Solaris のシステム管理 (デバイスとファイルシステム)

ディスクスライスについて

ディスク上に格納されたファイルは、ファイルシステム中で管理されます。ディスク上の各ファイルシステムは「スライス」、つまりファイルシステム用に確保されたセクターセットのグループに割り当てられます。Oracle Solaris OS (および、システム管理者) からは、各ディスクスライスは別個のディスクドライブであるかのように見えます。

ファイルシステムの詳細は、第 16 章ファイルシステムの管理 (概要)を参照してください。


注 –

スライスを「パーティション」と呼ぶこともあります。format ユーティリティーなど、特定のインタフェースではスライスを「パーティション」と呼びます。


スライスを設定するときには、次の規則に注意してください。

SPARC プラットフォームと x86 プラットフォームでは、スライスの設定が少し異なります。次の表に、主な相違点を示します。

表 10–1 SPARC プラットフォームと x86 プラットフォームでのスライスの違い

SPARC プラットフォーム 

x86 プラットフォーム 

ディスク全体が Oracle Solaris OS 用になります。 

ディスクはオペレーティングシステムごとに 1 つの fdisk パーティションに分割されます。

VTOC – ディスクは 8 スライス (スライス 0 - 7) に分割されます。

EFI – ディスクは 7 スライス (スライス 0 - 6) に分割されます。

VTOC – Solaris の fdisk パーティションは 10 スライス (スライス 0 - 9) に分割されます。

EFI – ディスクは 7 スライス (スライス 0 - 6) に分割されます。

Solaris ボリュームマネージャー (以前の Solstice DiskSuite) には「ソフトパーティション」と呼ばれるパーティション分割機能が備わっています。ソフトパーティションを使えば、1 つのディスクに 9 個以上のパーティションを作成できます。

Solaris ボリュームマネージャーの一般的な情報については、『Solaris ボリュームマネージャの管理』の第 2 章「記憶装置管理の概念」を参照してください。ソフトパーティションについては、『Solaris ボリュームマネージャの管理』の第 12 章「ソフトパーティション (概要)」を参照してください。

ディスクスライス

Oracle Solaris OS を実行するシステムには、次のようなスライスが存在する可能性があります。

x86 システムの場合

表 10–2 ディスクスライス

スライス 

ファイルシステム 

通常クライアントかサーバーのどちらにあるか 

Comments 

ルート (/)

両方 

OS を構成するファイルとディレクトリを含みます。 

EFI – EFI ラベル付きディスクからはブートを実行できません。

スワップ領域 

両方 

仮想メモリー、つまり「スワップ空間」を提供します。

— 

両方 

VTOC – 慣例的にディスク全体を表します。このスライスのサイズは変更するべきではありません。

EFI – サイトの必要に応じてオプションスライスを定義します。

/export など

両方 

サイトの必要に応じて定義可能なスライス (任意)。 

クライアントシステムが必要とする代替オペレーティングシステムを格納するため、サーバー上で使用できます。 

 

両方 

サイトの必要に応じて定義可能なスライス (任意)。 

/opt など

両方 

サイトの必要に応じて定義可能なスライス (任意)。 

システムに追加されるアプリケーションソフトウェアを格納します。インストール時に、/opt ファイルシステムにスライスが割り当てられていなければ、スライス 0 に /opt ディレクトリが作成されます。

/usr

両方 

OS のコマンド (「実行可能ファイル」とも呼ぶ) を含みます。このスライスには、マニュアル、システムプログラム (initsyslogd など)、ライブラリルーチンも含まれます。

/home または

/export/home

両方 

ユーザーによって作成されるファイルを含みます。 

なし 

なし 

VTOC – GRUB ブート情報を含んでいます。

EFI – デフォルトで作成された予約済みスライス。VTOC の代替シリンダによく似た領域です。このスライスは変更または削除しないでください。

9 (x86 のみ)

— 

両方 

EFI – 適用できません。

VTOC – 代替ディスクブロック用に予約された領域です。スライス 9 は代替セクタースライスと呼ばれます。


注 –

VTOC ラベルの付いたディスクでは、スライスを変更したり、スライス 2 を使ってファイルシステムを格納したりしないでください。Solaris ボリュームマネージャー、Solaris Live Upgrade、installgrub などの製品は、スライス 2 が少しでも変更されると正しく動作しません。


raw データスライスの使用

ディスクラベルは、各ディスクのブロック 0 に格納されます。つまり、他社製データベースアプリケーションを使って raw データスライスを作成するときは、ブロック 0 で開始してはいけません。そのようにすると、ディスクラベルが上書きされて、ディスク上のデータにアクセスできなくなります。

ディスク上の次の領域は、raw データスライス用に使用しないでください。raw データスライスは他社製のデータベースアプリケーションによって作成されることがあります。

複数のディスク上のスライス配置

十分な大きさのディスクであれば、1 台ですべてのスライスとそれに対応するファイルシステムを確保できますが、通常はシステムのスライスとファイルシステムを確保するために複数のディスクが使用されます。


注 –

1 つのスライスを複数のディスクに分割することはできません。ただし、複数のスワップスライスを別々のディスクに配置することはできます。


たとえば、1 台のディスクにルート (/) ファイルシステム、スワップ領域、/usr ファイルシステムを入れ、別のディスクにユーザーデータを含む /export/home ファイルシステムやその他のファイルシステムを入れます。

複数のディスクを使用する場合、OS とスワップ領域が入っているディスク (つまり、ルート (/)、/usr ファイルシステム、およびスワップ領域用のスライスが入っているディスク) を、「システムディスク」と呼びます。システムディスク以外のディスクを、「二次ディスク」または「非システムディスク」と呼びます。

システムのファイルシステムを複数のディスクに入れると、システムをシャットダウンしたり OS をロードし直したりしなくても、二次ディスクのファイルシステムとスライスを変更できます。

また、複数のディスクを使用すると、入出力 (I/O) のパフォーマンスが改善されます。ディスク負荷を複数のディスクに分散すると、I/O のボトルネックを回避できます。

使用するスライスの決定

ディスクのファイルシステムを設定するときには、各スライスのサイズだけでなく、どのスライスを使用するかも決定します。どのように決定するかは、ディスクを接続するシステムの構成と、ディスクにインストールするソフトウェアによって異なります。

次のシステム構成があります。

システムの構成が異なれば、スライスの使用方法も異なります。次の表に例を挙げます。

表 10–3 システム構成とスライス

スライス 

サーバー 

スタンドアロンシステム 

ルート 

ルート 

スワップ領域 

スワップ領域 

— 

— 

/export

— 

/usr

/usr

/export/home

/home

システム構成の詳細は、『Solaris のシステム管理 (基本編)』「システムタイプの概要」を参照してください。


注 –

Solaris インストールユーティリティーは、インストール用に選択したソフトウェアに基づいてデフォルトのスライスサイズを表示します。