Solaris WBEM Services ソフトウェアは、アプリケーション、管理、プロバイダという 3 つの層で機能するソフトウェアコンポーネントで構成されます。これらのコンポーネントはオペレーティングシステム層やハードウェア層とデータをやりとりします。図 1-1 は、各層におけるソフトウェアコンポーネントとその関係を示しています。
アプリケーション層 - WBEM クライアントが管理リソースからのデータを処理したり、表示したりします。Solaris WBEM Services には、次のアプリケーションがあります。
WBEM Log Viewer - ログファイルを表示するアプリケーションです。Log Viewer では、ログファイルに記録されているコマンドを実行したユーザーの名前や、記録されているイベントが起きたクライアントコンピュータなど、ログレコードの詳細を表示できます。
Sun WBEM User Manager - このアプリケーションでは、管理者が、承認された WBEM ユーザーの追加や削除を行なったり、管理リソースに対するそれらのユーザーのアクセス権を設定したりすることができます。
Managed Object Format (MOF) コンパイラ - このプログラムでは、MOF を宣言しているファイルを解析し、ファイルに定義されているクラスやインスタンスを Java クラスに変換し、その Java クラスを CIM Object Manager Repository に追加します。Repository は、管理データを一元的に格納する場所です。
MOF は CIM クラスやインスタンスを定義する言語です。MOF ファイルは、MOF 言語を使って CIM オブジェクトを記述する ASCII テキストファイルです。CIM オブジェクトは、プリンタ、ディスクドライブ、CPU などの管理リソースを表したモデルです。
管理リソースの情報は MOF ファイルに格納されることがあります。MOF は Java に変換できるため、Java Virtual Machine をもつシステムで動作するアプリケーションならこの情報の解釈や交換を行うことができます。さらに、インストールの後で、mofcomp コマンドを使って MOF ファイルをいつでもコンパイルできます。MOF の詳細は、DMTF の Web ページ http://www.dmtf.org を参照してください。
管理層 - この層のコンポーネントは、接続された WBEM クライアントに次のサービスを提供します。
クライアントおよび CIM アプリケーションプログラミングインタフェース (API) - WBEM クライアントアプリケーションは、これらの Java インタフェースを使って、管理リソースのクラスやインスタンスの作成や表示などの操作を CIM Object Manager に要求します。
Common Information Model (CIM) Object Manager - WBEM システム上の CIM オブジェクトを管理するソフトウェアです。CIM オブジェクトは、プリンタ、ディスクドライブ、CPU などの管理リソースを表したモデルです。CIM オブジェクトは内部的には Java クラスとして格納されます。CIM Object Manager は WBEM クライアント、CIM Object Manager Repository、管理リソースとの間で情報を送受信します。
CIM Object Manager Repository - CIM クラスやインスタンスの定義を一元的に格納する場所です。
プロバイダインタフェース - プロバイダは、これらのインタフェースを使って管理リソースの情報を CIM Object Manager に転送します。CIM Object Manager は、これらのインタフェースを使って、ローカルにインストールされたプロバイダに情報を転送します。
プロバイダ層 - プロバイダは、CIM Object Manager と 1 つまたは複数の管理リソースとの間の仲介を行います。CIM Object Manager は、WBEM クライアントから CIM Object Manager Repository にないデータを要求されると、要求を適切なプロバイダに転送します。
Solaris Provider - Solaris オペレーティング環境にある管理リソースの CIM Object Manager インスタンスを提供します。プロバイダは、管理デバイスに関する情報の取得や設定を行います。ネイティブプロバイダとは、管理デバイスで動作するように作成されたマシン固有のプログラムです。たとえば、Solaris システムのデータにアクセスするプロバイダには、通常、Solaris システムの照会を行う C 関数が含まれています。JNI (Java Native Interface) は、JDK に含まれている Java 用ネイティブプログラミングインタフェースです。JNI を使ってプログラムを作成すれば、コードはどのプラットフォームでも完全に動作します。JNI を使うと、Java Virtual Machine (VM) で動作する Java コードは、C、C++、アセンブリなど他の言語で作成されたアプリケーションやライブラリとともに動作します。
Solaris スキーマ - Solaris オペレーティング環境にある管理オブジェクトを記述するクラスの集合です。CIM スキーマや Solaris スキーマのクラスは CIM Object Manager Repository に格納されます。CIM スキーマは、すべての管理環境で発生する管理オブジェクトを表すためのクラス定義の集合です。
Solaris スキーマは CIM スキーマを拡張したクラス定義の集合であり、一般的な Solaris オペレーティング環境にある管理オブジェクトを表します。さらに、ユーザーは、インストールの後で、mofcomp コマンドを使って CIM スキーマ、Solaris スキーマ、あるいはその他のクラスを CIM Object Manager Repository に追加できます。
オペレーティングシステム層 - Solaris プロバイダを使えば、管理アプリケーションから Solaris オペレーティング環境にある管理リソース (デバイスやソフトウェアなど) の情報にアクセスできます。
ハードウェア層 - 管理クライアントは、サポートされる Solaris プラットフォームの管理データにアクセスできます。