この章では、Solaris オペレーティングシステム (Oracle Solaris OS) でテープドライブを管理する方法について説明します。
この章で説明する手順は次のとおりです。
この章の内容は次のとおりです。
通常は、次のテープメディアを使用して Solaris システムのバックアップを作成します。
1/2 インチのリールテープ
1/4 インチのストリームカートリッジテープ
8mm のカートリッジテープ
4mm のカートリッジテープ (DAT)
フロッピーディスクを使用してバックアップを実行することもできますが、時間がかかり煩雑です。
どのメディアを選択するかは、メディアをサポートする機器とファイルの格納に使用するメディア (通常はテープ) の可用性によって決まります。バックアップはローカルシステムから実行しなければなりませんが、ファイルはリモートデバイスに書き込めます。
次の表に、ファイルシステムのバックアップに使用する標準的なテープデバイスを示します。各デバイスの記憶容量は、ドライブのタイプとテープに書き込むデータのタイプによって異なります。
表 29–1 メディアの記憶容量
バックアップメディア |
記憶容量 |
---|---|
1/2 インチのリールテープ |
140M バイト (6250 bpi) |
2.5G バイト、1/4 インチのカートリッジ (QIC) テープ |
2.5G バイト |
DDS3 4mm カートリッジテープ (DAT) |
12 - 24G バイト |
14G バイト、8mm カートリッジテープ |
14G バイト |
DLT 7000 1/2 インチ カートリッジテープ |
35 - 70G バイト |
バックアップに使用するテープまたはフロッピーディスクドライブに論理デバイス名を与えて指定します。この名前は、「raw」デバイスファイルの格納されたサブディレクトリを指し、ドライブの論理ユニット番号が含まれます。テープドライブの命名規則に従い、物理デバイス名ではなく論理デバイス名を使用します。次の表に、この命名方式を示します。
表 29–2 バックアップデバイスの基本的なデバイス名
デバイスの種類 |
名前 |
---|---|
テープ |
/dev/rmt/n |
フロッピーディスク |
/vol/dev/rdiskette0/unlabeled |
通常は、次の図に示す方法で、テープデバイスを指定します。
密度を指定しないと、テープドライブは通常その「推奨」密度で書き込みます。推奨密度は、一般にそのテープドライブでサポートされる最大密度です。ほとんどの SCSI ドライブはテープ上の密度やフォーマットを自動的に検出し、それに従って読み取りを実行します。ドライブでサポートされる密度を調べるには、/dev/rmt サブディレクトリを確認してください。このサブディレクトリには、各テープで異なる出力密度をサポートするためのテープデバイスファイルのセットが含まれます。
SCSI コントローラは、最大 7 台の SCSI テープドライブを持つこともできます。
通常は、テープドライブを 0 から n までの論理デバイス番号で指定します。次の表に、「巻き戻し」または「巻き戻しなし」のオプションを付けてテープデバイス名を指定する方法を示します。
表 29–3 テープドライブの「巻き戻し」または「巻き戻しなし」オプション
ドライブおよび巻き戻し |
使用するオプション |
---|---|
第 1 のドライブ、巻き戻し |
/dev/rmt/0 |
第 1 のドライブ、巻き戻しなし |
/dev/rmt/0n |
第 2 のドライブ、巻き戻し |
/dev/rmt/1m |
第 2 のドライブ、巻き戻しなし |
/dev/rmt/1n |
デフォルトでは、テープドライブはその「推奨」密度で書き込みますが、これは一般にそのテープドライブでサポートされる最大密度です。テープデバイスを指定しなければ、コマンドはデバイスでサポートされるデフォルト密度でドライブ番号 0 に書き込みます。
テープを特定の密度しかサポートされないテープドライブが付いたシステムに転送するには、目的の密度で書き込むデバイス名を指定します。次の表に、テープドライブに別の密度を指定する方法を示します。
表 29–4 テープドライブに別の密度を指定する
ドライブ、密度、巻き戻し |
使用するオプション |
---|---|
第 1 のドライブ、低密度、巻き戻し |
/dev/rmt/0l |
第 1 のドライブ、低密度、巻き戻しなし |
/dev/rmt/0ln |
第 2 のドライブ、中密度、巻き戻し |
/dev/rmt/1m |
第 2 のドライブ、中密度、巻き戻しなし |
/dev/rmt/1mn |
密度のオプションについては、「バックアップデバイス名」を参照してください。
