この節では、ネットワークに最初の DHCP サーバーを構成する前に決定する必要がある事柄について説明します。次の表では、ネットワークを構成して DHCP を使用するために必要な選択の概要と、各作業の実行手順を説明した節へのリンクを示しています。
作業 |
説明 |
説明 |
---|---|---|
DHCP サーバーを選択します。 |
DHCP サービスを実行するためのシステム要件をサーバーが満たしているかどうか判断します。 | |
データストアを選択します。 |
データストアタイプを比較して、サイトに最も適したデータストアを決定します。 | |
リースポリシーを設定します。 |
サイトに適したリースポリシーを決定するために、IP アドレスのリースについて確認します。 | |
ルーターのアドレスを指定するか、ルーターを検索するかを選択します。 |
DHCP クライアントでルーターを検索するか、特定のルーターを使用するかを決定します。 |
ネットワークトポロジを念頭に置き、次のシステム要件に従って、DHCP サーバーを設定するホストを選択します。
ホストの必要条件は次のとおりです。
Solaris 2.6 リリース以降が動作している。多数のクライアントをサポートする場合は、Solaris 8 7/01 リリース以降のバージョンをインストールする必要があります。
DHCP を使用する予定のクライアントがあるすべてのネットワークに、直接ネットワーク経由、または BOOTP リレーエージェントを介してホストからアクセスできる。
経路制御を使用するように構成されている。
ホストでは、ネットワークトポロジを反映した netmasks テーブルが正しく構成されている。
DHCP データは、テキストファイル、バイナリファイル、または NIS+ ディレクトリサービスに保存できます。次の表に、各データストアの特長と、各データストアを使用すべき環境を示します。
表 13–3 DHCP データストアの比較
データストア |
パフォーマンス |
保守 |
共有 |
環境 |
---|---|---|---|---|
バイナリファイル |
高性能、大容量 |
少ない保守で、データベースサーバーが不要です。内容は、DHCP マネージャ、dhtadm 、 pntadm で表示する必要があります。ファイルの定期的なバックアップが必要です。 |
データストアを DHCP サーバーの間で共有することはできません。 |
多数のネットワークからなり、ネットワークごとに数千のクライアントがいる中規模から大規模の環境。小規模から中規模の ISP に適しています。 |
NIS+ |
中程度の性能と容量。NIS+ サービスの性能と容量に依存する |
DHCP サーバーシステムが NIS+ クライアントとして構成されていなければなりません。NIS+ サービスの保守が必要です。内容は、DHCP マネージャ、dhtadm 、 pntadm で表示する必要があります。nisbackup による定期的なバックアップが必要です。 |
DHCP データは NIS+ に分散されます。複数のサーバーから同じコンテナにアクセスできます。 |
ネットワーク当たり 5000 クライアントまでの小規模から中規模の環境。 |
テキストファイル |
中程度の性能、少ない容量 |
少ない保守で、データベースサーバーが不要です。ASCII ファイルであるため、DHCP マネージャ、dhtadm または pntadm を使用しなくても見ることができます。ファイルの定期的なバックアップが必要です。 |
データストアを DHCP サーバーの間で共有できます。ただし、DHCP データが、NFS マウントポイントを通してエクスポートされる 1 つのファイルシステムに格納されていなければなりません。 |
ネットワーク当たり数百から 1,000 クライアントで、合計が 10,000 クライアント未満の小規模な環境。 |
従来の NIS はデータストアオプションとしては推奨されません。NIS が高速な増分更新をサポートしていないためです。ネットワークで NIS が使用されている場合は、データストアとしてテキストファイルまたはバイナリファイルを使用することをお勧めします。
