Solaris のシステム管理 (ネットワークサービス)

クライアント側フェイルオーバー機能

クライアント側のフェイルオーバー機能を使用すると、NFS クライアントは同じデータを利用できる複数のサーバーを知ることができるため、現在のサーバーが使用不能になっても、ほかのサーバーに切り替えることができます。ファイルシステムが使用不能になる原因には次のものがあります。

通常、このような場合のフェイルオーバー機能はユーザーにはわかりません。つまり、フェイルオーバー機能はクライアント上のプロセスを中断することなく実行されます。

フェイルオーバー機能が行われるためには、ファイルシステムが読み取り専用でマウントされている必要があります。また、ファイルシステムが完全に同じでないとフェイルオーバー機能は成功しません。ファイルシステムが同一になる条件については、「複製されたファイルシステムとは」を参照してください。フェイルオーバー機能の候補としては、静的なファイルシステム、または変更の少ないファイルシステムが適しています。

同じ NFS マウント上では、CacheFS 機能とクライアント側のフェイルオーバー機能の両方は使用できません。CacheFS ファイルシステムは、それぞれについて追加情報が格納されています。この情報はフェイルオーバーの際に更新できないため、ファイルシステムをマウントするときにはフェイルオーバー機能と CacheFS のどちらか片方の機能しか使用できません。

各ファイルシステムについて用意すべき複製の数を決める要素はさまざまです。理想的には、サーバーを 2 台以上設置します。それぞれのサーバーが複数のサブネットをサポートする必要があります。これは、各サブネットに一意のサーバーを設置するよりもよい方法です。フェイルオーバー処理の際にはリストにある各サーバーが確認されます。そのため、サーバーの台数を増やすと、それぞれのマウント処理が遅くなります。

フェイルオーバー機能に関する用語

フェイルオーバー機能のプロセスを完全に理解するには、次の 2 つの用語を理解する必要があります。

複製されたファイルシステムとは

フェイルオーバー機能に関して、あるファイルシステムのすべてのファイルが元のファイルシステムのファイルとサイズもファイルタイプも同じ場合に、そのファイルシステムを「複製」といいます。アクセス権、作成日付などのファイル属性は関係ありません。ファイルサイズまたはファイルタイプが異なると再マッピングは失敗し、元のサーバーが再び使用可能になるまでプロセスはハングアップします。NFS version 4 では、動作が異なります。「NFS version 4 におけるクライアント側フェイルオーバー機能」を参照してください。

複製されたファイルシステムを保守するには、rdistcpio などのファイル転送メカニズムを使います。複製されたファイルシステムを更新すると不一致が発生するため、最良の結果を得るには次の予防策を考慮してください。

フェイルオーバー機能と NFS ロック

ソフトウェアパッケージの一部は、ファイルに読み取りロックをかける必要があります。そのようなソフトウェアが正常に動作できるようにするため、読み取り専用ファイルシステムに対しても読み取りロックがかけられるようになっています。ただし、これはクライアント側でしか認識されません。サーバー側で意識されないため、再マッピングされてもロックはそのまま残ります。ファイルはもともと変更が許されないので、サーバー側でファイルをロックする必要はありません。

NFS version 4 におけるクライアント側フェイルオーバー機能

NFS version 4 では、ファイルサイズが違うまたはファイルタイプが同じでないために複製が確立されない場合、次のことが起こります。


注 –

アプリケーションを再起動して、ファイルに再度アクセスすると、正常にアクセスできます。


NFS version 4 では、サイズが異なるディレクトリの複製エラーを受け取ることはありません。以前のバージョンの NFS では、この状態はエラーとして扱われ、再マッピングプロセスを妨げました。

さらに、NFS version 4 では、ディレクトリ読み取り操作が正常に行われない場合、次に一覧表示されたサーバーによって操作が行われます。以前のバージョンの NFS では、正常でない読み取り操作により、再マッピングが失敗し、プロセスは元のサーバーが使用可能になるまで停止しました。