mt コマンドの status オプションを使用すると、テープドライブに関する状態情報を表示できます。mt コマンドは、/kernel/drv/st.conf ファイルに記述されているすべてのテープドライブの情報を表示します。
情報を表示するドライブにテープをロードします。
テープドライブの状態を表示します。
# mt -f /dev/rmt/n status |
テープドライブ番号を 0、1、2、3 というように置き換えて手順 1 と 2 を繰り返し、使用可能なすべてのテープドライブに関する情報を表示します。
次の例は、QIC-150 テープドライブ (/dev/rmt/0) の状態を示します。
$ mt -f /dev/rmt/0 status Archive QIC-150 tape drive: sense key(0x0)= No Additional Sense residual= 0 retries= 0 file no= 0 block no= 0 |
次の例は、Exabyte テープドライブ (/dev/rmt/1) の状態を示します。
$ mt -f /dev/rmt/1 status Exabyte EXB-8200 8mm tape drive: sense key(0x0)= NO Additional Sense residual= 0 retries= 0 file no= 0 block no= 0 |
次の方法を使用すると、システムを手早くポーリングしてすべてのテープドライブを検査できます。
$ for drive in 0 1 2 3 4 5 6 7 > do > mt -f /dev/rmt/$drive status > done Archive QIC-150 tape drive: sense key(0x0)= No Additional Sense residual= 0 retries= 0 file no= 0 block no= 0 /dev/rmt/1: No such file or directory /dev/rmt/2: No such file or directory /dev/rmt/3: No such file or directory /dev/rmt/4: No such file or directory /dev/rmt/5: No such file or directory /dev/rmt/6: No such file or directory /dev/rmt/7: No such file or directory $ |
テープの読み込み中にエラーが発生した場合は、テープのたるみを直し、テープドライブを掃除してからやり直してください。
mt コマンドを使用して磁気テープカートリッジのたるみを直します。
次に例を示します。
$ mt -f /dev/rmt/1 retension $ |
QIC 以外のテープドライブのたるみは直さないでください。
磁気テープカートリッジを巻き戻すには、mt コマンドを使用します。
次に例を示します。
$ mt -f /dev/rmt/1 rewind $ |
バックアップテープは読み込めなければ役に立ちません。このため、定期的に掃除および検査を行い、テープドライブが正常に動作するようにしてください。テープドライブのクリーニング手順については、ハードウェアのマニュアルを参照してください。次のいずれかの方法で、テープハードウェアを検査できます。
テープにファイルをコピーし、ファイルを読み込んで、オリジナルのファイルとコピーしたファイルを比較します。
ufsdump コマンドの -v オプションを使用して、メディアの内容をソースファイルシステムと比較して検査します。-v オプションを有効にするには、ファイルシステムをマウント解除するか、完全にアイドル状態にする必要があります。
ハードウェアは、システムからレポートされないような障害を起こす可能性があるので注意してください。
バックアップ後は、必ずテープにラベルを付けてください。第 23 章UFS ファイルシステムのバックアップと復元 (概要)で説明したバックアップ方法を採用する場合は、ラベルを「テープ A」、「テープ B」という具合に指定する必要があります。このラベルは変更しないでください。バックアップを実行するたびに、次の情報を記入した別のテープラベルを作成します。
バックアップ日付
マシン名およびバックアップを作成したファイルシステム
バックアップレベル
テープ番号 (バックアップが複数のボリュームにまたがる場合は n 本のうちの 1 本目)
サイト特有の情報
テープは、磁気を発生させる機器から離れた埃のない安全な場所に保管してください。たとえば、アーカイブしたテープを遠隔地の防火キャビネットに保管します。
各ジョブ (バックアップ) がどのメディア (テープボリューム) に格納されているかということと、各バックアップファイルがどこに保管されているかを記録したログを作成し、管理する必要があります。