Oracle Solaris セキュリティーサービス開発ガイド

GSS-API における匿名認証の実行

GSS-API の通常の使用においては、起動側の識別情報はコンテキスト確立の一部として、受け入れ側で使用できるようになります。しかし、コンテキスト起動側は自身の識別情報をコンテキスト受け入れ側に知らせないように要求することもできます。

たとえば、医療データベースへの無制限のアクセスを提供するアプリケーションを考えます。そのようなサービスのクライアントは、サービスの認証を要求することが考えられます。この方法では、データベースから取り出されるすべての情報に対して信頼が確立されます。しかし、クライアントはプライバシー上の理由などにより、識別情報を公開したくないかもしれません。

匿名性を要求するには、gss_init_sec_context()req_flags 引数に GSS_C_ANON_FLAG を設定します。匿名性が利用可能かどうかを検査するには、gss_init_sec_context () または gss_accept_sec_context()ret_flags 引数に GSS_C_ANON_FLAG が返されるかどうかを確認します。

匿名性が有効である場合、gss_accept_sec_context() または gss_inquire_context() から返されたクライアント名を指定して gss_display_name()を呼び出すと、汎用的な匿名が生成されます。


注 –

匿名性が要求されたが使用できない場合、適切な対処を行うのはアプリケーションの責任です。GSS-API はそのような場合にコンテキストを終了しません。