この特記事項マニュアルでは、Sun GigabitEthernet アダプタを使用する際に必要となるソフトウェアのインストール方法および設定方法を解説します。また、ネットワーク設定の方法も解説しています。特に記述がないかぎり、このマニュアルで解説している方法は Sun GigabitEthernet/P アダプタと Sun GigabitEthernet/S アダプタの両方に対応しています。
Sun GigabitEthernet アダプタを使用する際に必要となるソフトウェアは Solaris(TM) CD に収録してあります。
スーパーユーザーになります。
コマンド prtconf -pv を使って、GigabitEthernet (ge) デバイスがシステムに実装されているかどうかを調べます。
# prtconf -pv | grep SUNW,sbus-gem compatible: 'SUNW,sbus-gem' model: 'SUNW,sbus-gem'
# prtconf -pv | grep SUNW,pci-gem model: 'SUNW,pci-gem'
システムに ge デバイスが実装されている場合は、『Solaris 8 Sun ハードウェアマニュアル』に記載されている方法に従い、ドライバソフトウェアをインストールしてください。
システムに ge デバイスが実装されていない場合は、まずシステムをシャットダウンしてからアダプタを取り付けてください。その後で、『Solaris 8 Sun ハードウェアマニュアル』に記載してある方法に従い、ドライバソフトウェアをインストールしてください。
動的再構成 (DR: Dynamic Reconfiguration) をサポートするシステムを使用している場合は、シャットダウンやリブートを実行しないでください。インストールの際には、システムに付属のマニュアルに記載してある方法に従ってください。
/etc/hosts ファイル に、使用可能な ge インタフェースごとにエントリを 1 つずつ作成します。
# cat /etc/hosts # # Internet host table # 127.0.0.1 localhost 129.144.10.57 zardoz loghost 129.144.11.83 zardoz-11
IPv6 (インターネットプロトコル バージョン 6) は、現在使用されている IPv4 の機能を拡張するものです。Solaris 8 オペレーティング環境の GigabitEthernet デバイスドライバは、IPv4 と IPv6 の両方をサポートしています。IPv4 の設定は、/etc/hosts ファイルを使用しますが、IPv6 では異なる設定ファイルを使用します。IPv6 への移行、管理、実装については、『Solaris 8 のシステム管理 (第 3 巻)』を参照してください。
grep コマンドを使い、ファイル /etc/path_to_inst の中から ge インスタンスを検索します。
# grep ge /etc/path_to_inst "/pci@1f,4000/pci@1/network@1" 1 "ge"
# grep ge /etc/path_to_inst "/sbus@1f,0/network@1,100000" 1 "ge"
上記の例ではいずれも、システムに実装された 1 番目の GigabitEthernet アダプタのインスタンス番号が 0 になっています。
path_to_inst ファイルに記述してある ge デバイスに一致するように、各 hostname.genum ファイルを設定します。
例えば以下の /etc/hostname.genum ファイルの場合は、zardoz-11 というホスト名の ge インタフェースが設定されています。
# cat /etc/hostname.ge1 zardoz-11
ifconfig コマンド を使って ge アダプタを設定します。下記の例で ip_address と書かれている部分にはシステムの IP アドレスを入力します。この後システムのリブートは必要ありません。システムは指定されたアダプタを使用するようになります。
# ifconfig ge0 plumb # ifconfig ge0 ip_address up
ドライバソフトウェアのさらに詳細な設定方法については、インストール終了後、『Sun GigabitEthernet/S 2.0 Adapter Installation and User's Guide』または『Sun GigabitEthernet/P 2.0 Adapter Installation and User's Guide』を参照してください。
この節ではアダプタに組み込まれている GigabitEthernet ASIC の機能についてその概要を解説します。さらに ge ドライバのパラメタをリストにまとめ、各パラメタの設定方法を解説します。
