Solaris WBEM 開発ガイド

第 2 章 CIM オブジェクトマネージャの使用

CIM オブジェクトマネージャは、WBEM クライアントアプリケーションと管理対象リソースとの間で CIM データを送受信するソフトウェアです。

この章の内容は次のとおりです。

CIM オブジェクトマネージャについて

CIM オブジェクトマネージャ (CIMOM) は、WBEM 対応システムの CIM オブジェクトを管理します。CIM オブジェクトは、プリンタ、ディスクドライブ、CPU などの管理対象リソースを表したモデルです。CIM オブジェクトは、内部的には Java プログラミング言語のクラスとして格納されます。

WBEM クライアントアプリケーションがオブジェクト情報にアクセスすると、CIMOM はそのオブジェクトに適したプロバイダか、 CIM オブジェクトマネージャリポジトリ に接続します。プロバイダとは、管理オブジェクトと通信してデータにアクセスするクラスです。WBEM クライアントアプリケーションから要求されたデータが、CIM オブジェクトマネージャリポジトリに含まれていない管理対象リソースのデータである場合、CIM オブジェクトマネージャはその要求を該当する管理対象リソースのプロバイダに転送します。プロバイダは、動的にその情報を取得します。

CIM オブジェクトマネージャは、起動時に次の機能を実行します。

CIM オブジェクトマネージャは、次のことを行います。

クライアント側で WBEM 操作を実行する必要があるとき、WBEM クライアントアプリケーションは CIMOM に接続します。たとえば、CIM クラスの作成や、CIM インスタンスの更新処理が必要なときです。WBEM クライアントアプリケーションが CIMOM に接続すると、クライアントアプリケーションは CIMOM への参照を取得します。クライアントアプリケーションは、この参照を利用して、サービスや操作を要求します。

init.wbem コマンド

init.wbem コマンドは、インストール時とシステムのリブート時に自動的に実行されます。init.wbem コマンドは、CIM オブジェクトマネージャと Solaris 管理コンソール サーバーが結合された単一プロセスを実行します。また、CIM オブジェクトマネージャおよび Solaris 管理コンソール サーバーを停止したり、サーバーからステータスを入手したりするためにも、init.wbem コマンドを使用できます。このコマンドに関する追加情報は、init.wbem(1M) のマニュアルページにあります。

一般には CIM オブジェクトマネージャを停止する必要はありません。ただし、既存のプロバイダを変更する場合には、変更後のプロバイダを使用する前に、CIM オブジェクトマネージャを停止してから再起動する必要があります。

init.wbem コマンドには、次の 3 つのオプションを指定できます。

Solaris 管理コンソールサーバー

Solaris 管理コンソール ソフトウェアは、ユーザー管理、ディスク管理、ログビューアなどの Solaris プラットフォーム管理アプリケーションを提供します。Solaris 管理コンソールサーバーは、コンソールを取り込むことが可能なツールを提供します。Solaris 管理コンソールサーバーは、コンソールとそのツール群を対象とした一般的なサービスも実行できます。たとえば、認証、承認、ロギング、メッセージング、持続性などです。

Solaris 管理コンソールについては、ほかの章で説明します。詳細は、『Solaris のシステム管理 (基本編)』を参照してください。

システムのブート

init.wbem コマンドは、/etc/init.d ディレクトリにあります。init 状態 2 に入った時点 (通常はブート時) で、/etc/rc2.d/S90wbem ファイルが start オプションを指定して実行されます。/etc/rc0.d/K36wbem/etc/rc1.d/K36wbem、および /etc/rcS.d/K36wbem の 3 ファイルは、init 状態 0、1、および S に入った時点で、stop オプションで実行されます。

