用サービスを提供するように構成できます。
サービスへのアクセスは、主にポートモニターを通じて行います。ポートモニターとは、ログイン要求や、プリンタまたはファイルのアクセス要求を常に監視しているプログラムのことです。
ポートモニターは要求を検出すると、オペレーティングシステムとサービスを要求する装置間の通信を確立するのに必要なすべてのパラメータを設定します。次に、必要なサービスを提供する他のプロセスに制御を移します。
次の表に、Oracle Solaris リリースで提供されている 2 つのタイプのポートモニターとその説明を示します。
表 1–1 ポートモニターのタイプ
getty と呼ばれる従来のポートモニターを使い慣れたユーザーもいます。新しい ttymon ポートモニターはより強力です。1 つの ttymon ポートモニターで複数の getty に相当する処理が行えます。それ以外の点では、どちらのプログラムも同じ機能を提供します。詳細は、getty(1M) のマニュアルページを参照してください。
次の表に、端末とモデムを管理するためのツールの一覧を示します。
表 1–2 端末とモデムを管理するツール
端末とモデムの管理方法 |
ツール |
詳細 |
---|---|---|
管理作業全般 |
サービスアクセス機能 (SAF) のコマンド | |
簡易設定 |
Solaris 管理コンソールのシリアルポートツール |
第 2 章端末とモデムの設定 (手順)および Solaris 管理コンソールのオンラインヘルプ |
シリアルポートツールは、pmadm コマンドを呼び出すことにより、シリアルポートソフトウェアを設定して端末やモデムを管理します。
このツールは、以下も提供します。
共通の端末およびモデム構成用テンプレート
複数ポートの設定、変更、または削除
各ポートの状態の簡易表示
SAF は、端末、モデム、およびその他のネットワークデバイスの管理用のツールです。
SAF を使用すると、具体的には以下を設定できます。
ttymon および listen ポートモニター (sacadm コマンドを使用)
ttymon ポートモニターサービス ( pmadm、 ttyadm コマンドを使用)
listen ポートモニターサービス ( pmadm、 nlsadmin コマンドを使用)
tty デバイスに関する問題の解決
ネットワークからの印刷サービス要求に関する問題の解決
サービスアクセスコントローラに関する問題の解決 (sacadm コマンドを使用)
SAF は、tty デバイスやローカルエリアネットワーク (LAN) を通じたシステム資源やネットワーク資源へのアクセスを制御する、オープンシステムソリューションです。SAF はプログラムではなく、バックグラウンドプロセスと管理用コマンドの階層構造になっています。