Solaris 移行ガイド

仮想ファイルシステムアーキテクチャ

SunOS 5.7 の機能である仮想ファイルシステム (VFS) アーキテクチャは、複数のファイルシステムをサポートするファイルシステム管理を簡略化します。

長年にわたって、それぞれ独自のファイルシステム管理用コマンドセットをもつ UNIX ファイルシステムが数種類開発されてきました。すべての種類を学ぶのは混乱を招くもとにもなり、また困難です。SunOS 5.7 は、ファイルシステム管理用の汎用のコマンドセットでこの問題に対処しています。これらのコマンドは、管理に関するファイルシステム間の違いを意識させない共通の VFS インタフェースの一部です。以下の項では、サポートされるファイルシステムと汎用のファイルシステムコマンドの概要を示します。

サポートされるファイルシステムの形式

SunOS 4 に含まれていたほとんどのファイルシステム形式は、SunOS 5.7 ソフトウェアにも含まれています。ただし、例外が 1 つあり、半透過ファイルシステム (TFS) 形式は、SunOS 5.7 では廃止されました。 表 9-2 に、SunOS 4 と SunOS 5.7 環境で使用できるファイルシステム形式をまとめます。

表 9-2 ファイルシステム形式の要約

カテゴリ 

ファイルシステム名 

説明 

SunOS 4 

SunOS 5.7 

ディスクベース 

UFS

UNIX ファイルシステム 

あり 

あり 

HSFS

CD-ROM ファイルシステム 

あり 

あり 

PCFS

PC ファイルシステム 

あり 

あり 

ネットワークベース

NFS

Sun の分散ファイルシステム 

あり 

あり 

疑似

SPECFS

特殊デバイスファイルシステム 

あり 

あり 

TMPFS

/tmp 一時ファイルシステム

あり 

あり 

LOFS

ループバックファイルシステム 

あり 

あり 

TFS

半透過ファイルシステム 

あり 

なし 

PROCFS

プロセスアクセスファイルシステム 

なし 

あり 

FDFS

ファイル記述子ファイルシステム 

なし 

あり 

FIFOFS

FIFO/ パイプファイルシステム 

なし 

あり 

NAMEFS

ネームファイルシステム 

なし 

あり 

SWAPFS

スワップファイルシステム 

なし 

あり 

CACHEFS

キャッシュファイルシステム 

なし 

あり

ファイルシステムについての詳細は、proc(4)fd(4) のマニュアルページ、および『Solaris のシステム管理 (第 1 巻)』を参照してください。

キャッシュファイルシステム (CACHEFS)

キャッシュファイルシステムはリモートファイルシステム、または CD-ROM などの低速装置の性能を改善するのに使用されます。ファイルシステムがキャッシュされていると、リモートファイルシステムや CD-ROM から読み込まれたデータは、ローカルシステムのキャッシュに格納されます。

スワップファイルの変更

SWAPFS は、SunOS 5.7 では、システムをブートするとき、またはスワップ空間を追加するときのデフォルトのスワップデバイスです。このスワップデバイスはスワップ空間として物理メモリを使用しますが、ディスクにも物理スワップ空間が必要です。

SunOS 4 システムでは、デフォルトの物理スワップデバイスはシステム構成に依存します。スタンドアロンシステムのデフォルト sd0b ディスクレスシステムは、スワップファイルを bootparam サーバから取得します。SunOS リリース 5.7 ソフトウェアではスワップファイルを、ディスク上のファイルを指定せず、デフォルトダンプデバイスとして使用します。

サポートされない SVR4 ファイルシステムの形式

表 9-3 に SunOS 5.7 ではサポートされない SVR4 ファイルシステム形式を示します。

表 9-3 サポートされない SVR4 ファイルシステム形式

ファイルシステム名 

説明 

BFS

ブートファイルシステム 

S5

System V ファイルシステム 

xnamefs

XENIX セマフォファイルシステム

汎用ファイルシステムコマンド

ほとんどのファイルシステム管理コマンドは、汎用コンポーネントとファイルシステムコンポーネントを持っています。ファイルシステムコンポーネントを呼び出す汎用コマンドを使用してください。表 9-4 は、/usr/bin ディレクトリにある汎用ファイルシステム管理コマンドの一覧です。

表 9-4 汎用ファイルシステム管理コマンド

コマンド 

説明 

clri(1M)

i ノードをクリアする。 

df(1M)

空きディスクブロック数とファイル数を表示する。 

ff(1M)

ファイルシステムに含まれるファイル名と統計情報を一覧表示する。 

fsck(1M)

