Solaris のシステム管理 (ネットワークサービス)

DA の配置

この節では、SLP を実行しているネットワークでの計画的な DA の配置について説明します。

配置された DA または構成されたスコープがなくても、基本のエージェントである UA と SA だけで SLP は十分機能します。特定の構成を持たないすべてのエージェントは自動的に default スコープを使用します。DA はサービス通知のキャッシュとして機能します。DA を配置すると、ネットワークに送られるメッセージ数が削減されるため、メッセージ応答の受け取りに必要な時間も短縮されます。これにより、SLP をより大規模なネットワークに対応させることができます。

SLP DA を配置する理由

DA を配置する主な目的は、サービス検出によって生じるマルチキャストトラフィックの量とユニキャスト応答の収集に関係する遅延を削減することです。多くの UA および SA を持つ大規模なネットワークでは、サービス検出によって生じるマルチキャストの量が非常に大きくなるので、ネットワークのパフォーマンスが下がります。1 つまたは複数の DA を配置すると、UA はサービスについて DA にユニキャストし、SA はユニキャストを使用して DA に登録する必要があります。DA を使用したネットワークでは、SLP 登録されたマルチキャストは、能動的および受動的 DA 検出のマルチキャストだけです。

SA は、マルチキャストのサービス要求を受け取るのではなく、共通のスコープのセット内で検出した任意の DA に自動的に登録します。ただし、DA がサポートしていないスコープ内のマルチキャスト要求には、SA が直接応答します。

UA から出されたサービス要求は、UA のスコープ内に DA が配置されている場合 は、ネットワーク上へのマルチキャストではなく DA に対するユニキャストです。そのため、UA のスコープ内に DA を配置すると、マルチキャストが削減されます。通常の UA 要求を行うマルチキャストをなくすことにより、クエリー応答の受け取りに必要な時間が秒単位からミリ秒単位に大幅に縮小します。

DA は SA および UA の動作の中心として機能します。スコープの集合に対して 1 つまたは複数の DA を配置することにより、SLP の動作を監視するための集中的なポイントが提供されます。DA ログを起動することにより、ネットワークに散在している複数の SA から取り寄せたログをチェックするよりも、登録および要求の監視が容易になります。負荷を均等にする必要に合わせて、1 つまたは複数の特定のスコープに対して DA をいくつでも配置できます。

マルチキャストルーティングが使用できないネットワークでは、SLP がブロードキャストを使用するように構成できます。しかし、ブロードキャストは各ホストにメッセージを処理するように要求するため、非常に効率が悪くなります。また、ブロードキャストは通常、ルーターを超えて伝達されません。この結果、マルチキャストルーティングに対応していないネットワークでは、同じサブネットでしかサービスを検出できません。マルチキャストルーティングに一部しか対応していない場合は、ネットワーク上でサービスを検出する機能に矛盾が生じます。マルチキャストメッセージは DA の検出に使用されます。したがって、マルチキャストルーティングに一部しか対応していない場合は、UA と SA はサービスを SA のスコープ内にある既知の DA に登録することが暗黙の了解になっています。たとえば、UA が DA1 と呼ばれる DA にクエリーを出し、SA がサービスを DA2 に登録している場合、UA はサービスの検出に失敗します。マルチキャストが使用できないネットワーク上の SLP の配置については、「ブロードキャスト専用ルーティングの構成」を参照してください。

サイト全体がマルチキャストルーティングに対応していないネットワークでは、net.slp.DAAdresseses プロパティーを使用して、SLP の UA と SA が DA 位置に関して矛盾のないリストを持つように構成する必要があります。

最後に、Solaris SLPv2 の DA は SLPv1 との相互運用性をサポートしています。SLPv1 相互運用性は、Solaris DA ではデフォルトにより有効になっています。ネットワークにプリンタなどの SLPv1 デバイスが接続されている場合、またはサービス検出で SLPv1 を使用している Novell Netware 5 と相互運用する必要がある場合、DA を配置する必要があります。DA が配置されていないと、Solaris SLP の UA は SLPv1 によって通知されたサービスを見つけることができません。

DA を配置する場合

次の条件のどれかに当てはまる場合は、エンタープライズに DA を配置します。

ProcedureDA を配置する方法

次の手順に従って、slp.conf ファイルの net.slp.isDA プロパティーに True を設定します。


注 –

1 台のホストにつき 1 つの DA だけが割り当てられます。


  1. スーパーユーザーになるか、同等の役割を引き受けます。

    役割には、認証と特権コマンドが含まれます。役割の詳細については、『Solaris のシステム管理 (セキュリティサービス)』「RBAC の構成 (作業マップ)」を参照してください。

  2. ホスト上の slpd とすべての SLP 動作を停止します。


    # svcadm disable network/slp
    
  3. 構成の設定を変更する前に、デフォルトの /etc/inet/slp.conf ファイルのバックアップをとります。

  4. slpd.conf ファイル内の net.slp.isDA プロパティーに True を設定します。


    net.slp.isDA=True
  5. 変更を保存し、ファイルを閉じます。

  6. 変更を反映するには、slpd を再起動します。


    # svcadm enable network/slp
    

DA を配置する場所

この節は、DA を配置する場所について状況ごとにヒントを示します。

複数の DA を配置して負荷を均等にする

負荷を均等にする手段として、同じスコープの集合体について複数の DA を配置できます。次の状況のどれかに当てはまれば、DA を配置できます。

SLP トラフィックの snoop トレースを行うことによって、どれくらいの UA 要求で DA_BUSY_NOW エラーが返されるかを判断することができます。返される UA 要求の数が多い場合は、DA から物理的およびトポロジ的に離れている建物内の UA は、応答が遅かったり過度にタイムアウトしたりすることがあります。このような場合、建物内の UA クライアントの応答を改善するために、建物ごとに DA を配置できます。

建物間を接続しているリンクは、建物内のローカルエリアネットワークよりも遅いことがあります。ネットワークが複数の建物または物理的なサイトに渡っている場合は、/etc/inet/slp.conf ファイル内の net.slp.DAAddresses プロパティーを特定のホスト名またはアドレスのリストに設定して、指定した DA だけに UA がアクセスするようにします。

特定の DA がサービス登録に対して大量のホストメモリーを消費している場合は、DA がサポートするスコープ数を減らすことによって、SA 登録の数を削減します。登録数の多いスコープを、たとえば 2 つのスコープに分けることができます。次に、片方の DA を別のホストに配置することによって、もう片方のスコープだけをサポートするようにできます。