Solaris のシステム管理 (第 3 巻)

コンポーネント間の相互作用

この節では、PPP の各種コンポーネントが、アウトバウンド接続とインバウンド接続についてどのような働きをするかを説明します。

アウトバウンド接続のシナリオ

PPP リンクの 1 つのエンドポイントのユーザーが、反対側のエンドポイントにある対等ホストの参加を必要とする活動を開始すると、アウトバウンド通信が始まります。ユーザーが rcp コマンドを入力して、リンクの反対側のホストからファイルをコピーしようとしたとすると、次に示すような動作が生じます。

  1. rcp は、TCP/IP プロトコルスタックの各レベルを通してデータを送り出す

  2. 仮想ネットワークインタフェース (ipdn または ipdptpn) が、IP パケットの形式でデータを受け取る

  3. インタフェースは、アウトバウンド接続を開始するための接続要求を、aspppd リンクマネージャに送り出す

  4. リンクマネージャは次のことを行う

    1. 接続要求が、/etc/asppp.cf 構成ファイル中で構成されているパスに対応していることを確認する

    2. UUCP データベースファイル (/etc/uucp/Systems/etc/uucp/Devices/etc/uucp/Dialers) を調べて、モデムと宛先システムに関する必要な情報を入手する

    3. 宛先ホストへの電話呼び出しをかけるか、適切な直結シリアル回線に接続する

  5. 対等ホストへの物理リンクが確立される

  6. リンクマネージャは PPP を構成して開始する

  7. データリンク層が確立され、対等ホスト上の PPP モジュールが通信を開始する

  8. リンクマネージャはリンクを介した IP を使用可能にする

リンクマネージャは次に、アイドルタイムアウト、回線の切断、エラー条件などのイベントが発生するまで、接続を監視します。これらのイベントのどれかが発生すると、リンクマネージャは対等ホストとの接続を切り離し、アイドル状態に戻ります。

インバウンド接続のシナリオ

インバウンド通信を開始するホストがログインすると、/usr/sbin/aspppls ログインサービスが呼び出され、次のイベントが発生します。

  1. ログインサービスは、/tmp/.asppp.fifo ファイルを通してリンクマネージャに接続する

  2. ログインサービスは、リンクの反対側のエンドポイントで使用するログイン名などの情報を、リンクマネージャに提供する

  3. リンクマネージャはこのログイン名を使用して、対応する構成済みのパスを、構成ファイルの中から見つける

  4. リンクマネージャは、PPP を構成し起動する

  5. データリンク層が確立され、対等ホスト上の PPP モジュールが通信を開始する

  6. リンクマネージャはリンクを介した IP を使用可能にする

リンクマネージャは次に、アイドルタイムアウト、回線の切断、エラー条件などのイベントが発生するまで、接続を監視します。これらのイベントのどれかが発生すると、リンクマネージャは対等ホストとの接続を切り離し、アイドル状態に戻ります。