ge ドライバは Sun GigabitEthernet アダプタデバイスを制御します。SUNW,sbus-gem や SUNW,pci-gem ノードの標準設定では、Sun GigabitEthernet デバイスは network として識別されます。ge ドライバの接続相手は、Sun GigabitEthernet/P アダプタの場合は pci108e,2bad に互換性のあるデバイス、Sun GigabitEthernet/S アダプタの場合は SUNW,sbus-gem に互換性のあるデバイスになります。システムの Sun GigabitEthernet アダプタ は、それぞれ個別に手動でパラメタ値を設定変更できます。
GigabitEthernet MAC (GEM) は 1000BASE-SX ネットワークインタフェースに対応しています。このドライバはIEEE の 802.3z Ethernet 規格に適合しており、自動的に接続速度を 1000 Mbps に設定します。GEM PCI ASIC は PCI インタフェース、MAC (Media Access Control) 機能、PCS (Physical Code Sublayer) 機能を提供します。GEM SBus ASIC は SBus インタフェース、MAC 機能、PCS 機能を提供します。1000BASE-SX 準拠の SC コネクタを ASIC に接続する場合は、外部 SERDES を使用して物理層機能を提供します。
GEM MAC と PCS は 「自動ネゴシエーションモード」に示されているすべての接続速度と動作モードに対応しています。PCS は接続相手と自動ネゴシエーションを行い、共通の動作モードを選択します。
PCS は強制動作モードにも対応しています。ge.conf ファイルを作成することにより、速度とモードを指定できるようになっています。
ge ドライバのパラメタおよびその設定を 表 1-1 に示します。
表 1-1 ge ドライバパラメタの状態と説明
パラメタ |
状態 |
説明 |
---|---|---|
link_status |
読み取り専用 |
現在の状態 |
link_speed |
読み取り専用 |
現在の状態 |
link_mode |
読み取り専用 |
現在の状態 |
ipg1 |
読み取り・書き込み可 |
パケット間隔パラメタ |
ipg2 |
読み取り・書き込み可 |
パケット間隔パラメタ |
instance |
読み取り・書き込み可 |
デバイスインスタンス |
lance_mode |
読み取り・書き込み可 |
パケット転送前の追加遅延 |
ipg0 |
読み取り・書き込み可 |
パケット転送後の追加遅延 |
adv_1000autoneg_cap |
読み取り・書き込み可 |
動作モードのパラメタ |
adv_1000fdx_cap |
読み取り・書き込み可 |
動作モードのパラメタ |
adv_1000hdx_cap |
読み取り・書き込み可 |
動作モードのパラメタ |
adv_pauseTX |
読み取り・書き込み可 |
動作モードのパラメタ |
adv_pauseRX |
読み取り・書き込み可 |
動作モードのパラメタ |
1000autoneg_cap |
読み取り専用 |
PCS の自動ネゴシエーション機能 |
1000fdx_cap |
読み取り専用 |
PCS の全二重可 |
1000hdx_cap |
読み取り専用 |
PCS の半二重可 |
asm_dir_cap |
読み取り専用 |
PCS ASM_DIR 機能 |
pause_cap |
読み取り専用 |
PCS 対称型 PAUSE 機能 |
lp_1000autoneg_cap |
読み取り専用 |
接続相手の自動ネゴシエーション機能 |
lp_1000fdx_cap |
読み取り専用 |
接続相手の機能 |
lp_1000hdx_cap |
読み取り専用 |
接続相手の機能 |
lp_asm_dir_cap |
読み取り専用 |
接続相手の機能 |
lp_pause_cap |
読み取り専用 |
接続相手の機能 |
表 1-2 に示す読み取り専用パラメータは、インタフェースの動作モードに関する情報を提供します。これらのパラメタの値から、現在の接続状態がどうなっているか判断することができます。
表 1-2 現在の状態を示す読み取り専用パラメタ
パラメタ |
説明および値 |
---|---|
link_status |
現在の接続状態 0 = 切断 1 = 接続 |
link_speed |
状態が接続の場合のみ有効 0 = 接続されていない 1000 = 1000 Mbps で接続 |
link_mode
|
状態が接続の場合のみ有効 0 = 半二重 1 = 全二重 |
GEM ASIC は、IEEE 802.3x フレームのリンクレベルフロー制御プロトコル準拠の一時停止 (PAUSE) フレームの送信(ソーシング)と受信(ターミネーティング ) に対応しています。例えば 、フロー制御フレームを受信すると、それに反応して転送レートを落とすように GEM を設定できます。あるいは逆に、フロー制御フレームを接続相手に送信して、接続相手の転送レートを落とす ようにも設定できます (ただし接続相手もこの機能をサポートしている場合のみ可能です) 。デフォルトでは、GEM の一時停止フレーム受信機能は、自動ネゴシエーションの間のみ有効となるように設定してあります。
表 1-3 フロー制御パラメタ (読み取り/書き込み可)
パラメタ
|
値 (on/off) |
