Solaris 10 5/08 インストールガイド (カスタム JumpStart/ 上級編)

第 7 章 カスタム JumpStart によるインストール (例)

この章では、カスタム JumpStart インストールを使用して SPARC システムと x86 システムに Solaris ソフトウェアを設定しインストールする例を示します。

サイトの設定例

図 7–1 は、この例で使用するサイトの設定を示しています。

図 7–1 サイトの設定例

この図では、エンジニアリングサブネット上のインストールサーバーと、マーケティングサブネット上のブートサーバーを示しています。

この例におけるサイトの状況は次のとおりです。

インストールサーバーの作成

両方のグループとも Solaris 10 5/08 ソフトウェアをネットワーク上でインストールする必要があるため、server-1 を両方のグループのインストールサーバーにします。server-1 ローカルディスク (/export/install ディレクトリ内) にイメージをコピーするには、setup_install_server(1M) コマンドを使用します。次のいずれかのメディアからイメージをコピーします。

イメージは、ディスクから空のディレクトリにコピーする必要があります。次の例では、それぞれのディレクトリ名を sparc_10 および x86_10 としています。


例 7–1 SPARC: Solaris 10 5/08 CD のコピー

server-1 の CD-ROM ドライブに Solaris SOFTWARE - 1 CD (SPARC 版) を挿入し、次のコマンドを入力します。


server-1# mkdir -p /export/install/sparc_10
server-1# cd /CD_mount_point/Solaris_10/Tools
server-1# ./setup_install_server /export/install/sparc_10

server-1 の CD-ROM ドライブに Solaris SOFTWARE - 2 CD (SPARC 版) を挿入し、次のコマンドを入力します。


server-1# cd /CD_mount_point/Solaris_10/Tools
server-1# ./add_to_install_server /export/install/sparc_10

インストールする Solaris SOFTWARE ごとに、前記のコマンドを実行します。

server-1 の CD-ROM ドライブに Solaris LANGUAGES CD (SPARC 版) を挿入し、次のコマンドを入力します。


server-1# cd /CD_mount_point/Solaris_10/Tools
server-1# ./add_to_install_server /export/install/sparc_10


例 7–2 x86: Solaris 10 5/08 CD のコピー

server-1 の CD-ROM ドライブに Solaris SOFTWARE - 1 CD (x86 版) を挿入し、次のコマンドを入力します。


server-1# mkdir -p /export/install/x86_10
server-1# cd /CD_mount_point/Solaris_10/Tools
server-1# ./setup_install_server /export/install/x86_10

server-1 の CD-ROM ドライブに Solaris SOFTWARE - 2 CD (x86 版) を挿入し、次のコマンドを入力します。


server-1# cd /CD_mount_point/Solaris_10/Tools
server-1# ./add_to_install_server /export/install/x86_10

インストールする Solaris SOFTWARE ごとに、前記のコマンドを実行します。

server-1 の CD-ROM ドライブに Solaris LANGUAGES CD (x86 版) を挿入し、次のコマンドを入力します。


server-1# cd /CD_mount_point/Solaris_10/Tools
server-1# ./add_to_install_server /export/install/x86_10


例 7–3 SPARC: Solaris 10 5/08 DVD のコピー

server-1 の DVD-ROM ドライブに Solaris Operating System DVD (SPARC 版) を挿入し、次のコマンドを入力します。


server-1# mkdir -p /export/install/sparc_10
server-1# cd /DVD_mount_point/Solaris_10/Tools
server-1# ./setup_install_server /export/install/sparc_10


例 7–4 x86: Solaris Operating System DVD (x86 版) のコピー

server-1 の DVD-ROM ドライブに Solaris Operating System DVD (x86 版) を挿入し、次のコマンドを入力します。


server-1# mkdir -p /export/install/x86_10
server-1# cd /DVD_mount_point/Solaris_10/Tools
server-1# ./setup_install_server /export/install/x86_10

x86: マーケティングシステム用のブートサーバーの作成

異なるサブネット上のインストールサーバーからシステムをブートすることはできません。そこで、server-2 をマーケティング部のサブネット上のブートサーバーにします。setup_install_server(1M) コマンドを使って、Solaris Operating System DVD (x86 版) または Solaris SOFTWARE - 1 CD (x86 版) からブートソフトウェアをコピーします。ブートソフトウェアは、server-2 ローカルディスクの /export/boot ディレクトリにコピーされます。

メディアを選択し、ローカルディスクにブートソフトウェアをインストールします。

setup_install_server コマンドの -b オプションは、setup_install_server/export/boot というディレクトリにブート情報をコピーするように指定します。

