Solaris ネーミングの管理

nisbackup を使用して名前空間をバックアップする

nisbackup コマンドは、1 つまたは複数の NIS+ ディレクトリオブジェクト、または 1 つの名前空間全体を、指定した UNIX ファイルシステムのディレクトリにバックアップします。


注 -

nisbackup コマンドは、必ずマスターサーバー上で実行してください。複製サーバー上では絶対に実行しないでください。


nisbackup コマンドは、バックアップコマンドが動作するように設定された時点の NIS+ 名前空間をコピーします。この記録には、現行のすべての NIS+ データと、認証されたネットワーク管理者が NIS+ 名前空間に入力した変更が含まれます。ただし、まだ NIS+ テーブルにチェックポイントされていない ( NIS+ テーブルに記入されていない) ものは除きます。このバックアップ処理は、NIS+ データのチェックや訂正は行いません。テーブル内のデータが破壊されると、破壊されたデータは、有効なデータと見分けがつかない状態にバックアップされます。

nisbackup コマンドは、マシンがそのマスターサーバーであるディレクトリオブジェクトだけをバックアップします。つまり、nisbackup は、マスターサーバー上でだけ使用でき、複製サーバー上では使用できません。

バックアップ処理が、他の処理に割り込まれたり、またはその処理を正常に終了できない場合は、処理を停止し、転送先ディレクトリ内に格納された以前のバックアップファイルをすべて復元します。

nisbackup の構文

nisbackup コマンドで使用する構文は、次のとおりです。


nisbackup [-v][-a] backupdir objects

nisbackup コマンドには、次のようなオプションを指定できます。

表 16-1 nisbackup コマンドのオプション

オプション 

目的 

-v

冗長モード。このモードは追加情報を出力する 

-a

すべて。サーバーがマスターである NIS+ ディレクトリオブジェクトをすべてバックアップする。これには、このサーバーがマスターであるサブドメインのディレクトリオブジェクトも含まれる。ただし、他のマスターサーバーを持つサブドメインのディレクトリオブジェクトはバックアップされない 

nisbackup コマンドは、バックアップする NIS+ ディレクトリオブジェクトのマスターサーバー上で実行する必要があります。

バックアップする NIS+ ディレクトリオブジェクトを指定する場合、そのディレクトリ名には完全指定名、または部分指定名を使用できます。

マルチレベルディレクトリをバックアップする場合、下位ディレクトリのバックアップファイルは、自動的にバックアップ転送先ディレクトリのサブディレクトリ内に配置されます。

nisbackup によるバックアップの対象

nisbackup を使用する場合、nisbackup はサーバー固有のコマンドであることに注意してください。-a オプションを使用するかどうかに関係なく、nisbackup は、このコマンドを実行中のサーバーがマスターサーバーであるディレクトリだけをバックアップします。他にマスターサーバーを持つ NIS+ ディレクトリオブジェクトは、バックアップされません。

たとえば、submaster1 は、sales.doc.com. ディレクトリオブジェクトのマスターサーバーで、さらに west.sales.doc.com. ディレクトリオブジェクトの複製サーバーでもあるとします。この場合、submaster1 上で nisbackup を実行すると、sales.doc.com. ディレクトリオブジェクトだけがバックアップされます。

このサーバー固有の原則には次のものがあります。

バックアップ転送先ディレクトリ

バックアップ転送先ディレクトリは、バックアップ対象のサーバーが使用できるものでなければなりませんが、サーバー上に物理的にマウントしていない転送先ディレクトリを使用するのも良い方法です。この場合、サーバーがダメージを受けても、バックアップディレクトリは使用可能です。

独立した転送先ディレクトリは、バックアップ対象となるマスターサーバーごとに使用する必要があります。混乱を避けるために、マスターサーバーのマシン名を転送先ディレクトリ内に組み込むと良いでしょう。たとえば、master1 マシン上で実行した nisbackup の転送先ディレクトリは、/var/master1_bakup という名前にします。


注意 - 注意 -

指定した 1 つの転送先ディレクトリに対して、複数のサーバーをバックアップしないでください。異なるマスターサーバーには、必ず、異なる転送先ディレクトリを使用してください。それは、指定した転送先ディレクトリに、1 つまたは複数の NIS+ ディレクトリオブジェクトをバックアップするたびに、このディレクト内のこれらの NIS+ ディレクトリオブジェクト用のそれ以前のバックアップファイルが上書きされるからです。


NIS+ のバックアップを日付順に保存する

バックアップファイルを日付順に保存するには、少なくとも次の 2 つの方法があります。

特定の NIS ディレクトリをバックアップする

特定の NIS+ ディレクトリオブジェクトをバックアップするには、これらのディレクトリをバックアップ転送先ディレクトリの後ろに入力します。

たとえば、ルート、sales ドメイン、manf ドメインの 3 つの org_dir ディレクトリオブジェクトを /master1_backup ディレクトリにバックアップするには、nisbackupmaster1 マシン上で次のように実行します。


master1# nisbackup /var/master1_bakup org_dir org_dir.sales org_dir.manf

すべての NIS+ 名前空間をバックアップする

すべての NIS+ 名前空間をバックアップする場合は、ルートマスターサーバー上で、nisbackup コマンドに -a オプションを指定して実行します。

-a オプションを使用する場合は、バックアップする NIS+ ディレクトリオブジェクトは指定しません。サーバー上とそのサーバーの下にあるサブドメインのすべての NIS+ ディレクトリオブジェクトは、自動的にバックアップされます。

たとえば、doc.com. 名前空間を /master1_bakup ディレクトリにバックアップするには、ルートマスター上で、nisbackup を次のように実行してください。


rootmaster# nisbackup -a /var/master1_bakup

バックアップディレクトリの構造

ドメイン上でバックアップを実行すると、バックアップ転送先ディレクトリ内に、NIS+ ディレクトリオブジェクトごとにサブディレクトリが作成されます。これらのサブディレクトリ名は、完全指定の NIS+ ディレクトリオブジェクト名の末尾にピリオドが付いたものになります。

-a オプションを使用して、すべての NIS+ オブジェクトを完全にバックアップすると、3 つの関連ディレクトリオブジェクト (ドメイン、org_dir.domeingroups_dir.domein) すべてがバックアップされ、転送先サブディレクトリが 3 つ作成されます。複数のオブジェクトをバックアップすると、サブディレクトリはバックアップしたそれぞれのオブジェクトごとに作成されます。

複数の NIS+ ディレクトリオブジェクトのバックアップサブディレクトリは、それがサブドメインであるかどうかに関係なく、親バックアップ転送先ディレクトリのサブディレクトリになるので注意してください。つまり、nisbackup は、親バックアップ転送先ディレクトリの下にドメインの階層を複製しません。その代わりに、バックアップサブディレクトリはすべて、転送先ディレクトリの単純なサブディレクトリになります。

たとえば、ルート、salesmanf のそれぞれからディレクトリオブジェクト doc.com./var/master1_bakup ディレクトリにバックアップする場合、図 16-1 に示すように、/var/master1_bakup ディレクトリ内には 9 個のサブディレクトリが作成されます。

図 16-1 nisbackup によって作成されるディレクトリの例

Graphic

バックアップファイル

バックアップ転送先ディレクトリには、この転送先ディレクトリにバックアップされた最新の NIS+ ディレクトリオブジェクトを表示する backup_list ファイルが入っています。

各サブディレクトリには、ファイルが 2 つと /data サブディレクトリが 1 つ組み込まれます。この 3 つのファイルを次に示します。

/data サブディレクトリには、1 つまたは複数の以下のファイルが入っています。