Solaris のシステム管理 (セキュリティサービス)

第 1 章 セキュリティーサービス (概要)

Solaris オペレーティングシステム (Solaris OS) のセキュリティーを保持するため、Solaris ソフトウェアでは次のような機能を提供しています。

システムセキュリティー

システムセキュリティーとは、システムのリソースが適切に使用されるようにするための手段です。アクセス制御を行うと、システム上のリソースにアクセスできるユーザーを制限することができます。システムセキュリティーとアクセス制御を目的とした Solaris OS の機能には次のようなものがあります。

Solaris 暗号化サービス

暗号化はデータの符号化と復号化の技術であり、整合性、機密性、および信頼性を維持するために使用されます。整合性とは、データが改ざんされていないことを意味します。機密性は、データがほかのユーザーによって読み取られることがないことを意味します。データの信頼性は、送信された内容と受信した内容が同じであることを意味します。ユーザーの認証は、そのユーザーが自己の証明となる 1 つ以上の情報を提供したことを意味します。認証メカニズムは、データソースやユーザー識別情報などを数学的に検証します。暗号化メカニズムは、偶然にデータを目にした人がそのデータを読み取ることができないようにデータにスクランブルをかけます。暗号化サービスは、アプリケーションやユーザーに認証と暗号化のメカニズムを提供します。

暗号化アルゴリズムは、ハッシュ、チェーンなどの数学技法を使って解読が極めて困難な暗号を作成します。認証メカニズムは、送信者と受信者がデータから同一の数値を算出することを要求します。暗号化メカニズムは、送信者と受信者が暗号化方式に関する情報を共有することに基づいています。この情報によって、送信者と受信者だけがメッセージを復号化できます。Solaris OS は、一元化された暗号化フレームワークと、特定のアプリケーション専用の暗号化メカニズムを提供します。

Solaris 10 8/07 リリースから、鍵管理フレームワーク (KMF) は、ポリシー、鍵、証明書などの公開鍵オブジェクトを集中管理するためのユーティリティーを提供しています。KMF は、これらのオブジェクトを OpenSSL、NSS、および PKCS #11 公開鍵技術向けに管理します。第 15 章Solaris 鍵管理フレームワークを参照してください。

認証サービス

認証とは、定義済みの条件に基づいてユーザーまたはサービスを識別するメカニズムのことです。認証サービスには、単純な認証システム (名前とパスワードの組み合わせ) から複雑な暗号化認証システム (スマートカード、生体認証など) まで、さまざまな形態があります。強力な認証メカニズムは、ユーザーだけが知っている情報や検証可能な個人情報を使用します。ユーザー名は、ユーザーが知っている情報の一例です。検証可能な情報には、スマートカードや指紋などがあります。認証に関連した Solaris 機能には次のようなものがあります。

暗号化による認証

暗号化による認証は通信を安全に行う基本です。認証を利用して、送信元と送信先が正しいユーザーまたはグループであることを保証します。通信は、送信元で暗号化され、送信先で復号化されます。暗号化されていれば、侵入者が通信を傍受できたとしても、その内容が解読されることはありません。通信を安全に行うための Solaris の機能には次のようなものがあります。

Solaris 監査

監査は、システムのセキュリティーと保全性に関する基本概念です。監査は、システムの動作とイベントの履歴を検査して、発生した処理を確認するプロセスです。この履歴は、処理内容、処理日時、処理を行った人物、処理による影響をログとして記録したものです。第 28 章Solaris 監査 (概要)を参照してください。

セキュリティーポリシー

セキュリティーポリシーまたはポリシーという表現は、このマニュアルでは組織のセキュリティーガイドラインと同じ意味で使用されています。実際のサイトのセキュリティーポリシーは、処理される情報の重要度や未承認アクセスから情報を保護する手段を定義する規則セットです。Solaris Secure Shell、認証、RBAC、承認、特権、リソース制御などのセキュリティー技術は、情報を保護する手段となります。

セキュリティー技術の中には、それらの個々の実装側面を表現する上でワードポリシーを使用するものもあります。たとえば、Solaris 監査は監査ポリシーの一部の設定で監査ポリシーオプションを使用します。次の表は、個々の実装側面の表現にワードポリシーを使用する機能に関連した用語解説、マニュアルページ、および情報を示しています。

表 1–1 Solaris OS におけるポリシーの利用

用語定義 

選択されるマニュアルページ 

詳細情報 

audit policy

audit_control(4), audit_user(4), auditconfig(1M)

第 28 章Solaris 監査 (概要)

policy in the cryptographic framework

cryptoadm(1M)

第 13 章Solaris の暗号化フレームワーク (概要)

device policy

getdevpolicy(1M)

「デバイスアクセスの制御」

Kerberos policy

krb5.conf(4)

第 25 章Kerberos 主体とポリシーの管理 (手順)

network policies

ipfilter(5), ifconfig(1m), ike.config(4), ipsecconf(1M), routeadm(1M)

『Solaris のシステム管理 (IP サービス)』のパート IV「IP セキュリティー」

password policy

passwd(1), nsswitch.conf(4), crypt.conf(4), policy.conf(4)

「ログイン制御の管理」

policy for public key technologies

kmfcfg(1)

第 15 章Solaris 鍵管理フレームワーク

RBAC policy

rbac(5)

exec_attr データベース」