説明
|
---|---|---|
adv_pauseTX |
0, 1 |
PAUSE の送信可/不可 (デフォルトでは不可) |
adv_pauseRX |
0, 1 |
PAUSE の受信可/不可 (デフォルトでは可) |
通常の状況であれば、GEM の側からフロー制御フレームを送信する必要はありません。しかし転送速度の遅いバス (例えば 33 MHz の PCI バススロット) を使用していて、かつフレームの受信が非常に多い場合などは、FIFO の受信オーバーフローが原因でパフォーマンスが低下する可能性があります。そのような状況でも、接続相手側がフロー制御フレーム PAUSE の受信に対応していれば、adv_pauseTX の設定を「送信可能」に設定して自動ネゴシエーション機能を再起動するだけで、GEM のパフォーマンスを改善できます。
GEM ASIC はプログラム可能なパケット間隔 (IPG: Interpacket Gap) パラメタとして、ipg1 および ipg2 をサポートしています。ipg1 と ipg2 の合計が総 IPG となります。接続速度が 1000 Mbps の場合、IPG は 0.096 マイクロ秒になります。
表 1-4 に IPG パラメタ ipg1 と ipg2 のデフォルト値および設定可能な値を示します。
表 1-4 パケット間隔パラメタ (読み取り/書き込み可)
パラメタ |
値(バイト時間) |
説明 |
---|---|---|
ipg1 |
0, 255 |
ipg1 = 8 (初期化時のデフォルト値) |
ipg2 |
0, 255 |
ipg1 = 4 (初期化時のデフォルト値) |
デフォルトでは ipg1 が 8 バイト時間、ipg2 は 4 バイト時間に設定されており、この値をパケット間隔パラメタの標準値とします (バイト時間とは、接続速度 1000 Mbps で 1 バイトの転送にかかる時間です) 。
ネットワークに標準値より大きい IPG (ipg1 と ipg2の合計値) を使用しているマシンが存在し、それらのマシンのネットワークアクセスが遅い場合は、他のマシンの ipg1 と ipg2 の値をそれらのマシンの IPG 値まで引き上げてください。
GEM ASIC は lance_mode というプログラム可能モードに対応しています。ipg0 は、この lance_mode の設定に使用します。
lance_mode を有効に設定すると (デフォルトの設定 )、パラメタ ipg1 および ipg2 で設定したパケット間隔に加えてさらに、ipg0 パラメタ を使用してパケット送信前の遅延時間を設定できます。ipg0 による遅延時間の追加により、パケットの衝突を減少させることができます。しかし、lance_mode を有効にしたシステムでは、ネットワーク上で十分な転送時間を確保できない場合があります。
lance_mode を無効に設定すると、ipg0 に設定した値は無視され、追加遅延機能は働きません。ipg1 と ipg2 に設定したパケット間隔のみが遅延時間として機能します。他のシステムが非常に大規模な連続パケットを送信している場合 (つまり、パケット間に隙間のない転送が長時間続く場合) は、この lance_mode を無効に設定してください。
ipg0 には、0 から 31 までの値を設定できます。
表 1-5 にパラメタ lance_mode および ipg0 の設定に使う値を示します。
表 1-5 パラメタ lance_mode および ipg0 の設定に使う値
パラメタ |
値の説明 |
---|---|
lance_mode |
0 = lance_mode 無効 1 = lance_mode 有効 (デフォルト) |
ipg0 |
0 から 30 = パケット送信前 (パケット受信後) に追加する IPG 値 |
動作モードのパラメタと各パラメタのデフォルト値を 表 1-6 に示します。
表 1-6 動作モードのパラメタ
パラメタ |
値の説明 |
---|---|
adv_1000autoneg_cap |
ハードウェアが通知するローカル PCS 機能 0 = 強制モード 1 = 自動ネゴシエーションモード (デフォルト) |
adv_1000fdx_cap
|
ハードウェアが通知するローカル PCS 機能 0 = 全二重で 1000 Mビット/秒、不可 1 = 全二重で 1000 Mビット/秒、可 (デフォルト) |
adv_1000hdx_cap |
ハードウェアが通知するローカル PCS 機能 0 = 全二重で 1000 Mビット/秒、不可 1 = 全二重で 1000 Mビット/秒、可 (デフォルト) |
adv_pauseTX |
ハードウェアが通知するローカル PCS 機能 0 = TX 機能を一時停止しない (デフォルト) 1 = TX 機能を一時停止する |
adv_pauseRX |
ハードウェアが通知するローカル PCS 機能 0 = RX 機能を一時停止しない 1 = RX 機能を一時停止する (デフォルト) |
GEM PCS のサポートしているPCS 機能を表示する読み取り専用のパラメタを 、表 1-7 に示します。この表のパラメタは、ハードウェアの機能を表しています。.
