Sun Java System Directory Server Enterprise Edition 6.3 管理ガイド

第 2 章 Directory Server のツール

Sun JavaTM System Directory Server Enterprise Edition は、複数のサーバー、インスタンス、サフィックスをレプリケートされた環境で管理するためのブラウザインタフェースとコマンド行ツールを備えています。この章では、Directory Server の管理ツールの概要を説明します。

この章の内容は次のとおりです。

Directory Server の管理の概要

Directory Server の管理フレームワークについては、このマニュアルセットの別のマニュアルで説明しています。

DSCC を使用する場合とコマンド行を使用する場合の判断

Directory Server Enterprise Edition には、Directory Server と Directory Proxy Server を管理するためのユーザーインタフェースが 2 つあります。ブラウザインタフェースである Directory Service Control Center (DSCC) とコマンド行インタフェースです。

DSCC を使用して手順を実行できるかどうかの判断

このマニュアルの手順のほとんどは、コマンド行または DSCC を使用して実行できます。このマニュアルの手順は、コマンド行を使用して手順を実行する方法を説明しています。ほとんどの場合、DSCC を使用しても同じ作業を実行できます。DSCC が特定の手順に使用できる場合、手順の初めにその旨が表記されています。

DSCC のオンラインヘルプには、DSCC を使用してこのマニュアルの手順を実行する詳細な指示が記載されています。

DSCC を使用した方が良い場合

DSCC は、次の節で説明するように、一部の操作と作業をコマンド行から実行するより簡単に実行できます。一般に、いくつかのサーバーに適用するコマンドは、DSCC を使用した方がうまくいきます。

サーバーとサフィックスのレプリケーション状態の表示

DSCC は、DSCC に登録されているすべてのサーバーインスタンスと設定されているすべてのサフィックス、およびそれぞれの状態を表に表示します。

サーバーの表は、「ディレクトリサーバー 」タブにあり、サーバーの操作状態を示します。可能なサーバー状態の完全な一覧については、Directory Server のオンラインヘルプを参照してください。

サフィックスの表は「サフィックス」タブにあり、エントリの数やレプリケートされてない変更の数や経過時間など、レプリケーション状態の情報を示します。この表に表示される情報の詳細については、Directory Server のオンラインヘルプを参照してください。

サーバーのグループの管理

サーバーグループによって、サーバーの監視や設定を円滑に行えます。グループを作成し、そのグループにサーバを割り当てられます。たとえば、地理的な位置や機能によってサーバーをグループ化できます。多数のサーバーがある場合、グループ内のサーバーのみを表示するよう「ディレクトリサーバー」タブに表示されるサーバーにフィルタを適用できます。また、あるサーバーのサーバー設定 (たとえば、インデックスやキャッシュ設定など) をグループ内のほかのすべてのサーバーにコピーすることもできます。サーバーグループの設定と使用方法については、Directory Server のオンラインヘルプを参照してください。

設定のコピー

DSCC では、既存のサーバー、サフィックス、またはレプリケーションアグリーメントの設定を 1 つまたは複数のほかのサーバー、サフィックス、レプリケーションアグリーメントにコピーできます。これらの作業の実行方法については、Directory Server のオンラインヘルプを参照してください。

レプリケーションの設定

DSCC を使用すると、レプリケーショントポロジをすばやく簡単に設定できます。単純にサーバーインスタンスを作成し、DSCC によって提供される手順を使用して、各サーバーのロールを割り当てます。DSCC によってレプリケーションアグリーメントが自動的に作成されます。DSCC を使用してレプリケーションを設定する方法については、Directory Server のオンラインヘルプを参照してください。

Directory Service Control Center のインタフェース

Directory Service Control Center (DSCC) は、ブラウザを使用して Directory Server と Directory Proxy Server を管理できるユーザーインタフェースです。

DSCC を設定するには、「DSCC の設定」を参照してください。DSCC の使用については、次の節を参照してください。

DSCC の管理ユーザー

DSCC では次の管理者権限でのアクセスが必要となる場合があります。

ProcedureDSCC にアクセスする

DSCC へのアクセスに問題がある場合は、『Sun Java System Directory Server Enterprise Edition 6.3 Installation Guide』「To Troubleshoot Directory Service Control Center Access」を参照してください。

  1. DSCC が『Sun Java System Directory Server Enterprise Edition 6.3 Installation Guide』「Software Installation」で説明されているとおりに正しくインストールされていることを確認します。

  2. ネイティブパッケージインストールによって DSCC をインストールした場合は、次の手順に従います。

    1. ブラウザを開き、DSCC ホスト URL を次の形式で入力します。


      https://hostname:6789

      次に例を示します。


      https://host1:6789

      ここで、ホスト名は、DSCC ソフトウェアをインストールしたシステムです。

      Sun Java Web Console のデフォルトポートは 6789 です。

      次の図は、Sun Java Web Console のログインウィンドウを示しています。

      図 2–1 Sun Java Web Console のログインウィンドウ

      Sun Java Web Console のログインウィンドウ

    2. Sun Java Web Console にログインします。

      • Sun Java Web Console に初めてログインする場合は、DSCC ソフトウェアをインストールしたシステムに root として ログインします。

      • これが 2 回目以降のログインである場合は、オペレーティングシステムのユーザー名とパスワードを入力します。このユーザーは、Directory Server インスタンスを起動、停止、および管理する特権が必要です。

