DiskSuite を使用するシステムの場合、Solaris オペレーティングシステムと DiskSuite のアップグレード手順に相関関係があります。次の定義を参考にして、手順と対応すべき問題を理解してください。
単純メタデバイス - 単一コンポーネント (ディスクスライス) で構成され、metastat が示す「開始ブロック」が 0 のメタデバイス
単純ミラーメタデバイス - サブミラーがすべて単純メタデバイスであるミラー
単純トランスメタデバイス - マスターデバイスが単純メタデバイスであるトランスメタデバイス
オペレーティングシステムマウントポイント - Solaris システムソフトウェアが含まれていて、/etc/vfstab でマウントポイントとして使用されているディレクトリ。オペレーティングシステムマウントポイントは、Solaris のアップグレードによって影響を受けます。オペレーティングシステムマウントポイントには、必ずルート、/usr、および swap が含まれます。Solaris のインストール方法によっては、ディレクトリ /var、/opt、/usr/openwin、/export、 /export/root、および /export/exec がオペレーティングシステムマウントポイントになる場合もあります。
オペレーティングシステムメタデバイス - /etc/vfstab がその上にオペレーティングシステムマウントポイントをマウントする場合に、メタデバイスがオペレーティングシステムメタデバイスとみなされます。オペレーティングシステムメタデバイスは、単純メタデバイス、単純ミラーメタデバイス、または単純トランスメタデバイスのいずれかでなければなりません。DiskSuite を使用するシステムの中には、オペレーティングシステムメタデバイスを持たないものがあります。ルートがメタデバイスにある場合は、そのメタデバイスの基礎となっているコンポーネントがすべてブート可能でなければなりません。
旧バージョンの DiskSuite が稼働しているシステム上でのインストールに影響する要因は、次のとおりです。
DiskSuite 4.2.1 とともに実行する Solaris のバージョン (Solaris 8)
システムのアーキテクチャ (SPARC または x86)
インストール以前にシステムで稼働していた Solaris のバージョン
インストール以前にシステムで稼働していた Solstice DiskSuite のバージョン
オペレーティングシステムメタデバイスの有無
Solaris インストールプログラムは、メタデバイスに置かれている Solaris ソフトウェアをアップグレードできないので、各オペレーティングシステムメタデバイスを個々のコンポーネント (スライス) に分解してから、Solaris インストールプログラムを実行する必要があります。さらに、Solaris のインストール後に、分解したオペレーティングシステムメタデバイスを再構築しなければなりません。
DiskSuite の構成および状態情報は、メタデバイス状態データベースという内部の形式が公開されていない複製データベースに保存されます。データベースでは、デバイスのドライバ名とマイナー番号を使用して、ディスクドライブが記述されます。DiskSuite 4.0 のリリース以降では、新しいリリースの Solaris と DiskSuite が古いメタデバイス状態データベースを読み取ることができます。DiskSuite の各リリースは、少なくとも 2 つのバージョンの Solaris をサポートします。これによって、Solaris をアップグレードしてから DiskSuite をアップグレードすることによって、現在のバージョンを任意の Solaris/DiskSuite の組み合わせにアップグレードできます。次の表に、サポートマトリックスを示します。表中の網がかかっている部分 (互換性ありの部分) は、DiskSuite と Solaris のバージョン間に互換性があることを表します。
表 1-1 Solstice DiskSuite のサポートマトリックス
| Solaris 2.5.1 | Solaris 2.6 | Solaris 7 | Solaris 8 |
DiskSuite 4.0 | 互換性あり | |||
DiskSuite 4.1 | 互換性あり | 互換性あり | ||
DiskSuite 4.2 SPARC |
| 互換性あり | 互換性あり | |
DiskSuite 4.2 x86 |
| 互換性あり* | 互換性あり* | |
DiskSuite 4.2.1 |
|
| 互換性あり |
* - Solstice DiskSuite 4.2.1 で提供された metacvt コマンドを使用して、システムメタデバイス状態データベースの複製とメタデバイスを削除してから、x86 マシン上で Solaris 8 をアップグレードしてください。metacvt コマンドにより、アップグレード後に複製とメタデバイスを復元するシェルスクリプトが作成されます。
メタデバイス状態データベース情報を有効にするために、アップグレードによって新しい Solaris ソフトウェアを適用し、アップグレードの前後にわたってデバイスの割り当てを保存する必要があります。
Solaris の初期インストールを実行すると、DiskSuite のすべての構成情報が失われます。DiskSuite の構成情報が失われると、データの消失やシステムの完全停止が発生することがあります。
デバイス割り当ての変更を避けるためには、アップグレード中は、マシンのハードウェア構成を変更しないことが重要です。繰り返しますが、デバイス割り当てが失われると、メタデバイス状態データベース情報が無効になり、データの損失やシステムの完全停止が引き起こされることがあります。
x86 用の Solaris 8 の特徴の 1 つは、SCSI ドライバが統一されたことです。SPARC と x86 の両方で、同じ sd ドライバが使用されるようになりました。メタデバイス状態データベース情報には、デバイスのドライバ名が含まれるので、x86 上で Solaris 8へアップグレードするには、DiskSuite メタデバイス状態データベースを作成し直す必要があります。DiskSuite 4.2.1 ソフトウェアには、メタデバイス状態データベースの削除と再作成を自動的に行うバージョンの metacvt(1M) コマンドが用意されています。
この節で説明した内容をまとめると、次のようになります。必ずこの指示に従ってください。
構成済みで Solstice DiskSuite が稼働しているシステム上で Solaris をアップグレードする場合は、必ず Solaris インストールプログラムの「アップグレード」オプションを実行してください。
アップグレード中に、マシンのハードウェア構成を変更してはなりません。
DiskSuite 4.2.1 と Solaris 8 にアップグレードするには、システムで Solaris 2.5.1、Solaris 2.6、または Solaris 7、さらに DiskSuite 4.0、 DiskSuite 4.1、または DiskSuite 4.2 が稼働していなければなりません。必要に応じて、『Solstice DiskSuite 4.0 Product Notes』で説明されている手順に従って、Solaris 2.5 と DiskSuite 4.0 にシステムをアップグレードし、それから Solaris 2.5.1 にアップグレードしてください。
x86 システムを DiskSuite 4.2.1 と Solaris 8 にアップグレードするには、すべてのメタデバイスを分解し、DiskSuite メタデバイス状態データベースをシステムから削除し、さらに DiskSuite パッケージを削除してから、システムを Solaris 8 にアップグレードしなければなりません。Solaris 8 にアップグレードした後に、DiskSuite 4.2.1 パッケージを追加し、メタデバイスを再構築する必要があります。DiskSuite 4.2.1 に備わっている metacvt スクリプトを使用すると、自動的にメタデバイスを分解し、システムからメタデバイス状態データベースを削除して、DiskSuite 4.2.1 パッケージのアップグレードまたはインストール後に、メタデバイス状態データベースを復元してメタデバイスを作成し直すシェルスクリプトを作成します。
M オペレーティングシステムファイルが含まれているメタデバイス (オペレーティングシステムメタデバイス) を、単純コンポーネント (シングルスライス) に分解してから、オペレーティングシステムをアップグレードする必要があります。
オペレーティングシステムメタデバイスを分解せずにシステムをアップグレードすると、データが失われたり、システムが完全に停止することがあります。
メタデバイスの再構築またはファイルシステムへのマウントは、新しいバージョンの Solstice DiskSuite ソフトウェアをインストールした後に行わなければなりません。