ファイルシステムの整合性を検査し損傷が見つかれば修理する。 

fsdb(1M)

ファイルシステムデバッガ 

fstyp(1M)

ファイルシステムの形式を判定する。 

labelit(1M)

テープへコピーするときにファイルシステムのラベルを表示または提供する (volcopy コマンドでのみ使用)。

mkfs(1M)

新しいファイルシステムを作成する。 

mount(1M)

ファイルシステムとリモートリソースをマウントする。 

mountall(1M)

ファイルシステムテーブルで指定されたすべてのファイルシステムをマウントする。 

ncheck(1M)

i 番号をもつパス名のリストを作成する。 

umount(1M)

ファイルシステムとリモートリソースのマウントを解除する。 

umountall(1M)

ファイルシステムテーブルで指定されたすべてのファイルシステムのマウントを解除する。 

volcopy(1M)

ファイルシステムのイメージコピーを作成する。

また、これらのほとんどのコマンドには、ファイルシステムに対応するものがあります。


注意 - 注意 -

ファイルシステムコマンドを直接使用しないでください。このディレクトリをサポートしないファイルシステムで動作させると、汎用コマンドが次のエラーメッセージを表示します。「command: Operation not applicable for FSType type


汎用コマンドの構文

ほとんどの汎用コマンドは、次の構文を使用します。

command [-F type] [-V] [generic-options] [-o specific-options] [special|mount-point] [operands] 

汎用コマンドのオプションと引数は次のとおりです。

-F type

ファイルシステムの形式を指定します。このオプションを使用しないと、このコマンドは /etc/vfstab ファイルの special または mount point と一致するエントリをさがします。それ以外の場合は、ローカルファイルシステムに対しては /etc/vfstab ファイル、リモートファイルシステムに対しては /etc/dfs/fstypes ファイルからデフォルトが取り出されます。

-V

完了したコマンド行を表示します。表示された行には、/etc/vfstab から入手した追加情報を含めることができます。このオプションを使用して、コマンド行の検査と妥当性検査を行います。このコマンドは実行されません。

generic-options

異なるファイルシステムの形式に共通のオプション。

-o specific-options

ファイルシステムの形式に固有のオプションのリスト。このフォーマットは、-o の後にスペースを入れ、さらに keyword [=value] のペアを、スペースではなくカンマで区切って続けます。

special|mount-point

ファイルシステムを指定します。この名前は、マウントポイントか、またはファイルシステムを持つスライス用の特殊デバイスファイルです。一部のコマンドでは、 special ファイルは raw (キャラクタ型) デバイスでなければならず、また、ブロック型デバイスでなければならないものもあります。場合によっては、この引数は他の情報を入手する /etc/vfstab ファイルの中で一致するエントリを検索するためのキーとして使用されます。ほとんどの場合、この引数は必須であり、specific-options の直後になければなりません。ただし、/etc/vfstab ファイルに一覧表示されたすべてのファイルシステム (オプションにより形式によって制限できる) でコマンドを動作させたいときには、この引数は必要ありません。

operands

ファイルシステムの形式に固有の引数。詳細については、各コマンドに該当するマニュアルページ (たとえば、mkfs_ufs(4)) を参照してください。

システム全体のデフォルトのファイルシステム形式

デフォルトのリモートファイルシステム形式は、/etc/dfs/fstype です。デフォルトのローカルファイルシステム形式は、/etc/default/fs です。詳細については、default_fs(4) のマニュアルページを参照してください。

コマンドの位置

以前の SunOS では、すべてのファイルシステムコマンドは、/etc ディレクトリにありました。SunOS 5.7 では、ファイルシステムコマンドは使いやすいように、別々の階層に編成されています。ファイルシステムコマンドは、/usr/lib/fs/fstype に格納されます。/usr がマウントされる前に必要なコマンドは、/etc/fs/fstype に複製されます。

汎用コマンドはすべて /usr/sbin にあります。/usr がマウントされる前に必要なコマンドは、/sbin に複製されます。

表 9-5 は、ファイルシステムコマンドの格納位置を示します。

表 9-5 ファイルシステムコマンドの格納位置

形式 

プライマリバージョンの位置 

複製バージョンの位置 (root)

汎用 

/usr/sbin

/sbin

固有 

/usr/lib/fs

/etc/fs

新しい UFS マウントオプション

ファイルのアクセス時刻を更新しない場合、UFS ファイルシステムをマウントするときに -o noatime オプションを指定できます。このオプションを指定すると、Usenet ニューススプールのようにアクセス時刻が重要でないファイルシステムのディスク使用率が削減されます。