表 1-7 PCS 機能 (読み取り専用)
パラメタ |
説明 (ローカル PCS 機能) |
---|---|
1000autoneg_cap |
0 = 自動ネゴシエーション不可 1 = 自動ネゴシエーション可 |
1000fdx_cap |
ローカル PCS の全二重機能 0 = 全二重で 1000 Mビット/秒、不可 1 = 全二重で 1000 Mビット/秒、可 |
1000hdx_cap |
ローカル PCS の半二重機能 0 = 半二重で 1000 Mビット/秒、不可 1 = 半二重で 1000 Mビット/秒、可 |
asm_dir_cap |
ローカル PCS のフロー制御機能 0 = 非対称型一時停止、不可 1 = 非対称型一時停止、可 (ローカルデバイスから) |
pause_cap |
ローカル PCS フロー制御機能 0 = 対称型一時停止、不可 1 = 対称型一時停止、可 |
接続相手の機能を表示する読み取り専用パラメータを、表 1-8 に示します。
表 1-8 接続相手の機能 (読み取り専用)
パラメタ |
値の説明 |
---|---|
lp_1000autoneg_cap |
0 = 自動ネゴシエーションなし 1 = 自動ネゴシエーションあり |
lp_1000fdx_cap |
0 = 全二重で 1000 Mビット/秒 ではない 1 = 全二重で 1000 Mビット/秒 |
lp_1000hdx_cap |
0 = 半二重で 1000 Mビット/秒 ではない 1 = 半二重で 1000 Mビット/秒 |
lp_asm_dir_cap |
0 = 非対称型一時停止、不可 1 = 非対称型一時停止、可 |
lp_pause_cap |
0 = 対称型一時停止、不可 1 = 対称型一時停止、可 |
接続相手が自動ネゴシエーション機能に対応していない場合 (パラメタ lp_1000autoneg_cap の値が 0 の時) は、表 1-8 の残りの機能すべてに対応しません。従ってパラメタの値はすべて 0 になります。
接続相手が自動ネゴシエーション機能に対応している場合 (パラメタ lp_autoneg_cap の値が 1 の時) は、自動ネゴシエーション機能を使用して接続相手の機能を読み取り、速度およびモードの情報を表示します。
ge ドライバパラメタの設定には 2 種類の方法があります。必要に応じて選択してください。
ndd ユーティリティを使用する
ge.conf ファイルを使用する
システムをリブートするまでの間だけパラメタの設定を有効にしておきたい (リブート後は無効になるようにしたい) 場合は、ndd ユーティリティを使用してください。この方法は、パラメタ設定のテストとしても便利です。
システムのリブート後もパラメタの設定内容が持続するようにしたい場合は、ge.conf ファイルを使用してください。システムのデバイスのある特定のパラメタを設定する必要が生じた場合は、/kernel/drv/ge.conf ファイルを作成して、このファイルにパラメタ値を書き加えてください。
システムをリブートするまでの間だけパラメタの設定内容が有効となるようにしたい場合は、ndd ユーティリティを使用します。ndd ユーティリティは、データリンクプロバイダインタフェース (DLPI: Data Link Provider Interface) を実装したすべてのネットワークドライバに対応しています。
この節では、ge ドライバと ndd ユーティリティを使用して各 ge デバイスのパラメタの設定を変更 (この場合はオプション -set を付ける) または設定を表示 (この場合はオプション -set を付けない) する方法を解説します。
ge デバイスのパラメタの設定や表示に ndd ユーティリティを使用するには、その前にまず ndd ユーティリティ用のデバイスインスタンスを指定する必要があります。
/etc/path_to_inst ファイルを調べて、ge デバイスを表すインスタンスを探します。
# grep ge /etc/path_to_inst "/pci@4,4000/network@4" 2 "ge" "/pci@6,2000/network@1" 1 "ge" "/pci@4,2000/network@1" 0 "ge"
上記の例では、PCI スロットに実装されたアダプタから、3 つの GigabitEthernet インスタンスが見つかりました。
# grep ge /etc/path_to_inst "/sbus@b,0/network@2,100000" 0 "ge"
上記の例では、SBus スロットに実装されたアダプタから、GigabitEthernet インスタンスが 1 つ見つかりました。
インスタンス番号を指定して、方法 1 で見つけたインスタンスの中から目的のデバイスを選択します。
# ndd -set /dev/ge instance インスタンス番号
ここで選択したデバイスは、新たに別のデバイスを選択するまで有効となります。
ndd ユーティリティの使用形式には、2 つのモードが用意されています。
非対話モード
対話モード
非対話モードでは、コマンドを 1 つ実行する度にユーティリティを起動します。つまりこのモードでは、1 つのコマンドの実行が終了する度に ndd ユーティリティも終了することになります。これに対し対話モードでは、1 回のユーティリティ起動で複数のパラメタ値を表示または設定することができます。詳細についてはマニュアルページの ndd (1M) の項目を参照してください。