JumpStart ディレクトリの作成

インストールサーバーとブートサーバーの設定が完了したら、server-1 上に JumpStart ディレクトリを作成します。ネットワーク上のほかの任意のシステム上に作成することもできます。このディレクトリには、Solaris ソフトウェアのカスタム JumpStart インストールに必要なファイルが入っています。このディレクトリを設定するには、/export/install にコピーされている Solaris Operating System DVD イメージまたは Solaris SOFTWARE - 1 CD イメージからサンプルディレクトリをコピーします。


server-1# mkdir /jumpstart
server-1# cp -r /export/install/sparc_10/Solaris_10/Misc/jumpstart_sample /jumpstart

JumpStart ディレクトリの共有

ネットワーク上のシステムから rules ファイルとプロファイルにアクセスできるようにするには、/jumpstart ディレクトリを共有にします。ディレクトリを共有するためには、/etc/dfs/dfstab ファイルに次の行を追加します。

share -F nfs -o ro,anon=0 /jumpstart

次に、コマンド行に shareall コマンドを入力します。


server-1# shareall

SPARC: エンジニアリング部のプロファイルの作成

エンジニアリングシステム用として、/jumpstart ディレクトリに eng_prof という名前のファイルを作成します。eng_prof ファイルには次のエントリがあり、エンジニアリング部のシステムにインストールされる Solaris 10 5/08 ソフトウェアを定義しています。

install_type  initial_install
system_type   standalone
partitioning  default
cluster       SUNWCprog
filesys       any 512 swap

この例のプロファイルは、次のインストール情報を指定しています。

install_type

アップグレードではなく、初期インストールを行います。

system_type

エンジニアリングシステムはスタンドアロンシステムです。

partitioning

JumpStart ソフトウェアは、デフォルトのディスクパーティションを使用して、エンジニアリングシステムに Solaris ソフトウェアをインストールします。

cluster

開発者システムサポートソフトウェアグループをインストールします。

filesys

エンジニアリング部の各システムが、512M バイトのスワップ空間を持ちます。

x86: マーケティング部のプロファイルの作成

マーケティングシステム用として、/jumpstart ディレクトリに marketing_prof という名前のファイルを作成します。marketing_prof ファイルには次のエントリがあり、マーケティング部のシステムにインストールされる Solaris 10 5/08 ソフトウェアを定義しています。

install_type  initial_install
system_type   standalone
partitioning  default
cluster       SUNWCuser
package       SUNWaudio

この例のプロファイルは、次のインストール情報を指定しています。

install_type

アップグレードではなく、初期インストールを行います。

system_type

マーケティングシステムはスタンドアロンシステムです。

partitioning

JumpStart ソフトウェアが、デフォルトのディスクパーティションを使用して、マーケティングシステムに Solaris をインストールします。

cluster

エンドユーザーシステムサポートソフトウェアグループをインストールします。

package

オーディオツールのデモソフトウェアパッケージを各システムに追加します。

rules ファイルの更新

次に、rules ファイルにルールを追加する必要があります。Solaris インストールプログラムは、カスタム JumpStart インストール中に、これらのルールを使用して、各システムに正しいインストール (プロファイル) を選択します。

このサイトでは、各部署は独自のサブネットとネットワークアドレスを持っています。エンジニアリング部はサブネット 255.222.43.0 にあります。マーケティング部はサブネット 255.222.44.0 にあります。この情報を使用すれば、Solaris 10 5/08 によるエンジニアリングシステムとマーケティングシステムのインストール方法を制御できます。/jumpstart ディレクトリ内の rules ファイルを編集して、サンプルのルールをすべて削除し、次の行をファイルに追加します。


network 255.222.43.0 - eng_prof -
network 255.222.44.0 - marketing_prof -

これらのルールは、基本的に、255.222.43.0 ネットワーク上のシステムに Solaris 10 5/08 ソフトウェアが eng_prof プロファイルを使用してインストールされることを示しています。255.222.44.0 ネットワーク上のシステムには、Solaris 10 5/08 ソフトウェアが marketing_prof プロファイルを使用してインストールされます。