      ログインすると、アプリケーションの一覧が表示されます。

    3. Directory Service Control Center (DSCC) を選択します。

      DSCC ログインウィンドウが表示されます。

  3. zip 形式の配布パッケージによって DSCC をインストールした場合は、次の手順に従います。

    1. 好みのアプリケーションサーバーで、DSCC のホスト URL を入力して、DSCC に直接アクセスします。DSCC のホスト URL は、アプリケーションサーバーの設定に応じて次のいずれかにできます。


      https://hostname:8181/dscc

      または


      http://hostname:8080/dscc
    2. 次のコマンドを使用して DSCC を初期化します。


      $ install path/dscc6/bin/dsccsetup ads-create
  4. DSCC にログインします。

    DSCC に初めてログインする場合は、Directory Service Manager パスワードを設定する必要があります。2 回目以降のログインの場合は、初回のログイン時に設定したパスワードを使用します。

    DSCC にログインすると「共通操作」タブが表示されます。

    図 2–2 DSCC の「共通操作」タブ

    画面キャプチャは DSCC の「共通操作」タブを示しています。

  5. タブを使用して移動します。

    • 「共通操作」タブには、一般的に使用するウィンドウやウィザードへのショートカットが表示されます。

    • 「ディレクトリサーバー」タブには、DSCC で管理される Directory Server がすべて表示されます。特定のサーバーを管理および設定するためのオプションを表示するには、サーバー名をクリックします。

    • 「プロキシサーバー」タブには、DSCC で管理される Directory Proxy Server がすべて表示されます。特定のサーバーを管理および設定するためのオプションを表示するには、サーバー名をクリックします。


    注 –

    DSCC を使用して作業を実行する方法については、DSCC のオンラインヘルプを参照してください。


    図 2–3 「サーバー」サブタブ上の Directory Server の一覧

    画面キャプチャは、Directory Server サーバーの一覧を示しています。

DSCC のタブの説明

DSCC のタブを使用してインタフェースを移動します。

「共通操作」タブ

「共通操作」タブ (図 2–2 を参照) は、DSCC を開いたときに最初に表示されるインタフェースです。ここには、ディレクトリデータの検索、ログの確認、サーバーの管理など、一般的に使用する管理作業へのリンクが表示されます。

「ディレクトリサーバー」タブ

「ディレクトリサーバー」タブ (図 2–3 を参照) には、DSCC に登録されているディレクトリサーバーがすべて一覧表示されます。各サーバーのサーバーの状態とインスタンスがどこにあるかを示すインスタンスパスを確認できます。

サーバー名をクリックすると、そのサーバーにのみ関連するタブのセットが表示されます。

「プロキシサーバー」タブ

「プロキシサーバー」タブは、DSCC に登録されているディレクトリプロキシサーバーをすべて一覧表示します。各サーバーのサーバーの状態とインスタンスがどこにあるかを示すサーバーインスタンスパスを確認できます。

サーバー名をクリックすると、そのサーバーにのみ関連するタブのセットが表示されます。

「サーバーグループ」タブ

「サーバーグループ」タブでは、サーバーをグループに割り当て、サーバー管理を簡素化できます。多数のサーバーがある場合、フィルタを使用して特定のグループのサーバーのみを表示できます。また、あるサーバーのサーバー設定 (たとえば、インデックスやキャッシュ設定など) をグループ内のほかのすべてのサーバーにコピーすることもできます。

「設定」タブ

このタブには、DSCC ポート番号が表示され、Directory Service Manager を作成および削除できます。

DSCC のオンラインヘルプ

オンラインヘルプには、次の情報が表示されます。

ほとんどのページで画面の右上にある「ヘルプ」ボタンをクリックすればヘルプにアクセスできます。ウィザードから、「ヘルプ」タブをクリックするとヘルプにアクセスできます。また、「共通操作」タブからオンラインヘルプにアクセスすることもできます。

Directory Server のコマンド行ツール

DSCC で実行する作業のほとんどは、コマンド行ツールを使用して実行できます。これらのツールによって、コマンド行から直接 Directory Server を管理し、スクリプトを使用してサーバーを管理できます。

主なディレクトリサーバーのコマンドは、dsadmdsconf です。これらのコマンドを使用して、バックアップ、LDIF へのエクスポート、証明書の管理などを行えます。これらのコマンドについては、dsadm(1M) および dsconf(1M) のマニュアルページを参照してください。

dpconfdsconfdsmig dsccmondsccreg、および dsccsetup は LDAP ベースのコマンドなので、認証を行うにはこれらのコマンドのユーザーバインド DN とパスワードを指定する必要があります。一方、dpadm コマンドと dsadm コマンドはインスタンスファイルで動作します。