ここではパラメタ値の設定変更および表示の方法を解説します。
パラメタ値を変更する場合は、-set オプションを付けます。
以下のように -set オプションを付けて ndd ユーティリティを起動すると、ユーティリティはここで指定したパラメタ値をドライバインスタンスに渡し (インスタンス名は /dev/ge となっているはずです)、パラメタ名の部分に入力したパラメタの値とします。
# ndd -set /dev/ge パラメタ名 パラメタ値
パラメタ値の表示を行う場合は、パラメタ名のみを指定します。
-set オプションの指定を省略すると、照会とみなされます。指定されたドライバインスタンスに照会し、指定されたパラメタ名のパラメタ値を表示します。
# ndd /dev/ge パラメタ名
パラメタ値の設定に対話モードを使用するには、以下のように ndd /dev/ge と入力します (パラメタ値は入力しません)。
ndd ユーティリティはパラメタ名の入力を促すプロンプトを表示します。ここで設定または表示したいパラメタ名を入力します。ここで ? と入力すると、すべてのパラメタ名が表示されます。
# ndd /dev/ge name to get/set? (Enter the parameter name or ? to view all parameters)
パラメタ名を入力すると、ndd ユーティリティはパラメタ値の入力を促すプロンプトを表示します (各パラメタの詳細については 表 1-1 から 表 1-8 までを参照してください)。
ndd /dev/ge ¥? と入力すると、ge ドライバがサポートしているすべてのパラメタを一覧表示します。
(各パラメタの詳細については 表 1-1 から 表 1-8 までを参照してください)
# ndd /dev/ge ¥? ? (read only) link_status (read only) link_speed (read only) link_mode (read only) ipg1 (read and write) ipg2 (read and write) instance (read and write) lance_mode (read and write) ipg0 (read and write) adv_1000autoneg_cap (read and write) adv_1000fdx_cap (read and write) adv_1000hdx_cap (read and write) adv_pauseTX (read and write) adv_pauseRX (read and write) 1000autoneg_cap (read only) 1000fdx_cap (read only) 1000hdx_cap (read only) asm_dir_cap (read only) pause_cap (read only) lp_1000autoneg_cap (read only) lp_1000fdx_cap (read only) lp_1000hdx_cap (read only) lp_asm_dir_cap (read only) lp_pause_cap (read only) #
デフォルトでは自動ネゴシエーション機能が on になっています。この機能が働いていると、アダプタは接続速度、二重モード、フロー制御機能の設定を、接続相手に適応するように自動的に決定します。
自動ネゴシエーションをサポートしていないネットワーク装置を使用していたり、接続速度などの値を手動設定したい場合は、ge デバイスの自動ネゴシエーションを off にすることも可能です。
パラメタ adv_1000fdx_cap、adv_1000hdx_cap、adv_pauseTX、adv_pauseRX を選択し、これらのパラメタの値を接続相手のデバイス (例えばスイッチなど) に付属のユーザーズマニュアルに記載してある値に合わせて設定変更します。パラメタ値については 表 1-6 を参照してください。
adv_1000autoneg_cap の値を 0 に設定します。
ディレクトリ /kernel/drv にファイル ge.conf を作成すれば、ドライバパラメタの値をデバイスごとに独立して設定することも可能です。システム内のデバイスの特定のパラメタを修正する場合は、この ge.conf ファイルを設定変更してください。この方法で設定が可能なのは、「ドライバパラメタの値と定義」に記載されている読み取り・書き込みの両方に対応しているパラメタだけです。
更に詳細な情報が必要な場合はマニュアルページの prtconf (1M) と driver.conf (4) の項目を参照してください。
kernel/drv/ge.conf ファイルのデバイスパラメタ ipg1 および ipg2 の値を、例えば以下のように設定します。
name = "SUNW,sbus-gem" class = "sbus" reg=0x2,0x100000,0x14,0x2,0x200000,0x9060 ipg1=20 ipg2=10 ;
ge.conf ファイルを保存します。
すべてのファイルとプログラムを保存してから閉じ、ウィンドウシステムを終了します。