注 –

この例のルールを使用すると、eng_profmarketing_prof を使って Solaris 10 5/08 ソフトウェアをインストールするシステムを、ネットワークアドレスで識別できます。このほかにも、ホスト名、メモリーサイズ、またはモデルタイプをルールのキーワードとして使用できます。rules ファイルで使用できるキーワードの完全な一覧については、表 8–1 を参照してください。


rules ファイルの妥当性を検査する

rules ファイルとプロファイルの設定が完了したら、check スクリプトを実行して、これらのファイルが正常に設定されていることを検証します。


server-1# cd /jumpstart
server-1# ./check

check スクリプトによってエラーが検出されない場合は、rules.ok ファイルが作成されます。

SPARC: ネットワーク上でインストールするためのエンジニアリングシステムの設定

/jumpstart ディレクトリとファイルの設定が完了したら、インストールサーバー server-1 上で add_install_client コマンドを実行して、インストールサーバーから Solaris ソフトウェアをインストールするように、エンジニアリングシステムを設定します。server-1 は、エンジニアリング部のサブネットにとってはブートサーバーにも相当します。


server-1# cd /export/install/sparc_10/Solaris_10/Tools
server-1# ./add_install_client -c server-1:/jumpstart host-eng1 sun4u
server-1# ./add_install_client -c server-1:/jumpstart host-eng2 sun4u

この add_install_client コマンドで使用しているオプションの意味は次のとおりです。

-c

サーバー (server-1) と JumpStart ディレクトリへのパス (/jumpstart) を指定します。NFS を使用している場合はこのオプションを使用します。


注 –

NFS を使用していない場合は、次のコマンドを使用して JumpStart ディレクトリへのパスを指定します。

  • SPARC システムの場合はboot コマンドにパスを指定します

  • x86 システムの場合は、GRUB メニューエントリを編集することによってパスを指定します


host-eng1

エンジニアリング部のシステム名です。

host-eng2

エンジニアリング部の別のシステム名です。

sun4u

server-1 をインストールサーバーとして使用するシステムのプラットフォームグループを指定します。これは、Ultra 5 システム用のプラットフォームグループです。

x86: ネットワーク上でインストールするためのマーケティングシステムの設定

次に、ブートサーバー (server-2) で add_install_client コマンドを使用します。このコマンドはマーケティングシステムに対して、ブートサーバーからブートし、インストールサーバー (server-1) から Solaris ソフトウェアをインストールするように設定します。


server-2# cd /marketing/boot-dir/Solaris_10/Tools
server-2# ./add_install_client -s server-1:/export/install/x86_10 \
-c server-1:/jumpstart host-mkt1 i86pc
server-2# ./add_install_client -s server-1:/export/install/x86_10 \
-c server-1:/jumpstart host-mkt2 i86pc
server-2# ./add_install_client -d -s server-1:/export/install/x86_10 \
-c server-1:/jumpstart SUNW.i86pc i86pc
server-2# ./add_install_client -c server-1:/jumpstart host-mkt1 sun4u
server-2# ./add_install_client -c server-1:/jumpstart host-mkt2 sun4u

add_install_client コマンドで使用されるオプションの意味は次のとおりです。

-d

クライアントが DHCP を使ってネットワークインストールパラメータを取得するように指定します。このオプションは PXE ネットワークブートを使用してネットワークからブートするクライアントには必ず指定します。PXE ネットワークブートを使用しないネットワークブートクライアントには、-d は省略できます。

-s

インストールサーバー (server-1) と Solaris ソフトウェアへのパス (/export/install/x86_10) を指定します。

-c

サーバー (server-1) と JumpStart ディレクトリへのパス (/jumpstart) を指定します。NFS を使用している場合はこのオプションを使用します。


注 –

NFS を使用していない場合は、次のコマンドを使用して JumpStart ディレクトリへのパスを指定します。

  • SPARC システムの場合はboot コマンドにパスを指定します

  • x86 システムの場合は、GRUB メニューエントリを編集することによってパスを指定します


host-mkt1

マーケティング部のシステム名です。

host-mkt2

マーケティング部の別のシステム名です。

sun4u

server-1 をインストールサーバーとして使用するシステムのプラットフォームグループを指定します。これは、Ultra 5 システム用のプラットフォームグループです。

SUNW.i86pc

すべての Solaris x86 クライアントの DHCP クラス名です。1 回のコマンド実行ですべての Solaris x86 DHCP クライアントを構成する場合は、このクラス名を使用してください。

i86pc

このブートサーバーを使用するシステムのプラットフォームグループを指定します。このプラットフォーム名は x86 システムを意味します。

SPARC: エンジニアリングシステムのブートと Solaris ソフトウェアのインストール

サーバーとファイルの設定が完了したら、エンジニアリングシステムをブートします。各システムの ok (PROM) プロンプトに、次の boot コマンドを入力してください。


ok boot net - install

Solaris OS がエンジニアリング部のシステムに自動的にインストールされます。

x86: マーケティングシステムのブートと Solaris ソフトウェアのインストール

次のいずれかを使って、システムをブートできます。

Solaris ソフトウェアがマーケティング部のシステムに自動的にインストールされます。