Solaris のシステム管理 (第 1 巻)

仮想ファイルシステム

仮想ファイルシステムは、特殊なカーネル情報と機能へのアクセスを提供するメモリーベースのファイルシステムです。ほとんどの仮想ファイルシステムは、ディスク領域を使用しません。ただし、キャッシュファイルシステム (CacheFS) は、ディスク上のファイルシステムを使用してキャッシュを保持します。また、一時ファイルシステム (TMPFS) などの一部の仮想ファイルシステムは、ディスク上のスワップ空間を使用します。

キャッシュファイルシステム

キャッシュファイルシステム (CacheFS) を使用すると、リモートファイルシステムや、CD-ROM ドライブのような低速デバイスのパフォーマンスを改善できます。ファイルシステムをキャッシュすると、リモートファイルシステムや CD-ROM から読み込まれたデータは、ローカルシステム上のキャッシュに格納されます。CacheFS ファイルシステムの設定と管理については、第 37 章「キャッシュファイルシステム (手順)」を参照してください。

一時ファイルシステム

一時ファイルシステム (TMPFS) は、ファイルシステムの読み取りと書き込みにローカルメモリーを使用します。一般に、一時ファイルシステムは、UFS ファイルシステムに比べてアクセス速度が高速です。TMPFS を使用すると、ローカルディスク上で、あるいはネットワーク経由で一時ファイルの読み書きを行う際のオーバヘッドを軽減でき、システムパフォーマンスを改善できます。たとえば、プログラムをコンパイルすると一時ファイルが作成されます。オペレーティングシステムは、これらのファイルを処理する間に大量のディスク処理やネットワーク処理を行います。TMPFS を使用してこれらの一時ファイルを格納すると、その作成、処理、または削除が大幅に高速になります。

ファイルシステムのマウントが解除されるときと、システムがシャットダウンまたはリブートされるときに、一時ファイルシステム上のファイルは削除されます。

TMPFS は、Solaris オペレーティング環境内の /tmp ディレクトリのデフォルトのファイルシステムです。UFS /tmp ファイルシステムの場合と同様に、/tmp ディレクトリとの間でファイルをコピーまたは移動できます。

TMPFS ファイルシステムは、一時的な退避場所としてスワップ空間を使用します。TMPFS ファイルシステムがマウントされたシステムのスワップ空間が足りないと、次の 2 つの問題が発生する可能性があります。

TMPFS ファイルシステムの作成方法については、第 35 章「ファイルシステムの作成 (手順)」を参照してください。スワップ空間を拡張する方法については、第 38 章「追加スワップ空間の構成 (手順)」を参照してください。

ループバックファイルシステム

ループバックファイルシステム (LOFS) を使用すると、代替パス名を使用してファイルにアクセスできるように、新しい仮想ファイルシステムを作成できます。たとえば、ルート (/) のループバックマウントを /tmp/newroot 上で作成できます。ファイルシステム階層全体が、NFS サーバーからマウントされるファイルシステムを含め、/tmp/newroot 上に複写されたように見えます。どのファイルにも、ルート (/) で始まるパス名または /tmp/newroot で始まるパス名を使用してアクセスできます。

LOFS ファイルシステムの作成方法については、第 35 章「ファイルシステムの作成 (手順)」を参照してください。

プロセスファイルシステム

プロセスファイルシステム (PROCFS) はメモリー内にあります。PROCFS の /proc ディレクトリには、有効なプロセスのプロセス番号別リストが入っています。/proc ディレクトリ内の内容は、ps などのコマンドに使用されます。デバッガや他の開発ツールも、ファイルシステムコールを使用して、プロセスのアドレス空間にアクセスできます。


注意 - 注意 -

/proc ディレクトリ内のファイルは削除しないでください。/proc ディレクトリからプロセスを削除しても、そのプロセスは強制終了されません。/proc ファイルはディスク容量を消費しないため、このディレクトリからファイルを削除してもあまり意味がありません。


/proc ディレクトリは、システム管理が不要です。

その他の仮想ファイルシステム

次のタイプの仮想ファイルシステムは、参考のために掲載してあります。管理は不要です。

仮想ファイルシステム 

説明 

FIFOFS (先入れ先出し) 

プロセスにデータへの共通アクセス権を与える名前付きパイプのファイル

FDFS (ファイル記述子) 

開いているファイルに、記述子を使用して名前を明示的に与える

NAMEFS 

ほとんどの場合、ファイル記述子をファイルの先頭に動的にマウントするために STREAMS に使用される

SPECFS (特殊) 

キャラクタ型特殊デバイスとブロック型特殊デバイスへのアクセスを提供する

SWAPFS 

カーネルがスワッピングに使用するファイルシステム