DR (動的再構成) をサポートしていないシステムの場合は、スーパーユーザープロンプトからコマンド init 6 を入力してリブートします。
kernel/drv/ge.conf ファイルのデバイスパラメタ ipg1 および ipg2 の値を、例えば以下のように設定します。
name="pci108e,2bad" parent="/pci@4,4000" unit-address="4" ipg1=20 ipg2=10; name="pci108e,2bad" parent="/pci@6,2000" unit-address="1" ipg1=20 ipg2=10; name="pci108e,2bad" parent="/pci@4,2000" unit-address="1" ipg1=20 ipg2=10;
ge.conf ファイルを保存します。
すべてのファイルとプログラムを保存してから閉じ、ウィンドウシステムを終了します。
スーパーユーザープロンプトからコマンド init 6 を入力して、システムを停止してリブートします。
目的の ge デバイスを表すハードウェアパス名をデバイスツリーから取得する方法を解説します。
通常、ge デバイスのパス名およびそのインスタンス番号は、ファイル /etc/path_to_inst に含まれています。
# grep ge /etc/path_to_inst"/sbus@b,0/network@2,100000" 0 "ge"
Sun GigabitEthernet/S の場合
ge.conf ファイル内で SBus デバイスを明確に表したい場合には、デバイス名およびその親の名前をそのまま使用してください。SBus デバイスの指定に関してさらに詳しい情報が必要な場合は、マニュアルページの sbus(4) の項目を参照してください。
例えば前述の例で表す場合は、以下のようになります。
名前 = SUNW,sbus-gem
クラス = "sbus"
ge.conf ファイルに設定する「名前」の属性値は、互換性のある属性値でなければいけません。上記の例では、この値が SUNW,sbus-gem になっています。
Sun GigabitEthernet/P の場合
ge.conf ファイルで PCI デバイスを明確に表したい場合は、デバイスの名前、その親の名前、装置アドレスをそのまま使用してください。PCI デバイスの指定に関してさらに詳しい情報が必要な場合は、マニュアルページの pci(4) の項目を参照してください。
前述の例の 1 行目では以下のようになります。
名前 = /pci108e,2bad
親 = /pci@4,4000
装置アドレス = 4
2 行目は以下のようになります。
名前 = pci108e,2bad
親 = /pci@6,2000
装置アドレス = 1
3 行目は以下のようになります。
名前 = pci108e,2bad
親 = /pci@4,2000
装置アドレス = 1
この節ではドライバをシステムにインストールした後の設定作業を解説します。
Sun GigabitEthernet アダプタのドライバソフトウェアをインストール後、アダプタの Ethernet インタフェース用にファイルを作成する必要があります。また Ethernet インタフェース用の IP アドレスとホスト名を、/etc/hosts ファイルに作成する必要もあります。
コマンドラインからコマンド grep を入力し、/etc/path_to_inst ファイル中の ge インスタンスを探します。
Sun GigabitEthernet/P の場合
スロット 1 に実装されたアダプタのデバイスインスタンスの場合は、例えば以下のようになっています。
# grep ge /etc/path_to_inst "/pci@1f,4000/network@1" 0 "ge"
Sun GigabitEthernet/S の場合
スロット 0 に実装されたアダプタのデバイスインスタンスの場合は、例えば以下のようになっています。
# grep ge /etc/path_to_inst "/sbus@1f,0/network@1" 0 "ge"
ファイル /etc/hostname.ge<num> を作成します。num の部分には、これから使おうとしている ge インタフェースのインスタンス番号を入力します。
ここで方法 1 の例で示したアダプタの ge インタフェースと同じものを使いたい場合、例えば ge インタフェースのインスタンス番号が 0 の場合は /etc/hostname.ge0 というファイルを作成しなければいけません。同じ例でインスタンス番号が 1 だった場合は、ファイル名は /etc/hostname.ge1 になります。
Sun GigabitEthernet アダプタインタフェースのうち、使用しないものについては、 /etc/hostname.genum ファイルを作成しないでください。
/etc/hostname.genum ファイルは、適切な ge インタフェースを表すホスト名を含んでいなければいけません。
ホスト名は IP アドレスを 1 つ含んでいなければいけません。また、ホスト名は /etc/hosts ファイルに入力しておく必要があります。
ホスト名は重複してはいけません (他のすべてのインタフェースのどのホスト名とも異なる名前を付ける必要があります)。例えば /etc/hostname.ge0 と /etc/hostname.ge1 が同じホスト名を持ってはいけません。
