Solaris のシステム管理 (第 3 巻)

Secure NFS システム

NFS 環境は、アーキテクチャやオペレーティングシステムの異なるコンピュータから構成されるネットワーク上でファイルシステムを共有するためには、強力で使いやすい手段です。しかし、NFS の操作によるファイルシステムの共有を便利にする機能が、一方ではセキュリティ上の問題につながっています。今まで、NFS はほとんどのバージョンで UNIX (AUTH_SYS) 認証を使用してきましたが、現在では AUTH_DH のようなより強力な認証方式も使用可能です。UNIX 認証の場合、NFS サーバーはファイル要求を認証するために、その要求を行なったユーザーではなくコンピュータを認証します。したがって、クライアント側のユーザーがスーパーユーザーでログインすると、ファイルの所有者になりすますことができます。DH 認証では、NFS サーバーはユーザーを認証するため、このような操作が困難になります。

ルートへのアクセス権とネットワークプログラミングについての知識があれば、だれでも任意のデータをネットワークに入れ、ネットワークから任意のデータを取り出すことができます。ネットワークに対する最も危険な攻撃は、有効なパケットを生成したり、または「対話」対話を記録し後で再生することによってユーザーを装うなどの手段により、データをネットワークに持ち込むことです。これらはデータの整合性に影響を与えます。許可を持つユーザーを装うことなく、単にネットワークトラフィックを受信するだけの受動的な盗み聞きならば、データの整合性が損なわれることはないため、それほど危険ではありません。ユーザーはネットワークに送信されるデータを暗号化することによって、機密情報のプライバシを守ることができます。

ネットワークのセキュリティ問題における共通の対処方法は、解決策を各アプリケーションにゆだねることです。さらに優れた手法としては、すべてのアプリケーションを対象として、標準の認証システムを導入することです。

Solaris オペレーティングシステムには、NFS が実装されるメカニズムであるリモート手続き呼び出し (RPC) のレベルで、認証システムが組み込まれています。このシステムは Secure RPC と呼ばれ、ネットワーク環境のセキュリティを大幅に向上させるとともに、NFS のセキュリティを強化します。Secure RPC の機能を利用した NFS システムを Secure NFS システムと呼びます。