CIM オブジェクトマネージャの停止と再起動

プロバイダを変更する場合は、変更後のプロバイダを使用する前に、CIM オブジェクトマネージャを停止し、再起動する必要があります。

ProcedureCIM オブジェクトマネージャを停止する方法

手順
  1. スーパーユーザーになります。

  2. CIM オブジェクトマネージャを停止します。


    # /etc/init.d/init.wbem stop
    

ProcedureCIM オブジェクトマネージャを再起動する方法

手順
  1. スーパーユーザーになります。

  2. CIM オブジェクトマネージャを再起動します。


    # /etc/init.d/init.wbem start
    

CIM オブジェクトマネージャリポジトリのアップグレード

以前のバージョンの Solaris を Solaris 10 にアップグレードした場合は、MOF (Managed Object Format) のカスタムデータを Solaris 9 からの新しいリポジトリ形式に更新する必要があります。アップグレードを行うと、アップグレード前に変更を加えた CIM および Solaris MOF データがすべて破壊されます。そのため、アップグレード後に MOF ファイルを再コンパイルするか、WBEM データをマージする必要があります。


注意 – 注意 –

変更を加えたデータの再コンパイルまたはマージ処理を正しく実行しないと、データは失われます。


Solaris 10 OS にアップグレードしたあと WBEM データを再コンパイルするかマージするかについては、次の表を参照してください。

表 2–1 WBEM データを再コンパイルするかマージするかの判別

アップグレード前の環境 

所有する MOF (Managed Object Format) ファイルを再コンパイルするか 

 

Solaris 8 (Solaris WBEM サービス 2.0) 

Solaris 8 6/00 (WBEM サービス 2.0) 

Solaris 8 10/00 (WBEM サービス 2.2) 

する 

 

Solaris 8 1/01 (WBEM サービス 2.3) 

Solaris 8 4/01 (WBEM サービス 2.4) 

Solaris 8 7/01 (WBEM サービス 2.4) 

Solaris 8 10/01 (WBEM サービス 2.4) 

Solaris 9 全リリース (WBEM サービス 2.5) 

しない。ただし、アップグレード済みリポジトリにデータをマージする必要がある 

 

ProcedureMOF ファイルの再コンパイル方法

手順
  1. システムを Solaris 10 OS にアップグレードします。

  2. スーパーユーザーになります。

  3. 所有する MOF ファイルが置かれているディレクトリに移動します。

  4. mofcomp コマンドを使って、所有する個々の MOF ファイルをコンパイルします。


    # /usr/sadm/bin/mofcomp root root-passwd MOF-filename
    

    注 –

    MOF コンパイラの詳細については、mofcomp(1M) のマニュアルページを参照してください。


  5. CIM オブジェクトマネージャを停止します。


    # /etc/init.d/init.wbem stop
    
  6. CIM オブジェクトマネージャを起動します。


    # /etc/init.d/init.wbem start
    

    CIMOM は、/var/sadm/wbem/logr/ ディレクトリに、変換済みデータを含むリポジトリファイルを追加します。このディレクトリは、Solaris 10 OS へのアップグレード時に作成されたものです。

ProcedureWBEM データをマージする方法

手順
  1. システムを Solaris 10 OS にアップグレードします。

  2. スーパーユーザーになります。

  3. CIM オブジェクトマネージャを停止します。


    # /etc/init.d/init.wbem stop
    

    注意 – 注意 –

    wbemconfig convert コマンドを実行する前に CIM オブジェクトマネージャを停止しなかった場合、データが損傷を受ける場合があります。


  4. 以前のバージョンの信頼できるログにある元のデータを、Solaris 10 の Reliable Log 内のデータとマージします。


    # /usr/sadm/lib/wbem/wbemconfig convert
    

    注 –

    wbemconfig convert コマンドでは、独自にカスタマイズした MOF データは正しく変換できますが、変更を加えた CIM または Solaris MOF データは変換できません。変更を加えた CIM または Solaris MOF データは壊れます。変更を加えた CIM または Solaris MOF データを新しいリポジトリに再コンパイルするには、mofcomp コマンドを使用して、クラス定義を含む MOF ファイルをコンパイルします。


例外メッセージ

CIM オブジェクトマネージャ は、MOF の構文や意味が正しくない場合、例外メッセージを生成します。例外メッセージの詳細については、第 9 章「問題発生時の解決方法」を参照してください。