例えば、Sun GigabitEthernet アダプタ (zardoz-11) を 1 つ持つ zardoz という名前のシステムの /etc/hostname.genum ファイルは、以下のようになります。
# cat /etc/hostname.ge0 zardoz # cat /etc/hostname.ge1 zardoz-11
各 ge インタフェースに対して、/etc/hosts ファイルに適切なエントリを作成します。
# cat /etc/hosts # # Internet host table # 127.0.0.1 localhost 129.144.10.57 zardoz loghost 129.144.11.83 zardoz-11
IPv6 (インターネットプロトコル バージョン 6) は、現在使用されている IPv4 の機能を拡張するものです。Solaris 8 オペレーティング環境の GigabitEthernet デバイスドライバは、IPv4 と IPv6 の両方をサポートしています。IPv4 の設定は、/etc/hosts ファイルを使用しますが、IPv6 では異なる設定ファイルを使用します。IPv6 への移行、管理、実装については、『Solaris 8 のシステム管理 (第 3 巻)』を参照してください。
動的再構成 (DR) をサポートしていないシステムの場合は、リブートを実行します。
『Solaris 8 のインストール (上級編)』にネットワークから Solaris オペレーティング環境をインストールする手順を説明しています。以下の手順は、すでに Solaris CD のイメージをインストールサーバーにコピーし、Solaris オペレーティング環境をインストールするクライアントシステムを用意していることを前提としています。
GigabitEthernet アダプタを実装したクライアントシステムに Solaris オペレーティング環境をインストールする前に、インストールサーバーに GigabitEthernet ソフトウェアパッケージを追加する必要があります。GigabitEthernet ソフトウェアパッケージはサプリメント CD に収録されています。
ネットワークから Solaris オペレーティング環境をインストールする手順の詳細については『Solaris 8 のインストール (上級編)』を参照してください。また、サプリメント CD に含まれるソフトウェアについては『Solaris 8 Sun ハードウェアマニュアル』を参照してください。
まず Solaris オペレーティング環境をインストールするサーバーとクライアントを用意してください。
インストールサーバーの作成とクライアントシステムの設定については、『Solaris 8 のインストール (上級編)』を参照してください。
同一サブネット外のネットワークからクライアントシステムに Solaris オペレーティング環境をインストールする場合は、起動サーバーも作成する必要があります。起動サーバーの作成方法については、『Solaris 8 のインストール (上級編)』を参照してください。
クライアントシステムのルートディレクトリの位置を確認してください。
クライアントシステムのルートディレクトリは、インストールサーバーの /etc/bootparams ファイルに記述されています。
# grep クライアント名 /etc/bootparams client_name root=server_name:/netinstall/Solaris_8/Tools/Boot install=server_name:/netinstall boottype=:in rootopts=:rsize=32768
上記の例では、このクライアントのルートディレクトリは、/netinstall になります。手順 4 で説明している root_directory の部分は、/netinstall になります。
ルートディレクトリ名が /etc/bootparams ファイルに記述されていない場合の設定方法は、『Solaris 8 のインストール (上級編)』を参照してください。
インストールサーバーの CD-ROM ドライブに、Solaris Supplement CD を挿入してください。
挿入した CD は、/cdrom/cdrom0 ディレクトリに自動的にマウントされます。CD-ROM が自動マウントされない場合は、『Solaris 8 Sun ハードウェアマニュアル (補足)』のファイルシステムの手動マウントに関する説明を参照してください。
インストールサーバーから、GigabitEthernet ソフトウェアをクライアントシステムのルートディレクトリにインストールします。
ルートディレクトリには、クライアントのシステムの実際のルートディレクトリ名が入ります。
# cd /cdrom/cdrom0/Product # ls SUNWge* SUNWged SUNWgedm SUNWgedu # pkgadd -R ルートディレクトリ/Solaris_8/Tools/Boot -d . SUNWged SUNWgedm SUNWgedu # cd /
上記の例のディレクトリパスは、将来の Solaris リリースにおいて変更されることがあります。上記のコマンドが正常に動作しない場合は、ご使用の Solaris オペレーティング環境のバージョンに付属しているマニュアルを参照してください。
