Solaris のシステム管理 (第 3 巻)

メール構成のハードウェア要素

メール構成では次の 3 つの要素が必要ですが、これらは同じシステムで組み合わせることも、別のシステムで提供することもできます。

ユーザーがドメイン外のネットワークと通信をするためには、4 番目の要素であるメールゲートウェイを追加する必要があります。次の節では各ハードウェアコンポーネントについて説明しています。

メールホスト

「メールホスト」は、ネットワーク上でメインのメールマシンとして指定するマシンです。これはサイトにおいて、他のシステムでは配信できないメールを転送するためのマシンになります。hosts データベースにシステムをメールホストとして指定するには、ローカルの /etc/hosts ファイルか、ネームサービスのホストファイルで、IP アドレスの右に mailhost を追加します。メールホストシステムでは、main.cf ファイルもメール構成ファイルとして使用する必要があります。

メールホストとして適切なのは、ローカルエリアネットワーク上のシステムで、電話回線に PPP または UUCP リンクを設定するためのモデムがあるものです。またネットワークからインターネットのグローバルネットワークへのルーターとして構成されたシステムも適しています (PPP、UUCP、およびルーターの詳細は、第 21 章「PPP の概要」第 25 章「UUCP の概要」「ルーターの構成」を参照)。ローカルネットワーク上のシステムにモデムがない場合は、システムの 1 つをメールホストに指定してください。

サイトの中には、タイムシェアリング構成でネットワークに接続されていないスタンドアロンのマシンを使用するものがあります。つまり、スタンドアロンのマシンが、シリアルポートに接続された端末として機能する場合です。このような構成では、スタンドアロンのシステムを 1 つのシステムネットワークのメールホストとして扱うことで、電子メールを設定できます。

メールサーバー

「メールボックス」は単独のファイルで、特定ユーザー用の電子メールが含まれています。メールはユーザーのメールボックスが置かれている場所のシステム、つまりローカルマシンかリモートサーバーに配信されます。「メールサーバー」は、/var/mail ディレクトリにユーザーのメールボックスを保持しているいずれかのシステムになります。

メールサーバーはクライアントからすべてのメールをルーティングします。クライアントがメールを送信するときに、メールサーバーは配信のためそのメールを待ち行列に入れます。メールが待ち行列に入れられたら、ユーザーはこれらのメールメッセージを失わずに、クライアントをリブートしたり、電源を切ったりすることができます。受信者がクライアントからメールを受けとると、メッセージの「From」行のパスには、メールサーバー名が含まれます。受信者が応答すると、その応答はユーザーのメールボックスに送られます。メールサーバーとして適しているのは、ユーザーにホームディレクトリを提供するシステムか、定期的にバックアップされるシステムです。

メールサーバーがユーザーのローカルシステムでない場合は、構成内で NFS ソフトウェアを使用するユーザーは、/etc/vfstab ファイル (ルートアクセスがある場合) を使用するか、オートマウンタを使用して、/var/mail ディレクトリをマウントできます。NFS サポートが利用できない場合、ユーザーはサーバーにログインしてメールを読み込めます。

ネットワーク上のユーザーが、PostScript ファイル、オーディオファイル、DTP システムからのファイルなど他の形式のファイルを送信する場合は、メールボックスのメールサーバーには、さらに多くの領域を割り当てる必要があります。

全メールボックス用に 1 台のメールサーバーを設定する利点の一つは、バックアップが簡単になることです。数多くのシステムにメールを分散すると、バックアップが難しくなります。 1 つのサーバーに多くのメールボックスを格納する際の欠点は、そのサーバーの故障が多くのユーザーに影響することですが、バックアップの簡便さは、この危険性を補って余りあります。

メールクライアント

「メールクライアント」は、メールサーバーでメールを受信し、ローカルの /var/mail のないシステムです。これはリモートモードとして知られています。リモートモードは、デフォルトでは /etc/mail/subsidiary.cf で使用することができます。

メールクライアントには、/etc/vfstab ファイルに適切なエントリがあり、メールサーバーからメールボックスをマウントするマウント先があることを確認する必要があります。またクライアントの別名の宛先が、クライアントではなく、メールサーバーのホスト名になっていることを確認してください。

メールゲートウェイ

「メールゲートウェイ」は、異なる通信プロトコルを実行するネットワーク間の接続を処理したり、同じプロトコルを使用する異なるネットワーク間の通信を処理したりするマシンです。たとえば、メールゲートウェイでは、Systems Network Architecture (SNA) プロトコルセットを実行するネットワークに、TCP/IP ネットワークを接続する場合もあります。

設定の最も簡単なメールゲートウェイは、同じプロトコルかメールプログラムを使用する 2 つのネットワークを接続するものです。このシステムでは、sendmail がドメインで受信者を見つけられないアドレスのあるメールを処理します。メールゲートウェイがある場合、sendmail はこれを使用して、ドメイン外でメールの送受信を行います。

2 つのネットワーク間には、図 35-1 に示すように内容の異なるメールプログラムを使用してメールゲートウェイを設定できます。これをサポートするには、メールゲートウェイシステムで sendmail.cf ファイルをカスタマイズする必要がありますが、これは困難で時間のかかる作業になる場合もあります。

図 35-1 異なる通信プロトコル間のゲートウェイ

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メールゲートウェイを設定する場合に、必要とするものに最も近いゲートウェイ構成ファイルを見つけ、状況に合わせて修正する必要があります。

インターネットに接続できるマシンがある場合は、そのマシンをメールゲートウェイとして構成できます。メールゲートウェイを構成するときは、まずサイトのセキュリティ要件を慎重に考慮する必要があります。社内ネットワークを外部と接続するには、ファイアウォールゲートウェイを構築し、メールゲートウェイとして設定する必要がある場合があります。