「リース」とは、DHCP サーバーが特定の IP アドレスの使用を DHCP クライアントに許可する期間のことです。管理者は、サーバーの初期構成時に、サイト全体に適用するリースポリシーを指定する必要があります。「リースポリシー」には、リース期間や、クライアントがこのリースを更新できるかどうかを指定します。サーバーは提供された情報を使用して、構成時に作成するデフォルトマクロ内のオプションの値を設定します。管理者は、作成する構成マクロでオプションを使用することによって、特定のクライアントや特定のクライアントタイプごとに、異なるリースポリシーを設定することもできます。
「リース期間」は、リースが有効な時間数、日数、または週数として指定されます。クライアントに IP アドレスが割り当てられると (あるいは、クライアントが IP アドレスのリースを再度ネゴシエーションすると)、リースの満了日時が計算されます。その際には、クライアントの DHCP 肯定応答のタイムスタンプにリース期間の時間数が加算されます。たとえば、DHCP 肯定応答のタイムスタンプが 2005 年 9 月16 日 9:15 AM で、リース期間が 24 時間だとすると、リース満了時間は 2005 年 9 月 17 日 9:15 AM になります。リース満了日時はクライアントの DHCP ネットワークレコード中に保存され、DHCP マネージャや pntadm ユーティリティーで表示されます。
リース期間には、期限切れのアドレスを速やかに再利用できるように比較的小さな値を設定します。ただし、リース期間の値は、DHCP サービスの中断時間よりも長い期間にする必要があります。クライアントは、DHCP サービスが動作するシステムが修理されている間も動作できる必要があります。一般的な指針としては、サーバーの予想停止時間の 2 倍を指定します。たとえば、故障部品を検出、交換し、システムをリブートするのに 4 時間かかるとすれば、8 時間をリース期間に指定します。
リースネゴシエーションオプションは、リースが満了する前に、クライアントが提供されたリースについてサーバーとネゴシエーションできるかどうかを決めるものです。リースのネゴシエーションが可能な場合、クライアントはリースの残り時間を常に監視します。そして、リース期間の半分が経過すると、リースを元のリース期間の値に戻す要求を DHCP サーバーに送ります。システムの数が IP アドレスの数より多い環境では、リースのネゴシエーションを無効にする必要があります。それによって、IP アドレスの使用時間に限度が与えられます。しかし、IP アドレスの数が十分にある場合は、リースネゴシエーションを有効にして、リース期間の満了時に、ネットワークインタフェースの停止をクライアントに強制することを避ける必要があります。さらに、クライアントに新しいリースを取得させると、NFS や telnet セッションなど、クライアントの TCP 接続が中断されるおそれがあります。リースネゴシエーションは、サーバーの構成時にサイト全体に対して有効にできます。あるいは、構成マクロの LeaseNeg オプションを使用すれば、特定のクライアントやクライアントタイプだけにリースネゴシエーションを有効にできます。
ネットワークでサービスを提供するシステムはその IP アドレスを保持する必要があります。このようなシステムは、短期的なリースに依存すべきではありません。このようなシステムで DHCP を使用する場合は、常時リースにより IP アドレスを割り当てるのではなく、予約済みの IP アドレスをシステムに手動で割り当てるべきです。これによって、このシステムの IP アドレスが使用されなくなったときには、それを検出できます。
ホストシステムは、ローカルネットワークの外側にあるネットワークと通信する場合、ルーターを使用します。ホストは、これらのルーターの IP アドレスを知っていなければなりません。
DHCP サーバーを構成する際には、次のどちらかの方法で DHCP クライアントにルーターアドレスを提供する必要があります。 1 つの方法は、ルーターの IP アドレスを指定する方法です。これより望ましい方法としては、クライアントがルーター発見プロトコルを使ってルーターを検索する方法があります。
そのネットワークのクライアントがルーター発見機能を実行できる場合には、ルーターが 1 つしかなくてもルーター発見プロトコルを使用すべきです。ルーター発見プロトコルを使用すると、クライアントはネットワーク内でのルーター変更に容易に対応できます。たとえば、ルーターに故障が発生したために、新しいアドレスを持つルーターに置き換えられる場合でも、クライアントは、新しいアドレスを自動的に検出できます。新しいネットワーク構成を受信して新しいルーターアドレスを取得する必要はありません。