Solaris Supplement CD を CD-ROM ドライブから取り出します。
以降の操作は、クライアントシステム上で行ってください。
この時点でクライアントシステムに OpenBoot の ok プロンプトが表示されていない場合は、shutdown コマンドでクライアントを停止させます。
ok プロンプトを表示させるには、shutdown(1M) コマンドでシステムを停止させてください。
# shutdown -i0 -g0 -y . . . (shutdown コマンドのメッセージが表示されます) . . . ok
ok プロンプトから show-nets コマンドを使用して、GigabitEthernet デバイスへのデバイスパスを検索してください。
show-nets コマンドは、該当するデバイスの一覧を表示します。以下の例のように、ネットワークデバイスのフルパス名が表示されます。
Sun GigabitEthernet PCI アダプタの場合を以下に示します。
ok Show-nets a) /pci@1f,0/pci@1/network@3 b) /pci@1f,0/pci@1,1/network@1,1 q) NO SELECTION Enter Selection, q to quit:
Sun GigabitEthernet SBus アダプタの場合を以下に示します。
ok Show-nets a) /sbus@1f,0/network@1,100000 b) /sbus@1f,0/SUNW,hme@e,8c00000 q) NO SELECTION Enter Selection, q to quit:
ok プロンプトから GigabitEthernet デバイスへのデバイスパスを使って、クライアントシステムを起動してください。
以下の例のように、ネットワークデバイスのフルパス名を入力してください。
Sun GigabitEthernet PCI アダプタの場合を以下に示します。
ok boot /pci@1f,0/pci@1/network@3
Sun GigabitEthernet SBus アダプタの場合を以下に示します。
ok boot /sbus@1f,0/network@1,100000
Solaris オペレーティング環境のインストールを行ってください。
Solaris オペレーティング環境のネットワークインストールについての詳細は、『Solaris のインストール (上級編)』を参照してください。
Solaris オペレーティング環境のインストール後、クライアントシステムに GigabitEthernet ソフトウェアをインストールする必要があります。
手順 4 でのソフトウェアのインストールでは、GigabitEthernet インタフェースからクライアントシステムを起動する必要がありました。ここでは、通常の操作でクライアントシステムの GigabitEthernet インタフェースを使用するために、従来の手順で GigabitEthernet ソフトウェアをインストールしてください。
GigabitEthernet ソフトウェアをインストールする前に、すでにソフトウェアがインストールされていないかどうか確認してください。インストール済みのソフトウェアパッケージについての情報は、pkginfo コマンドで見ることができます。
# cd pkginfo | grep SUNWge system SUNWged Sun Gigabit Ethernet Adapter Driver system SUNWgedm Sun Gigabit Ethernet Adapter Driver Man Pages system SUNWgedu Sun Gigabit Ethernet Adapter Driver Headers
上記の例のように、ソフトウェアがインストール済みの場合は、次の手順 11 は必要ありません。
ソフトウェアがインストールされていない場合は、Solaris Supplement CD からソフトウェアをインストールしてください。
Solaris Supplement CD から必要なソフトウェアパッケージをインストールする方法については、『Solaris 8 Sun ハードウェアマニュアル』を参照してください。
この Solaris オペレーティング環境のインストールによって、ネットワークホストファイルが正しく設定されたか確認してください。
Solaris ソフトウェアのインストールによって、クライアントシステムのホストファイルは作成されます。しかし、ご使用のネットワーク環境に合わせて設定ファイルを修正する必要もあります。ファイルの修正方法についての詳細は、「ホストファイルの設定」を参照してください。
IPv6 (インターネットプロトコル バージョン 6) は、現在使用されている IPv4 の機能を拡張するものです。Solaris 8 オペレーティング環境の GigabitEthernet デバイスドライバは、IPv4 と IPv6 の両方をサポートしています。IPv4 の設定は、/etc/hosts ファイルを使用しますが、IPv6 では異なる設定ファイルを使用します。IPv6 への移行、管理、実装については、『Solaris 8 のシステム管理 (第 3 巻)』を参照してください。