Solaris Trusted Extensions ラベルの管理

アクセス制御の決定に使用されるラベル

コンピュータのアクセスの実装およびアクセスの制御のために、ラベルが使用されます。ラベルは、必須アクセス制御 (MAC) を実装します。Trusted Extensions では、オブジェクトへのアクセスが許可される前に、任意アクセス制御 (DAC) 検査と MAC 検査に合格しなければなりません。Solaris OS の場合と同様、DAC は、アクセス権ビットとアクセス制御リスト (ACL) に基づきます。詳細は、『Solaris のシステム管理 (セキュリティサービス)』の第 6 章「ファイルアクセスの制御 (作業)」を参照してください。

MAC は、アプリケーションを実行しているプロセスのラベルと、そのプロセスがアクセスしようとしているオブジェクトのラベルまたはラベル範囲を比較します。ラベルに実装されている規則セットによって、ポリシーが実施されます。規則の 1 つに「下位読み取り、同位読み取り」があります。プロセスがオブジェクトにアクセスしようとすると、この規則が適用されます。プロセスのラベルは、次のようにオブジェクトのラベル以上である必要があります。


Label[Process] >= Label[Object]

Trusted Extensions によって構成されているシステムでは、ファイルとディレクトリのアクセス規則は相互に少し異なり、プロセスオブジェクト、ネットワーク終端オブジェクト、デバイスオブジェクト、および X ウィンドウオブジェクトとも少し異なります。また、オブジェクトへのアクセスには 3 つの方法があります。オブジェクトにアクセスする 3 つの方法には、それぞれ、次のように少しずつ異なる規則セットが適用されます。

図 1–1 に、ラベルを使用してアクセス制御を決定するシステムを示します。

図 1–1 テキストエディタのラベルとファイルのラベルの比較

図については本文で説明します。

前の図で、ユーザーはラベル INTERNAL_USE_ONLY のワークスペースでテキストエディタを開いています。システムは、テキストエディタを実行しているプロセスのラベルを現在のワークスペースのラベルと同じに設定します。そのため、テキストエディタに INTERNAL_USE_ONLY のラベルが表示されます。編集のためにテキストエディタでファイルを開こうとすると、テキストエディタを実行しているプロセスのラベルとファイルのラベルが比較されます。2 つのラベルが等しい場合、書き込みアクセスが許可されます。

ファイルのラベルがテキストエディタのラベルより下位の場合、ファイルは読み取り専用で開かれます。たとえば、INTERNAL_USE_ONLY のテキストエディタは ADMIN_LOW のシステムファイルを開いて読み取ることができますが、変更はできません。また、下位読み取りの要件によって、現在の作業ラベルより上位のラベルのファイルをユーザーは参照できません。