この節では、Directory Server コマンド行ツールの次の情報について説明します。

Directory Server コマンドの場所

Directory Server コマンド行ツールは、デフォルトインストールディレクトリにあります。


install-path/ds6/bin

インストールディレクトリは、オペレーティングシステムによって異なります。すべてのオペレーティングシステムのインストールパスは、「デフォルトのパスとコマンドの場所」に一覧表示されています。

dsconf の環境変数の設定

dsconf コマンドでは、いくつかのオプションが必要となりますが、それらは環境変数によってあらかじめ設定することができます。コマンドを使用する際にオプションが指定されていない場合や、環境変数が設定されていない場合は、デフォルト設定が使用されます。環境変数は次のオプションに対して設定できます。

-D user DN

ユーザーバインド DN。環境変数: LDAP_ADMIN_USER。デフォルト: cn=Directory Manager

-w password-file

ユーザーバインド DN のパスワードファイル。環境変数: LDAP_ADMIN_PWF。デフォルト: パスワード入力用のプロンプトを表示する。

-h host

ホスト名。環境変数: DIRSERV_HOST。デフォルト: localhost

-p LDAP-port

LDAP ポート番号。環境変数: DIRSERV_PORT。デフォルト: 389

-e, --unsecured

dsconf がデフォルトで開くクリア接続を指定します。環境変数: DIRSERV_UNSECURED。この変数が設定されていない場合、dsconf はデフォルトでセキュリティー保護された接続を開きます。

詳細は、dsconf(1M) のマニュアルページを参照してください。

dsadmdsconf の比較

次の表に、dsadm コマンドと dsconf コマンドの比較を示します。

表 2–1 dsadm コマンドと dsconf コマンドの比較

 

dsadm コマンド

dsconf コマンド

説明 

ローカルホストで直接実行する必要がある管理コマンド。次に例を示します。

  • サーバーの起動または停止

  • サーバーインスタンスの作成

リモートホストから実行できる管理コマンド。次に例を示します。

  • レプリケーションの有効化

  • キャッシュサイズの設定

注 

サーバーは停止している必要があります (dsadm stop コマンドと dsadm info コマンドを除く)。

サーバーはサーバーインスタンスパス (instance-path ) によって特定されます。

サーバーインスタンスパスへの OS アクセス権を持っている必要があります。 

サーバーが実行中である必要があります。 

サーバーはホスト名 (-h)、ポート ( -p) または LDAPS セキュアポート (-P) によって特定されます。

ポート番号を特定しないと、dsconf はデフォルトポート (LDAP の場合は、389) を使用します。

たとえば、ユーザー cn=admin,cn=Administrators,cn=config など設定データへの LDAP アクセス権を持っている必要があります。 

dsadm dsconf を使用するためのヘルプの表示

dsadm コマンドと dsconf コマンドの使用方法についての詳細は、dsadm(1M) および dsconf(1M) のマニュアルページを参照してください。

dsconf を使用した設定プロパティーの変更

dsconf のさまざまなサブコマンドを使って、ユーザーは設定プロパティーを表示したり、変更したりできます。

個々のプロパティーの詳細は、各プロパティーのマニュアルページを参照してください。マニュアルページは、『Sun Java System Directory Server Enterprise Edition 6.3 Man Page Reference 』にあります。

dsconf を使用した複数値プロパティーの設定

特定の Directory Server プロパティーは複数の値をとることができます。これらの値を指定する構文は、次のとおりです。


$ dsconf set-container-prop -h host -p port container-name \
 property:value1 property:value2

たとえば、サーバーに対して複数の暗号化方式を設定するには、次のコマンドを使用します。


$ dsconf set-server-prop -h host1 -p 1389 ssl-cipher-family:SSL_RSA_WITH_RC4_128_MD5 \
 ssl-cipher-family:SSL_DHE_RSA_WITH_3DES_EDE_CBC_SHA

すでに値が含まれている複数値プロパティーに値を追加するには、次の構文を使用します。


$ dsconf set-container-prop -h host -p port container-name property+:value

すでに値が含まれている複数値プロパティーから値を削除するには、次の構文を使用します。


$ dsconf set-container-prop -h host -p port container-name property-:value

たとえば、前述の例で、暗号化方式のリストに SHA 暗号化方式を追加するには、次のコマンドを実行します。


$ dsconf set-server-prop -h host1 -p 1389 \
 ssl-cipher-family+:TLS_ECDHE_ECDSA_WITH_AES_256_CBC_SHA

このリストから MD5 暗号化方式を削除するには、次のコマンドを実行します。


$ dsconf set-server-prop -h host1 -p 1389 ssl-cipher-family-:SSL_RSA_WITH_RC4_128_MD5

マニュアルページ

マニュアルページには、Directory Server で使用するコマンドと属性すべての説明が記載されています。さらに、マニュアルページには配備でコマンドを使用する方法についての有効な例もいくつか記載されています。

旧バージョンのツール

旧バージョンのツールは、下位互換性のために通常の Directory Server ツールに含まれています。これらのツールは、含まれてはいますが、推奨されていません。